034
「明日は、藤村様が平井様をお連れになって戻られますので、アオイくんは、昼食を早めに済ませて迎えに行くように」
「はぁい」
ティータイムから数時間後のこと。
ディナーの後片付けを終え、エリ、アオイ、それからミドリの三者は、パチパチと燃え盛る暖炉のある部屋で、明日の予定について最後の確認をしている。
部屋の窓にはカーテンが引かれていて見えないが、外は、すっかり日が沈み、もうすぐ月が昇る頃合いである。
「それから、ひょっとしたら、平井様は、そのままお泊りになるかもしれませんので、送迎のあいだ、ミドリさんは、わたしと一緒にゲストルームのベッドメイクを手伝ってください。……ミドリさん?」
「おーい、ミドリちゃん。呼ばれてるぞ?」
「あっ、ごめんなさい。えーっと、なんでしょう?」
アオイがミドリの顔の前で左右に手を振ると、上の空だったミドリがハッと気付き、エリに聞き返す。
エリが、要点を繰り返したあと、アオイは、心配そうにミドリの表情を窺いながら訊く。
「何かあったの、ミドリちゃん。ティータイムのあとから、様子がおかしいよ?」
「ううん、なんでもないんです。絵本の続きを考えちゃってて。ご心配なく」
「空想好きなのは結構だけど、わたしの話は、ちゃんと聞いててね。今日は、ココまで。明日は来客応対で忙しくなるだろうから、ふたりとも、今夜は早く寝なさいよ」
「はぁい。それじゃあ、おやすみ~」
「おやすみなさい」
口々に挨拶を交わすと、アオイは、植物の様子を確かめるために温室へ、ミドリは、寝かしつけるためにシノの部屋へ向かい、エリは、暖炉の始末をしてから自分の部屋へ向かった。
実に平和的に一日が終わった、と思いきや。話は、そう単純明快とはいかないのである。そのあたりは、次話を待たれよ。




