26 ハワラタシティに到着したぜ!
「ぎゅいぎゅい、街が見えてきた」
「ギュィイン……!(おお~……!)」
街道を北方面にひたすら進み、橋の壊れた川を越え、湿地にハマった馬車を助け、襲いかかってきた野盗をブチ殺し……
オレたちは、遂に目的地に到着した。
「あそこがあたしたちの暮らす街『ハワラタシティ』だよ!」
なだらかな丘の上にグネグネと曲がりくねった一本道があり、その両サイドに建物がずらっと並んでいる。
あそこがルヴィたちの地元であり、アナベルが暮らしていた街、ハワラタシティか……
「お屋敷の外の街、初めて見た」
「ドッドッドッド(なんだかおもしれえ形をしてるよな)」
なんつーか、巨大なヘビが蛇行した跡が道になって、その周りに家が建ってるっつーか……
街のど真ん中に栃木の『いろは坂』があるみたいだぜ。
「あの曲がりくねった大通りに面して全ての家が建ってるから、意外と移動は楽なんだぜ」
「グネグネしてるけど、あの道を進めば頭からお尻まで行けちゃうよ!」
「(街のお尻ってなんだ?)」
丘の上に造られたハワラタシティを眺めながらしばらく街道を進むと、街の入り口に到着する。
ジョーが入り口に立っていた警備員に荷馬車の中身を見せて、無事に入街の手続きを完了させた。
「昔は警備なんか立ててなかったし、街の出入りもほとんどフリーみたいなもんだったんだが、ビギニー伯爵の館が山賊に襲われた事件があって以降、警備を厳しくしたんだ」
「昔からちょくちょく夜盗が出たりはしてたからね~。お屋敷が燃やされて火が街の中まで燃え移りそうになったりもしたから、流石に対策しないとってことで、街のお偉いさんたちが安全に気を遣うようになってくれたんだよ」
「わたしがいなくなった後、そんなことがあったんだ」
「(アナベルのご主人の死が無駄にならなくて良かったぜ)」
街に入るのは今日が初めてだから、この世界の人たちの治安はまだよく分かってねえけど、あの山賊や野盗たちのことを考えるとさすがに今までオレが暮らしてた世界よりは良くないだろうな。
そのかわりに、賊とはいえ人間をぶっ殺してもお咎めなしっていう側面もあるんだろうけど。
「ビギニー伯爵のお屋敷があったのは街の一番奥だよ」
「周りがちょっとした森になってて、その中に屋敷が……いや、屋敷の焼け跡がまだ残されてるはずだ」
「……そう」
自律式駆動人形の特徴なのか、いつもほとんど表情を変えないアナベルが、少しだけ寂しそうな顔をした気がした。
くっそ~、こういう悲しい雰囲気って苦手だぜ~。
……親方も、今ごろオレが死んで悲しんでんのかなあ。
「(酒と煙草の量が増えちまってたら、申し訳ねえな……)」
まあ、死んじまったもんは仕方ねえ。
向こうの世界のことはもう分かんねえし、親方は今も元気にチェーンソーを振り回してるってことにしとこう。
「ビギニー伯爵の屋敷には後で案内してやるから、一旦うちに行こう」
「アナベルちゃんの服も洗濯しないとね!」
「わたしの、服……」
「ブォンブォオン、ブロロロロン!(返り血で汚れた服のまま、墓参りなんて行けねえもんな!)」
さすがに『全身山賊の血染めのまま放置して血が黒くなれば喪服が完成』とか言わなくて良かったぜ。
それもそれで仇討ちしてきたって感じでかっけーけどな。
「あ~あ、早くミーアに会いたいぜ……」
「お父さん、本当かな~? 向こうの街で酒場に行ったときに、店員の女の子にデレデレしてなかった~?」
「ななな、な~に言ってやがるんだルヴィ。俺はミーア一筋だぜ……?」
「私が一緒にいる理由、分かってる? お父さんが1回お母さんに浮気を疑われたから、仕事先の街で現地妻作らないように私が見張ってるんだよ?」
「はい、重々承知しております。すんませんでした」
「失った信頼を取り戻すのは、大変」
「ブォン、ドッドッド……(ジョー、お前ってヤツは……)」
捨て子のルヴィを引き取った話で感動した分の好感度が今のでプラマイゼロになったぜ。
…………。
「あの女が抱えてる魔道具、初めて見るが良い金属素材を使ってやがるな……へへっ、盗んで売ったら金になりそうだ」




