17 東方院秋雨と八頭士也 前編
高校に入って、どうして秋雨が、シヤを嫌う事になったかの話です。
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4月、高校入学初日、俺の名前が書かれているクラス大半は近くだったという事で、見知った奴等が多い。
幼なじみの千里、願、さなえは見事に別れ、実和は同じクラスになった。
実和は、中学2年にあがる頃から特にモテる様になり、俺も少し……いや、かなり……本当は小学生の頃から好意をもっていた。
だから、何度か告白されたと聞いた時は焦った。
実和は、幼なじみである俺達以外には人見知りするほうで、いつも困り顔で千里達と一緒に相談を受けていた。
俺も、実和が幼なじみという近い存在のうえに、自分も断られたらと思うと言い出せなく、幼なじみのままでいいと思っていた。
千里達と別れ、割り振られたクラスに入って顔見知りと挨拶をし、黒板に書かれた座席を見て、席に向かう途中、実和が1人の男子生徒を見つめている。
その男子生徒は外国人の様に肌は白く、長く伸びた髪に黒縁のメガネをかけた地味めで、まわりを気にせずスマホを見ていた。
同じ中学でもなく、この辺りでもない。
おそらく、他県からきたのだろう、つまらなそうにしていた。
「実和?
アイツがどうかしたのか?」
「えっ?
あ……ん~ん、なんでもないよ」
「そうか?
そうだ、早く席に行こうぜ」
「うん、そうだね」
この時は、まだ特に男子生徒……八頭士也の事は気にしなかった。
入学式も終わり、教室でこれからの連絡事項を担当から聞き、各自の自己紹介をし、今日は解散となった。
新しく知り合った者同士、早くもある程度のグループが出来、ワイワイと騒ぐ声が聞こえるなか、1人の男子生徒……八頭士也は学校指定のスポーツバッグを手にし、教室から出ようとしていた。
不思議なもので、彼は1人でいる事が多かった。
話かける者もいて、彼は普通に対応し話して、笑いあい、悪い印象もなく会話が終わり、また1人になるという感じだった。
先に終えた千里達が集まっていたのか、八頭が扉を開けようとした時、3人が入ってきた。
「あ、悪い……よー、秋雨、終わったなら帰ろうぜー」
お互い塞がった状態になり、願が横に避けつつ中に入っていった。
「いや、こっちこそ」
八頭も詫びて横に避けた。
願、千里に続いて、さなえも八頭の横を通る時、立ち止まって、八頭の顔を覗き込む様に見る。
「……なに?」
若干さなえのほうが背が高く、腰をまげつつ覗き込むから、八頭はいぶしがる様に尋ねた。
「もしかして……シヤ?」
伺う様にさなえは、八頭に問う。
「……はあ?」
「シヤだよね?
私、さなえだよ。
久しぶりだね」
どこか確信をもってはしゃぐ、さなえは八頭に挨拶する。
「……君がいうシヤって誰の事か知らないけど、人違いじゃないかな?
それより、君、だれ?
はじめましてだよね、そこを退いてくれないかな?
用事があって早く帰らなきゃならないんだ」
対し、八頭は帰りたいのに邪魔をしている、さなえを軽く邪険にいう。
「……え?
シヤじゃないの?
……ご、ごめん。
はい、どうぞ、邪魔してごめんね?」
否定され、勘違いと気づいたさなえは、慌てて中に入り道を譲った。
「どうも」
八頭はそう言って教室を出ていった。
「……なんだ、アイツ?
てか……さなえも、いきなりなにしてるんだよ」
「うん、ごめん……なんか……雰囲気が知り合いににていたから」
「知り合い?」
千里も気になって尋ねる。
小学生半ばで転校してきてから、ずっと一緒にいるさなえといて、自分達が知らない相手故、それ以前の事だろう。
「う~ん……雰囲気は似ているんだけど~?
やっぱり、違うかな。
よく考えたら、髪の色とか全然違うし」
「なんだ、それ?
それより、さっきのやめろよな。
顔、確かめるのに覗く様に見るの。
端から見て、お前、因縁つけるヤンキーみたいだったぞ」
願が、さっきのさなえの行動を注意する。
「だよね?
でも、願くん……ヤキモチ?」
実和が同意し、願をからかう。
「なっ?」
「いや、だって、さっきさなえちゃんが、彼にいきなり顔を寄せて話かけるから……ね、千里ちゃん?」
「そうね、彼氏としたら気になるわね。
ヤキモチもやくでしょ?」
実和が、千里は話をふり同意し頷く。
「だから、違うって!
あーもう、秋雨、実和、帰れるなら帰ろうぜ」
顔を赤くしながら願は、話題を変える為、俺達を急がせる。
「わかったよ、もうちょっと待て」
慌てる願を内心笑いながら、俺は返事をした。
その間も千里達に、願はからかわれていた。
そんな事もすっかり忘れ、月日は少し流れ、次に八頭を気になったのは、一学期中間試験を終えた翌日、試験の鬱憤をはらす為に行われた三学年全部がトーナメントで争う球技大会だった。
バスケ、サッカーの2つ、男女別々4チームに別れ、俺はバスケで、その中に八頭も含まれていた。
結果、俺達のチームは二年、三年をも倒し続け優勝した。
点数を入れまくった俺はMVPを手にいれた。
だが、俺達の試合を見て気づく奴はいただろうか?
本当にチームを貢献していたのは八頭だと。
はっきり言って、それに気づいたのは偶然だと思う。
そして俺は驚いた。
すべての流れは、八頭からだという事に。
俺が点を入れるフォワード、相手のシュートを防ぐセンターを兼用で動いていたなら、八頭は相手のパス、シュートコースを事前に塞ぎ、試合を運ぶポイントガードをしていた。
八頭は、ほとんど自分からシュートは打たず、パスを回し、チームを上手く動かしていた。
そして、出されるパスは受け取りやすく、シュートもしやすい。
おかげて点数がバンバン入った。
八頭はけっして傲慢になる事もなく、誰かに気づつかれずチームを導いていき、誰かがミスをしても責めず、励まし、次に繋がる様にもっていった。
凄い奴だと思った。
すべての試合が終わり、帰りに打ち上げをしようとなった。
駅前にあるカラオケチェーン店に行く。
そこならクラス全員が入る事が出来る大部屋があり、1つ借りて色々とみんなでつまめる食べ物や、各自の飲み物を頼んだ。
打ち上げが始まると、そこでも俺達バスケチームは持て囃された。
まずは、俺達から順番に歌う事になり、俺は最近のヒットソングを歌い、八頭は意外にも親世代がよく聞いた洋楽のリズムに乗ったバンドソングを歌う。
発音もよく、低い音程も高い音域も声がきれる事もなく、音符にあわせて歌った。
英語の歌詞の意味も、液晶の画面に歌詞とともにかかれ、この曲をよく知らない者も、初めて聞く者も、八頭が歌にリズムに合わせ盛り上がっていく。
歌い終わった後は、盛大な拍手と割れんばかりの歓声。
あまりの煩さで店の店員に怒られた。
みんなで謝った後、ボリュームを下げ八頭をたたえ、次の者が途切れる事なく順番に歌っていった。
しばらくして、歌う者、選曲する者、新しいメニューや飲み物を追加で頼む者、しゃべりながら食べる者、各自が楽しむなか、俺は八頭に声をかけた。
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