16.tears
桜が舞う、3月。
…卒業式。
門を出て帰り道の途中だった。
「…今日で高校も卒業かぁ…。」
右隣で亜矢が呟く。
「長いようで短い高校生活だったね…。」
左隣の陵子も呟く。
「ほんとだね…。」
私も真ん中で呟いた。
「あんたはほぼ2年でしょーが!私たち2人がどれだけ寂しかったことか…。」
陵子が低い声で言う。
「…ごめん…。」
「いいって謝るな!しょうがないこと!てか瑠美、あんたすごすぎでしょ!半年も学校きてなかったのに留年じゃないとか!どんだけ勉強したの!?」
…あれから2年が経った。
2年前の1年の冬、私は学校に行き、必死に遅れを取り戻そうと勉強した。
そして全てのテストで平均点以上を取り、2年へ上がることができた。
それからも勉強はし続けた。
そうして私は無事、陵子たちと高校を卒業することができた。
「だってすごいがんばったもん。」
どうだと言った顔を見せつける。
すると2人が飛びついてきた。
私の頭をぐしゃぐしゃにして言う。
「あんたすごいよ!よくがんばった!」
「3人で卒業できて本当によかったああ!」
笑顔でそう言ってくれた。
2人はずっと私を待っててくれた。
久しぶりに学校に行った時も、驚いてはいたが笑顔で迎えてくれた。
〝本当に良かった〟って、そう言ってくれた。
そんな2人の顔を見て号泣したのを今でも覚えている。
「…私、2人が友達で本当によかった…。」
ふとそんなことを呟いた。
気づいたら自分の目が潤んできたので下を向く。
2人は私が泣いてることに気づくと陵子が私の肩に手をのせた。
「私達も、瑠美が友達でよかったって思ってるよ。ね!」
「当たり前だよ!私達は瑠美が大好きだよお!」
亜矢が叫ぶと私と陵子をまとめて抱きしめた。陵子と私も抱きしめ返す。
3人で抱きしめあってる形になった。
そして私達は笑い合った。
たくさん話し合った。おもしろい先生の話、旅行の話、つまらなかった授業の話。
卒業した今となっては、どんな小さいことも、大きな思い出となった。
「あ、私、ちょっと用事あるからまた後で!」
私は2人にそう告げると、背を向け走り出す。
2人は私の〝用事〟の意味が分かると笑顔で送り出してくれた。
「遅くなりすぎるなよー!」
「うん!」
走りだしたものの、私はすぐ歩き出した。
〝危ない〟から。
それは小さい子でも分かること。
卒業証書を入れた筒を片手にあの場所へと向かう。
「…禾坂さん…?」
後ろから誰かに呼ばれた。…聞き覚えのある声…。
後ろを振り返るとそこには懐かしい人物がいた。
「拓馬くん…!」
京ちゃんと仲の良かった、京ちゃんがいつも自慢してた友達。
拓馬くんとは京ちゃんを通して数回話したことある程度だった。
京ちゃんがいなくなってからは、一度も話したことがない。
廊下ですれ違うことさえあまりなかった。
「どうしたの?拓馬くん。」
「そこを友達と通ってたら禾坂さんが見えたから…今日で卒業するし、最後だからあいさつでもしておこうかと思って。」
「そっか。」
「禾坂さんは帰り道?」
「ううん、…今から京ちゃんに会いに行くの。」
それを聞いた時、拓馬くんは一瞬驚いた顔を見せたけれど、また優しい表情に戻ると言った。
「そうなんだ…。じゃあ、俺の分もよろしく言っといてくれよ。」
「うん、分かった!じゃあ行くね。」
「じゃあな。」
私は再び歩き出した。
「あ!あと、俺にも彼女ができたって言っといてくれー!」
私は後ろえお振り返ると分かったと言い、付け足しておめでとうと叫んだ。
拓馬くんはありがとうと叫ぶ。
彼女さんを幸せにしてあげてね。
遊具の屋根の上に登ると、桜の花びらが私についてくるかのように舞い上がってきた。
こんなに桜がキレイなのに、不思議に思うほど公園には誰もいなかった。
「京ちゃん、私1人でここまで登れたよ。」
あの日から毎日公園に通い、天気のいい日は遊具を登って屋根の上で星を見た。
気づいたら登れるようになっていたのだ。
「見て、京ちゃん。私ね、留年することなく陵子たちと卒業することができたんだよ。」
そう言って空に向かって卒業証書をかざす。
「あとね、さっき拓馬くんにあったの。京ちゃんによろしくだって。彼女もできたんだよ!」
周りから見れば変に見えるかもしれないけど、私にとっては大事なこと。
私は手をつくと、文字の彫られてるところに触れた。
再び京ちゃんによって彫られた文を読む。
文字の後を指でなぞる。
「京ちゃん…。」
私はその場に寝転がった。
2年前の時みたいに、腕枕をしてくれる彼はもう隣にはいない。
私に〝絶対に守るから〟と言ってくれた彼はもういない。
いないけど、ここにいる。
京ちゃんはずっと、ここで待ってくれてる。
…ここへきて、たくさんの青空を、星空を見上げてきました。
あなたが見つけ出したこの場所で。
そして私はいくつもの涙を流してきました。
あなたを想って流したその涙は、私を強くさせてくれました。
「…ありがとう、京ちゃん。」
私は小さく、そう呟いた。
Fin.




