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空を飛べなかったから、旅することを選びました  作者: 海坂依里
第1章「どうか、今日も美しい世界でありますように」
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第1話「戦争が起きていた頃の夢」

「今日も世界は荒れているね」


 戦争が起こった。

 たくさんの物資と、たくさんの人材が必要になった。

 勝つために。

 負けは許されない。

 だって、これは戦争なのだから。


「寒くはない?」


 だけど、戦争が長引くにつれて、物資も人も減ってきた。

 戦地に持って行く物資がない。

 戦地に赴く人がいない。

 戦地に持っていく物資がない。

 戦地に赴く人がいない。

 ない。いない。ない。いない。


「何かあったら、声をかけて」


 これでは、我が国は負けてしまう。


「私は、君たちの声を聞き逃さないから」


 だったら、森の奥に住む魔女に頼んでみないか?


『動物を人間に変身させる魔法を使うように、国から魔女に命が下った!』


 人々に脅迫された魔女は、森に住む動物たちを次々に人間へと変えていった。

 そうして、国の戦力は増えていった。


「行って、私なら大丈夫だから」

「魔女様! 一緒に行きましょう! 一緒に、一緒に、平和な世界を生きましょう!」


 これで勝つことができる。

 動物が戦力に加われば、我が国の戦力は無限大に膨らんでいく。


「幸せになって」

「魔女さ……」


 そう過信した、とある国は敗戦した。

 そして戦争は終わり、世界は再び元の平和な世界へと戻っていった。


「魔女様っ!」


 空を飛ぶ鳥として生まれてきたはずだった。

 だけど、生まれたばかりの頃に怪我を負った。

 戦争中だったことも重なって、空を飛ぶことなく人間の姿に変えられた。


「私は……今日も生きていますよ……」


 育て親の魔女は、世界から必要とされなくなった。

 自分たちの野心や野望を実現させるために必要だった魔法は、不必要なものへと変わった。

 そして、魔女狩りが実行された。


「魔女様は……今……」


 元白い小鳥は魔女の力を借りて、戦争のない平和な世界に転移することができた。

 見上げた空は深い青、鮮やかな橙色、星と月の光を際立てるための黒色に覆われていて、爆弾の色が混ざることは決してない。


「っ」


 爆弾が降ってくることのない蒼い空があまりにも美しくて、私は平和な世界で毎日のように涙腺を潤ませていた。


「本当は……本当は……魔女様と一緒に、平和な世界を生きたかった……」


 戦争に参加するために人間になったのに、その戦争に参加することなく戦争は終結した。

 魔女様が傍にいない世界では、私は人間として生きていくことしかできない。

 私は、もう二度と空を飛ぶことはできない。

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