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イア;メメント モリ─宿世相対─  作者: 円野 燈
第6章 Riss─綻ぶ─

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80話 五本の枝



 クラブで夜通し踊り明かす若者以外、ほとんどの人々が眠りに就いている深更。人間に扮した死徒たちは、市街地を起点にそれぞれ個別に動いていた。

 ティウブこと憎悪のバルトロマイバルトロマイ・デア・ハスは、北西方面のシュパンダウアー・フォルストへ。キィナこと嫉妬のマティアマティア・デア・ナイトは、南東方面のゼティン湖を囲む森林公園へ。ケエブこと痛哭のタデウスタデウス・デア・クマーは、北東方面のヴァンゼー湖側の森林公園へ。オツェルこと惨苦のトマストマス・デア・ライデンは、南西方面のノイエ・ヴィーゼンへ向かった。

 そして、カアこと憤怒のフィリポフィリポ・デア・ツォルンは、ティーアガルテンの戦勝記念塔に来ていた。葉が付いた一本の枝を持ち、静かで灯りも乏しい暗闇の中、明かりも持たずに塔の周りをうろうろしている。


「ここに刺せって言ってもよー。芝生ばっかじゃ目立つし、不自然じゃねーか。どこに刺せばいいんだよ」


 塔の周囲を不審者のごとく何度も歩き回り、相応しい場所を探し続けている。戦勝記念塔の周りは芝生のみ。ここに不自然だと思われないよう枝を挿せと命令を受けているが、フィリポの頭をどう捻っても自然にはできない。


「しょーがねぇな。一本しかないこいつの側にしとくか。対になるようにしとけば、何とか誤魔化せるだろ」


 塔の北側に、高さ3メートルほどの一本の常緑樹が立っている。違和感を誤魔化せるとしたら、ここしかなかった。

 フィリポは持っていた枝を、通路を挟んで木の向かい側の芝生に突き立てた。

 すると。ただの枝はすぐに根を張り、早送りをするようにぐんぐん背を高くし、幹を太くし、枝葉を増やし、あっという間に向かい側の木と変わらない高さの樹木となった。


「これで、ここはOKだな!」



 一方。野生動物が保護され、面積はほぼ森林で締められている広大な森林の、シュパンダウアー・フォルスト。

 こんな深更の深い森林は、もちろん灯りなどない。新月の今日は余計に闇が深く、生き物の気配が逆に気味悪く思える。

 その静寂の森の中を、闇に紛れた影となったバルトロマイは、積もる枯れ葉の音もさせずに目的地へ向かっていた。

 迷うことなく奥へ奥へと進み、ある場所で影の中から人間ティウブの姿を取った。

 そこには、石でできた石碑があった。長い年月が経っているのだろう。手入れもされず苔を生やし、風雨に晒され続けたせいで削られた表面はデコボコし、刻まれている文字も読み難くなっている。


「これだな」


 そしてバルトロマイも、持っていた枝を石碑の側に挿した。こちらもすぐに根を張ると、太くなった幹は分裂して石碑に巻き付きながら成長し、枝葉を増やして樹木となると、すっぽりと覆い隠してしまった。


「『ホーローカウスト』へ、また一歩近付いた」

(あとは、成長してその時を待つのみ)


 物質界でのもう一つの重要な指令を終えたバルトロマイは、影の中に消え、再び深更の静けさの中に溶けた。




ここまで読んで下さりありがとうございます

『イアメメ』はしばらくお休みとなります。更新再開までお待ち頂けると幸いです

(活動報告にもお休みの件を書いてます。よかったらそちらもご一読下さい)

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