その裏で実は
「カズマへ
あんた馬鹿なの?自分のMP以上の買い物するなんてどんな神経してるの?今回は私が一部を肩代わりしたから何とかなったものの、普通なら意識が昏倒してそのまま死んでたわよ?せっかく転移させてあげたのに、あっという間に死ぬだなんて、体を作った私たちの苦労が台無しになるところだったじゃない。
まったく、自分のMPくらいちゃんと把握しときなさいよね。これにこりたら、変に高望みせず、身の丈に合った買い物をしなさいよ。
今回は私が気が付いたから助かったのよ?ありがたいと思いなさい。これだから、あんたは駄目なのよ。そっちであんたが楽しくやるのは自由だけど、もう私に迷惑かけないでよね。私も暇じゃないんだから。
別にあんたが心配だから覗いてたってわけじゃないんだから、勘違いしないでよ?たまたまなんだからね。たまたま、魔神や武神と話してたらあんたの話になって、思い出しただけなんだからね。
とにかく私に迷惑をかけないようにそっちの世界を楽しみなさい。今回のことは特別サービスよ。毎回あると思わないでよね。
最後になるけど、あんたの第二の人生が良きものであるように祈っててあげるわ。 愛神」
どうやら、愛神が気が付いてくれないと俺はMP枯渇により死んでいたらしい。
(ってか俺はいくらのバスタブを買ったんだ?)
俺はもう一度異世界ネットを詠唱し、購入画面を開いた。
そこに記載してあった必要MPは5000。俺の最大MPよりも更に1000も高かったのである。
(愛神が肩代わりしてくれたから、今俺は生きていられるのか。愛神には感謝してもしきれないな。)
俺は心の中で愛神に感謝をささげながらも、今の自分の残りMPがいくらあるのか気になった。
「そういや、俺の残りMPはいくらなんだ?愛神が多少肩代わりしてくれたから、少しは残ってるはずだよな?ちょっと確認してみよう。」
俺は自分のMPの残りが気になりステータスを開いた。
そこにはMP:2500と表示されていた。
(ん?確か俺の最大は4000だったんだから、4000-2500=1500だよな。ってことは愛神が3500も負担してくれたのか!?半分以上負担させてしまったのか。こりゃほんとに感謝しないといけないな。)
俺は愛神へ改めて感謝をささげつつ、バスタブと手紙をアイテムボックスへとしまうのであった。
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「まったく、何考えてるのかしらあいつは!自分のMPくらいきちんと把握しておきなさいよね。やっぱり私が見張ってないと駄目なのかしら。」
「おいおい、やけに荒れてるじゃねえか。いったいどうしたってんだ?」
「別に何でもないわよ。それに荒れてなんかない!」
「何でもないってわりに機嫌が悪いみたいだが?」
「何でもないって言ってるでしょ!ほっといてよ。」
「おお~っ、怖っ。」
「先ほど、カズマのことを見ておったみたいじゃから、カズマが何かやらかしたのじゃろう。」
「な、なんで魔神がそのこと知ってるのよ!」
「ふぉふぉふぉ、あれだけ騒いでおったら嫌でも気が付くわい。」
「なっ!?」
「ああ、どうりで騒がしかったわけだ。ありゃ、お前だったのか愛神。離れたところにいても、ギャーギャー言ってるのが聞こえてきたから驚いたぜ。」
「それでカズマは何をやらかしたのじゃ?」
「な、何でもないわよ。」
「何でもないってわきゃないだろ?カズマのことを気にかけてるのは、お前だけじゃないんだから情報は共有しろよな。」
「う~。」
「はぁ~。愛神が言わんのであればあの3人に聞くとしようかの。あやつらも見ておったはずじゃしの。」
「おお~。あいつらなら隠すことなく教えてくれるだろうから、そうしようぜ。」
「では早速呼び出すかの。」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。わかったわよ。言うわよ、言えばいいんでしょ。」
「んにゃ、別に無理して言わなくてもいいぜ。お前に聞かなくとも、あいつらに聞けば分かるんだし。」
「だから、言うって言ってるでしょ。魔神の言う通りカズマのことよ。」
「だから、カズマがなにしたってんだよ。」
「異世界ネットで買い物したのよ。」
「ん?それくらいいいじゃねえか。それくらいでなんであんなに荒れるんだよ。」
「自分のMP以上のものを買って危うく死にかけたの。私が介入してなんとかなったんだけど。」
「あっちゃ~。まじかよ。あいつがそんな迂闊なことするとは思えないんだがな。」
「部屋に人が来たみたいで、慌てて閉じた時に誤操作したみたいね。まったく本気で危なかったわ。」
「なるほどのぉ。それであんなに荒れておったのか。」
「ええ、そうよ。せっかく私たちが体を与えた上に異世界転移までさせてあげたのに、あっけなく死なれたら腹が立つじゃない。」
「そりゃまあ、そうだな。」
「どうせお主のことじゃから、そのことを手紙か何かでカズマに苦情として言ったのじゃろ?」
「なっ、なんでそこまで知ってるのよ。」
「お主の行動パターンを少し考えれば分かることじゃよ。まあ、カズマもこれに懲りたら同じミスは犯さんじゃろうから、今回は多めに見てやることじゃな。」
「そうだな。俺たちの知らない一面が知れたことへの、対価ってことにしようじゃねえか。」
「ちょっと、迷惑を被ったのは私よ?なんであんたが決めるのよ。」
「俺たちは実際に見てないからな。見たお前が対価を払うのは当たり前だろ?」
「そうじゃな。ワシらはお主から聞いただけじゃからな。」
「あ、あんた達ぃ~。」
神々は久しぶりにカズマの話題で盛り上がっていた。
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「愛神様が介入してくださらなかったら危なかったわね。」
「ええ、まさかあのようなことになるなんて。予想だにできませんでした。」
「カズマ様って意外とおっちょこちょいなのかな?」
「どうなんでしょう。ただ単に驚いてしまっただけとも思えますが・・・。」
「次に同じようなことがあるといけないから、異世界ネットも少しいじったほうが良いかもしれないわね。」
「いじるって、どういう風に?」
「そうね。今の形じゃなくて向こうのノートパソコンみたいな感じにするか、タブレットみたいにするか、かしら。」
「ああ、操作の仕方をどちらかに統一するんだね。確かにカズマ様も少し使いづらそうではあったもんね。」
「そうですね。その辺りは少し考えておきましょう。」
「ええ。」
「そういえば、リルテッドもカズマ様とうまく接触できたから良かったよね。」
「そうね。全員に神託を授けた甲斐があったわ。しかもこんなに早く接触できるだなんて。」
「これも愛神さまの寵愛のおかげなのかな?」
「それもあるでしょう。あの方の加護は人との繋がりを豊かにする力もありますからね。」
「そうね。今までカズマ様に関係してきた者達も何かしらの益をカズマ様にもたらしているものね。」
「そうだよね。それで言えばユーイちゃんなんか特によかったよね。カズマ様も意外と喜んでたみたいだし。」
「あれは喜んでいたと言っていいのかしら?あなたにクレームを言っていたような気がするのだけど。」
「あんなの照れ隠しに決まってるじゃない。男の人でラッキースケベが嬉しくない人なんて居ないって。」
「そうなのかしら?カズマ様が本当に喜んでくれているのであれば、私も嬉しいのだけれど。」
「創神、創神。遊神は何事もポジティブに考える傾向があるから、真に受けちゃだめよ。」
「ひっど~い。私はカズマ様との会話の中で、喜んでくれてると判断したから言ってるのに!」
「あれを喜んでると捉えることは私には出来なかったけど?」
「農神は解ってないなぁ~。あれこそ、照れ隠しに決まってるじゃない。文句を言いながらも実は喜んでたんだよ。いわゆるツンデレってやつだね。」
「はいはい。じゃあそういう事にしといてあげるわ。」
「むぅ~。」
「とにかく、これからもカズマ様の動向には気を付けていきましょう。カズマ様に不利益がかからないように、私たちが気を付けていかなければ。」
「ええ。」
「うん。」
3神はカズマへの過保護ともいえる心遣いを再度改めて誓うのであった。