3神との邂逅
街をブラブラし、気になったお店に冷やかしをかける。
いわゆるウインドショッピングをしながら、俺は買い物を楽しんだ。
「ジュータスのアドバイスには感謝だな。」
袋に入れる振りをしてアイテムボックスに放り込んでいるのだが、いかんせん袋の容量と買った物の量が釣り合わない時が何度かあった。
そんな時は決まって「これ小さいけど、マジックバックなんだ。」と言えば納得してもらえたのだ。
(無詠唱とアイテムボックスのコンボ、これ使い勝手よすぎだろ。)
(ばれたらえらいことになるのは間違いないから、気を付けないとな。)
今後必要となるであろう物を買い終え、宿屋に戻ろうと足を向けた時にその店が俺の目に入ってきた。
「本屋か。ここも冷やかしてみるかな。」
そんな軽い気持ちで店に入った俺はとある本に釘付けになってしまった。
≪お手軽錬金術の基礎≫ 金貨1枚
(確か専門的な知識はスキルの知識では得られないんだよな。誰かに師事するか自分で発見するかしかないって愛神が言ってたし。
この本があれば簡単な錬金術は学べるんじゃないか?でも、金貨一枚か。
まだ多少お金には余裕あるけどこれからのことを考えるとちょっとキツイな。)
「兄ちゃん、その本を買うのかい?買うなら少しなら勉強させてもらうよ。」
俺が悩んでいると店主だろうか、お婆さんが声をかけてきた。
「いや、直ぐに必要ってわけでもないし・・・。」
「買ってくれるなら銀貨7枚でどうだい?」
「いや、だから・・・。」
「銀貨6枚。これ以上は負けられないよ。」
(銀貨4枚の割引か。よほど売れないんだろうか?安くしてくれたし買うべきか?)
「かぁ~っ。足元みないどくれよ。銀貨5枚!もう本当にこれ以上は無理だよ。あたしにも生活があるんでね。」
「わかった。銀貨5枚で買わせてもらうよ。」
「毎度あり。」
俺は購入した本を袋に入れ、本屋を後にした。
(さて、夕食は宿の食堂でとればいいか。その後はスキルの鑑定作業だな。)
地図を使用し宿屋の場所を確認した後、足取り軽く帰っていると、周りにある建物とは雰囲気の違う建物があることに気づいた。
(なんだここ?隣近所にある建物とは何か雰囲気が違うな。まるでここだけは空気が澄んでるって言えばいいのか?兎に角、なんか違う。)
「何か御用ですか?」
その建物を眺めていると、ふと声をかけられた。
「こちらを眺めておいででしたので、何か御用なのかとお思いお声をかけさせていただいたのですが、違いましたか?」
俺に声をかけてきたのは修道服をきた女性だった。
「いや、この建物がなにかわからなかったから、眺めていたんだ。教会だったんだな。」
「はい、ここは3神様を祭っております。」
「3神?ああ、創神・農神・遊神か。」
「はい。もしよろしければお祈りをしていかれますか?」
(一応加護ももらってるし、スキルなんかでも便宜を図ってもらってるしな。
ついでに事故のことはもう気にしなくていい、ってことも伝えておくか。)
「ああ、そうさせてもらおうかな。献金とかはしたほうがいいのか?」
「無理にとは申しませんが、お願いできるのであれば。」
「わかった。」
俺は銀貨1枚を女性に渡し、教会の中へと足を踏み入れた。
中には3神だろうか、女性の像が奥に並んでいた。
「では、こちらへどうぞ。」
俺は女性に案内され奥へと進んでいき、像の前にひざまずいて頭を垂れた。
(色々世話を焼いてくれて、ありがとう。事故のことはもう気にしなくていいからな。)
さきほど思ったことを頭で考え、伝わればいいなと思っていると、目の前が強い光で覆われた。
(な、なんだ!?)
「お待ちしておりました。」
あまりの眩しさに目を強くつぶっていると、耳に優しい声が聞こえた。
「お待ちしておりました。カズマ様。」
光が弱まったので目を開けると、そこには3人の女性が立っていた。
「あんた達は?それにここは?」
俺は声をかけてきたスレンダーな女性に質問した。
「私は創神と申します。後ろにおりますのは農神・遊神です。それと、ここは神界です。」
「神界?俺がいた場所とは違うようだが?」
「それは、ここが神に呼ばれし者が来る場所だからです。」
「神に呼ばれし者・・・。それじゃあ、俺はあんた達に呼ばれたわけだ。」
「はい。カズマ様が教会にて祈りを捧げていただけたので、お呼びすることができました。」
「なるほどな。それで、俺を呼んだ理由は?」
「それはカズマ様に直接お会いして、お詫びを申し上げるためです。」
「お詫びといっても、もう気にしてないんだがな。」
「カズマ様にそう仰っていただけることは大変有難い事なのですが、これは私たちの起こしてしまった事へのケジメでもあるのです。」
そういうと3神は揃って頭を下げた。
「「「この度は大変申し訳ございませんでした。」」」
「ケジメなら仕方ないな。わかった。謝罪を受け入れよう。これでいいだろ?」
「「「ありがとうございます。」」」
「今度は俺からいいか?遊神って誰だ?」
「あたしだよ。」
元気っ娘と言った感じの女性が手をあげた。
「お前が遊神かっ!!よくも訳わからん加護を付けてくれたな!そのせいでえらい目にあったじゃないか!」
「ええっ!?あたしはカズマ様なら喜んでくれるって思ったのに・・・。」
「確かに男としてはとても魅力的な加護だろう。しかし、人助けをしようとする時まで発動するのはどうなんだ!?
発動するしないはこっちで決めれる、とかは出来なかったのか?」
「加護は常時発動してるものだからそれは無理だよ。ってことはもうラッキースケベにあったんだね。」
「ああ、倒れそうになった人を助けようとして発動したよ。相手が状況を理解してくれたから大事にはならなかったけどな。」
「それならよかったじゃん。結果良ければすべてよし、だよ。」
「あのなぁ~・・・。」
俺は遊神が言っても無駄なタイプだと理解するのに、そう時間はかからなかった。
「カズマ様、遊神も悪気があってあのような加護を渡したわけではないんです。ご容赦いただけませんか?」
妖艶な雰囲気を纏ったな女性が声をあげた。
「あんたは?」
「申し遅れました。私は農神と言います。」
「あんたが農神か。悪気はないと言ってもあんたと創神はまともな加護をくれたじゃないか。
加護を貰っといて文句をいうのもどうかとは思うんだが、あれはあんまりだ。」
「遊神はカズマ様にこちらの世界を楽しんでいただきたい一心だったのです。」
「楽しむか・・・。はぁ~、わかったよ。遊神、文句を言ってすまなかった。」
「いえ、こっちこそ気が利かなくて、申し訳ありませんでした。」
「カズマ様よろしいでしょうか?カズマ様にお伝えしなければいけないことがあるのです。
アイテムボックスなのですが、私どもで少し弄らせていただきました。」
「アイテムボックスを?」
「はい。普通であれば、時間経過が緩やかになる程度なのですが、カズマ様のに関しては完全に時間が止まるようにしてあります。
もちろん、カズマ様が望めば時間をお好きなように設定出来るようにしてありますので、ご安心下さい。」
「そんなことまでしてもらわなくても良かったんだが・・・。」
「いえ、これもお詫びの一環とお思いください。」
「何から何まで世話になって済まないな。」
俺が創神に感謝を伝えたその時、俺の体から光が漏れ始めた。
「なっ、なんだ!?」
「そろそろお時間のようです。」
「時間?」
「はい。意識が体に戻ろうとしているのです。」
「体ごと来てたわけじゃないのか。」
「意識のみをこちらにお呼びいたしましたので、体はあちらにございます。」
「それなりにこっちで話してたけど向こうの時間はどうなってるんだ?」
「それについては、御心配にはおよびません。こちらでいくら時間が経とうとも、あちらでは時間経過はしておりませんので。」
「つまりは何の支障もないってことか?」
「はい。」
「それなら問題無いな。」
「改めまして。カズマ様、この度は申し訳ございませんでした。お会いしてお詫びできたこと私たち3人嬉しく思います。」
「気にすんな。色々してもらったから、こっちこそありがとうって伝えられて嬉しいよ。」
「お言葉ありがとうございます。また、機会があればお会いいたしましょう。」
「ああ、機会があればな。」
そう言うと同時に俺の体は光に包まれた。
気が付くと俺は祈りを捧げた姿勢のままだった。
「お祈りはお済みになりましたか?」
「ああ、3神に感謝を述べさせてもらったよ。」
「それはようございました。」
女性にお礼を言うと、俺は教会を後にし宿屋へと帰って行った。




