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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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第273話「墓参り」

誠が、旅立って、三ヶ月。



# 墓


村の、はずれに、小さな、石が、一つ、置かれていた。



# 墓


そこには、こう、刻まれていた。



# 刻字





**田中誠**



**八百屋**



# ルカ


ルカが、最初、それを、作ろうとした時。





田中が、少し、考えた。



# 田中


「やおや」



「なんですか」




田中。



「はか、いうても」



「はい」




田中。



「なかみは、ないぞ」



# ルカ


ルカは、頷いた。




「知ってます」




田中。



「ほな、なんの、ためや」



# ルカ


ルカは、しばらく、考えた。





そして、静かに、言った。





「行く場所が、要ると思ったんです」



# ルカ


「みんなが」



ルカは、続けた。




「師匠を、思い出しに、行ける場所」



# 田中


田中は、しばらく、その言葉を、聞いていた。





そして、頷いた。





「ええな」



# 魔王軍


その日、魔王軍から、使者が、来た。



# ガイウス


ガイウスが、来て、頭を、下げた。





「ルカ殿」



「はい」




ガイウス。



「魔王様が、墓参りに、来られたい、と」



# ルカ


ルカは、少し、驚いた。




「魔王様が」




ガイウス。



「はい。……ですが」




ガイウスは、少し、言いにくそうにした。





「盛大な、行列にすると、誠殿の、望むところでは、ないだろう、と」



# ルカ


ルカは、少し、笑った。




「はい。……静かに、来てください」



# 到着


数日後。



# 訪問


魔王が、四天王を、連れて、来た。



# 魔王


魔王は、墓の前に、立った。





そして、しばらく、動かなかった。



# 魔王


「誠」



魔王は、静かに、言った。





「余は、七百八十二年、生きてきた」



「はい」




魔王。



「その中で」



# 魔王


「一番、面白い、時代を、お前と、過ごした」



魔王は、続けた。




「礼を、言う」



# 魔王


魔王は、麦茶を、墓の前に、供えた。





「これで、いいか」



「はい」




ガイウス。



「規約には、ありませんが」




魔王。



「作ればいい」



# イグニス


イグニスも、頭を、下げた。




「蕎麦、また、食べたかった」




ゼフィール。



「私も」



# 悪の組織


その、翌日。



# 訪問


首領が、来た。





八一八号も、一緒だった。



# 首領


「誠殿」



首領は、墓の前で、静かに、言った。





「悪の組織、代表として、来た」



# 首領


「あんたが、いなくなって」



首領は、続けた。




「気づいたことが、ある」



「はい」




首領。



「悩んだ時に、話す場所が」



# 首領


「なくなった」



首領は、静かに、言った。





「困っている」



# 八一八号


八一八号が、頭を、下げた。




「イーッ」




首領が、通訳した。





「『また、麦茶を、飲みに、来ます』と」



# ルカ


ルカが、それを、聞いていた。





「うちの店は、続いてます」




首領。



「知っている」



# 首領


「だが」



首領は、続けた。




「あんたと、話す時とは、違う」



「はい」




首領。



「誠殿は、誰にも、格好をつけさせなかった」



# 首領


「それが」



首領は、続けた。




「今、なくて」



「はい」




首領。



「少し、寂しい」



# ルカ


ルカは、しばらく、その言葉を、聞いていた。





そして、静かに、言った。





「首領さん」



「なんだ」




ルカ。



「俺でも、いいなら」



# ルカ


「格好つけなくて、いいです」



ルカは、続けた。




「うちの店、来てください」



# 首領


首領は、しばらく、動かなかった。





それから、静かに、頷いた。





「……そうさせてもらう」



# ヒーローたち


その、週の、終わり。



# 訪問


アルフレート、カゲ、ヒカル、アンポンマンが、来た。



# アルフレート


アルフレートは、墓の前で、しばらく、黙っていた。





それから、静かに、言った。





「誠」



# アルフレート


「私は、五回以上、死んだ」



アルフレートは、続けた。




「その、たびに、お前は、また来い、って言ってくれた」



「はい」




アルフレート。



「今度は、私が、言う」



# アルフレート


「また、会おう」



アルフレートは、静かに、言った。



# カゲ


カゲが、続けた。




「誠さん」




カゲ。



「僕は、五十回以上、MISSION COMPLETEしました」



「はい」




カゲ。



「そのたびに、あなたが、待っててくれました」



# カゲ


「今度は」



カゲは、続けた。




「僕が、待ちます」



# ヒカル


ヒカルも、頷いた。




「僕も、待ってました。何十作も」




ヒカル。



「今度は、あなたが、戻ってくるのを」



# アンポンマン


アンポンマンは、しばらく、黙っていた。





それから、自分の、頭を、外した。



# アンポンマン


「誠さん」



アンポンマンは、静かに、言った。





「あなたが、名前を、書いてくれたおかげで」



「はい」




アンポンマン。



「オレは、代表に、なれました」



# アンポンマン


「頭、齧ります」



アンポンマンは、続けた。




「あなたが、悔しくなくても、供えます」



# ルカ


ルカは、少し、笑った。




「それ、いいんですか」




アンポンマン。



「腹、減った時に、来てくれれば、いい」



# ジョン


そこへ、ジョンも、来た。



# ジョン


「誠殿」



ジョンは、静かに、言った。





「私は、一度、戻れなかった」



「はい」




ジョン。



「見守られて、戻ってきた」



# ジョン


「だから」



ジョンは、続けた。




「あなたのことも、見守る」



「はい」




ジョン。



「戻ってくるまで」



# ヴィクター


ヴィクターも、来た。





「名前を、忘れた私に」




ヴィクター。



「取り戻す、場所を、くれた」



「はい」




ヴィクター。



「ヴィクター、覚えている」



# 田中


田中が、その、様子を、少し、離れた場所から、見ていた。



# 田中


「やおや」



田中は、静かに、呟いた。





「にぎやかやな」



# ルカ


ルカが、隣に、来た。




「田中さん」



「なんや」




ルカ。



「みんな、覚えてます」



# ルカ


「師匠のこと」



ルカは、続けた。




「名前も、言葉も」



# 田中


田中は、しばらく、その光景を、見ていた。





そして、静かに、言った。





「それが、いちばん、ながく、のこる」



# 田中


「じいさんの、いうたとおりや」



田中は、続けた。




「なまえを、おぼえられとる、あいだは」



「はい」




田中。



「きえてへん」



# 帰り際


やがて、日が、暮れた。



# 皆


魔王軍も、悪の組織も、ヒーローたちも、それぞれ、帰っていった。



# 誰か


誰かが、最後に、振り返って、言った。





「また、来ます」



# ルカ


ルカは、その、声を、聞いていた。





そして、静かに、思った。





(——師匠が、繋いだ、輪だ)





その日、ルカは、ノートに、こう書き加えた。


*「じいちゃん、師匠。今日、たくさんの人が、墓参りに、来てくれました。魔王様、四天王、首領さん、八一八号さん、アルフレートさん、カゲさん、ヒカルさん、アンポンマンさん、ジョンさん、ヴィクターさん。みんな、師匠との思い出を、話してくれました。首領さんが、あんたは、誰にも格好をつけさせなかった、って言ってました。それが、なくて、寂しい、って。それで、俺が、格好つけなくていいから、店に来てください、って言いました。田中さんが、名前を覚えられとる間は、消えてへん、って。じいちゃん、師匠は、たくさんの人に、繋がってました。今日、それが、よく分かりました。師匠、また、来てくれるみんなを、見守っていてください」*



心の中に——一つの、月が——浮かんでいた。




——たとえ——空に——見えなくても。



まだこの時のルカは知らない。この墓参りの輪が、これから先、何年、何十年と続いていくことになるのかを。



——そしてもう一つ、まだこの時のルカは知らない。


その輪の中心に、いつか、師匠自身が、再び戻ってくることになるのかを。



——今は......まだ、誰も——知らない。

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