表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/60

041

「おや? まだ起きてたんだね、ミドリちゃん」


 平井をゲストルームに連れて行ったあと、藤村は寝室へと向かっていた。が、途中で誰かを探している様子のミドリの姿を目撃したので、夜間に相応しいトーンで声を掛けた。


「すみません。なかなか眠れなかったものですから。あのっ。少しだけ、お時間いただけますか?」

「探してたのは、僕だったんだね。構わないよ。ここで立ち話するのもアレだし、トランプを置きっぱなしにしてるのも何だから、応接間に移動しよう」

「はい」 

 

 そう言って、藤村が先に立って歩き、ミドリは、そのあとをついて行く。

 応接間に辿り着くと、先程まで平井が座っていたソファーに座り、ローテーブルの上に散らばったトランプを一束に集めつつ、ミドリにも着席を促す。

 ミドリは、逡巡する様子を見せながらも、遠慮がちに藤村の向かいのソファーに腰を下ろす。


「眠れないほど、君の頭を悩ませてることは何かな?」

「それがですね……」


 藤村が発言を促すと、ミドリはおもむろに話し始める。


「昨夜、いろいろあって忘れてたんですけど、今朝になって考え直して、これしかないと思ったんです」


 そこで一旦区切ると、ミドリは決然とした表情で藤村を見据え、深々と頭を下げながら言い切る。


「藤村様。わたしと結婚してください!」

「待った! 返事をする前に、ちょいとばかし、話を整理させてくれ。ひとまず、頭を上げなさい」


 ミドリが頭を上げると、藤村は慌てて脳内で疑問点を洗い出しながら、どうしてその結論に至ったかを探り始める。


「僕は、もう四十を過ぎているし、一度結婚して娘もいる。それに対して、君は、まだ十六で未婚だ。ミドリちゃんには、僕なんかより、もっと君に相応しい青年がいる」

「でも、お嬢様に言われたんです。それを聞いて、悪くない案だと思って」

「待って。僕が留守にしてるあいだに、シノは、君に何を言ったんだい?」

「お嬢様からは『わたしのお母様になって』と」

「あぁ、そういうことか。やっと話が繋がったよ」

 

 事の発端に行き着くと、ひとまず藤村は納得し、立ち上がってミドリに言う。


「この話の元凶は、まさか君が真に受けるとは、夢にも思っても居ないだろうよ。まっ、今夜は遅いから、また今度ゆっくり話そう」

「どういうことですか?」

「君は、何も気にしなくて良い。シノの言葉を忘れて、おやすみ」

「はぁ。おやすみなさい」


 どこか腑に落ちない様子で首を傾げつつも、ミドリは立ち上がり、藤村に一礼して応接間を出た。


「まったく。今夜の借りは、明日の朝に耳を揃えて返してもらおう」


 遅れて応接間を出た藤村は、ミドリが廊下の向こうへと消えたのを確認すると、寝室とは反対方向へと歩きはじめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ