アンナの説教
「カズマ、あんた何か隠してるでしょ?」
「本当ですか?カズマさん。」
「あ~。別に隠してたわけじゃないんだが・・・。というか、俺もさっき知ったんだが・・・。」
「やっぱり何か隠してたのね?何?あんた何を知ってるの?さっさと白状なさい。」
「アイナ。そう迫るもんじゃないぞ?カズマもさっき知ったと言っているじゃないか。」
「アンナは甘いのよ。こいつは変に隠すことが多いから、白状させるときは一気にいかないと。」
「いや、別に隠してたわけじゃないんだけどな・・・。」
「それで?あんた何を知ってるっての?」
「その前に、その話は巣の駆除が終わってからでもいいか?あと少しで完全に水没できるんだが?」
「そう言って話をはぐらかそうたって、そうはいかないわよ。」
「いや、はぐらかす気はさらさら無いぞ?ただ、まだ完全に水没してないから気を抜くのが危ないと言ってるだけで・・・。」
「カズマの言うことは最もだな。アイナ、その話は駆除が完全に終わってからにしろ。カズマも駆除が終わったら話してくれるんだろ?」
「ああ。きちんと話をする。」
「アイナもそれでいいな?」
「わかったわよ。あんた逃げたら承知しないんだからね?」
「わかってるって。(はぁ~。面倒なことになっちまった。さぁて、どうやって説明すべきだろうか?正直に話しても信じてもらえるかわからんが、下手にごまかすよりマシか?)」
俺は3人にどう説明すべきかを悩みながら、巣の駆除を続けていた。
その間にも外に出ていたディグアントが現れたが、3人は難なく討伐し気が付けば外に出ていたディグアントは全て駆除されていた。
「カズマさん。外に出ていたディグアントはこれで最後ですか?」
「ああ。サーチで見る限り、今ので最後だな。穴を開けようとしていたのもどうやら水没したみたいで、今は巣の中にも動きはない。あとはこのまましばらくの間様子を見て、完全に動きがなければ駆除完了だな。」
「そう。それじゃあ、その間はさっきの話の続きといきましょうか?」
「はいはい。答えられることはなんでも答えてやるよ。」
「あら?やけに聞き分けが良くなったわね?」
「よくよく考えたら、俺に不利になるようなことはないからな。」
「それで?いったい何を知っているの?」
「あ~。経験値分配(受信)って固有スキルが生えたんだよな?」
「はい。いつの間にか生えてました。」
「それなんだがな、俺が関係してるみたいなんだ。」
「はぁ?どういうことよ。」
「俺にも知らん間に生えてたんだよ。経験値分配が。」
「カズマさんにもですか?」
「ああ。それでスキルの確認したら、3人のレベルが上がった理由がわかったんだ。」
「ふむ。だとしたら、カズマが得た経験値の一部を私たちが受け取っていたというのが正解かな?」
「その通り。パーティーメンバーに俺の得た経験値の一部を分配するスキルだった。」
「そ、そんなスキルがあるんですか!?」
「私も聞いたことがないんだが?」
「俺も3人がステータスを確認し始めるまで、俺にこんなスキルが生えてるなんて知らなかったからな。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。なら、この急激なレベルアップはあんたのおかげってこと?」
「全部が全部そうだとは言えないが、多少関係はしているだろうな。」
「でもなんで急にこんなスキルが生えてきたんでしょう?」
「あ~。それについてもおおよその検討は付いたぞ。」
「えっ!?それっていったい・・・。」
「おそらく、臨時パーティー登録だな。それくらいしか思い浮かばない。」
「アンナ正解。俺もその答えに行き着いた。」
「た、確かにあんたと臨時パーティーを組んでからステータスの確認はしてなかったけど・・・。」
「それじゃあ、臨時パーティーを解除したら、このスキルは消えるってことですか?」
「おそらくそうなるだろうな。」
「カズマさん・・・。どこまで規格外なんですか?」
「エレナはどうしても俺を規格外にしたいのか?」
「いえ、そういうわけではないんですけど、どうしてもそう思っちゃうんですよ。」
「そうだ。カズマ、あんたこのまま薔薇の茨の一員になりなさいよ。どうせ今までだってよく似たような感じだったんだし。」
「あっ!それはいいかもです。カズマさん、どうせならこの際に正式に加入しませんか?」
「いや、それはちょっと・・・。」
「何よ。あたし達では不満だって言うの?」
「そんなことはないぞ。」
「なら良いじゃない。」
「アイナいい加減にしないか!」
「ア、アンナ!?」
「アイナ、エレナもだ。今の状況でカズマを誘うのはいささかどうかと思うんだが?」
「えっ?でも・・・。」
「今の2人の言い方だと、カズマを経験値を手っ取り早く稼ぐためだけの道具としてしか見ていないように感じたんだが?違うか?」
「あ、あたしはそんな風に思ってたわけじゃないわよ。ただ・・・。」
「ただ、なんだ?」
「カズマのことを色々知りたいって思っただけよ。か、勘違いしないでよ?男性としてじゃなくて、秘密を知りたいってだけなんだからね!?」
「わ、私も同じです。どうやったら、カズマさんのようにスキルを覚えられるのか。カズマさんと一緒にいればそれが解るような気がして・・・。」
「それは2人の興味を満たすだけのためにパーティーに加われと言ってるようなものじゃないか。以前ギルマスの部屋に通されたとき、ギルマスから言われたことを忘れたのか?」
「確か、あなた達がカズマさんから本当に信頼されたら、話をしてくれるかもしれないわね。だったっけ?」
「そうだ。カズマが本当に信頼してくれたら、いずれ話してくれるかもしれないんだ。今急いで聞く必要はないと思うんだが?」
「そ、それは・・・。」
「確かにそうですね・・・。」
2人はアンナから叱責を受けて項垂れてしまった。
俺としては別に3人になら話しても構わないかと思っているのだが、信頼に値するかと考えると一歩引いてしまっているのもまた事実。
実際たかだか1ヶ月しか行動を共にしていないし、もう少し様子を見るべきなのかもしれない。
だから、今の俺にはこう言うしかできない。
「あ~。パーティーへの誘いは嬉しいんだが、俺もまだ1人でやってみたいことが色々あってな?すまないが、今は勧誘は断らせてもらう。ただ、絶対に嫌だというわけではないことは理解してほしい。」
「わかっている。今回のことはこちらが全面的に悪いことだ。気を悪くしたのであれば謝る。だから、この依頼の最中は、臨時パーティーを続けてもらいたい。この依頼が終わったら、好きにしてもらって構わない。」
「アンナは固いんだよな。さっきも言ったろ?絶対に嫌だというわけではないって。」
「し、しかし。」
「しかしもかかしもないんだよ。俺が納得してるんだからいいんだ。この話は終わりだ。いいな?」
「す、すまない。」
「アイナやエレナも悪気があって言ったわけじゃないってことくらい、付き合いの短い俺でも解ってるんだ。そこまで気に病むことはないぞ?ただ、急いては事を仕損じるって言葉だけは覚えとけよ?」
「それはどういう意味ですか?」
「急いでやろうとすると出来ることも失敗するってことだったかな?とにかく、急ぐことだけが能じゃないってことだよ。地道に周りを固めていくことも大事だってことさ。」
「はぁ~。あんた色々な言葉知ってるのね?そんな言葉どこで覚えるのよ。」
「俺の故郷の言葉だよ。なかなかに良い言葉だろ?」
「はい。今の私たちにはピッタリの言葉ですね。」
「卑屈になるなよ?前にも言ったが、秘密を知りたい欲求は誰にでもあるんだ。知る機会があるなら、それに飛びついたってしかたないんだよ。」
「私が前に言われた言葉だな。」
「まあ、今回の経験値分配は棚ぼたで手に入ったとでも思っとけよ。さて、そろそろ蟻を取り出しても問題ない時間になったかな?」
「もうそんなに時間たったの?」
「結構話し込んだからな。っと、サーチで見ても蟻に動きはないな。それじゃあ、まずは水を解除するか。」
俺はそう言うと、巣穴に流し込んだ水を解除し蟻の死体を回収する作業に入ったのだった。
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