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11 王国魔道士団と、王国騎士団

マルチ視点です。

「よって、これより王国の意思に逆らい、逃亡を起こすであろう、前魔道士長フィガロ、ならびに異世界より召喚した6名の者達を捕らえ、陛下の前に必ず差し出さねばならぬ。

 ここに、陛下より王国騎士団20名は、私魔道士長ディアス・マルチーノの指示のもと、動いてもらう」

 ディアスは、国王が書き記した書類を目の前にいる、総騎士団長であるアルベルト・クロスに見える様に開き突き出した。

「と、いう事だ。

 貴様ら精鋭20名を用意し、とっととフィガロの奴を捕らえに行くぞ!」


「……なるほど、理由はわかりました。

 だが、我が騎士団は、さきほどまで勤務していた者達と代わり、現在、夜間勤務の者達が、王城の各地へと配置し終わり、また警邏している者もおりまして、ここに残っている騎士達、あわせて10人程、騎士を呼び戻すとしても時間はかかります。

 また、警備、警邏をしている者を呼び戻す場合、配置変え等多くの事を決めなくてはなりません」

 アルベルトは、陛下の書き記した書類を受け取り、確認し、丁寧に折り畳み、困った風に右手で口元を隠す様にして話す。


「うるさい!

 そこは、どうにかしてでも人数を集めろ!

 国王陛下の命を逆らうつもりか!」


「いいえ、その様なつもりはございません。

 ただ、こちらも陛下を含む王族の方達、王城に残り仕事をしている者達、強いては王城を守る騎士を減らしてでも、人数を集めなくてはなりません」


「……城の警備を減らすのは不味いな。

 どうにかならんか?」

 ディアスは悔しそうにつぶやき、別の案を求めた。


「そうなりますと、本日勤務を終わりし者、休日となる者を呼び出さなくてはなりませんので、早馬をだしても……そうですね、早くても30分はいただきたく思います」


「……20分だ。

 20分で集めよ、遅れる場合は、先に警備の者から集め、呼び出した者達が来るまでは、減った分、警備を強化すればいいだろう。

 どうだ!」


「なるほど、さすがは魔道士長。

 見事な案。

 さすれば、今から急ぎ、集めさせていただきます」

 アルベルトは、さぞ感服した様子で一礼し、残っている騎士達に指示を出した。


「20分とは言ったが、早い事にこした事はない。

 先にフィガロの屋敷に向かう、急げよ!」

 ディアスはそう言い捨て、騎士団の控え室を出ていった。


「わかりました」

 アルベルトは、もう一度一礼し、ディアスの気配が完全に消えた事を確認し、頭を上げ、馬鹿にした様に笑った。


「……ふん、相変わらずの馬鹿な奴だ。

 フィガロ殿も、さぞ迷惑極まりない事だったろう。

 お前達も、しばらくの間、休憩に入れ。

 ……まったく、奴はこちらの事を知らな過ぎる」

 アルベルトは、新たな指示を出したあと、備えられたソファーに座り、出された紅茶を見て、部下に礼をし、喉をうるわせる。


「本当です。

 奴ら、魔道士達は巨大な魔力、魔法を使えるからといって、私達騎士団を馬鹿にし過ぎです」

 紅茶を差し出した部下……総騎士団長の秘書であり、女性でありながら、3人の騎士団長の1人でもある……リセラ・マーガレットは対面のソファーに静かに座り、憤慨する。


 魔力が多く、魔法に長ける貴族の集まりである王国魔道士団。

 対し、魔力が少なくとも剣や槍等、武器の扱いを努力した貴族、また、平民でも身体を鍛え、技を磨き、騎士団の一員と認め選ばれた者の集まりである王国騎士団とは、仲が悪い。


 魔力国家であるプレリューム王国のなか、エリート気取りの魔道士団は、その様な集まりの騎士団を馬鹿にしている。

 仕事は大物の魔物の討伐に呼ばれ出向く以外は、さほどなんの仕事をする訳でもなく、時間になれば王城から去るという毎日。


 対し、毎日朝から夜が明けるまで、ローテーションを組み、王城を守るという騎士団は、年々人数を増やし、無理の無い様にしている。

 また、騎士団選抜で騎士になれなかった者達は、王都を守る兵士として残るか、生まれ故郷に戻り守る仕事をしていた。


 長年総騎士団長を勤めるアルベルトは、三交代制で、騎士を、どの時間帯でも余裕に勤務を入れていた。

 故に、ディアスに言った様に、警備をしている者を戻す事もなく、また休日を楽しんでいる者を呼び出さなくても、ここにいる者達で十分な人数……20人を超える者……が控え室に残っている。

 そうする事で長めの休憩をとり、勤務に集中する形態をとっていた。


 そして騎士団と、フィガロ個人との仲は良かった。

 もちろん、最初に接触した時は、平民上がりとはいえ、魔力の多い魔道士のフィガロを騎士達は警戒していた。

 だが、フィガロは騎士達の態度を気にせず、関わり続けていき、信頼を得た。

 勤務時間以外の訓練に混ざり、時にはフィガロが魔法を放ち騎士達が対処する。

 時には、支援魔法を、時には怪我をした騎士に魔法で治癒を行い、騎士達はフィガロを友と認めていた。


「まあ、10分前になれば用意して向かえばいいだろう。

 ……出立すれば、もしかするとしばらくは戻れないかもしれん。

 リセラ……はついて来るつもりでいるみたいだし……ビノ、そうなった場合は後の事を頼む。

 まあ、戻れない時は通信魔法具で連絡する」

 リセラの横に座っている、団長の1人、ビノこと……ビンセント・ノアが「了解した」と頷く。


 その横で、リセラが「当たり前です」と頷いている。


「じゃあ、ほんのしばらくゆっくりさせてもらうか」

 アルベルトは笑い、紅茶を楽しむ。


 ディアスの足をのらりくらりと引っ張るつもり満々で話合いながら。





 そうして時間をかけて、アルベルト率いる騎士20名は、フィガロの屋敷へと到着し、ディアスと合流した。


「遅くなりました」

 アルベルトは、フィガロ邸で色々調べいる魔道士達の中、ディアスを見つけ到着した事を伝えた。


「……遅かったではないか」

 ディアスは、アルベルトを睨む。


「申し訳ございません。

 急ぎましたが、人数を集めるのに時間がかかり「もういい」……はっ、失礼しました」


「フィガロ達は、すでに屋敷に居らず、どうやら庭にある魔方陣で、王都を出たようだ。

 部下の話では、繋がっていた出口の魔方陣は崩され、魔方陣を使用出来ないらしい。

 これより、王都を出て、フィガロ達を追跡する。

 お前らもついて来い、いいな」


(今頃来やがって、なんて思っているみたいだな?)


「わかりました。

 フィガロ殿がとんだ場所は解析出来ているのでしょうか?」


「……今、させている。

 まもなく終わるだろう」

 ディアスは、アルベルトを見ず答える。


「……ディアス様、解析終わりました。

 どうやら、東の大森林の中、ここより約50キロのところにとんだみたいです」

 解析していた魔道士が、慌ててこちらに来て報告を始めた。


「そうか……案外近いな?

 では、これより王都を出て、フィガロ達を追跡、捕獲する。

 いいな!」

 報告を聞いたディアスは王都を出ての追跡を大声で宣告する。


「……ディアス様、よろしいでしょうか?

 約50キロといっても、王都から直線で50キロでごさいまして、実際には森林のひらいた道を通れば距離にして80から100キロはごさいまして……それに、これから更に暗くなり、森の中だと」

 気合いを入れ、やる気になっているディアスに対し、申し訳なさそうに、さきほどの魔道士が告げた。


「……それがどうした。

 陛下を馬鹿にした罪は重い。

 どれだけ距離があろうが、フィガロは捕らえる。

 必ずな……出立する準備を急げ」


「は、はいっ」


(ふん、陛下ではなく、お前自身が馬鹿にされたと思っているんだろ?)

 アルベルトは、張りつけた笑顔のまま、ディアスをけなす。


「……では、我らも準備に向かわせていただきます」

 アルベルトは、一礼し離れた。


 魔道士団と、騎士団は、共に王都を出て東の大森林に入り、フィガロ達の捕獲に向かった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 巨大化しすぎた組織の名物・足の引っ張り合い。 主人公たちの付け入る隙というやつですね。
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