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【50万PV感謝!】真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます  作者: 難波一
第六章 学園編 ──白銀の婚約者──

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第291話 真祖竜 vs. 真祖竜

白銀の空島──悠天環(ゆうてんかん)を模した亜空間の中央で、二人は向き合っていた。


雲ひとつない空。足元には風に揺れる草原と、遠くに連なる浮島の影。そのすべてが現実と見紛うほどの質感を持ちながら、どこか作り物めいた静けさを纏っている。


アルドは肩を回し、首を左右に倒しながら軽く準備体操をしていた。まるでこれから稽古にでも入るかのような、気負いのない仕草だ。




「──『力を見せろ』って事は……」




彼はそう前置きしてから、ちらりと正面の少女を見る。




「ある程度、本気で戦ってもいいって事なんだよね? ルシアさん」




その声には探るような慎重さと、どこか楽しげな響きが混じっていた。


ルシアは返事を急がない。眠たげな瞳でアルドを一度見つめ、次に視線を下げる。そして、静かに口を開いた。




「……ご自由に。わたしは、わたしの仕事をするだけ」




淡々とした声音だった。そこに感情の起伏はほとんどない。ただ、それが逆に、この場が“遊び”ではないことを際立たせていた。


ルシアの両手が、ふわりと宙に浮く。


指先が舞うように動いた瞬間、彼女の背後に立つ白銀の人形たち──ナイト、ルーク、ビショップが、一斉に構えを取る。甲冑が擦れる低い音が、草原に不気味に響いた。


さらに。地面が、ゆっくりと歪む。

黒い渦が開き、そこから“引き戻される”ように、ひとつの影が浮かび上がった。


ポーン。


先ほどアルドに殴り飛ばされた人形だ。その胸部には、はっきりとした亀裂が走っている。

白銀の装甲は蜘蛛の巣状に砕け、内部の魔力が微かに漏れ出していた。


それを見た瞬間、ルシアの内心に、ほんのわずかな揺らぎが生まれる。




(……スキルでも、魔法でもない。ただの、パンチ一発で……?)




疑念ではない。事実への、純粋な驚愕だった。


ルシアは一度だけ深く息を吸い、両腕を胸の前で交差させる。そして、優雅に、まるで舞踏の始まりを告げるかのように振り上げた。




「──"傀儡演舞(ククロセアトロ)"……」




呟きと同時に、白銀の戦士たちの背中から、銀色の光が噴き上がる。


ゴォォォ──ッ!!


爆風のような音とともに、光は翼の形を取り、周囲の空気を震わせた。草がなぎ倒され、雲が引き裂かれる。


アルドはその光景を見上げ、口元に小さな笑みを浮かべる。




「なるほど」




軽く息を吐きながら、呟いた。




「それが、本気モードって感じなんだね」




ルシアは答えない。右手をすっとアルドへ差し出す。




「──"刺突跳躍(スプリンガー)"」




その瞬間。

ナイトの翼が、轟音を立てて炸裂した。

地面を抉り、衝撃波を引き裂きながら、槍を前方に突き出したまま、音速を超える加速でアルドへと迫る。視界が歪むほどの速度。

空間そのものが引き延ばされる。


だが──


アルドは、逃げなかった。

足を一歩、深く踏み込む。


ドンッ!!


大地に亀裂が走り、周囲の草原が波打つ。




「よいしょおっ!!」




掛け声と同時に、アルドの両手が伸びる。

槍先を、正面から、掴んだ。

次の瞬間、ドゥン!!という鈍く重い衝撃音が亜空間に響き渡る。


アルドとナイトの衝突点から衝撃波が放射状に広がり、悠天環を模した草木が一斉に揺れた。浮島の縁で、雲が弾ける。

ナイトの突進は、完全に止まっていた。


その直後。

左右と正面、三方向から殺意が迫る。

ルークが大斧を振り下ろし、ビショップがメイスを唸らせ、ポーンが片手剣を突き出す。

いずれも背中の銀光の翼によって加速され、刃の軌道は肉眼で追えない。

だがアルドは、楽しげに息を吐いた。




「いい連携じゃん……!」




その声と同時に、彼はナイトの身体を──槍ごと、持ち上げる。

人形の重量など、意にも介さない。


ガシャン!!


振り下ろされるルークの斧に向かって、ナイトの巨体が叩きつけられた。金属同士がぶつかる轟音が空間を震わせ、火花が宙を舞う。


戦いは、完全に火蓋を切って落とされた。

そしてこの瞬間、ルシアは確信する。


──目の前の存在は、ただの"同族"ではない。


規格が、違う。




 ◇◆◇




左右から、殺意が迫る。


ポーンの剣が空を切り裂き、ビショップのメイスが唸りを上げる。

二体とも、銀光の翼による加速を乗せた一撃だ。

直撃すれば、空島ごと砕けかねない威力。


だがアルドは、一歩も引かない。

むしろ、わずかに口角を上げて呟いた。




「──"竜泡(ドラグ・スフェリオン)"……!」




その瞬間。


アルドの前方に、無数の銀色の泡が弾けるように出現した。


それは、まるで光を内包したシャボン玉。ひとつひとつが淡く輝きながら、瞬時に連なり、壁となる。


ポーンの剣が、ビショップのメイスが──


ボヨン。


拍子抜けするほど柔らかな音を立てて、弾き返された。


衝撃は吸収され、反発し、攻撃は軌道を失って宙を舞う。泡の表面が歪み、揺れ、しかし一つとして割れない。


ルシアは、その光景を見て、思わず声を漏らした。




「……"竜泡(ドラグ・スフェリオン)"……そんな、使い方が……!」




魔力の糸を操る指先が、わずかに止まる。


本来、竜泡は“封じる”ためのスキル。対象を包み、隔離する。それを──防壁として、しかも衝撃制御にまで使うなど、想定されていない。


アルドは振り返りもせず、軽く笑った。




「封じて捕まえられれば一番よかったんだけどね」




肩をすくめるように言う。




「さすがに、真祖竜スキルで真祖竜スキルを完全に封じるのは、無理みたいだったからさ」




そのまま、彼はクイッと手首を返した。

指先で、何かに命令を下すような、軽い仕草。


すると──


銀色の泡の壁が、ゆっくりと回転を始める。


渦を巻き、連なり、形を変え──次の瞬間、それは東洋の竜のような姿を形作った。

泡でできた竜が、しなやかに身をくねらせながら、ポーンとビショップへと絡みつく。


ギチィ……!


泡の竜が締め上げ、二体の動きが止まる。白銀の装甲が軋み、魔力の流れが乱される。


アルドは、その一瞬を見逃さない。




「そーれっ!」




地面を蹴り、二体の腹部へ──


ドゴォッ!!


容赦のない蹴りを叩き込んだ。

ポーンとビショップの身体が、同時に宙へ浮く。




「!!」




ルシアの目が、見開かれる。




「エリアルコンボッ!!」




アルドは叫びながら、自身もギュンッ!!と跳び上がった。


空中。バランスを崩した二体に追いつき、拳と脚が嵐のように叩き込まれる。


ガガガガガガガガッ!!


音が連なり、衝撃が連続する。パンチ、キック、肘、膝──すべてが無駄なく、寸分の迷いもなく打ち込まれていく。


そして、空中で一度身を翻し──回し蹴り。


ズドォン!!


その一撃で、魔力の糸がブツリと切れた。

制御を失ったポーンとビショップは、流星のように吹き飛び、遥か遠くの山へと叩き込まれる。


ドガァァン!!


轟音とともに、山が二つ、消し飛んだ。

その光景を背に、アルドは空中で体勢を整える。

だが、休む暇はない。

下から、ナイトとルークが──銀光の翼を唸らせ、凄まじい速度で追撃に入る。


その刹那。


アルドは、右手をかざした。




「──"竜渦(ドラグ・ボルテックス)"。」




黒い渦が、二体のすぐ目前に出現する。

抗う間もなく、ナイトとルークは渦に飲み込まれ──


次の瞬間。


ルシアの左右、至近距離に、二つの黒い渦が開いた。


そこから、勢いそのままのナイトとルークが、互いに向かって突撃する形で吐き出される。

ルシアの思考が、一瞬、凍る。




(!? 上手い……!)




“竜渦”を、対象の強制移動だけでなく……攻防一体の手段として使った。


ルシアは、反射的に後方へと身を翻す。


その直後。


ガァァーーン!!


正面衝突したナイトとルークが、凄まじい音を立てて砕け散った。白銀の破片が、空に舞い、消えていく。


アルドは、ふわりと地面に着地する。


スタッ、と軽い音。


そして、ルシアを見て、肩の力を抜いたように言った。




「力を試されてるってんならさ……」




少し照れたように、しかし真剣な目で。




「真祖竜スキルも、使ってみせた方がいいんだよね? たぶん」




ルシアは、静かに頷いた。




「──そうだね」




その声は、先ほどよりも、ほんのわずかだけ──楽しげだった。




 ◇◆◇




アルドは、一度だけ深く息を吐いた。

真剣な表情で、コキッと首を鳴らす。

その仕草だけで、周囲の空気が一段引き締まった。


……かと思った、次の瞬間。




「……あ、あのー……」




急に、声のトーンが落ちた。

恐る恐る、といった様子で頭をかきながら、アルドはルシアを見て言う。




「これ、どのくらい力を見せればいいんですかね……? なんか、一定以上の力を見せたら……ほら。お宝パクって来た罪が免責されたり、とか……しません?」




命を賭けた神域の戦いの最中とは思えない、あまりにも俗っぽい質問。


ルシアは、一瞬、完全に固まった。

きょとん、と目を丸くする。

数拍の沈黙の後、彼女は小さく息を漏らすように呟いた。




「──そういうとこ、変わってないね」




あまりにも小さな声だった。

アルドは聞き取れず、首を傾げる。




「え? 何か言った?」




ルシアは視線を逸らし、静かに首を振る。




「ううん」




そして、ゆっくりと視線を戻し、淡々と言った。




「もう少し、力を見せてもらいたい」




その言葉と同時に。

ゴウッ!!

銀色の魔力が、ルシアの周囲から一気に噴き上がった。風が巻き、空気が震え、悠天環を模した空島が低く唸る。


ルシアは、口元に巻いていたマフラーに手をかけ──すっと、それを下げた。

口を、アーンと開ける。

次の瞬間。


ゴリッ。


ためらいも、痛みを感じさせる表情もなく、彼女は自分の奥歯を一本、引き抜いた。

アルドの表情が、一変する。




(──自分の……真祖竜の歯を、媒体に……!?)




一瞬で、理解した。




(”竜牙兵ドラグ・トゥース・ポーン”……ポテンシャルを、最大まで引き出すつもりか……)




ルシアの手の中で、その歯が淡く輝き始める。

魔力が込められ、膨張し──


やがて、歯は形を失い、白銀の光へと変わった。


光は分裂する。

一つが、二つに。

二つが、四つに。

そして、十四。


十四体の、人型。

ルシアは両手を広げ、静かに呟く。




「”傀儡演舞(ククロセアトロ)”……」




指先から、銀色の魔力の糸が伸びる。

十四体すべてに、正確に、迷いなく繋がっていく。

続けて、ルシアは一歩、前に出た。




「”極光円舞(カラマティアノス)”。」




その宣言と共に。

十四体の人形が、一斉に変質した。


八体が、ポーン。

二体が、ビショップ。

二体が、ルーク。

二体が、ナイト。


白銀の戦士達の背中から──


ゴォォォッ!!


眩いほどの銀光の翼が、一斉に噴き出す。

空を覆う、十四の光。

まるで、天使の軍勢だ。

彼らは空から、静かにアルドを見下ろしていた。

ルシアは、低く、問いかける。




「これなら……どうする……? アルド」




だが、その瞬間だった。


ルシアは、異変に気づく。

アルドの中に──

あり得ない密度の魔力が、収束し始めている。




(……これは……!?)




反射的に、身構えた。

次の瞬間、アルドが、静かに呟く。




「──”竜刻(ドラグ・ステイシス)”」




世界が、止まった。


音が消え、風が凍り、草木が揺れることを忘れる。

色が抜け落ち、すべてが灰白色へと沈んでいく。

時間という概念そのものが、圧縮され、固定される。


ルシアの思考が、走る。




(”竜刻(ドラグ・ステイシス)”……真祖竜の中でも、数千年の歳を生きた、極々限られた成竜にしか扱えないはずの……神級スキル……)


(やっぱり、アルドは……)




そこまで考えた瞬間。

超高密度の魔力の奔流が、彼女を呑み込んだ。

思考が、ぷつりと途切れる。


──次の瞬間。




「……あ。」




ルシアは、はっとして目を開けた。

視界に映ったのは──


崩れ落ちた十四体の戦士。

砕け散った白銀の破片。

そして、その破片の一つを片手に持ちながら──


少し困ったような顔で立っている、アルド。




「……これ、壊しちゃってよかったんだよね?

これで更に罪が重くなる的な罠じゃないよね?」




本気で不安そうな声だった。

ルシアは、目を見開いたまま、しばらく言葉を失う。


やがて──


ふっと、小さく笑った。




「……そんな事、しない」




静かに、しかしはっきりと。




「この勝負、アルドの勝ち」




アルドは、心底ほっとしたように肩を落とす。




「よかった〜」




その後、ちらりとルシアを見て、笑いながら言った。




「……ってかさ。これだけ魔力出してれば、いくら俺でも、気づくよ」




ルシアは、何も言わず、ただアルドを見つめる。

アルドは一歩、近づく。




「何でもっと早く言ってくれないのよ」




ルシアは、小さく息を吐いた。




「……少し魔力の波長を変えたぐらいで、気づくのが遅すぎるアルドが悪い」




アルドは、彼女の目の前で立ち止まる。

そして、照れたように、少しだけ目を逸らしながら言った。




「悪かったよ。──久しぶりだね……グルーシャ」




ルシアは、一瞬だけ目を瞬かせ──

それから、淡々と答えた。




「うん。久しぶり、アルド」




ルシア・グレモルド。

その正体は──


悠天環で共に時を過ごした、アルドの幼馴染。


真祖竜、グルーシャだった。


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― 新着の感想 ―
ここに来て幼馴染系真祖龍が登場するとは、、 もしかして最初の方にラグナがSSRって言ってたのがダブルミーニングだったのか!? 何故だかヴァレンのテンションが上がってる気がするw そして出番が取られたザ…
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