キャンピングカー内にて
「部屋が凄いのは解ったわ。でも、これが移動手段の方法って本当なの?」
「ああ。この馬車の動力は俺の魔力なんだ。」
「動力って何ですか?」
「えっと、簡単に言えば餌だな。特殊な加工を施してあるから、実際の餌を必要としないんだ。」
「それは凄いな。それが本当なら、これは革命的な馬車だぞ?」
「確かに革命的ではあるだろうが、これは俺以外には手に入れることが出来ないから、無理だと思うぞ?」
「あんた以外に手に入れられないってどういうことよ?」
「言葉のままだが?」
「カズマ以外には作れないということなのか?」
「作れないじゃなくて、手に入れることが出来ないが正解だな。」
「それじゃあ、誰か作れるってことじゃないの?」
「この世界には作れる奴はいないだろうな。まあ、その話はおいおいしてやるから、今は運転席に移動しよう。このキャンピングカーが動くところを見せてやるからさ。」
「カズマさん。しつこいようですが、本当にこの馬車の動力は魔力なんですか?」
「ああ。と言っても俺の魔力にしか反応しないから、俺専用なんだけどな。」
「カズマ専用ってどんだけ贅沢なのよ。」
「貴族や王族でも自分専用の馬車を持っている人は少ないと思うぞ?」
「そうなのか?まあ、俺は特別ってことでそこんところは納得してくれよ。」
俺は訝しむ3人と共に運転席へと移動した。
フロントガラスから景色は見えるのに風を感じないなど、御者が感じるものとは違うことに戸惑いながらも、3人は俺に言われた通り助手席に腰を掛けた。
「えっ!?なにこの椅子!凄く座り心地がいいんだけど!」
「こんな座り心地のいい椅子なんて、今までで経験ありませんよ。」
「これは本当に椅子なのか?腰に全く負担がかからないぞ?」
「まあ、椅子にも少しは拘ったからな。それよりそろそろ出発するから、席から立つなよ?」
「そういえば、これは馬車だったのよね。立ってたら危ないの?」
「普通の馬車でも移動する間は立ってないだろ?」
「それもそうだな。」
「ほら、アイナさん座ってください。子供じゃないんですから、燥がないでくださいね。」
「わ、わかってるわよ。」
「それじゃあ、出発するぞ?」
俺は3人に一声かけ、キーの代わりに設置した魔石に魔力を流し込み、エンジンをかけた。
ギュギュッオンオンオンッ
「な、何なに?なんの音?」
「魔物ですか!?」
「2人とも落ち着け!周りを確認しろ!聞いたこともない鳴き声だ。どんな魔物かわからんぞ。」
「3人とも落ち着け。魔物じゃないから。キャンピングカーの始動音だから。」
「魔物じゃないの?始動音って何?」
「あ~。なんていうか、こいつが目を覚ました合図ってとこだな。」
「この馬車は生きてるんですか?」
「いや、生きてはいないんだが・・・。と、とにかくこいつが出発できるようになった合図だ。」
「す、すまない。そうとは知らず取り乱してしまった。」
「初めて聞いたんだから、仕方ないさ。俺もまさか始動音だけで、こんなに騒がれるとは思ってなくて説明してなかったからな。こっちこそ悪かった。」
「それにしても凄い音でしたね。なんとも言えない音でした。」
「聞きなれてなかったらそうだろうな。俺も初めて聞いたときは吃驚したもんさ。」
「それで?今のでこの馬車は移動できるようになった、ってことでいいの?」
「ああ。それじゃあ、動かすから椅子に腰かけといてくれよ?」
「「「わかった。(りました。)」」」
3人が椅子に腰かけたのを確認した俺はレバーを操作し、キャンピングカーを発車させた。
3人は走る速度や、椅子への振動の少なさに驚いていた。
「えっ!?これ動いてるのよね?まるで振動がないんだけど?」
「確かに。お尻が全く痛くありません。いつもなら、段差があるとお尻に振動が来てとても痛いはずなんですが・・・。」
「ああ。それに普通の馬車よりも移動速度が速くないか?この速さは馬を全力で走らせてる時よりも早い気がするんだが・・・。」
「アンナ、いいところに気が付いたな。この車の今の移動速度はおよそ時速60キロ。普通の馬車の5~6倍の速さで走ってるんだ。ちなみに今の速度が全速力じゃないぞ?」
「この速さで全速力じゃないのか?」
「ああ。全速力だと時速100キロは超えるからな。ただ、足場が悪いから全速力は出せないんだけどな。」
「それでも、普通の馬車の6倍というのは凄いな。」
「そうですね。それにこのキャンピングカー?であれば、街でわざわざ宿を取るなんて必要もないんですよね?」
「ああ。寝るのはこの車の中で寝ればいいからな。道中の宿代の節約にもなるな。」
「でも食事はどうするの?いくら調理器具があっても運転中は立てないんでしょ?」
「食事に関しては、適当な時間になれば車を停めて作れば問題ないだろ?」
「あっ、そっか。移動中に食べないといけないわけじゃないものね。」
「そういうこと。だから食材さえ買いこんでおけば、いつでも温かい食事が取れるってわけだ。」
「しかし、カズマよ。私たちは君に依頼とはどういうものかを教えるために指名依頼を受けたのだが、これでは教えられないんじゃないだろうか?」
「確かにそうね。普通はこんな移動手段なんて使わずに、馬車を借りて移動するもんだしね。」
「すまんが、今回ばかりはこれを使わせてくれ。これを使う理由もちゃんとあるんだ。」
「これを使う理由?何よそれ?」
「それはな・・・。」
「それは?」
「とある人から、3人に適性検査を行い使える属性を増やすように依頼されてるんだ。」
「使える属性を増やす?一体なんの事よ?」
「魔法系のスキルを増やせってことだな。」
「はぁ!?簡単に言わないでくれる?そんな簡単に増やせるわけないでしょ?それに適性がなかったら覚えられないって知ってるわよね?」
「だから、その適性を増やせってことなんだよ。」
「だ~か~ら~、そんなに簡単に適性なんて増えないって言ってるのよ。」
「そうだぞカズマ。私だって火の適性があったが、スキルを覚えるのには時間がかかったんだ。今更適性を増やせと言われても、それを調べるところから始めるのでは、覚えるのはいつになるかわからんのだぞ?」
「それについては、適性を調べる方法は用意してあるし、覚えるための時間も俺なら何とかできる。」
「どういうことよ?」
「百聞は一見に如かず。ちょっと車を停めてから準備するから待っててくれないか?」
俺は3人を説得するための用意をするために、車を停めリビングへと移動した。
俺が移動を始めると3人も訝しみながらも後ろを付いてきてくれた。
「それで?どんな準備をするっていうの?」
「それより、場所はどうするんですか?この部屋の中で出来ることなんでしょうか?」
「ああ。ここで出来ることだから車からは降りなくていいぞ。というか、他の人に見られないようにするためにこの車を用意したようなものだからな。」
そういうと俺は魔神から貰った時空間魔法のルームを詠唱し、異空間への穴を開けた。
「な、なによこの穴・・・。」
「それじゃあ、この穴の中に入ってもらえるか?」
「はぁ!?何言ってんのよ!いやに決まってるでしょ!」
「流石に何の説明もなく入れというのはちょっと・・・。」
「カズマ。説明くらいはして欲しいんだが?」
「ん?説明してなかったか?悪い、悪い。この穴の中は異空間に繋がっていて、そこは時間の流れが普通より早いんだ。そうだな、こっちでの1分が穴の中では1時間になってるって感じだな。」
「はぁ?1分が1時間?そんなのあり得るわけないじゃない。」
「それがこの穴の中だとあり得るんだよ。とにかく、中に入ってくれ。話はそれからするから。」
「カズマ、悪いがその説明だと入るのは無理だぞ?何か立証出来るものはないのか?」
「立証と言われてもな・・・。そうだ、3人ともあの時計を見てくれ。今は午前10時を指しているよな?」
「確かに午前10時ですね。」
「次はこっちの時計を見てくれ。同じく午前10時だよな?」
「ええ。間違いなく午前10時ね。」
「あの時計は止まってないよな?同じくこの時計も。」
「ああ。両方とも動いているな。」
「3人が確認したところで、今から俺がこの時計を持って穴の中に入る。俺が出てきたらあの時計との差を確認してくれ。それで立証出来るだろ?」
「ちょっと待ちなさいよ。それじゃあ、穴の中であんたが時計を動かしても誰もわからないじゃない。」
「じゃあ、どうするってんだよ?」
「誰かが、あんたと一緒に穴に入ってあんたを見張るのよ。」
「誰が入るんだ?誰も入りたがらなかったじゃないか。」
「そ、それは・・・。」
「あの~。私が入ります。」
「えっ?エレナ?あんた本気なの?」
「はい。カズマさんのすることですから、おかしなことにはならないでしょうし、何より私が経験してみたいです。」
「エレナ、あんたいつからそんなにチャレンジャーになったのよ・・・。」
「エレナが構わないなら、私は何も言わないが本当にいいのか?」
「はい。それに氷魔法に付いてアドバイスをもらうチャンスでもありますから。」
こうして俺とエレナがルームの中に、アンナとアイナは車中に残ることで話は付いた。




