黒い影の正体
黒い影の正体を探る為に、MRIを撮らせて欲しいと医者に頼んだ。
「セカンドオピニオンと言うことですか?」と聞かれ、そうなのかなと思い、よくわからずに「はい」と言ったらややこしいことになった。
(以降、事あるごとに「本当にうちの病院でいいの?途中でまたセカンドオピニオンとか言われても困るよ?」と言われることとなる)
黒い影の正体は、卵巣に溜まっていた血液が漏れたものだった。
「普通、痛くてしょうがない筈なんだけどね。不思議な人だ」と医者が言う。
私はMRIの画像に映し出された、己の皮下脂肪の多さに絶望する。まさか、こんな形で己の不摂生を辱しめられることになるとは。
治療の方針を変えることになったが、これがダメなら諦めろとのことだった。
「何しろ、私も初めての症例で┉┉こんなの初めてだよ。もしセカンドオピニオンしてたら、皆頭抱えて嫌がる。正直、そのくらい厄介」と言われ、私は現実逃避をした。
私なんて、別に大層な人間じゃないし、残念ながら死んで惜しい命じゃない。残念ながら、子孫も残せないのだ。
卑屈な私に追い討ちをかける医者が、「もし手術となったら、癒着が酷いから、子宮、卵巣、下手したら直腸も一部とって人工肛門かも。だからこそ、手術しないで済むように、出来るだけのことはするつもりだけど┉┉」と呟いた。
私は、もう排泄すらまともに出来なくなるのかと絶望しながら、「断捨離ですね、今はやりの」と誰にともなく吐き出した。
悲しいのか、諦めたのか、自分でもよくわからずに、次回は生理から五日以内に来るようにと言われた。
MRIの画像をお土産に持たされた。
何か、とてつもなく美味しいものが食べたいと思った。