第十八話:深淵からの呼び声
天界の「十二神」として新秩序を築いたゼルと色葉。だが、その平和を切り裂くように、宇宙の裏側から**「邪神」**の軍勢が侵攻を開始した。
「……っ!? 何だ、この不快なプレッシャーは」
ゼルの『感情の終着点』が捉えたのは、この世界のいかなる感情とも異なる、ドロドロとした純粋な「悪意」。
天界の空がガラスのように割れ、そこから光を吸い込む漆黒の霧――邪神の先兵が溢れ出す。
「スイ、ジン、リア! 迎撃しろ!」
ゼルの号令とともに仲間たちが飛び出す。しかし、これまでの戦いとは決定的な違いがあった。
「私の氷が……効かない!? 凍らせるそばから、概念ごと『食べられて』いくわ!」
スイの叫び。神の加護を受けたはずの彼らの力は、既存の法則を食らう邪神の霧に次々と無効化されていく。
「カカッ……。十二神の座に座った小僧か。お前の『理』など、我ら原初の混沌には通じぬ」
霧の中から現れたのは、邪神の将――「這い寄る飢餓・ナルラ」。
「……理が通じないだと? 面白い。だったら、理の外側で勝負してやるよ」
ゼルが前に出る。彼は他の仲間たちのように「神格化」という強化状態を経る必要はない。彼そのものが**『理外の王』**という唯一無二の存在だからだ。
重力崩壊
「『黒き雪の舞う日にて』――極致展開・事象の地平線」
ゼルが指を鳴らす。
その瞬間、邪神が展開していた「混沌の霧」が、物理的な質量を伴って一箇所に凝縮され始めた。
「……何だと!? 我が混沌を、無理やり『物質』として定義し、重力をかけているのか……!?」
「お前らが何を食べて増殖しようが知ったこっちゃねえ。俺の重力圏内にいる限り、お前らの正体はただの『重いゴミ』だ」
ズドォォォォン!!
ゼルの放つ超重力が、ナルラの存在そのものを押し潰す。だが、ナルラは消滅の間際、不敵に笑った。
「……それでいい。その強すぎる『力』こそが、我ら邪神の世界と、この天界を繋ぐ橋となるのだ……」
邪神を退けたものの、神々の表情は険しかった。
「……見たか、あの力。ヤハウェよ、ゼルの力はもはや『神』の枠を超えすぎている。あれは邪神を呼び寄せるビーコン(標的)ではないのか?」
ポセイドンが不信感をあらわにする。
既存の神々にとって、理を無視して邪神を圧倒するゼルの存在は、新たな「恐怖」へと変わりつつあった。




