初依頼
俺は愛神に感謝をささげた後、もう一度異世界ネットを開いた。
足元にひく簀の子や風呂用品を買うのを忘れていたのでそれらを買うためである。
「風呂用品 販売」と入力し、検索し「いざ購入!」といったところで、エラーと表示された。
(ん?なんでエラーになるんだ?検索は出来てるから購入が無理なのか?それともMPが足りない?いやいや、MPは2500あるし、購入しようとしている物の合計は1500。十分足りてるはずだ。それなのになんで?)
俺はもう一度購入しようとしたが、またしてもエラー。
なぜ購入できないのか不思議に思っていると、ふと異世界ネットの説明欄にあった一文を思い出した。
(確か、「MPを支払うことで1日1回ネット通販を使用できる」って文言があったような。1日1回ってのは1品に対してじゃなくて、全部で1回ってことなのか?
いや、普通に考えれば1日1回って書いてあれば全部で1回だと考えるよな。なんで俺は1品につき1回って判断したんだろ?あ~っ、やらかしちまったな。
しゃぁない、風呂用品は明日以降に回して、今日はもう寝るか。)
俺は今日の購入は諦めベッドへと足を向けた。
次の日の朝、時空間魔法のレベルが上がっていたことを思い出した俺は、魔道書で時空間魔法の事を調べ始めた。
しかし、読み始めると集中してしまっていたようで、いつの間にか時間が結構経過してしまい、朝食を食べれるか食べれないかの微妙な時間になってしまっていた。
(時空間魔法の事に熱中しすぎちまったかな。まだ朝食残ってると良いんだけど。)
「あら、カズマじゃない。今から朝食?」
「おはよう、アイナ。朝から、調べものしててな。いつの間にか時間がやばくなってた。」
「おはよう、カズマ。そんなに慌てなくても、まだ朝食の時間は過ぎてないぞ?」
「おはよう、アンナ。そうなのか?何時まで朝食を取れるのか確認してなかったから焦っちまったよ。」
「おはようございます、カズマさん。ここは確か、10時30分までだったと思いますよ。今、10時前なので後30分は余裕がありますね。」
「おはよう、エレナ。そうなのか。教えてくれてありがとな。」
「いえいえ、私たちはもう取ってしまったのでこれで失礼しますが、カズマさんはゆっくりと食べてくださいね。」
「ああ。そういや、3人はこの後は昨日言ってたように買い物か?」
「ああ。失った荷物を補充しないと今後の依頼が厳しくなるからな。依頼を受ける前に買い揃えるつもりだ。カズマは食事を取った後どうするんだ?」
「俺も昨日言ったように、恒常依頼を受けにギルドへ行くつもりだ。通常の依頼を受けるにはこの時間だと遅いんだろ?」
「遅いというわけでもないが、あまり実入りの良い依頼は無いだろうな。」
「やっぱりか。」
「ねえ、ここで話をしててカズマが朝食をとれなくなっても困るから、食堂へ行って話をしない?」
「いいのか?3人は朝食は取ったんだろ?」
「ここで話をするよりかましよ。ほら、さっさと行くわよ。」
「3人が良いなら、俺は構わないが・・・。」
俺たちは4人そろって食堂へと足を向けた。
「おはようございます、カズマさん。あら、3人ともどうしたの?さっき朝食取ったばかりなのに。」
「ちょうどそこでカズマに会ってね、皆が話し込みそうだったから、話すなら朝食を取りながらしたらどう?って言ってやったのよ。」
「そう言うわけで、ラビさん済みませんがカズマさんに朝食をお願いできますか?私たちには、紅茶をお願いします。」
「わかったわ。なら席について待っててちょうだい。すぐに用意して持っていくから。」
「わかったわ。ほら、皆席に着くわよ。」
「ああ。」
「そういえば、カズマって薬草の種類分別できるの?」
「いや、出来ないな。」
「えっ!?それってまずくありませんか?確か恒常依頼の大半は薬草採取だったはずですよ?」
「そうなのか?でもまあ、何とかなると思ってるんだよな。」
「なんで?」
「鑑定を使って探そうかと思ってるんだよ。この方法なら、間違えることは無いからな。」
「でもそれって大変じゃありませんか?いちいち鑑定をかけていくってことですよね?規定数集めるまでにものすごい時間かかりますよ?いくら期限が無いと言っても、ちょっと無謀すぎますね。」
「そうね。そのやり方はあまりにも効率が悪すぎるわね。」
「そうだな。いくらカズマがアイテムボ「うっうん」・・・マジックバックを持ってるとはいえ、先に摘んだ薬草が駄目になるぞ。」
「アンナさん、気を付けてくださいね。」
「す、すまない。」
「ほんと、気をつけてよ。でも、アンナが言ってることが正しいわよ?あんたのやり方だと規定数集めるのに、下手したら2~3日かかる可能性が高いんだし。」
「そんなにか?薬草なんて森に行けば結構生えてるもんじゃないのか?」
「認識が甘いわよ。今Fランクがどれだけいるか詳しくは知らないけど、討伐系の依頼を受けられない子たちは、恒常依頼の薬草採取を受ける傾向が高いんだからね。
だから、近場で安全なところに生えている薬草なんて、取りつくされてるって考えておいたほうが良いわよ。」
「まじかよ。」
「可能性は高いと思いますよ。森の入り口付近には、もう生えていないと考えるべきだと思います。」
「そうだな。群生地でも発見できれば幸運だろうが、そんなものは森の奥にでも行かないと無理だろうな。
それに、カズマはそもそもが薬草の見分けが出来ないんだろ?それでは群生地を発見したとしても時間はかかるだろうな。」
「よく似た毒草とかもありますしね。」
「そうだったのか。」
「お待たせしました。ねえ、なにか難しい話をしてるみたいだけど、3人が付いていくわけにはいかないの?って余計なこと言ったら邪魔になるわね。ごめんなさいね。それじゃあ、ごゆっくり。」
「ありがとう、ラビさん。ふむ、ラビさんの言うことも一理あるわね。私たちが付いて行ってカズマに薬草の種類を教えるのも確かに有りな方法ね。2人はどう思う?」
「私もそのやり方には賛成だぞ。」
「私もです。」
「おいおい、いいのか?今日はゆっくり休んで、買い物をするんだろ?」
「買い物は次の依頼までにしておけばいいから問題ないわよ。それより、あんたはどうなの?」
「俺か?3人がいいなら、頼めるか?」
「なら、決まりね。そうと決まったら、カズマの食事がすんだらギルドへ行くわよ。」
「そうだな。旅の間、色々と世話になったからな。このくらいのことはさせてくれ。」
「はい。それにスキルを教えてもらった恩もありますしね。」
「3人とも済まないな。」
俺は手早く食事を済ませ、3人とともにギルドへ向かった。
3人の紅茶代は俺が支払った。3人には遠慮されたが、俺のことでわざわざ時間を取らせてしまったのだから当然だ。
「やっぱり、通常の依頼はほとんど残ってないな。」
「そりゃそうよ。依頼受注はある意味あたし達にとって戦争よ?少しでも割の良い依頼を受けなきゃ生活できないんだから。カズマもそこんとこ覚えときなさいよ?」
「ああ。肝に銘じておくよ。」
「では、恒常依頼の薬草採取がどれだけあるか見ておくか。」
「えっと、カール草とチップ草、それにボウ草ですね。いずれも最低5束集めないと達成にはなりませんね。
あと採取依頼ではありませんが、ジャンプラビットの討伐がありますね。これは1匹で構わないみたいです。」
「ちょっと聞くが、1束は何本なんだ?」
「あんたそんなことも知らないの?1束は10本よ。だから5束ってことは50本は採取しなきゃいけないわね。」
「結構な数が必要なんだな。確かに俺のやり方じゃあ、時間がいくらあっても足りなかったな。」
「それだけ集めても依頼報酬は一律で銅貨5枚なのよ?森の入り口付近で生えてない可能性が高いって言ったわけ、解ったでしょ?」
「近場で採取して、費用をかけないようにするわけか。」
「そういうことよ。それじゃあ、私たちもそろそろ行きましょうか。」
「そうですね。それじゃあ、西門にしますか?北門だと距離がありますよね?」
「いや、北門のほうが採取しやすいんじゃないか?確かに距離はあるが、その分行ってる人数が少ないだろう。それにカズマなら北門でも何の問題もないだろ?」
「確かにそうですね。なら北門にしましょう。」
「おいおい、北門とか西門とかなんなんだ?俺にもわかるように説明してくれよ。」
「あっ、すみません。えっとですね、西門からだと歩いて1時間程度で森に着くんです。ですが、北門だと4~5時間ほど歩かないと森に着かないんですよ。」
「なるほど。だから、北門のほうが人が少ないというわけなのか。」
「ええ。歩いて5時間だと、朝早く出ても森に着くのはお昼ごろ。そこから採取してってなると、帰ってくるころには門が閉まってる可能性が高いのよ。そうなると、野営が必要になるんだけど、銅貨5枚のために野営なんてしたら、赤字になるから誰もしたがらない。後は解るわよね?」
「そのぶん薬草が生えている確率が高くなるってわけだな。」
「正解。それにあんたなら野営なんて問題ないでしょ?あれがあるわけだし。」
「なるほどな。確かに俺なら問題ないな。しかしそうなると、食材の準備が必要になるな。」
「なら、出発する前に街で買い物して行きましょうか。何日もかかるってわけでもないし、最低限買っておけば大丈夫でしょ?」
「ああ。1泊すると仮定して、4~5食分用意しとけば問題ないな。」
「それじゃあ、さっさと買い物して出発しましょう。」
「その前に、ラビさんに一言言っておくべきだな。」
「そうですね。買い物前に言っておきましょう。」
こうして、俺は初の依頼に向かうのであった。




