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転生大賢者の現代生活  作者: サクラ近衛将監
第二章 異変

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2ー2 地震?異界? その二

 まぁ、今の儂の身体は、魔導により結構対毒耐性が強化されているので多分死ぬことは無いと思われるのじゃが、何もわからずに突っ込むのは阿呆のやり方じゃ。

 必要であれば事前にできる範囲の調査を行って、防御策を立ててから中に入るべきじゃろう。


 そうしてそのような調査は、国等の然るべき組織や団体が行うべきじゃ。

 取り敢えず、北広ノ島の特異点の位置は特定できたから、次はここからじゃと西南西方向約37キロの仲間山峠に向かう。


 およそ10分後に特異点上空に達したけれど、ここも同じ状況であり、北広ノ島に比べると、特異点の大きさがかなり大きいかもしれない。

 多分、直径で北広ノ島の二倍の大きさはあるじゃろう。


 今のところ特段変わった動きは無いんじゃが、やむを得ないから監視用のゴーレムを作成して亜空間から監視させようと思う。

 生憎と新しく造らねば今は手持ちが無いのじゃが、家に戻ってから為すことにしよう。


 で、現状把握のために、取り敢えず北海道内だけでも特異点の位置特定だけやっておくつもりじゃ。

 一番遠いのが支辺茶(しべちゃ)町の270キロ、そうして近いのでも130キロは間違いなくある。


 南の八句藻(やっくも)町の山中から始めて、広尾郡台樹(だいき)町、川上郡支辺茶(しべちゃ)町、中川郡武尾深(たけびふか)町を順に回って墨河(すみかわ)の家に戻ったが、飛行距離は千キロ弱で、6時間強の調査行じゃったな。

 家に戻ったのは午後三時ころじゃが、祖母と姉洋子の両方に酷く叱られてしまったぞよ。


 揺れが収まってから、家の様子を確認するために、儂の部屋にも入ったようじゃが、儂の姿が無く、地震の所為で棚から物が崩れ、部屋の中は足の踏み場もないほどじだったのじゃ。

 玄関で調べると靴はあるのに、幸次郎が居ないというのでプチパニックになったようじゃな。


 祖母は姉洋子と共に家中を探し回ったようじゃ。

 で、その労苦の大半が儂へのお叱りになって跳ね返ってきたわけである。


 うん、隣のかおりには出かけてくるようなことは言ったが、そう言えば家人には伝えてなかった。

 すまぬのぉ、お小言は甘んじて受けるわい。


 スマホの方は、この頃には何とか復旧していて、かおりからメールが届いていた。

 一応「ありがとう」とだけ、返しておいた。


 同時にケーブルテレビも復旧したようで、今朝がたの地震の情報と合わせて、道内6か所の特異点の情報が流されていた。

 防災ヘリ等で被害調査に当たっている最中におわん型の特異点が発見されたようじゃな。


 特異点については概ね半球状を呈しているが、大きいもので高さが120mを超えており、なおかつ人目を惹く怪しげな光を出しているから、空中からならば、すぐに気が付いたはずじゃ。

 今のところ正体不明の物体として、警察や自衛隊を近傍に派遣して周囲を警戒しているようじゃな。


 そうして、中には馬鹿な奴もいる。

 制止する警察官を振り切って、特異点に飛び込んだ若い男女がいたのじゃ。


 そうして続く五分の間に、突然男が血だらけで特異点から飛び出してきた。

 その男の後に続いて異様な怪物が飛び出してきて、男があっという間に体長20mはあろうかという恐竜擬きにパクンチョと食われたのじゃ。


 たまたま、HTBが生放送で現場取材をしているところじゃったから、その衝撃映像が北海道全域に報道されてしまったのじゃ。

 まぁ、こんなのが見えるとパニックになるよなぁ。


 傍にいた警察官が拳銃を発射したけれど無駄、特異点から出て来たデカ物にほとんど脅威にはなっていない。

 同じく近傍にいた自衛隊員が指揮官の命令を受けて自動小銃を乱射したけれど、あんまり効いていない。


 そうして、男を一飲みにした恐竜擬きが次に餌と認識したのが、現場付近に居た警察官、自衛隊員、カメラマンなどである。

 流石に放送はすぐに途絶えたが、少なくとも特異点から怪物が飛び出して人間を襲うという事実がわかったのである。


 すぐさま自衛隊の戦車、ヘリ、戦闘機が出動を命じられたようじゃ。

 およそ三時間後、対戦車ミサイルFGM-148ジャベリンの集中砲火と、攻撃ヘリAH-64Dアパッチ・ロングボウのAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイル を受けて怪物は退治されたようじゃが、それまでに民間人12名、警察官7名、自衛隊員11名が死亡、重軽傷者39名の大惨事となったのじゃ。


 ◇◇◇◇


 その後の報道によれば、その日の内に、出現した特異点については、国及び自衛隊がメインになって調査を進めることになったようじゃな。

 北海道の六ケ所については、陸上自衛隊北部方面隊が管理し、野津幌(のつほろ)仲間山(なかまやま)峠、それに八句藻(やつくも)については、第11旅団が、広尾郡台樹(だいき)町及び川上郡支辺茶(しべちゃ)町については第5旅団が、中川郡武尾深(たけびふか)町については第2師団がそれぞれ対応し、第7師団は各師団若しくは旅団への支援を行うことになったのじゃ。


 陸上自衛隊北部方面隊は、特異点の調査のために戦車部隊を投入することにしたようじゃ。

 また、特異点の周辺2キロを立ち入り禁止区域に設定し、道路等を封鎖したほか、最新兵器を装備した部隊を展開して、怪獣にも似た化け物の出現に備えている。


 政府としても特異点の内部がどうなっているのかの調査を行うために、科学者を含めた調査チームを派遣する予定であるらしい。

 その最初の派遣先として、北海道の野津幌にある特異点が選ばれた。


 ここは交通の便利が良いので選ばれたようじゃ。

 ほかにも九州熊本県上益城郡にある大屋野原(おおやのはら)演習場と、滋賀県蒲生郡竜汪(りゅうおう)町のゴルフ場にある特異点についても同時並行で調査が進められることになっておる。


 いずれも近隣の陸上自衛隊が展開しやすいので、第一期の調査個所に選ばれたようじゃ。

 調査は、2035年8月6日午前9時に開始された。


 但し、特異点に調査隊が侵入してすぐに通信が途絶した。

 このためにすぐに調査隊は一旦戻り、再度有線ケーブルを展開しつつ侵入したのじゃが、それでも通信がほぼ途絶えたのであった。


 ほぼというのは、何らかの通信が特異点側から送られていることは分かったのじゃが、有線内の信号がおよそ百倍にまで速くなっていたために、すぐには解析できなかったのである。

 有線による電話でも、相手の音声が高周波数に変わっていたなら、音声と判断できなくなってしまう。


 このために捕らえた信号を一旦変調させて時間を遅らせることにより、ようやく音声信号として確認できるようになったのじゃ。

 一方でこちら側から送られる信号は同様に百倍遅くなっているわけで、意思疎通が非常に難しくなったと言える。


 そうしてまた画像伝送は、単位時間当たりの転送容量が多すぎたので転送できなかったのである。

 従って、情報伝達については、物理的に情報媒体を伝令が運搬することで行うことになった。


 因みに、特異点の向こう側で1時間後に出した伝令は、こちら側では僅かに40秒後に帰還することとなり、手渡しをして報告をしている10分の間に、特異点の中では16時間ほどが経過していて、戻ってこない伝令の安否を心配している状況であったようじゃな。

 概ね二日経ってその状況がようやく把握できるようになったことから、こちら側と特異点の中では98.7倍の時間差があることが判明したのじゃが、その件に関しての報道は控えられた。


 調査隊は1週間分の食料しか持っていないことから、侵入してから僅かに1時間半余りで帰還することになったのであった。

 こちら側では、僅かに1時間半強の時間経過であったが、特異点内部では160時間近く経過していたことから調査隊は当初の目的を終えて引き揚げて来たのであった。


 特異点内部の画像情報は、政府が全面的に非公開にした。

 しかしながら、儂はその情報にも秘密裏にアクセスできたのじゃ。


 それによれば、特異点内部は正しく異界であった。

 野津幌特異点で調査隊が入った場所は、人の腰ほども丈のある草が生い茂る大草原地帯で、見渡す限り平原が続き、ドローンによるレーザー測距で確認したところでは百キロほど南方(磁針方位)に山地若しくは山脈が見えるとのことだった。


 生物は、例の特異点の外に出現した怪物のような大型生物が半径20キロ圏内に数匹いる程度じゃが、草の中に埋もれている小動物については今後の調査を待たねばならないようじゃ。

 調査期間中、少なくとも蛇が三種、ネズミ様のげっ歯類二種、角のある兎二種、アメーバー様の流体動物が確認されており、いずれも好戦的であり、注意を要することがわかっている。


 自衛隊は周辺の草を焼きはらって仮設陣地を築き、センサーを周囲に仕掛けて防衛に徹したようじゃな。

 次回以降の調査隊は工兵隊を引き連れて行き、そこに仮設のベースキャンプ施設を建造して調査を進めることになりそうじゃ。


 因みに調査隊が撮影した画像全てを儂は入手したのじゃが、調査隊が見つけた生物で儂が見知っておるのはスライムだけじゃったのぉ。

 げっ歯類も角兎も儂が前世で知っておるものとは多少種が違うと思われるのじゃ。


 勿論、野津幌に出現した怪獣のような大型動物も前世では見覚えが無かった。

 儂が知っている魔物は、ゴブリン、オーク、オーガなどのヒト型魔物とスライムだけじゃった。


 今のところ、ヒト型魔物が出たという情報は少なくとも三か所の調査からは上がっていないのじゃ。

 因みに、九州熊本県上益城郡大屋野原演習場の特異点は、山岳部の頂上付近につながっており、戦車の運用は非常に難しい様じゃった。


 滋賀県蒲生郡竜汪町の特異点は、樹高二百メートルを超える大木が鬱蒼(うっそう)と茂る大樹林地帯であり、ここも戦車の運用は難しく、密林のために飛行ドローンの運用も厳しいようじゃな。

 大屋野原演習場の場合は、急峻な山岳を降りる装備が無いと少なくとも下界の詳細な調査は難しいこと、遠目に飛行生物が飛んでいるのが観測されたのじゃが如何様な生物かは不明である。


 また、こちら側の季節は8月なのじゃが、特異点の向こうは季節が違うのか高山である所為なのか、気温が零度以下と低いので装備品を種々変えなければ調査の続行は難しい様であるな。

 竜汪町の特異点については、気温が低いというようなことは無かったのじゃが、濃密な植生のために機械化部隊がほとんど動けないことから、歩兵中心の別途の調査隊を編成することにしたようじゃ。


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