奴との闘い
魚は、屈辱を味わっている。なぜなら、毎度あいつに負けているからだ。
魚がいるのは、いわゆる釣り堀というやつだ。そこで、悠々と暮らしていた。
たまに魚に戦いを挑み、餌で釣ろうとするものも現れたが、見事に返り討ちにしていた。
しかし、最近ある男に連敗していた。このまま負け続けるのは、魚のプライドが許さない。
今度こそは。そう思っていた矢先、チャポンッという音が聞こえた。
この音は、あの男のものだ。魚にはわかった。そして、今日で連敗記録を止めることにした。
しかし、小賢しい手を使うつもりはない。百戦錬磨の魚は正々堂々、勝負に挑んだ。
時を見計らい、餌に食らいついた。
ここまでは順調だ。
少し経ったとき、魚は勝負に出た。
全力で糸を切る勢いで釣り堀の底を目指し沈む。
すると、体が一気に持ち上がった。糸が張っているのを見て、引っ張られていることを悟った。
今日も強い。持久戦にもつれ込むと判断し、体力を温存しながら時々糸を引っ張る。
二分ほどが過ぎ去ったとき、再び、しかし先ほどとは比べ物にならないほどの力で体は持ち上がった。
魚は水から追い出された。いや、水の外から引っ張られたのだった。
また、負けた。そう考えると悔しい。悔しくて死にそうだ。
魚を見て、男は笑みを浮かべた。
さらに悔しい。
いわば、最悪の気分だった。
しかし、魚が今日もまた、勝負に負けたことには変わりない。
今回は男の勝利だったが、次回はどうなるかわからない。
「今日も強いな。いい経験になった。感謝する。だが、次回こそは勝つぞ。」と男に心の中で声をかけた後、釣り堀に戻された。




