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 リヒトの気迫にコネホーンは一瞬足が竦む。その隙を付き、一番近くにいたコネホーンに切りかかる。振り落とされた刃は胴体を真っ二つに切り裂き、すぐさま二匹目攻撃を仕掛けるが、俊敏な動きに足を掠める程度にしか傷を負わせる事しか出来なかった。

 しかしリヒトは動きを止める事なく、川に向かって走る。背後から飛掛かるコネホーンを待っていたかのように、右足を前方に踏み込み、右足を軸に後ろを振り返りながら右側から左へと剣を振り抜く。空中では避ける事も出来ず、二匹目も倒す事に成功した。

 残りは5匹。その場から逃げるように、また川へと走り出す。 

 仲間を殺されコネホーンの怒りは頂点に達し、毛を逆立て、血のように赤い目は真っ直ぐにリヒトへと向き後を追う。

 いくら生きる為に闘志を燃やそうとも、体の疲労と傷の痛みがなくなる訳ではなく、簡単に追い付かれてしまう。左右、後ろに囲まれると、左側のコネホーンが足元目掛けて牙をむく。


「我は欲す」


 コネホーンの攻撃を左側へと飛び越え、交わした後リヒトは魔法の詠唱を始めた。魔法は魔力を使う属性に融合させ、呪文を唱える事によって発動出来る。途中で魔力が切れたり、詠唱を途絶えてしまうと失敗となり発動出来ない。どんなに攻撃を仕掛けられようとも決して途切れる事なく、

 

「大いなる神の名の下に」


 

 敵の攻撃を避けては剣を振り目的の場所へと走る。次第に完全に避ける事が出来ず、体はコネホーンの爪で血だらけとなっていく。


「闇を切り裂く光の刃となれ」


 水しぶきが上がる。リヒトを追い掛けるコネホーンが川の中へと足を踏み入れた。全てのコネホーンが川の中に入った事を確認し、


「ブリッツ!」


 指を弾く音が響き、魔法を唱えるとリヒトの足元に金色に光輝く魔法陣が現れ、幾つもの稲妻の光がコネホーン目掛けて走る。

 水中により雷の威力と速さが増し、逃げる暇なく5匹のコネホーンに直撃する。響き渡る雷の音とコネホーンの悲鳴。光が消えると辺りも静寂に包まれ、雷によって焼き焦げた死体の匂いが鼻につく。

 息を乱しつつも川から陸に上がり、よろめきながら崖下へとゆっくり歩く。最早疲労はピーク。コネホーンを倒せた事に気が抜け、リヒトは倒れ深い眠りへと落ちていく。

 虫の鳴き声と柔らかい風が靡き、泥のように眠るリヒトを月の光が照らしていた。




 リヒトが目を覚ましたのは随分日が高くなっていた頃だった。熟睡していたが体は重く、気怠さは取れていない。体は起こせたもののコネホーンから受けた傷は腫れ上がっていて、動かそうとする度に痛みが体中に走る。 身動きが取れずにどうしたものかと悩んでいると、自分の背中に何か背負っている事に気が付く。

 それはリヒトを城から連れ出し、己の命を掛けて守ってくれた騎士達が持たせてくれた袋。崖から落ちた時、この袋がクッション代わりになってくれたお陰で致命傷にならずに済んだのであろう。


「今の今まで気付かないとは……」


 自分自身に呆れ溜め息を付き、袋の中身を確かめる事にした。

 中には地図と着替えようの服が1着、大きめの薄い毛布と携帯食料が少し。傷薬と毒消し、麻痺消しが。そして銀貨と銅貨が数枚。

 旅人が持っていても怪しまれない物ばかりで、誰に見られたとしても大丈夫だろう。何より有り難いのは傷薬が多目に入っていた事だ。

 山を越えるには魔物と戦う事が必須であり、騎士達が多目に持たせた事が伺える。

 騎士達に感謝し、早速傷薬を左肩の切り傷に塗るとピリッとした痛みを感じ、段々と傷口が熱くなっていく。


(良い傷薬だ。これならすぐに傷口も塞ぐだろう。この先の事を考えると薬は少しでも残した方がいい。傷の浅いものは自然治癒で治す事にするか)


 コネホーンに噛まれた場所と深い切り傷だけに薬を塗り、体力を取り戻すべく薄い毛布に包まり、また眠りについたのだった。


 

 

 そうして翌日には疲労も程良く取れ、傷口は塞がり重かった体も動かせるようになっていた。

 水袋に川の水を入れ、携帯食料の干し肉をかじりながら今後の事を考え始める。


(生きると決めた今、何か目標を持たなければ。冒険者になる為にボルンターに行くのはいいが、冒険者になって何をするか、だ)


 リヒトは王太子として自分を高める為に、勉学と剣の稽古に追われる多忙な日々を送っていた。なので、王族のしがらみから抜けられたとしても、宛もなくのんびり過ごし遊ぶなど考えられなかった。


(まだ追っ手も来るだろうし、当面は大人しくしているしかないか)


 王になる道しかしなかったリヒトが、簡単に他の道を思い付く訳もなく。取り敢えずは冒険者になる事を目標とし、その先はなってから決める事にした。 

 干し肉を食べ終え袋を背負い、川の流れを頼りに山を越える為に歩き出す。

 最初の頃に比べ足取りは軽く、険しい岩道や草道を進み、時折遭遇する魔物に逃げつつも退治するの繰り返し。

 食料も傷薬も数が限られてる今、無闇に戦闘はするべきではないと判断し、魔物の気配がすれば息を殺して過ぎ去るのを待つ事もしていた。

 城にいた頃は何時もリヒトの傍には数名の護衛兵がいたが、今は己のみ。自分の身は自分で守らなければならい。

 厳しい現状の中、神経を研ぎ澄ませ如何に早く魔物を倒し、他の魔物に気付かれないよう気配を消して動く。



「我が敵を切り裂け、ヴィント!」

 

 指を弾く音と共に、かまいたちの刃が魔物を切り裂く。ヴィントとは風魔法の下級魔法の1つ。威力はそこそこだが上番では単発でしか発動出来ず、熟練度を上げれば連射が可能となる。


「ふむ……3連射まで出来るようになったか」


 少しずつではあるが魔力も増え、威力も上がっている事にリヒトは自分が強くなっていく事を実感し、胸の内から沸き上がる喜びを感じていた。実際はリヒトが感じてる以上に強くなっているのだが。



 険しい山を登り、漸く下る所まで来た。そして……


「あれが、ボルンター……」


 まだかなりの距離はあるものの、遠目からでもわかる六角形の城壁に覆われた都市。冒険者が生まれた場所であり、夢と自由と権力を夢見て様々な人種が集まる都市。

 下りは登りよりも大分楽ではあるが、足が滑りやすく怪我をしやすい為、慎重に動かなければならない。しかし、目的地が見えた事によりどうしても足早になってしまう。

 山頂に着いた時の半分の日数で下山する事が出来たが、汗と汚れと擦り傷だらけとなっといた。


 地図を頼りにボルンターを目指し歩き続けると、街道沿いに出る。整理された道は歩きやすく、進むに連れてリヒトと同じような旅人や、厳ついた鎧を着た冒険者らしき人物の集団等が歩いていた。

 久し振りに出会う人に、何処かホッと落ち着くリヒト。歩く方向が同じなので目的地はボルンターだと思い、後ろを着いて行くように歩くと、後方から車輪の音が聞こえ振り返る。

 大きな荷台を2頭の馬で引いて走る、商人の荷馬車のようだ。荷馬車を運転する男がリヒトの存在に気付き、馬を止める。


「よう、坊主。ボルンターに行くなら乗っていくか? 安くしとくぜ」

「いくらだ?」

「銅貨3枚……と言いてぇが、その様子だと持ち合わせも少ねぇだろ。1枚にまけといてやるよ。それに、馬車で行けばすぐ着くしな」


 魔物との戦闘によりボロボロの格好のリヒトを見て、商人の男は気を使ってくれたのだろう。先の見えない不安定な今、無闇にお金を使う訳にはいない。しかし疲れが溜まっているのは確かで、リヒトは小銭袋から銅貨を1枚取り出し商人に渡す。


「宜しく頼む」

「まいど! 後ろに乗んな。商品と他に乗客が居て少し狭めぇが我慢してくれ」

「構わない。世話になる」


 商人に軽く会釈した後、荷台の後ろへと回る。荷台の布を捲り、先に乗っていた乗客を見回す。旅人風の男が2人。親子連れが一組。そして明らかに異質な雰囲気を纏い、フードで身を隠した人物が1人。

 新たに乗り込もうとするリヒトに視線が集中したが、気にせず軽く会釈し隅の方へと座る。リヒトが座ったのを確認した後、商人はボルンターへと馬を再び走らせた。



 リヒトが乗り込んでから1時間程度過ぎた頃。馬車に揺られ、座りっぱなしだったリヒトのお尻が痛くなり始めた時だった。


(……盗賊か)


 この馬車目掛けて、数10頭の馬の足音が響く。

 リヒトが身構えると同時に、旅人風の男達も自身の武器を手にし、親子連れは周りの行動に何があるのか察したのか、互いに身を寄せ合い怯えている。フードの人物はというと、盗賊には気付いた筈なのだが微動だに1つしていなかった。

 隅で身構えていると突如馬が鳴き、急に馬車が止まった事による揺れに絶えると、


「なんだお前等は!」


 商人が叫ぶと同時に、旅人風の男達が飛び出し、商人を切りつけようとした盗賊の剣を防ぐ。商人は盗賊の攻撃に驚き怯え落馬してしまった。旅人風の男達は商人を守るように囲み、盗賊との戦闘を開始する。

 馬車が止まった事で、盗賊達が荷台の布を切り裂き中へと乗り込む。強面の盗賊達に、親子連れの悲鳴が響き渡る。


「積み荷は全て巻き上げ、女は捕らえろ! 野郎は殺してから金目のもんを奪え!」


 盗賊の頭らしき男が大剣を握り乗客を見渡す。恐怖で怯えた親子連れに目を付け、口端を上げて近付く。


「そこの女。お前が自分から俺達の下に来るんなら、餓鬼は助けてやるよ」

「た、頼む! 私はどうなっても良い。妻と娘は助けてくれ!」


 恐怖で震えた声と体。それでも自分家族を守る為に男は楯となる。例え命を奪われようとも。


「聞いてなかったのか?」

「え……」

「野郎は殺すってな!」

 男に向かって大剣が降り下ろされようとした時、リヒトは飛び出そうとした。しかしそれより早く、盗賊の頭の腕を掴まえる者がいた。


「なんだ貴様……死にてぇのか」


 盗賊が乗り込んだ時も微動だにしなかったフードの人物。盗賊の頭の威圧に怖じ気づく事なく、ただ静かに佇むその人物に、リヒトは驚きを隠せないでいた。


(あの人が動いた事に気付かなかった。気配すらなく、あの盗賊の攻撃を止めるとは……)


 リヒトの背後に居た盗賊の武器に殺意を感じ、素早く交わしたリヒトは剣を抜く。


「はっ、餓鬼の癖に戦おうってか? ひゃっはっはっはっは、ミンチにしてやるよ!」



 相手は3人。狭い荷台での戦いは圧倒的にリヒトの不利である。


「今退散すれば、命だけは助けてやろう」


 緊迫した空気の中、フードの人物が発した言葉に、荷台に居る全ての人の視線が集まる。


「お前……女か」


 にたりと笑みを浮かべる盗賊の頭は、掴まえられていた腕の力を抜く。

 明らかに男性とは違う高い声。艶のある声をしたその女性は、自分のフードを掴まれても動じず、そのまま強引にフードを剥ぎ取られてしまう。



「――っ」


 声も出ない。

 フードの下から現れた女性に、盗賊はおろかリヒトすらも息を飲む。幾度も幼少の時から舞踏会や晩餐会等で、美しく磨かれてた貴族の女性達を見てきた。すっかり目が肥えてしまったリヒトには、美しい女性を見ても「綺麗だな」と思うだけで、目を奪われる事はなかった。

 しかし今、リヒトと目に映る女性に魅入られるかのように、目が放せなかったのだ。其程までにその女性は美しかった。


 褐色の肌、腰に届くまでに伸びた銀色の髪。豊満な胸に括れた腰。鍛えられた引き締まった体つきに、盗賊達は音を鳴らして唾を飲む。

 体型も美しいが端麗な顔立ちと、盗賊を前にしても鋭い眼差しを向ける金色の瞳に、リヒトの心音は早くなる。

 舐めますようにジロジロと女性の体を見つめ、口笛を吹く。


「こいつは上玉だ。俺様の女にしてやるよ」

「無傷でいたければ大人しく投降しろ」 

「そいつは無理な相談だな。これから毎晩お前を犯すんだからよ!」


 女性に掴まれていた手を振り払い、首筋に大剣を宛て荒々しく胸を揉み上げる。それでも女性の表情は変わらず、冷めた目で盗賊の頭を見ていた。

 その様子にリヒトの怒りが沸き立ち、盗賊の頭に斬りかかろうとするが、他の盗賊達に阻まれてしまう。


「おっと、邪魔するんじゃねぇぞ餓鬼」

「これからお楽しみショーが始まるんだからよ」

「餓鬼には刺激が強すぎるかもなぁ? 先に殺しとくか?」


 下品な笑みを浮かべ、盗賊の頭と同じように舌嘗めずりする。苛立ったリヒトは魔法攻撃を仕掛けようとするが、


「交渉は決裂。残念だ。幼い子供の前であまり血を見せたくないのだがな」

「あ?」


 その瞬間、盗賊の頭の絶叫が木霊した。




やっと、やっと女の子がきた!

ボンキュッボンの超美形な女の子!

女の子が書きたかったんだ本当に!


戦闘シーンは本当に難しい。毎回書かれている作者様達は本当に凄いです。見習わなければ。

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