初採取、そして・・・
俺たちは宿に戻り、ラビさんに1日ほど依頼で帰らないことを伝え、街に買い物に出た。
「適当に野菜と肉、あとパンを買っとくか。足りなくなったら俺が予め買ってる物を出せばいいしな。」
「予め買ってる物って、それって大丈夫なの?」
「ああ、俺のマジックバックはどうも特別みたいでな。時間経過がかなり遅いみたいなんだ。」
「あんたそんなに良いマジックバック使ってたの?羨ましいわね。」
「偶然手に入ったものだからな。俺も運が良かったと思ってるよ。」
「2人ともあまりそういうことは街中で話さないほうが良いぞ?誰に聞かれてるかもわからないからな。」
「あっ!?ごめんなさい。うっかりしてたわ。」
「カズマも自分が狙われるようなことは言わないほうが良いな。」
「す、すまん。」
「カズマさん、食材以外は買わなくても大丈夫なんですか?」
「そうだな。食器類は問題ないし、調理器具も大丈夫だ。あと必要だと思うのは寝具くらいか?」
「私たちの寝具ということなら、必要ないぞ。シーツを敷けば問題ないからな。」
「いやいや、前にも言ったが睡眠は大事だぞ?」
「すまん、言い方を変えよう。寝具を買っても荷物になるだけで、私たちは使うことが無いんだ。」
「そうね。カズマと旅をするというなら買っといても良いけど、3人だけだと不要なものになるわね。」
「ですね。それを持ち運ぶくらいなら、他に必要なものがたくさんありますからね。」
「す、すまん。俺を基準に考えていた。そうだよな。俺がちょっと特別なんだよな。」
「ご、ごめんなさい。責めてるつもりはなかったんです。」
「そうよ?ただ、一般的な冒険者とは違うってことだけは理解しとかないと、後々困るってことを知って欲しかっただけなのよ。」
「ああ、理解したよ。」
「なら、手早く買い物を済ませてしまおう。時間は有限なんだからな。」
「そうね。」
「ああ、そうだな。」
「そうですね。」
俺たちは食材を買い込み、北門から森へと向かった。
歩くこと4時間ほど、太陽が真上と地平線のちょうど中間へ来た頃に森へと到着した。
「さて、今から採取をするわけだが、バラバラに動いては何かあった時に助けに行けないから、固まって行動しようかと思っているんだが、皆はどう思う?」
「あたしはそれでいいと思うわよ。1人がカズマについて薬草の説明をしながら採取して、残り2人は周囲の警戒でいいんじゃないかしら。」
「私もそれでいいと思います。」
「カズマはどうだ?」
「俺は教えてもらう側だから、3人が決めたことに従うさ。」
「ではアイナの案を採用しよう。それでは誰が教えるかだが・・・。」
「それはエレナがいいんじゃない?あたし達の中で一番薬草に詳しいんだし。あたし達3人が採取依頼を受けてる時も、あたしとアンナが周囲の警戒してるしね。」
「それもそうだな。エレナ頼めるか?」
「私でよければ。」
「それと、今から採取できたとしても2時間くらいなものだろう。だから、今日は奥へは行かず入り口付近で採取することにする。」
「それは当然ね。今から奥なんて行ったら、下手したら寝ることもできなくなるしね。」
「それなら、採取に行く前に野営の場所だけでも決めときませんか?」
「ふむ。いつもならそうするが、今回はカズマがいるからな。カズマの小屋ならどこでも問題ないんじゃないか?」
「あっ!?そうでしたね。なら、早速採取に行きましょうか。」
「エレナ。今回は私たちの依頼じゃなくて、カズマの依頼なのよ?そこんところ間違えちゃだめよ?」
「そ、そうでしたね。すみません、カズマさん・・・。」
「いや、構わないさ。俺も初めての採取に浮かれているようでな。さっさと行きたかったんだ。」
「あんたねぇ~。浮かれるのはここまでにしときなさいよ?ここからは気を引き締めないと命が危ないんだからね?」
「ああ、解ってるさ。」
「ほんとかしら?まあいいわ。それじゃあ、エレナ。カズマに薬草の種類を教えながら、採取の仕方も教えてあげてね。」
「はい。カズマさん、薬草によっては採取の仕方が違うので、それもお教えしますね。」
「頼むよ。」
「では、行くとしようか。」
そう言うとアンナを先頭に俺たちは森へと足を踏み入れた。
森の中には色々な草が生えており、エレナはどれが薬草でどれが毒草かを丁寧に説明してくれた。
そして、採取の際に気を付けるべきことをも教えてくれた。
もちろん、そのおかげで俺は採取が習得できたことは言わずもがなである。
「そろそろ完全に日が沈むな。今日はここまでにして、足りないものは明日また採取することにしよう。」
「そうね。そういえば、どのくらい採取できたの?」
「確か、カール草が2束でチップ草が3束、それにボウ草が1束ってところでしょうか。」
「嘘でしょ!?たった2時間でそんなに採取できたの?」
「はい。途中からカズマさんの採取のスピードが上がったのと、カズマさんが行く先々に生えていたのが大きいですね。」
「採取のスピードが上がったって、もしかしてあんた採取を習得したの?」
「ん?ああ、まあな。」
「はぁ~ぁぁぁぁぁ?あんたってほんと規格外よね。そんなに早く習得できるなんて羨ましいわ。あたしもあんたみたいにすぐに習得出来たら、どんなに楽ができるか・・・。」
「2人とも話はあとだ。今は森から出るぞ。」
「そ、そうだったわね。日が完全に落ちる前に出なきゃね。」
俺たちは会話を早々に切り上げ森から足早に抜けた。
そして、森から少し離れた場所に移動し、野営場所を決め夕食の準備に取り掛かった。
「アイナ。土魔法の練習も兼ねて、竈を作ってくれないか?」
「えっ!?あたしが?あんたが作ったほうが早いのに?」
「言っただろ?練習も兼ねてだよ。途中でどうしても無理になったなら、言ってくれれば後は俺が引き継ぐからさ。」
「練習も兼ねて・・・。わかったわ。ただ、どうしても無理になったらお願いするわね。」
「ああ、任せとけ。竈の大きさは、以前の旅で俺が作ってたくらいで構わないからな。」
「わかったわ。」
「エレナとアンナは一応、周囲の警戒を頼む。おそらくは大丈夫だとは思うんだが、念のためにな。」
「ああ、解っている。私はそのくらいのことしかできないしな。」
「私も了解しました。」
「それじゃあ、俺は夕食の準備に取り掛かるから3人とも頼むな。」
俺の号令のもと3人は動き出した。
俺はと言うと、以前と同じようにアイテムボックスから机や椅子、調理器具や食材を出し、調理を始めようとした。
(さて、今回はあの3人が食べたことないであろう調味料を作ってみるか。卵は新鮮なのがシャースの街で売ってたのを買ってあるし、油はジェスの街で買った。塩、胡椒は愛神がくれたのがあるから、後必要なのは酢だけか。流石に酢は売ってなかったからな・・・。
仕方ない、トイレに行くふりをして異世界ネットで買うとするか。あれそのものを買えば早いんだが、容器が問題になってくるしな。そうだ、ついでに風呂用品も買っておこう。そうだ、そうしよう。)
俺は良いことを閃いたとばかりに、口角を釣り上げた。
「アンナ、俺ちょっとトイレに行ってくるわ。」
「わかった。あまり離れた場所に行かないように注意するんだぞ?」
「わかってるよ。それじゃあ、行ってくる。」
俺はそう言うと森のほうへとそそくさと歩いて行った。
3人から見えない位置まで移動すると俺はMPの確認をし、購入しても問題ないことを確認した後は早かった。
昨日決めていた風呂用品を再度選択し、酢を選んで躊躇いなく購入したのだ。
その際に昨日のような立ちくらみを覚えることはなかったので、内心ホッとしたのは内緒だ。
購入した物がアイテムボックスへと配達されたことを確認すると、俺は何事もなかったかのように3人の元へと戻った。
「すまん、すまん。ちょっと時間かかったか?」
「いや、こちらは問題なかったから大丈夫だぞ。」
「了解。それじゃあ、ささっと準備を済ますよ。そういえばアイナのほうはどうだ?」
「時間はかかっているようだが、問題ないみたいだな。完成まであと少しといったところだろう。」
「なるほどね。それじゃあ、俺もさっさと準備しますかね。」
俺は3人の驚く顔を想像しながら、マヨネーズ作成へ勤しんだ。




