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英雄は世界を救う。でも、世界を住みやすくするのは八百屋でした ~勇者も魔王も悪の組織も常連です~  作者: 伝説の男前
異世界との窓

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閑話「恐怖の肝試し大会」

## ――お化けが怖がってどうする――


その夏。


とにかく暑かった。


暑い。


暑すぎる。


朝。


暑い。


昼。


猛烈に暑い。


夜。


普通に暑い。


八百屋の田中は、店先でうちわを扇いでいた。


「暑い……」


パタパタ。


「暑すぎる……」


パタパタ。


「野菜まで暑そうだ……」


トマト。


「……」


田中。


「お前も大変だな」


トマトは何も答えない。


当然である。


野菜だから。


そこへ勇者レオンがやってきた。


「田中!」


「何ですか?」


「暑い!」


「みんな暑いですよ」


「何か涼しくなることをしよう!」


田中は考えた。


かき氷。


水浴び。


川遊び。


海水浴。


冷たいスープ。


どれも悪くない。


しかし、賢者ミネルが言った。


「恐怖を感じれば、体感的に涼しくなるのでは?」


田中。


「……」


レオン。


「それだ!」


武闘家ゴウ。


「肝試しだな」


聖女ルナ。


「肝試し!」


大魔術師セレス。


「面白そう!」


田中。


「……」


こうして。


この世界最大級の納涼イベント。


**第一回・肝試し大会**


の開催が決定した。


---


# 本物を呼ぼう


普通の肝試しなら、


暗闇。


墓場。


人形。


偽物の幽霊。


脅かし役の村人。


その程度である。


しかし。


この世界には魔王軍が存在する。


田中は言った。


「せっかくだから、本物を呼びません?」


レオン。


「本物?」


「お化け」


全員。


「……」


田中。


「魔王軍に頼めばいいでしょう」


一同。


「ああ……」


そう。


魔王軍には、様々な種族がいる。


そして何より。


最近、魔王軍は武道家たちに惨敗していた。


鬼。


オーガ。


オーク。


四天王。


師団長。


魔王。


全員が、


「武道家に勝てない」


という深刻な問題を抱えていた。


そこへ。


「肝試し大会で人間を怖がらせてください」


という依頼が来た。


魔王は立ち上がった。


「やる」


四天王。


「やりましょう」


師団長。


「全力で」


オーク。


「オラもやる」


コボルト。


「ぼくも!」


魔王。


「今回は絶対に失敗するな!」


こうして。


魔王軍は総力を挙げて、


**本物のお化け軍団**


を集めた。


---


# 恐怖のラインナップ


まず。


ろくろ首。


一反木綿。


ぬりかべ。


砂かけばばあ。


子泣き爺。


河童。


天狗。


雪女。


座敷童子。


鬼。


唐傘お化け。


提灯お化け。


からかさ小僧。


のっぺらぼう。


一つ目小僧。


小豆洗い。


鵺。


鎌鼬。


猫又。


化け猫。


妖狐。


化け狸。


土蜘蛛。


牛鬼。


さらに。


幽霊。


浮遊霊。


地縛霊。


怨霊。


悪霊。


生霊。


亡霊。


死霊。


亡者。


屍鬼。


骸骨。


ゾンビ。


そして。


最後の特別枠。


お岩さん。


お菊さん。


累。


番町皿屋敷の幽霊。


四谷怪談の幽霊。


これだけ揃えば。


怖くないはずがない。


魔王は満足そうに頷いた。


「完璧だ」


田中。


「すごいですね」


魔王。


「うむ」


田中。


「本当に怖いですよ」


魔王。


「当然だ」


田中。


「これなら村人も涼しくなるでしょう」


魔王。


「任せろ」


そして。


夜。


肝試し大会が始まった。


---


# 第一組


最初の村人夫婦が入っていく。


真っ暗な森。


風が吹く。


木々が揺れる。


「……」


「……」


すると。


上空から。


「……」


ろくろ首が首を伸ばしてきた。


にゅ~~~~~~。


夫。


「うわっ!」


妻。


「きゃあ!」


ろくろ首。


「……」


成功。


ろくろ首は嬉しかった。


「やった!」


魔王軍監視員。


「第一組、驚愕を確認!」


魔王。


「よし!」


第二組。


一反木綿。


「ヒラヒラヒラ……」


「うわああ!」


成功。


第三組。


ぬりかべ。


「……」


ドン!


道を塞ぐ。


「ぎゃあ!」


成功。


第四組。


砂かけばばあ。


「それ!」


バッ!


砂。


「うわあ!」


成功。


第五組。


子泣き爺。


「おぎゃああああ!」


「ぎゃあああ!」


成功。


第六組。


河童。


「キュウリをよこせ!」


「うわあ!」


成功。


第七組。


天狗。


「我は天狗!」


「ひえええ!」


成功。


第八組。


雪女。


「……」


周囲の気温が下がる。


「涼しい!」


雪女。


「……え?」


「もっと!」


雪女。


「怖がってください」


「でも涼しい!」


雪女。


「……」


---


# 第十組


順調だった。


魔王軍は大喜び。


「人間は弱い!」


「怖がっている!」


「やはり本物は違う!」


「魔王軍の威厳が戻ってきた!」


魔王も満足していた。


ところが。


十組を越えたあたりから。


ほんの少し。


おかしくなった。


---


# 第十一組


鬼。


「がおおおおお!」


村人。


「うわあ!」


鬼。


「……」


村人。


「……」


鬼。


「怖い?」


「はい」


「本当に?」


「はい」


「……」


村人。


「……」


鬼。


「なんか、驚き方が雑じゃない?」


村人。


「そうですか?」


鬼。


「もっとこう……」


村人。


「?」


鬼。


「腰を抜かすとか」


「そこまででは……」


鬼。


「……」


---


# 第十二組


唐傘お化け。


「べろべろばぁ!」


村人。


「うわっ!」


「……」


「……」


唐傘お化け。


「……」


村人。


「じゃ、失礼します」


唐傘。


「ちょっと待って!」


「はい?」


「怖くないの?」


「怖かったですよ」


「どのくらい?」


「犬に吠えられたくらい」


唐傘。


「……」


---


# 第十三組


のっぺらぼう。


夜道に立つ。


村人が来る。


「こんばんは」


「こんばんは」


振り返る。


顔がない。


「……」


村人。


「……」


のっぺらぼう。


「……」


村人。


「……」


のっぺらぼう。


「……」


村人。


「……」


のっぺらぼう。


「怖くない?」


村人。


「いや、怖いですよ」


「本当に?」


「はい」


「じゃあなんでそんなに冷静なの?」


「田中さんの店で働いてるんで」


「関係ある?」


「あります」


のっぺらぼう。


「……」


---


# 第十四組


一つ目小僧。


「ぎょろっ!」


「うわ!」


「ぎょろっ!」


「うわ!」


「ぎょろっ!」


「うわ!」


一つ目小僧は満足した。


「成功!」


ところが。


村人が帰った後。


一つ目小僧は気づいた。


「……」


「……」


「……」


なんとなく。


背後が怖い。


振り返る。


誰もいない。


「……?」


一つ目小僧は首を傾げた。


そのとき。


遠くから女性の声。


「キャハハハハ!」


一つ目小僧。


「……」


なぜか背筋が凍った。


---


# 第十五組


小豆洗い。


「小豆洗おか……」


村人。


「……」


「小豆洗おか……」


「……」


「シャキシャキ……」


「……」


「……」


村人。


「小豆洗ってるんですね」


小豆洗い。


「そうです」


「頑張ってください」


小豆洗い。


「……」


「では」


小豆洗い。


「……」


「何か?」


小豆洗い。


「もっと怖がって!」


「すみません」


小豆洗い。


「……」


---


# 第十六組


鵺。


巨大な身体を闇の中から出す。


「グオオオオオオオオ!」


村人。


「ぎゃああああ!」


鵺。


「よし!」


村人。


「……」


鵺。


「……」


村人。


「……」


鵺。


「……?」


村人。


「お化けの方も大変ですね」


鵺。


「……」


「夏なのに」


鵺。


「……」


「暑いでしょう?」


鵺。


「……」


「頑張ってください」


鵺。


「……」


鵺は少し泣きそうになった。


---


# 第十七組


鎌鼬。


シュッ!


シュッ!


シュッ!


村人。


「うわああ!」


鎌鼬三人組。


「成功!」


しかし。


村人が帰った後。


三人は顔を見合わせた。


「……」


「……」


「……」


一人が言う。


「最近、なんか変じゃない?」


「何が?」


「人間の反応」


「そう?」


「驚いてるけど……」


「けど?」


「……」


「なんか余裕がある」


三人は黙った。


---


# 第十八組


猫又。


「にゃあああ!」


村人。


「かわいい!」


猫又。


「シャー!」


「かわいい!」


猫又。


「グルルルル!」


「かわいい!」


猫又。


「……」


化け猫。


「俺もやってみる」


「にゃああああ!」


「かわいい!」


二匹。


「……」


妖怪猫二匹は、


完全に自信を失った。


---


# 第十九組


妖狐。


美しい女性の姿で登場。


「人間よ……」


「……」


「私を見よ」


「……」


「恐れよ」


「……」


妖狐。


「……」


村人。


「……」


妖狐。


「どうした?」


村人。


「……」


妖狐。


「怖くないのか?」


村人。


「いや……」


妖狐。


「うん」


村人。


「綺麗ですね」


妖狐。


「……」


「すごく綺麗です」


妖狐。


「……」


「モデルさんみたい」


妖狐。


「……」


村人。


「じゃあ失礼します」


妖狐。


「……」


妖狐は木の陰に隠れた。


そして。


「……」


小声で。


「……化粧してないのに……」


「……」


「私、勝った……」


自信を取り戻した。


---


# 第二十組


そして。


二十組目。


この組から。


大会は完全におかしくなった。


村人たちが森に入る。


鬼。


「がおおおお!」


村人。


「きゃあ!」


鬼。


「……」


「……」


鬼。


「……」


村人。


「……」


鬼。


「……」


村人。


「……」


鬼。


「……」


村人。


「……」


鬼。


「……」


突然。


鬼が倒れた。


ドサッ。


村人。


「え?」


「鬼さん?」


「大丈夫ですか?」


鬼。


「……」


気絶。


---


# 異変


魔王軍監視員が駆け寄る。


「どうした!?」


鬼。


「……」


「鬼!」


「起きろ!」


「何があった!?」


鬼は気絶している。


魔王が飛んできた。


「どうした!」


四天王。


「分かりません!」


「人間に何をされた!?」


「何も!」


「ではなぜ倒れた!」


そこへ。


別の場所から報告。


「大変です!」


「何だ!」


「雪女が倒れました!」


「何!?」


「一反木綿も!」


「何!?」


「ぬりかべも!」


「何だと!?」


「天狗も!」


「まさか!」


「鵺も!」


「……」


「鎌鼬も三人とも!」


「……」


魔王。


「何が起きている!?」


---


# 大捜索


魔王軍総出で調査。


妖怪たちを探す。


ろくろ首。


発見。


倒れている。


一反木綿。


木に引っかかっている。


ぬりかべ。


地面に倒れている。


砂かけばばあ。


砂山の横で気絶。


子泣き爺。


座ったまま気絶。


河童。


池に浮いている。


天狗。


木の上で気絶。


雪女。


氷の上で気絶。


座敷童子。


布団の中で気絶。


鬼。


地面に大の字。


鵺。


巨大な身体を横たえている。


牛鬼。


「……」


こちらも気絶。


魔王は頭を抱えた。


「どういうことだ……」


そのとき。


一つ目小僧が目を覚ました。


「う……」


「おい!」


魔王が駆け寄る。


「何があった!?」


一つ目小僧。


「……」


「誰にやられた?」


「……」


「人間か?」


「……違う」


「では何だ?」


一つ目小僧は震えながら言った。


「……顔」


「顔?」


「……」


「どんな顔だ?」


「……」


一つ目小僧。


「**すっぴん……**」


魔王。


「……」


四天王。


「……」


師団長。


「……」


オーク。


「……」


魔王。


「何だって?」


一つ目小僧。


「人間の……」


「うん」


「……すっぴん……」


「……」


「怖かった……」


一同。


「…………」


---


# 原因判明


魔王は理解できなかった。


「すっぴん?」


一つ目小僧。


「……」


「化粧していない顔?」


「……」


「それが怖かった?」


「……」


一つ目小僧。


「違う」


「何?」


「**怖すぎた**」


魔王。


「……」


一つ目小僧。


「最初は化粧してたんだ」


「うん」


「人間らしかった」


「うん」


「ところが途中から……」


「うん」


「……」


「……」


「……」


「……」


「化粧を落としていた」


魔王。


「……」


一つ目小僧。


「見た瞬間――」


「うん」


「……」


「……」


「気を失った」


魔王。


「……」


魔王軍。


「……」


そして。


魔王が叫んだ。


「全員調査しろ!」


---


# すっぴんの恐怖


調査の結果。


驚くべき事実が判明した。


人間たちは。


肝試しに来る前に。


暑さで化粧が崩れた。


汗で落ちた。


途中で面倒になった。


ある者は最初から化粧をしていなかった。


つまり。


魔王軍が見ていたのは、


**本物の人間のすっぴん集団だった。**


妖狐。


「……」


「そんな……」


雪女。


「……」


「私より怖い……」


鬼。


「……」


「鬼より怖い……」


のっぺらぼう。


「……」


「顔があるのに怖い……」


一反木綿。


「……」


「布団かぶって寝たい……」


天狗。


「……」


「鼻が長い俺でも無理だ……」


鵺。


「……」


「俺、魔物なのに……」


そして魔王。


「……」


「人間のすっぴんとは……」


四天王。


「未知の恐怖です」


---


# 緊急会議


魔王軍本部。


緊急会議が開かれた。


議題。


**「なぜ人間のすっぴんは怖いのか」**


賢い魔族が分析する。


「化粧という擬態を解除したからでは?」


「なるほど」


「本来の姿が現れる」


「なるほど」


「つまり、人間は普段から化粧によって本性を隠している」


「なるほど……」


「すっぴんこそ本当の姿」


「……」


全員。


「怖い」


そこへ田中がやってきた。


「何の会議ですか?」


魔王。


「人間のすっぴんについてだ」


田中。


「……」


魔王。


「何だ?」


田中。


「それ、あまり深く考えない方がいいですよ」


魔王。


「なぜだ?」


田中。


「女性に聞かれたら怒られます」


魔王。


「……」


田中。


「特に『すっぴん怖い』は」


魔王。


「……」


四天王。


「ではどうする?」


田中。


「……」


「大会を続けるには?」


田中。


「逆にしましょう」


魔王。


「逆?」


田中。


「肝試しをやめて」


「うん」


「**すっぴん大会にするんです**」


全員。


「…………」


魔王。


「……」


田中。


「参加者のすっぴんを見て、一番怖かった人を決める」


魔王。


「……」


田中。


「これなら魔王軍も参加できます」


魔王。


「……」


「どうです?」


魔王は考えた。


そして。


「やろう」


---


# 緊急変更


翌朝。


大会本部の看板が変更された。


### 第一回・肝試し大会



### 第一回・恐怖のすっぴん大会


村人。


「……」


田中。


「……」


ルナ。


「……」


セレス。


「……」


女騎士。


「……」


魔王軍。


「……」


誰も何も言わない。


そこへ司会が叫ぶ。


「大会内容を変更します!」


村人。


「何で!?」


「お化けが怖がって気絶したためです!」


「……」


「原因は、人間のすっぴんでした!」


「……」


「よって!」


「……」


「本日より!」


「……」


「**恐怖のすっぴん大会を開催します!**」


会場。


「…………」


そして。


一番先に手を挙げたのは。


聖女ルナだった。


「参加します!」


セレス。


「私も!」


女騎士。


「私も!」


妖狐。


「……」


「私も」


雪女。


「私も……」


鬼。


「……」


「俺も」


田中。


「鬼は化粧してないでしょう」


鬼。


「そういう問題じゃない」


---


# 第一回すっぴん大会


審査員。


八百屋の田中。


魔王。


四天王。


武道家ゴウ。


そして。


恐怖で気絶した妖怪たち。


最初の参加者。


聖女ルナ。


化粧を落とす。


「……」


会場。


「……」


ルナ。


「どうですか?」


田中。


「……」


ゴウ。


「……」


魔王。


「……」


全員沈黙。


ルナ。


「怖いですか?」


田中。


「……」


「田中さん?」


田中。


「……神々しい」


ルナ。


「え?」


田中。


「化粧している時より、聖女っぽい」


魔王。


「減点!」


ルナ。


「何で!?」


魔王。


「恐怖大会だ!」


---


# 第二参加者


大魔術師セレス。


すっぴん。


田中。


「……」


魔王。


「……」


ゴウ。


「……」


セレス。


「どう?」


田中。


「……」


「怖い?」


田中。


「いや」


「じゃあ?」


「眠そう」


セレス。


「……」


「徹夜したんですか?」


「……」


「昨日の夜、魔法の研究?」


「……」


「当たり?」


「……」


セレス。


「減点とかじゃなくて、恥ずかしいんだけど!」


---


# 第三参加者


妖狐。


すっぴん。


会場。


「……」


妖狐。


「どう?」


魔王。


「……」


四天王。


「……」


田中。


「……」


妖狐。


「怖い?」


田中。


「……」


「田中?」


「……」


田中。


「普通に美人ですね」


妖狐。


「……」


「……」


妖狐。


「勝った」


田中。


「何に?」


妖狐。


「人間に」


---


# そして問題の参加者


最後。


蕎麦屋のおばちゃん。


田中。


「おばちゃん?」


「何?」


「参加するの?」


「するよ」


「……」


蕎麦屋のおばちゃん。


「化粧なんかしないけど」


「……」


「何か問題ある?」


田中。


「ないけど……」


蕎麦屋のおばちゃんが登場。


魔王。


「……」


四天王。


「……」


鬼。


「……」


雪女。


「……」


一つ目小僧。


「……」


のっぺらぼう。


「……」


お岩さん。


「……」


お菊さん。


「……」


全員が震え始める。


おばちゃん。


「何?」


魔王。


「……」


「どうしたの?」


魔王。


「……」


「怖い?」


魔王は答えた。


「……はい」


おばちゃん。


「何で?」


魔王。


「分からん」


鬼。


「俺も」


雪女。


「私も」


一つ目小僧。


「……怖い」


のっぺらぼう。


「顔があるのに……」


蕎麦屋のおばちゃん。


「失礼ね!」


魔王。


「すみません!」


---


# 優勝者


審査結果。


第一回。


恐怖のすっぴん大会。


優勝。


**蕎麦屋のおばちゃん。**


二位。


妖狐。


三位。


鬼。


四位。


雪女。


五位。


聖女ルナ。


田中。


「……」


おばちゃん。


「どうしたの?」


田中。


「いや……」


「何?」


「蕎麦屋のおばちゃん、優勝おめでとう」


「ありがとう」


「賞品は?」


司会。


「高級野菜一年分です!」


おばちゃん。


「田中、店から持ってきて」


田中。


「賞品を自分の店から出すの?」


魔王。


「……」


田中。


「……」


魔王。


「……」


田中。


「まあ、いいか」


---


# 大会終了後


魔王軍は解散した。


妖怪たちは帰っていく。


鬼。


「来年もやるのか?」


田中。


「暑かったら」


鬼。


「……」


「参加する?」


鬼。


「……」


「いや」


田中。


「何で?」


鬼。


「来年は化粧してくる」


田中。


「何で?」


鬼。


「すっぴんが怖いと言われたからだ!」


雪女。


「私も」


天狗。


「俺も」


鵺。


「俺は化粧できない」


一反木綿。


「俺も」


ぬりかべ。


「俺も」


田中。


「……」


こうして。


魔王軍は新たな決意を胸に帰っていった。


そして翌年。


魔王軍本部では。


化粧教室が開かれた。


講師。


聖女ルナ。


「まずファンデーションからです」


魔王。


「ファンデーション?」


四天王。


「何だそれ?」


鬼。


「顔に塗るのか?」


ルナ。


「そうです」


鬼。


「戦闘用か?」


「美容用です」


鬼。


「……」


魔王。


「よし」


「はい」


魔王は真剣な顔で頷いた。


「来年こそ、人間に勝つ」


そして。


魔王軍は、


武道家に勝つためではなく。


**すっぴんに勝つための修行を始めた。**


そのころ八百屋では。


田中がトマトを並べていた。


ルナがやってくる。


「田中さん」


「はい?」


「来年の大会、もっと怖くしてもいいですか?」


田中。


「何をするんです?」


ルナ。


「完全な寝起きで参加します」


田中。


「……」


ルナ。


「髪もボサボサ」


田中。


「……」


「寝癖もそのまま」


田中。


「……」


「顔も洗わずに」


田中。


「……」


「大会に出ます」


田中。


「やめましょう」


ルナ。


「なぜ?」


田中。


「魔王軍が全滅します」


その瞬間。


遠くの魔王城から、


「やめろおおおおおおおおお!」


という魔王の悲鳴が聞こえた。


夏はまだ暑い。


しかし。


魔王軍にとっては――


**来年の夏のほうが、もっと暑くなる予定だった。**


なぜなら。


来年は、


**「恐怖の寝起き大会」**


が開催される予定だからである。


そして八百屋の田中はまだ知らない。


その大会には、


**武道家ゴウが参加する予定であることを。**


しかもゴウは――


**寝起きでも「押忍!」と叫ぶ。**


魔王軍は、まだ知らない。


それが一番怖い。


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