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異世界の君、復興物語 ~狩猟技術と農家の知恵でお国復興しちゃいます~  作者: ezodate
第19章 雲の一族

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第356話 雲の一族(1)

 雲の一族は元々、海の世界に住む。


 たまたま流れ着いた海岸が未管理で、勝手に滞在し、勝手に村を造った。前のオイスター王はたまにお忍びで遊びに来ては、焼き魚を食べて帰っていたけれど。

 それから商人が来て商売をしていったりはしたものの、基本放置されていた。これは容認なのか不干渉だったのか、間借りを許されていたのかは今となってはわからない。


 先日風変りな1人と4人組が村を訪れた前後から、風向きが変わった。

 牡蠣の殻が暴れたり、火山が噴火したりと、近接して起こり得ないことが起きた。勝手に棲んでいたとはいえここが安寧の地ではないのではないか、という疑問を持つぐらいには、日常から非日常に切り替わったといった肌感があった。

 あの、良い笑顔で笑っていた王ももういないことを知った。


 そこで我らは、海に還ることとした。


 村長の役割を持っていた青雲せいうんの号令により、身の回り、調度品は雲の一族が持つ収納袋に格納。家は痕跡なく取り壊し、別の収納袋に格納。仕上げに風魔法が得意な雲井くもいが痕跡を蹴散らし、そこには何もなくなった。


「我らが生まれ育ったこの村ともお別れか」

「この村、作ってから20年ぐらいだっけ」

「人型生活を体験するために元々実験的に集落をつくり移住したことがきっかけっていってたっけ」


 風雲ふううんはこの村で産まれ、この村で育った。これも一族の実験の一環であったと聞き及ぶ。そういえば先日訪れた者の親が我らのことが記載された文献を所持していた、と言っていたような。

 おそらくあの者の親の世代となれば、この村のことは記載されていなかったものだろう。「海近くに住む赤毛の秘匿された雲の一族」という情報だけであれば、すでに抹消されたここ以外の拠点のことと推察される。


 そしてぞろぞろと海岸へ移動する。今ここにいる者で秘匿・隠匿を得意とする者は雲霞ただ一人。雲霞の魔法により足跡をつけることなく海岸線から1キロ程の海の上に到達。


 そこで、みな揃って海へ還った。次の集落の候補地も決めることなく。ほぼ同時にマガキ城を中心とした排他結界が張られた。

 結論、たまたまタイミングよく、逃げることができたことを知るのは、後の話。


 ◆


 海に還った時点で一度コミュニティを散開する。その後近くに居た者と集落を造るために陸に上がるのもよし、海にそのまま戻り一生を終えるのも良し、群れをつくるのはその時の気分次第だ。

 ただ、陸のコミュニティを誰かが作成した場合、他の者はそこに住むことはあれど、2つの村が同時に世界に存在することはない。だからこそ「秘匿された一族」と言われるというわけだ。


 海底10メートル。海流に乗りどこに行きつくとも考えず、ただただ流される魚影もとい人影。風雲、瑞雲、雲霞の3人はほかの村人たちとは別行動を取り、流されている。


「魚の姿に戻ったらさ~。思考がかなり鈍るよね」

「ヒト型のほうが会話ができるし」

「でも今も念波で話しているだけだから、声は発していないけれどね」


 フフフ、と笑うとぷくぷくと泡が天上に上っていく。


「このまま流されちゃう~?」

「そのうち一族の誰かと合流するかもしれないしな」

「風雲と瑞雲と別れて魚の姿に戻ったらさ、もう多分一生会えないよね」

「確かに」

「再度出会ったとしても、魚に戻った時点で記憶が一度曖昧になるからね」


 一度ヒト型をとると、そこから魚に戻った回数、そして期間に比例して何故か記憶力が落ち、攻撃性が増していく。それが知れてきた事は最近のことで、【ステータスボード】というこの世界の仕組みに記載されている。

 魚の姿に戻り、ヒト型をとれなくなっている一族も多数いるけれど、それはそれ。


 村に居た大人たちはそれほど気にしてはいなかったし、今回で海に還りヒト型をとらなくなった先達も多数いるだろう。ただ、自分たちはそれを良しとしない個体なだけであって。示し合わせたように集まり、魚の姿に戻ることなく、こう、浮遊しているわけだった。ただ、魚人であることにはかわらないので、深海の水圧にも耐えられること、からだがふやけていくことはないこと、プランクトンや小さな魚をそのまま食べて栄養にすることができることなど、海で生活するために必要な能力は当たり前のように備わっているのであった。


 そこから数日、とある海域に入ってしまったことにより、この3人の命運が決まる。突然の急流に巻き込まれ、海底までまっしぐらかと思えば、急に大きな渦潮に見舞われふりまわされる。

 ヒト型をとっているために、海流の影響を完全に受けているけれど、意地でも人型を解く気がない。大人たちを見て育っているからということもあるけれど、ずっと思考はクリアでいたい。

 3人はしっかりを手を握る。

 そこで意識が途絶えたものの、3人は手を離すことはなかった。


 ◆


 海岸線に打ち上げられた人影は3つ。

 要するに、意識を手放したまま流れ着いてしまったわけである。


 不審な人影を発見した者はためらうこともなく、警察組織に通報した。

お読みいただきありがとうございます。新章開始です。


現在不定期更新となっていますので、更新予告はX(@ezodate)をご覧ください。

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