16 みんなと別れる、オマケ
シヤ視点。
前回が少し長かったぶん、今回短め。
翌日の早朝。
「んじゃ、また、会えたらよろしく」
私は、王都に戻る為、見送りに立つ、みんなに笑いながら挨拶をした。
「また、会えるよな?」
ガンが右手を差し出しながら尋ねる。
「もちろん」
「また、たくさん話そうね」
ミワは『約束だからね』と言いながら抱きついてきた。
「その時は、お互い話す事が多いだろうね」
ミワの頭を軽く撫でながら答える。
「私は、みんなに支えてもらいながら、みんなの柱になるわ」
チサトは決意の瞳を見せ、宣言する。
「君なら出来る……けど、ムチャをせずに頑張れ」
「私も、みんなを守るよ。
シヤも大事に思える仲間見つかるといいね」
「本当、サナエは、私の事よくわかってる。
それに自分のするべき事をわかっている。
だから、いつでも安心出来る。
ガンと仲良くね?」
私達は子供の頃にやった、お互いの両手を握り『また会える』と誓いの挨拶をし笑う。
「……」
東方院はなにも言わない。
「東方院も頑張れよ?」
私は苦笑しながら言った。
「……秋雨」
「ん?」
「頑なに東方院って言うな。
次から、秋雨でいい……」
顔を真っ赤にして横を向き言った。
「……初めて見た、ツンデレ」
「違う!」
東方院……アキサメは、更に赤くなりながら怒鳴った。
「いや、ツンデレだろ」
ガンは言いきる。
「ツンデレね」
チサトも頷く。
「「ツンデレ~」」
ミワと、サナエが、アキサメを突きながらからかう。
「違うって……もういい、さっさと行け」
アキサメは、再び横を向き、追い払う様に手を打ち払う。
「からかうつもりはなかったんだが……ごめん、アキサメ。
そうだ、写真撮っていいかな?」
ポケットから、スマホを取り出しかざした。
「いいね、撮ろう、撮ろう!」
サナエは両手をあげ、はしゃぐ。
宿の前ではしゃぐ私達を、通り過ぎる町人達は怪訝な顔で見ながら通り過ぎていく。
残りのバッテリーも気にせず、ツーショットから、男だけや、女4人、最後にみんなで写しあって、何枚もの記録を残した。
「……そうだ、これ渡しておくよ」
私はバッグを取り出し、中から3つ同じ物を取り出した。
「……なに、これ?」
アキサメ、チサト、ミワの3人に渡したのは、手のひらにのる、金属で出来た四角い箱の様な物に、双葉の様に伸びたモノ。
「これ、私が作った、おそらく最軽量のスマホ充電器、あんど携帯アンテナ。
この双葉がパネルで太陽の光を集め、下のボックスの側面にUSBジャックが二口あって、反対側に電源プラグの差し込みがあるから、USBがついたコードがあれば充電出来るよ。
あと、パネルの間の芯を伸ばせばアンテナになるから、繋げなからなら電話も出来るよ。
障害がなければ約10キロはいけるかな?
あ、電話番号は使えないから、画面に『アンテナ通信アプリ』が自動登録するから、それで使ってね」
「……」
説明が長かったのか、みんな黙っている。
「あれ……どうしたの?」
「え、いやいやいや……これ、シヤが作ったの?
てか、なんで持ってるの?」
サナエが混乱しながら尋ねる。
「いや~、前に作ったはいいんだけど、向こうだと使うところがなくてバッグに入れっぱなしだったんだよね。
昔から、こういうの作るの趣味って、サナエ知ってるだろ?」
「いやまあ、知ってるけど……こんな物まで作ってると思わないよ?」
「まあ、いいじゃん?
機能の半分以上は使えないけど、これで充電気にせず、使えるでしょ?」
「まあ、そうだけど……全員分はないのか?」
アキサメは、無理矢理納得して尋ねる。
「う~ん、さすがにね?
でも、いっぺんに充電は出来るでしょ?」
「そうだな……まっ、サンキューな。
壊れるまで、使わせてもらうわ」
ガンが言うと、みんな笑顔で頷く。
「……なんの道具か気になりますが、シヤさん。
あなたも無理、無茶をせずに生きてください」
最後にフィガロが声をかけてきた。
「……フィガロさん。
ええ、お世話になりました」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました。
あなたとは、これが最後の会話になるでしょう。
……巻き込んでしまい、本当に申し訳ございません」
フィガロは深々と頭を下げた。
「フィガロさん……頭をあげてください。
私としては、こちらの世界に来れてよかったと思ってます。
向こうでの生涯の役目もなくなり、こうして、みんなと話せる様になったんですから」
「シヤさん」
「じゃ、これで本当に行くね。
みんな、元気で……また、会おうね」
こうして、私は、みんなから背を向け、町を出て、王都に向かった。
ここまでが1章にあたります。
面白い、続き読みたい、気になる、と思った方。
よろしければ、評価の星に光⭐️を灯してください。
よろしくお願いします。