絶望の淵
期待するのはもうやめた。
だって、期待すればその分虚しくなるだけだから。
期待すればするほど、絶望に突き落とされる。
星も見えない夜空に浮かぶふたつの月が
わたくしを嘲笑うかのように見下ろしている。
物心ついた時から父は
わたくしを愛してはくれなかった。
父が愛したのは世界でただひとり。
わたくしの母であり
父の妻。
わたくしの魔力が強すぎたせいで
わたくしを産んだと同時に命を落とした母。
母の命を奪ったも同然のわたくしは
憎まれ、屋根裏部屋で過ごすことを
余儀なくされた。
父である侯爵から見放されたわたくしは
陰で笑いものにされ、友達など
できるはずもなかった。
誕生日の今日も、屋根裏部屋から
窓を開け放ち、夜空を見上げているだけ。
「もう、疲れてしまったわ」
その声が静かな世界にひときわ響いた。
何の価値もないわたくしが
この先愛されることなどきっとない。
ねぇ、お母様。
わたくしは何のために生まれてきたの?
お母様が命をかけて産んでくれたというのに
わたくしは何も返せるものがない。
お母様を殺した魔力だけがわたくしが
唯一持っている取り柄。
涙が一筋頬を伝い落ちた。
「魔力なんていらない。
わたくしはただ、愛されたかっただけ。
それだけなのに……」
夜風に波打つブロンドが揺れる。
わたくしの願いは誰にも届くこともなく
黒に吸い込まれていく。
そう、思っていた。




