俺のは硬いらしい
「わからないって、どういうこと?あんたがやったのよ?」
「いやぁ~。咄嗟のことだったから、どうなってるのか自分でもわからんのだな、これが。」
「咄嗟って・・・。一体どれくらいの魔力を込めたらこんなに硬くなるんでしょうか・・・。」
「まったくだな。そうだ、アンナ。君の剣でこの壁に傷がつくか試してみないか?」
「嫌よ。アサルトディアの角ですら敵わなかった壁よ?あたしの剣がいっちゃうじゃない。それよりも、アンナの拳でやってみたら?」
「やってはみたいんだが、おそらく私の手甲では傷もつかないだろうというのは想像がつくからな。拳が壊れても困るから、やめておくよ。」
「あっ、あの。私のスキルで試してもいいですか?水魔法ならいける気がするんです。」
「というわけなんだけど。カズマ、試してもいいかしら?」
「俺は構わないが、いい加減に片さないと頭が取れないぞ?」
「エレナが試して終わったら、すぐに片していいわよ。だから、ねっ?」
「はぁ~。わかった。」
「エレナ、カズマもいいって言ってくれたから、やっちゃいなさい。」
「はい!ではいきます。水玉!」
エレナの唱えた水玉は勢いよく壁に向かっていき、そして
バシャッ
壁に当たると、砕け散った。
「やはり、駄目でしたか。しかし、これは予想できていました。次が本命です。いきます!!水槍!」
先ほどより魔力を込めたのだろうか、自信満々に放った水槍だったのだが、
バシャッ
先ほどの水玉と同じ運命を辿ってしまった。
「そ、そんな・・・。ほぼ全力だったのに・・・。魔力も沢山込めたのに・・。咄嗟に作った壁に傷一つつけられないなんて・・・。」
「あ~、その、なんかすまん。」
「この土壁がおかしいだけで、エレナのスキルに威力がないとは私は思えないんだが?」
「そ、そうよ。エレナが弱いんじゃなくて、カズマがおかし過ぎるのよ。」
2人(特にアイナ)は必死にエレナを慰めているが、当のエレナはへたり込んでしまい、まるで悲しみのオーラが全身を包み込んでいるようだった。
「カズマ、なにぼさっとしてるのよ!さっさと片しなさいよ!」
「あ、ああ。(お、俺が悪いのか?まあ、俺の魔力で作った壁なんだから、おかしな硬さになってても当然っちゃ当然か・・・。)」
俺は急いで土壁を土へと帰していった。
その後ろでは、
「エレナ、君はカズマの背中を追いかけると言っていたな?それなのに、こんなことくらいで立ち止まるのか?ここで立ち止まるようなら、カズマの背中を追いかける資格はないと思うが、どう思う?」
「ちょっと、アンナ!?」
「エレナ。今はショックを受けるんじゃなくて、ここまで差があることがわかったと喜ぶべきだ。まだまだ、目指すカズマは遥か先にいると。なら、そこに向けて今は一歩でも歩みだすべきじゃないのか?」
「ねえ、アンナ?」
「君がここで立ち止まろうと、私やアイナは君を見捨てるようなことはしない。しかし、君自身はそれで満足なのか?私たちに慰められて満足するようなら、カズマの背中を追うことなど止めてしまったほうがいい。」
「あの~、アンナさん?聞いてますか?」
「私は君が先に進みたいと、カズマの背中を追いたいと望むなら、出来うる限りの手伝いをしよう。きっとアイナも同じことを言ってくれるだろう。後は君の決断次第だ。さあ、エレナ。君はどうしたいんだ?」
アンナは自己陶酔でもしているのか、エレナに向かって自分の考えを話していた。
その間、アイナは無視され続けたみたいだったが・・・。
しかし、そのアンナの説得の甲斐があってか、エレナは顔を上げた。
「わ、私はまだ諦めたくないです。確かにカズマさんの背中ははるか遠くにあります。私自身がそこまで行けるとは思いません。でも、少しでも近づきたいです。だから、諦めたりしません!」
「よく言った、エレナ。それでこそ私たち薔薇の茨の一員だ。」
「はい!」
「あの~。あたし無視されてる?一生懸命エレナの事慰めてたのに、あたし無視されてる?」
「何を言ってるんだ。アイナのことを無視するなんてするわけないだろ?」
「そうですよ。アイナさんも大事な仲間なんですから。」
「そ、そうよね?あたしも大事な仲間よね?」
「ああ。当たり前だ。」
「はい。当たり前です。」
「お~い。もういいか?壁も片したし、頭も仕舞ったからいい加減移動したいんだが?」
「えっ!?あ、あれ?いつの間に?」
「いつの間にって3人が話に熱中してる間に終わらせたぞ?」
「そ、そうだったの。なら、街に戻りましょうか。薬草も必要数は集まったんでしょ?」
「ああ、鹿が襲ってくる前に集まったぞ。」
「なら、戻るとしよう。カズマには悪いが、他の薬草のことは次の機会で構わないか?」
「ああ。問題ないぞ。俺のはそんなに急ぐものでもないしな。」
「わかりました。次に機会があれば、まだ教えてない薬草も教えますね。」
「では、戻ろう。」
アンナの一声でその場を後にした俺たちは、森を抜け街へと帰った。
街へ着いたのはお昼を回って、暫くたってからだった。
俺たちは一度宿に戻り、少し体を休めようと食堂へと集まっていた。
「そういや、アサルトディアの取り分はどうする?」
「どうするって、あんたが倒したんだからあんたのものよ。当然じゃない。」
「そうだな。私たちは何もしていないんだからな。」
「それじゃあ、この2日間はただ働きになるんじゃないのか?」
「確かにそうだけど、あんたに教えるってのはあたし達が決めたことだし、気にしなくていいわよ。」
「いや、しかしだな。」
「どうしても気になるっていうなら、あたし達の依頼であんたの力が必要になった時に手助けしてよ。それでチャラにしてあげるわ。」
「そうだな。私たちだけではどうにもならない依頼があったりしたら、手助けしてくれると助かるな。」
「そんなんでいいのか?手助けくらいなら別に問題ないぞ?」
「言ったわね?確かに言質を取ったわよ?」
「ああ、構わないぞ。ただし、俺も依頼を受けていて動けない時もあるから、そん時は勘弁してくれよ?」
「もちろん自分の依頼を優先してもらって構わないさ。」
「そういえば、アサルトディアの時に話してた時空間魔法のことなんだけど、聞いていいかしら?」
「ん?なんか話してたか?」
「レベル2がサーチでレベル3は何なのって話よ。」
「説明が難しいと言って言葉を濁していたやつか?」
「そうそう、それよ。一体どんなスキルなのか、思い出したら気になっちゃって。」
「それ、私も気になります。どんなスキルなんですか?」
「え~っと。自分の視界に入る場所ならどこへでも移動できるスキルって感じだな。」
「自分の視界に入る場所?」
「ああ、森の中や遮蔽物が多い場所では使いづらいんだが、平原なんかの開けた場所なら見える範囲どこへでも移動できるんだ。」
「なにそのスキル。それがあると移動がものすごく楽になるんじゃない?」
「ただし、移動できるのは俺と身に着けているもののみ。つまりは、一人用だな。」
「一人旅をするなら便利なスキルだが、今回みたいに複数人で移動するときには使いづらそうだな。」
「まあ、偵察なんかで使うにはいいかもしれないが、移動として考えると不向きではあるな。」
「そう言われればそうですね。ところで、いい時間になってますし、そろそろギルドに行きませんか?」
「ん?もうそんな時間か?」
「はい。もう少ししたら依頼完了の報告で人が多くなると思いますよ。」
「それは嫌ね。混んでくると面倒だし、人が多くなる前に完了報告しちゃいましょうか。」
「そうだな。じゃあ、行ってくるよ。3人はどうする?」
「どうするとは?」
「いや、買い物とかに行くんじゃないのか?」
「あたしはカズマに付いていくわよ?」
「はぁ?子供じゃないんだから、別に付いてこなくても一人で出来るっての。」
「別にいいじゃない。あんたといると退屈しないのよ。」
「俺は暇つぶしの道具じゃねえぞ?」
「けちけちしないの!ほら、2人も行くんでしょ?」
「そうだな。私たちも付いていくことにするか。」
「ですね。私はギルマスと一緒に時間があれば訓練する約束をしてますし。」
「ああ~、もう勝手にしろ!」
俺は3人の行動にあきれながらも、一緒にギルドへと向かうのであった。




