依頼完了
「恒常依頼の完了を頼む。」
俺はギルドの受付に、カール草とチップ草、ボウ草の束とギルドカードを提示し、完了報告を行っていた。
「確認しますので、少々お待ちください。」
「わかった。」
受付嬢は依頼品とギルドカードを持って奥へと歩いて行った。
「きちんと報告できたみたいね。」
「報告の仕方は一度見たからな。楽勝だな。」
「あら、カズマさんじゃないの。どうしたのこんなところで。何か依頼を受けるの?」
「ギルマスこそどうしたんだ?仕事じゃないのか?」
「今は休憩中よ。それで?カズマさんは何してるのかしら?」
「俺は恒常依頼の完了報告をしたところだ。」
「Fランクの依頼じゃなくて、恒常依頼?なんで恒常依頼なの?Fランクの依頼は受けなかったの?」
「ああ。知らないことが多いからな。まずは地道に恒常依頼をこなしてみようと思ってな。」
「なるほどね。でも、恒常依頼は報酬が少ないでしょ?」
「報酬の多い少ないは関係ないさ。慣れることを第一に考えてるからな。」
「それは良い心がけだけど、なるべくならカズマさんにはランクにあった依頼を受けてもらいたいわね。」
「ん?どういうことだ?」
「恒常依頼は出来るだけ子供たちに回してあげてほしいのよ。子供たちは戦う力を持たないわ。でも生きていくためにはお金が必要になってくる。恒常依頼はそんな子供たち用にあるようなものなのよ。
だから、力ある大人にはランク依頼を受けてもらいたいの。」
「ふ~ん。で、本音は?」
「あら、建前ってばれてた?まあ、本音を言えば、カズマさんほどの力がある人が低ランクにいると、後々面倒なことに巻き込まれるんじゃないかと思ってね。
それに高ランクの依頼で滞ってるのがいくつもあるから、それを片づけてほしいのよ。」
「俺は別に高ランクになんかなるつもりはないぞ?買い取りさえしてくれればいいんだし。」
「そんなこと言わないでランクを上げていってよ。高ランクを受けてくれる人が少なくて困ってるのよ。」
「お待たせしました。あら、ギルドマスター。こんなところでどうしたんですか?秘書さんが探してましたよ?」
「うそっ!?さっきようやく机の上の書類片づけたのになんで?」
「さあ?それは私にはわかりかねます。カズマさん、こちらが報酬となりますので、お受け取りください。」
「ああ、確かに。それじゃあ、ギルマス。またな。」
「えっ!?か弱い乙女が困ってるのに助けてくれないの?」
「助けるって俺には何もできないからな。じゃあ、俺は買取カウンターに行くから。」
「ちょっと待ってよ。そうだ、私も一緒に行くわ。カズマさんと一緒なら言い訳ができるだろうし、少しくらいは休憩しないと私の身が持たないしね。」
「俺を言い訳の道具に使うなよな。」
「いいじゃないの。ほら、行きましょ。」
俺たちはギルマスに背中を押されながら、買取カウンターへと向かった。
「買取をお願いしたいんだが。」
「はい。では、こちらにご記入をお願いします。」
「わかった。」
「それで?今回は何を仕留めてきたの?」
「ん?アサルトディアだな。っとこれでいいか?」
「えっ!?」
「ありがとうございます。ではギルドカードの提示をお願いします。」
「じゃあ、これ。」
「確かにお預かりいたします。・・・お待たせしました。ではこちらを持って解体所のほうへお願いします。」
「あいよ。」
「ねえ、今アサルトディアって言わなかった?」
「ああ、言ったぞ。それがどうした?」
「薔薇の茨も一緒に行ってたみたいだけど、協力して倒したの?」
「いえ、カズマ一人で倒しました。」
「そうね。あの倒し方はカズマ一人と言っても良いわね。」
「はい。そうですね。今の私には無理ですが、追いかけて見せます!」
「エレナさん?ねえ、カズマさん。一体どんな倒し方したの?」
「どんなと言っても壁にぶつけた、って言ったらいいのか?」
「壁にぶつけた?意味が分からないわね。アンナさん、説明してもらえる?」
「私も上手く説明できません。ただ、あんな倒し方はカズマにしか出来ないというのは断言できます。」
「そんなに?じゃあ、アイナさんは?」
「あたしも同じですね。正直、無茶苦茶すぎて現実じゃないと思いたいくらいですから。」
「なにそれ、余計気になるじゃないの。エレナさんはどうかしら?」
「目標の背中は遥か先にあったって感じですね。」
「意味が分からないわよ。いったいどんな倒し方したのよ。」
「ギルマス、えらい騒がしいでないか。どないしたんや?」
ギルマスが喚き散らしていると、奥から親方が近づいてきた。
「おう、兄ちゃん。今日はどないしたんや?ってここに来るんは買取しかないわな。」
「お疲れさん、親方。今日はこれの買取を頼みたいんだ。」
俺は親方に先ほどの紙を渡した。
「どれどれ?アサルトディアかいな。なかなかの大物やないか。これも前と一緒で兄ちゃん一人でやったんか?」
「まあな。ところで、どこに出したらいい?」
「せやな・・・。ほしたら、あっこに出してもろてもええか?」
「わかった。」
俺は親方に支持された場所に、アサルトディア2匹を出した。
「ほっほ~。なかなかのええ状態やな。両方とも首を一撃で落としとるさかいに、余分な傷もなさげやし。しっかし、そうなるとこっちの角が折れとるんが痛いな。でもまあ、そこまで大きな角やないから買取査定にはそうそう響かんやろ。
ほしたら、今から解体と査定するさかいに1時間後にまた来てんか?」
「ああ、よろしく頼む。」
「まかしとき~。ほな、後でな。」
親方は若い衆を集めてアサルトディアの解体作業に入った。
「カズマさん。1時間空いたのよね?」
「ああ。空くには空いたが?」
「なら、ちょっと付き合ってもらっていいかしら?」
「まさか、氷魔法の訓練に付き合えってんじゃないだろうな?」
「おしい。それもあるんだけど、アサルトディアを倒した方法を教えてほしいのよ。」
「そんなの聞いてどうするんだ?」
「もしかしたら、今後の参考になるかもしれないでしょ?気になる情報は集めておきたいのよ。」
「まあ、構わないが役に立つかどうかは責任持てないぞ?」
「ええ。それでも構わないわ。それじゃあ、訓練所に行きましょ。」
「予約は良いのか?」
「カズマさんに声をかける前に入れておいたから、大丈夫よ。ほら、早く。」
俺たちはギルマスに急かされるように訓練所へと向かった。
「それじゃあ、どんな倒し方したのか、実演してみてくれる?」
「ここでか?」
「ええ。それともここじゃ無理なの?」
「いや、問題はないな。」
「なら、お願い。」
「わかった。ただし、倒した時の状況は軽く説明させてもらえるか?」
「それは逆に聞きたいわね。お願いできる?」
「俺たちは森の開けた場所で採取をしていたんだが、採取が終わったときに後ろで草が揺れる音がして、振り返ったら鹿がいたんだ。」
「木々の生えている場所ではないってことね。」
「ああ。俺のやった倒し方は木々の生えているところでは、無理だ。」
「状況は理解したわ。それじゃあ、実演をお願いしても良いかしら?」
「わかった。」
俺はあの時の物より少し小さくなるよう、でも込める魔力は同じくらいで土魔法を詠唱した。
「土壁」
唱え終わると、あの時より気持ち少し早い程度の時間で、俺たちの前に壁がそびえ立った。
「えっ!?何これ?」
「ギルマスでも私たちと同じような反応するのね。」
「ホントですね。まあ、いきなり予想以上の壁が出来て驚かない人のほうが、おかしいとは思いますけど。」
「後は、強度があの時と同じかどうかだな。ああ、壁の厚さもあったな、そういえば。」
驚くギルマスとは対照的に、2度目ということもあり冷静な3人なのであった。




