第十六話:神々の天秤
ポセイドンが退けられ、円卓に緊張が走る中、降り立ったのは組織『カラー』の最終兵器「虹の0号」。神殺しの魔道具が放つ異質な魔力が、神聖な円卓の空気を汚していく。
しかし、ここで動いたのはゼルではなく、沈黙を守っていた他の神々だった。
「……不愉快な。我が庭に土足で踏み入る羽虫がこれほど多いとはな」
冥府の王、ハデスが立ち上がる。彼の影から無数の亡者の腕が伸び、乱入した『カラー』の下級兵士たちを音もなく引きずり込んでいく。
「ヘルメス。貴様の『神速』で、この侵入者共の逃げ道を塞げ。アテナ、貴様は結界の再構築を」
ゼウスが淡々と命を下す。神々にとって、組織『カラー』は敵ですらない。「秩序を乱す不純物」に過ぎないのだ。
「承知いたしました、父上」
ヘルメスが雷光のごとき速さで神殿を駆け抜け、出口を完全に封鎖する。
アテナは盾「アイギス」を掲げ、神殿全体に幾重もの防御魔法を展開した。
しかし、神々は「虹の0号」に対しては手を出さない。
ヤハウェが無機質な瞳でゼルと色葉を見据える。
「……天導ゼル、そして紅月色葉。お前たちがその座に相応しいというのなら、この『神を殺す為の泥』を自らの力で清めてみせよ。それが出来ぬなら、お前たちもろとも、この場から消去する」
これは、神々による「観戦」という名の最終試験だった。
神々は、自分たちの領域が侵されることを許さない。だが、同時にゼルたちの実力を「虹の0号」という鏡を通して測ろうとしていた。
「……見てるだけってわけか。神様ってのは、どいつもこいつも性格が悪いな」
ゼルは肩をすくめ、刀の柄を握り直す。
「……いいよ、ゼル。神様たちが手を出さないなら、私たちがやるだけ」
色葉が前に出る。彼女の瞳には、かつての迷いはない。
「私の居場所を邪魔するものは……たとえ神様が見逃しても、私が許さない」
その時、アメノミナカヌシノカミが静かに口を開いた。
「……紅き娘よ。汝の『虚無』が、この天界を救う光となるか、すべてを無に帰す闇となるか。今、宇宙の意志が汝を試している」
「虹の0号」が魔道具を起動させ、神殿の空間そのものを崩壊させる暗黒の波動を放つ。
ゼルは重力を展開し、仲間たち(スイ、ジン、リア、アルテミス)を保護する。
「色葉! こいつは俺が抑える。お前は……お前の『熱』を全部ぶつけろ!」
「……わかった。いくよ、ゼル!」




