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第四話

 ちゅんちゅんと鳥の鳴く声が耳に入る。

 窓の外を見ればもう完全に日が昇りきっており、朝特有のひんやりとした空気が流れている。

 

 開いたばかりの、寝起きのまぶたを何とか持ち上げて、んーっと体を伸ばす。腕についた鎖がちゃりっと音を立てた。


 

 ベットから足を出して、ふわふわな絨毯に素足のまま降り立つと、肌触りのいい寝間着が小さく肌をなでた。


 初めて着る、とてつもなく着心地のいい服は驚くほど体になじんでいた。それを見下ろしながら、小さく首をかしげた。昨日から初めてのこと続きで、正直これでいいのかと悩ませられる。

 ずっと思っているんだけど、明らかにこれは奴隷にする対応じゃない。

 

 それともこれがお城での正式な奴隷の待遇なのか。

 昨日からの自分を思い出して首をさらに傾けた。ベットはふかふかで、部屋は豪華。もしかしたら私の感覚が変で、ここでは今の部屋はそんなにでもない部屋っていう可能性もあるけど。…少なくとも私からみれば、とっても豪華だ。


 昨日の夜出されたご飯はほっぺが落ちるほどおいしかった。お肉が口に入れた瞬間とろけたのなんか初めて。あれには感動した。

 

 あと、どうやら私には侍女がつくらしい。昨日の夜紹介された。リューゼって言う女の人。この人には昨日、お風呂場に連れて行かれて丹念に体を洗われた。優しそうな人だったけど、どこか逆らえない雰囲気を持ってる人だ。昨日、明日朝食はお部屋にお届けますのでって言ってたから、たぶんもう少ししたらここに来るだろう。


 奴隷に侍女をつけるって普通なのかな?…違う、と思うけど。

 

 みんなあまりに当たり前ですって顔で対応していくから、もしかしたらそうかも、とちょっと思った。誰かに後できいてみよう。

 

 リューゼはきっと直ぐに会うし、私の護衛?につくことになったらしいロナートにも直ぐ会うだろう。

 ロナートだけど、予想通り正式に命令が下されたとリューゼさんが親切に教えてくれた。リューゼさんはいい人だ。優しいし、綺麗だし、昨日の夜はおいしいお菓子をこっそりとくれた。

 うん、リューナさんに聞こうっと。そういえばロナートは私のことあんまり好きじゃないから、聞いても意地悪して教えてくれないかもしれないし。

 


 そういえば、今何時だろう?寝坊はしてないと思うけど。

 おなか空いたし、どうしようかなぁ…。


 ぼんやりと考えていたら、コンコンと控えめなノックが部屋の中に響く。

 


「リューゼでございます、リヴィナ様。お目覚めでござ――」


「おはようっ、リューゼ!」



 

 待っていた声に、返事もせずにドアを開ければ、びっくりした顔のリューゼが居た。

 何んとなくそれがうれしくてウキウキしながら挨拶をすれば、リューゼはちょっと困った顔をしながら笑う。




「おはようございます、リヴィナ様。もう起きていらっしゃったんですね」



 そういいながら部屋に入り、朝食の準備をするリューゼに、その目の前に座り着々と準備されていく私のご飯に釘付けにされる。


 ちょっと湯気を出してる控えめでおいしそうなごはん達。…早く食べたいなぁ。



「うん、ちょっと前に目が覚めたの。どうすればいいのか分からなくて、ぼんやりしてるところにリューナが来たから丁度よかったよ」


「そうですか。…リヴィナ様に、気を付けていただかないとならないことがございます」



 静かな声でそう告げるリューナは、さっきと同じ、困った顔をしていた。


 

「この王宮には、安全なように見えて危険が渦巻いております。特にリヴィナ様は、とても危険な位置に今お立ちになっています。ですから、この部屋の扉は先ほどのように、きちんと確認せずに開けてはなりません。私がここにおりましたら、私が対応いたします」



 そういってリューゼは真剣な目をして頭を下げた。

 確かに、さっきのはちょっと不作法だったかもしれない。それにやっぱり王宮は、安全な場所ではないみたい。ご主人様の言ってたとおり。

 命とか狙われるのかな?まあいいか。危ないのには慣れてるし。

 王様の近くに居ることになるんだから、在る意味当たり前だしね。うん、今度から気を付けようっと。

 


 

「ありがとうリューゼ!これから気を付けるね」


「はい。私もリヴィナ様を精一杯お守りいたします」



 

 そういって、リューゼは笑った。とっても綺麗な笑みだった。



 うん、みんないろいろ考えてるみたいだけど、何とかなるかな。

 まぁ、私が死んだとしても大して影響は無いしね。王に近い人たちは違うっぽいけど。


 ――弱い者が負ける。それが世界の真理だもん。そして私は、どっちかっていうと弱いほう。

 死んだって文句は言えないね?それでも、生きるためには足掻かせてもらうけど。

 

 

「リヴィナ様、本日のご予定ですが…――」



 弱い者達をひたすら呑み込んでいこうとする、強欲な獣はどこにでも居るものだけど、強いからって簡単に命を弄ばれたらたまらない。

 それに弱い者だって、追い詰められれば牙をむくの。




「宰相のオリバス様が、面会を希望しておられます。朝食が済みましたら、オリバス様の執務室にご案内いたしますね」







 ――そうして強い者がまた一人。さて、あなたは私の敵かしら?


  

 

 

 

  

  

王様が出てこない…。

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