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似ているからこそ
「アイリス」
私は愛しい妻の肖像画に手を触れる。
美しいブロンドの髪は腰まで波打ち
ルビーのように紅く煌めく大きな瞳は
白い肌によく似合っている。
華奢な手はドレスの前で重ねてあり、
淑女の鑑である生前の彼女を思い起こさせた。
「旦那様」
控えめな声に振り向くと
従僕のレンが背後に立っていた。
「どうした?」
「本日はソレイユお嬢様の誕生日です」
「分かっている」
「……せめて、お嬢様に
お顔を見せに行ってはいかがですか?」
ため息混じりの声音に私は
視線を赤い絨毯へと向けた。
「無理だ」
「っ……旦那様! それではあまりにも
お嬢様が可哀想です!!」
そんなこと分かっている。
私は拳を握り締め、小さく息を吐いた。
「ソレイユが悪くないことは分かっている……
だが、私にはまだ時間が必要だ」
「ですが!!」
私はその先の言葉から逃げるように
部屋から出ていく。
すまない、ソレイユ。
お前はあまりにもアイリスと似過ぎている。
ルビーの瞳に波打つブロンド。
口元を隠して笑う仕草さえも。
廊下の先にブロンドの髪を揺らす
少女の後ろ姿が見え、思わず立ち止まった。
拳が震える。
私は歯を食いしばりその姿から
背を向けた。
ソレイユは悪くない。
ただ、私の弱さが
一歩踏み出せないだけなのだ。
私は執務室に向かうために歩き出した。




