サーチって便利ですね
翌日、朝食を済ませた俺たちは昨日の打ち合わせ通り、サーチを用いた採取に取り掛かることにした。
「それじゃあ、何をメインに採取して行くかを決めましょ。」
「たしか、ボウ草が一番少ないんだったな。」
「ボウ草が今のところ1束ほど、カール草が2束でチップ草が3束ですね。」
「なら、ボウ草とカール草をメインに行きましょうか。チップ草は見つけたらその都度ってことにしない?」
「そうだな。カズマもそれで構わないか?」
「ああ、俺は問題ないぞ。(俺の恒常依頼のはずなんだがな・・・。)」
「それでは開始しよう。カズマ、頼む。」
「あいよ。」
俺はサーチを唱え、目的であるボウ草とカール草を探し始めた。
「結構散らばってるな。わかる範囲で一番多い群生は、ここから少し先に行ったところにあるぞ。」
「では、そこに行ってみましょう。カズマさん、案内をお願いできますか?」
「了解。こっちだ。着いてきてくれ。」
「やっぱり時空間魔法って便利よね。荷物は少なくて済むし、調べものも簡単に出来るんだから。」
「そうだな。最後には移動も楽に出来たりするようになるんじゃないか?」
「まっさかぁ~。でも絶対にないとは言い切れないのが、怖いわよね。」
「移動もできるみたいだぞ?」
「「「えっ!?」」」
「レベルが上がればだけどな。昨日ちょっと調べてたんだが、レベルが5になればゲートっていうスキルが使えるらしい。どうもそれは移動に特化したスキルみたいでな、一度行ったことのある場所ならどこへでも行けるみたいだ。」
「なにその羨ましいスキル・・・。」
「そんな便利なスキルがあったのか・・・。」
「やっぱり私も習得したいです・・・。」
「ただ、レベル5まで上げるのが大変みたいでな。戦闘系のスキルがないから、なかなか経験値が溜まらないみたいなんだ。まあ、俺の場合はアイテムボックスを結構な頻度で使ってたから運よく3まで上がったんだけどな。」
「そういえば、サーチはレベル2のスキルなのよね?じゃあ、3はなんなの?」
「あ~、3はだな・・・。言わなきゃダメか?」
「ここまで言っておいて、隠すだなんてそれはないんじゃない?」
「私も知りたいです。よければ教えてもらえませんか?」
「2人ともやめないか。カズマが困っているだろうが。」
「いや、教えるのは構わないんだ。ただ、どう説明したらいいかわからないから困ってるんだよ。」
「どういうことだ?」
「それはだな・・・。っと目的地に着いちまったな。この話は後ですることにして、さっさと採取をしないか?」
「えっ!?もう着いたの?って本当にボウ草とカール草が結構な数、生えてるわね。」
「森にこんなにも開けた場所があるなんて珍しいな。チップ草もところどころに生えているみたいだし、ここで採取すれば必要な数は集まりそうだな。」
「はい。ついでに、それ以外の薬草もある程度採取しちゃいましょうか。カズマさんも知っておくと後々助かるでしょうし。」
「確かにそうだな。なら、カール草とチップ草、ボウ草を採取し終えたら教えてくれるか?」
「もちろん構いませんよ。」
「なら、手分けして、片しちゃいましょ。」
こうして、俺たちは薬草の採取に取り掛かった。
やはりというか、4人で採取をすると集まるのは早く、1時間程度で必要な数は集まった。
「あっという間に集まっちゃったわね。」
「ああ、こんなに採取依頼が早く終わるのは初めてじゃないか?」
「そうですね。いつもなら、探し求めて森の中を移動ばかりしてましたからね。」
「サーチか・・・。いいわよね。便利で。私も習得出来ないかしら・・・。」
「私も欲しいくらいだ。だが、ないもの強請りをしても何も始まらないな。エレナ、カズマには他の薬草のことは教えたのか?」
「いえ、まだ教えていません。カズマさんさえよければ、今から教えようかと思うんですが、どうですか?」
ガサッ
俺が返事をしようとしたその時、後ろのほうで何かが草を踏む音がした。
「なんだ?」
俺は音が気になり振り返った。
するとそこにいたのは、大きく枝分かれをした角を生やした大きな鹿と、小さい角を生やした鹿の2匹だった。
(なんだあの角?やけに先が尖ってないか?)
「アサルトディア!?」
「カズマ、惚けてないで構えろ!やつらの角は、人間の体なんぞ軽く貫通するぞ!」
アンナの叱責を受け、俺は慌てて剣を構えた。
「アンナ、聞きたいことがあるんだがいいか?」
「手早くならな。」
「あいつらの突撃は直線か?それとスピードは?」
「直線だ。スピードは、全力疾走の私たちには軽く追いつくな。」
「なるほど。なら、あの方法でやれるかもしれないな。」
「何か策があるのか?」
「ああ。ただ、後ろが弱点になるんだ。だから。」
「私たちが後ろを警戒していればいいわけだな?」
「頼めるか?」
「任せろ。アイナ、エレナ。聞いていたな?」
「ええ。そう言うことなら、エレナがカズマの補助に。あたしとアンナは後ろを警戒しましょ。」
「わかりました。カズマさん、それでその策と言うのは?」
「それは・・・。」
俺がエレナに説明をしようとしたその時、2匹のアサルトディアは俺たちに向かって突撃してきた。
俺は反射的に魔力の制限を忘れて、スキルを詠唱した。
「土壁」
詠唱が終わるとそこには高さ5メートルほど、横幅は10メートルはあろうかと思える立派な壁が一瞬で出来上がった。
壁が出来上がると同時に
ガキッ ゴンッ
「ブフォ」「ギュッ」
壁の向こう側から何かがぶつかる音と、アサルトディアのものだろうか鳴き声が聞こえてきた。
「あ、危なかったぁ~。まさに間一髪ってとこだったな。まさかあんなに速いとは思ってなかった・・・。」
「あんた、これ何?」
「これって街とかでみかける街壁ですよね?カズマさん、こんなのまで持ち歩いてたんですか?」
「2人とも現実逃避をしたいのはわかるが、今は戦闘中だ。気を抜くなよ。」
「そ、そうね。あまりの出来事にちょっと現実から逃げてたわ。」
「とりあえず、壁の反対側に行きません?。このままじゃアサルトディアがどうなってるのかわかりませんし。」
「そうだな。警戒をしながら向かおう。」
俺たちは4人で3方向を警戒しながら壁の端へと歩いて行った。
すると、壁の厚さをみたアイナが疑問の声を上げた。
「ねえ、壁の厚さおかしくない?1メートルもないわよ?」
「確かに。この厚さだと、アサルトディアの角は貫通してないとおかしいですよね?」
「その質問は後だ。先にアサルトディアの確認が先だ。」
アンナの一声で、俺たちは改めてアサルトディアのもとに歩いて行った。
アサルトディアのもとにたどり着いた俺たちは意外な光景を見ることになった。
立派な角を生やしていた方は壁に角がささり、引くことも進むことも出来ずに懸命に後ろ足を掻いていた。
短い角を生やしていた方はというと、頭からぶつかったのか横に倒れこんでいるではないか。
「アサルトディアの角が刺さってるのに、突き抜けてないってどんな壁よ!」
「しかも、抜くこともできずにいるみたいですね。こっちは短すぎたのか、頭から突っ込んだみたいですね。壁のほうには凹みもありませんけど・・・。」
「こっちは角が折れてないか?それで頭から突っ込んだんだろう。」
「3人とも状況分析せずにさっさと討伐しないか?」
「それもそうね。カズマ、ついでだからあんたやりなさいよ。」
「えっ?俺か?」
「それはいいな。今の状態であれば反撃をされることもないだろうしな。」
「じゃあ、先に突き刺さってるほうをやってしまいましょう。横になってるほうは暫くは大丈夫みたいですし。」
「わかった。首を落とせばいいんだよな?」
「ええ、それが早いわね。苦しまないように一撃で決めるのよ?失敗すると暴れだして危ないからね。」
「ああ。わかってる。」
俺はそう言うと、剣を手に取り深呼吸をして心のざわめきを抑えた。
そして、上段に剣を振りかぶり、アサルトディアの首をめがけて一気に振り下ろした。
「ギュピッ」
アサルトディアの短い鳴き声とともに、胴体は首から離れ横倒しになった。
「じゃあ、次はこっちの横になってるほうね。こっちも同じように首を落とせばいいわね。」
「わかった。」
俺は再度振りかぶり、首めがけて振り下ろした。
ザクッ
勢いがつきすぎたのか剣は首をはねた後、土にめり込んでしまった。
「ひょっとして、こっちのアサルトディアのほうは、頭ぶつけた時にはもう死んでたんでしょうか?」
「かもしれないな。カズマ、死体をアイテムボックスへしまうのを忘れるんじゃないぞ?」
「わかってるよ。」
「ねえ、ちょっと。あんたこの壁になにしたの?さっきから頭を抜こうとしてるんだけど、全然抜けないのよ。」
「カズマさん、この壁ってどのくらいの強度があるんですか?」
「さあ?その辺りは俺もよくわからん。」
「「「はぁ!?」」」
俺は死体をアイテムボックスへと入れながら質問に答えたのだが、帰ってきたのは3人の驚きの声だった。




