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ギルドにて

ギルドの中は思ってたのと違い、閑散としていた。


「なあ、こんなにも人がいないものなのか?」


「時間が時間だからね。もう少し朝早かったら、もっと人は多かったはずよ。」


「ですね。後は夕方以降ですかね。」


「うむ。依頼完了の報告と、併設されている酒場での酒盛りで賑わっているな。」


「まあ、こっちとしてはスムーズにことが運びそうでいいんだけどな。」


「ほらほら、そんなとこでボーっとしてないで受付に行くわよ。」


アイナを先頭に俺たちは受付へと向かった。


「依頼完了の報告をしたいんだけど。」


「≪薔薇の茨(ローズソーン)≫の皆さん、お疲れ様です。依頼完了の報告ですね?」


「ああ、依頼品はこれになる。」


そういうとアンナはアイナから受け取った袋と3人分のカード、そして紙を受付嬢へと渡した。


「お預かりします。では確認をしますので、少々お待ちください。」


そういうと受付嬢はそれらを持って奥へと姿を消した。


待つこと数分、受付嬢はカードと先ほどとは別の袋を持って戻ってきた。


「確かに依頼品のポッパ草でした。状態も問題なかったので、依頼完了となります。こちらが報酬となります。お確かめください。」


アンナは受付嬢が差し出した袋の中身を確認すると、エレナに手渡した。カードはというとアンナが確認している間にアイナが受け取っていた。


「報酬は間違いなくいただいた。それとすまないが、この人の冒険者登録をお願いしたい。」


アンナはそう言うと俺を前に押し出した。


「冒険者登録ですか?ではこちらに記入をお願いします。代筆は必要ですか?」


「いや、問題無い。」


「失礼しました。では記入をお願いします。」


俺は受付嬢に差し出された獣皮紙に目をやった。


(記入するのは、名前・スキルのみか。さて、スキルをどうするかだな。火・水・風・土・光・闇・剣術は書くとして、氷・時空魔法は書かなくていいか。あと生産系のスキルも別に書かなくていいよな。ジュータスも必要なものだけでいいって言ってたし。)


俺は名前と各属性・剣術のみをスキル欄に記入した。


「これでいいか?」


「ありがとうございます。最後にこちらの板に血を一滴垂らしてもらえますか?」


「わかった。」


俺は受付嬢が差し出した小刀で指先を軽く切り、血を一滴板に垂らした。


「では登録してまいりますので、少々お待ちください。」


受付嬢は板と獣皮紙を持って再び奥へを姿を消した。


受付嬢が姿を消し、俺たちは椅子に座ろうと振り向いたときにそれは起こった。


「ええ~っ!?な、何!?なんなのこれぇ~!?」


先ほどの受付嬢の声がギルド中に響き渡ったのだ。


何事かとギルド中が驚いているなか、先ほどの受付嬢は奥から出てきて


「ギルドマスターを呼んで!今すぐ!早く!!」


手短にいたギルド職員にそう声をかけると、今度は俺たちのほうに向かって


「確認したいことがあります。ギルドマスターが来るまでそのままで待っていてください。ぜっったいにどこにも行かないでくださいね?いいですね?」


というと奥へと走っていった。


声をかけられた職員はと言うと、最初はわけもわからないといった顔をしていたが、ハッと気が付いたのか急いで別の場所へと駆けていった。


「なんか大変なことになりそうね。カズマ、心の準備はいい?」


「なんか嫌な予感がしてきたから、帰っていいか?」


「駄目に決まってるじゃないですか!帰ったとしても直ぐ宿屋にギルド職員が突撃してきますよ?」


「それに出入り口は職員に固められてるから、どの道逃げられないな。」


流石と言うべきかなんと言うべきか、あの短い時間の間に出入り口にはギルド職員が数人立っていたのだ。


「はぁ~、なんでこんなことになるんだ?ギルドへの登録は名前とスキルだけのはずだろ?」


「記入は確かにそうね。ただ、記入に偽りが無いかはギルドカードで確かめられるわよ?当然じゃない。」


「ギルドカード?そんなもんは俺は貰って無いぞ?」


「さっき板に血を一滴垂らしたでしょ?あれがギルドカードよ?知らなかったの?」


「知らなかった。知ってたら登録なんてしてない。ああ~っ、俺の望んでいる平穏な日々が遠ざかっていく気がする・・・。」


「まあ、遅かれ早かれいずれはこうなっていただろうからな。諦めろ。」


「簡単に言うなよな。他人事だと思って・・・。」


「何があったの?先ほど叫び声が聞こえたかと思うと、部屋に飛び込んでこられたんだけど?」


声が聞こえたのでふと顔を上げると、そこには長い耳をしたエルフのイメージ通りの女性が立っていた。


「「「ギルマス!?」」」


「えっ?あら、≪薔薇の茨(ローズソーン)≫の皆じゃない。あなたたちの活躍は聞いているわよ。頑張っているみたいね。Bランクにも手が届きそうなんですって?ギルドマスターとして嬉しいわ。」


「「「ありがとうございます。」」」


「それで、何があったの?急に呼ばれたから、私状況が理解できてないのよ。兎に角来てくれとしか言われなかったし。」


「ギルドマスターこちらにおいででしたか。」


ギルドマスターと3人が話をしていると先ほどの受付嬢が姿を現した。


「ええ、それで何があったの?」


「兎に角こちらへ。お呼びした理由はそちらでお話しますので。あなたたちはそこにいてね?いいわね?」


「この子たちが何かしたの?」


「それもお話しますので、兎に角こちらへ。」


そういうと受付嬢はギルドマスターを連れて奥へと姿を消した。


「ほんとに大変なことになりそうね。」


「ですね。」


「そうだな。」


「勘弁してくれ・・・。」


3人がギルドマスターの連れていかれた方へと目をやり、呟いているのを聞いて、俺は頭を抱えた。


すると・・・


「なにこれ!?こんなのありえるの!?」


奥から今度はギルドマスターの声が響いた。


「ギルドマスターのこんな声、初めて聞いたわね。」


「そうですね。いつも落ち着いている方なので意外です。」


「そうだな。よほどカズマが驚愕に値するものだったんだろう。」


3人の声に俺は返事をせず、なんとかこの場を逃げ出せないか算段していた。


俺がそんなことを考えているのがわかったのか、3人は意外な行動に出た。


エレナは俺の右後ろに、アンナは左後ろ、アイナは目の前に立ったのだ。


まるで俺を逃がさないといった立ち位置に俺は呆然とした。


「なあ、3人ともさっきと位置が違わないか?」


「気のせいじゃない?不安に思ってるからそう感じるのよ、きっと。」


「そうだな。あんなに叫び声が聞こえれば不安にもなるだろう。」


「安心してください。普段はこんな風ではありませんので。」


「普段はってことは、今日は特別ってことだろ!?その原因は俺じゃないのか?」


「そうとも言えるし、そうだとも言えるわね。」


「それって結局両方とも肯定じゃねえか!」


俺たちがそんな言い合いをしていると、奥からギルドマスターが驚き疲れたのか、憔悴した姿で現れた。


「そこの4人、ギルドマスターとして命じます。私の部屋へ来なさい。拒否は認めません。どうしても拒否すると言うのであれば実力行使をさせてもらいます。いいですね?」


ギルドマスターはそう言うと足元をフラフラさせながら、自分の部屋へと帰っていった。


俺はというと、げんなりとした顔をしながら、立ち尽くすのみだった。



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