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夢と星空  作者: Social Club
Season 2:彩華零落編
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第八話:深淵への階梯、低層の門番

『カラー』の地下施設、そのさらに深部。リアを仲間に加えたゼルたちは、色葉が待つという上層、そして組織の心臓部を目指し、冷たく巨大な昇降機で「低層」へと降り立っていた。


そこは、かつてゼルがいた研究室をさらに禍々しくしたような、機械と魔導回路が脈打つ空間だった。


「……ここから先は、これまでの実験体とは格別レベルが違うわよ」


仲間に加わったリアが、周囲を警戒しながら告げる。彼女の操る風が、通路の奥から漂う不穏な魔力を敏感に察知していた。


「分かってる。……アルテミス、敵の反応は?」


「……複数は確認できません。ですが、前方の大広間に、一つだけ巨大な、そして歪な魔力の塊が鎮座しています」


アルテミスの言葉通り、扉を開けた先に待っていたのは、無数の剣が墓標のように地面に突き刺さった広大な円形広場だった。そしてその中心に、一人の男が座っていた。


「待っていたぞ、黒の13号。いや、『理外王』と呼ぶべきかな」


男が立ち上がる。その背後には、彼自身の影から染み出したような、重厚な鎧を纏った四本の腕を持つ「影の巨人」が揺らめいていた。


「俺は『紫の9号』。この低層の守護を任されている。……お前たちの旅は、ここで終わる」


「退け。俺は色葉のところへ行くんだ!」


ゼルが刀を構えると同時に、男が指を鳴らす。

瞬間、広場の重力が狂った。


「――!? 体が……重い……っ!」


スイとリアが膝をつく。ジンの放った矢も、男に届く前に不自然な軌道で地面へと叩きつけられた。


「重力……? 俺と同じ、いや、それ以上の……!」


ゼルは歯を食いしばり、一歩を踏み出す。男の能力は『重圧の支配』。触れる必要すらなく、一定範囲の空間そのものの重力を倍加させる。


「ふむ、この重圧の中で動けるか。流石はアマテラスとゼウスの最高傑作だ。だが……これならどうだ?」


影の巨人が四本の腕で、周囲の「剣」を掴み、超高速で投げつけてくる。重力によって加速された剣は、もはや回避不能な流星と化していた。


「みんな、俺の後ろに!!」


ゼルは『感情の終着点』を全開にする。男から向けられる「傲慢」と、実験体として使い捨てられる者たちへの「蔑み」。その負の感情を、ゼルは自身の魔力へと強引に変換した。


「雷魔法・『電磁防壁』!!」


地面から強力な磁場を発生させ、飛来する鉄の剣を強引に逸らす。火花が散り、金属音が鼓膜を震わせる。


「アルテミス、光で奴の影を薄めろ! スイ、足元を凍らせて重力の起点を狂わせるんだ! ジンとリアは、上空から死角を突け!」


ゼルの的確な指示が飛ぶ。

アルテミスが放つ月光の矢が広場を照らし、影の巨人を弱体化させる。その隙にスイが地面を絶対零度まで冷やし、重力場を乱す霧を発生させた。


「……風よ、私を運んで!」

リアがジンの背中を押すように突風を送り、重力に逆らって二人が空中へと舞い上がる。


「……連携か。だが、王は孤独なものだ」

紫の9号がさらに重力を強めようとしたその時、ゼルの瞳に鋭い光が宿った。


「……王は孤独じゃない。俺には、色葉が残してくれたこの場所(仲間)があるんだッ!!」


ゼルは刀を鞘に納め、あえて両手を広げた。

男から向けられる強大な圧力を、拒絶するのではなく、すべて自分の力として「受け入れる」。


『感情の終着点』――限界突破。


自分に向けられた「重圧」という悪意そのものを、自らの血肉に変える。ゼルの周囲で、黒い雪のような魔力が舞い始めた。


「……食らえ。これはお前の重さだ!!」


ゼルは超重力の中を、弾丸のような速度で突進した。雷を纏った右拳が、影の巨人の胸部を貫き、そのまま男の腹部へとめり込む。


「が、はっ……!? 馬鹿な、私の重力下で、これほどの……」


「お前が重くすればするほど、俺の力は強くなるんだよ!」


爆発的な衝撃が広場を包み込み、重力場が崩壊する。

男は吹き飛ばされ、奥の壁へと激突した。


沈黙が訪れる。

低層の門番を突破したゼルたちは、傷ついた体を支え合いながら、さらに上へと続く巨大な階段を見上げた。


「……まだ、始まったばかりだ。中層には、もっと狂った連中がいる」

リアが険しい顔で言う。


「ああ。でも、行くしかないだろ」


ゼルは階段の先に、かつて自分に笑いかけてくれた色葉の幻影を見た気がした。

理外の王とその仲間たちは、さらなる深淵――『カラー』の中層へと、その一歩を刻む。

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