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20話:ゴブリン


「改めてみるとほんと凄い数だな……」


 魔力でプレッシャーをかけ続けながらも、広場の半分を埋め尽くそうかと言うほどの大群の視線を受けて思わずそんな感想が漏れる。

 普通ならば足がすくんで動けなくなってもおかしくないものだが、これは単純に要がゴブリンの力量がどの程度なのか知らない為だ。

 話に聞いておおまかな生態や能力などは知っているが、所詮は他人から聞いただけの知識に過ぎないので、今の要の能力で考えるとあまり当てになるとは思えない。

 百聞は一見にしかずとも言うし、自分と相手の能力差を測る意味でも、一度戦う必要があるとは考えていた。たまたまそれが今になっただけで、早いか遅いかだけの違いだ。

 数日程の練習ではあったが、エルサリアから魔力と魔術の運用に関しては太鼓判を押されている。

 エルサリアが言っていたことを簡単に要約すると、一般的に見れば類を見ないほどに強力で、そこらの魔物なら指先一つでダウンできる程だと言う。そうは言われても比較対象の居ない要としてはいまいちピンとこなかったが。

 能力を測ろうと、制限してやられてしまては元も子もない。様子を見ながら徐々にギアを上げて確認していこう、そう結論を出した。

 ゴブリン達の数メートル手前で立ち止まると、放ち続けていた魔力を抑え込む。

するとゴブリン達の喉を潰したようなおぞましい雄叫びが、周囲の空気を振動させながら森に響き渡った。

 後方ではずっしりと構えた――実際に重量的な意味でもずっしりしていそうな――ゴブリンリーダーが静かにこちらを凝視している。


「セオリーでいけば(リーダー)を潰すのが一番なんだろうけど」


 それには、リーダーの周囲に数百はいるであろうゴブリン達を倒さなければいけない。先ほどの戦闘を見ていた限り、まだ森の中に伏兵がいる可能性は高い。下手に踏み込めば危険なだけだろう。


「悪いけど、俺も死にたくないんだ」


 人々に魔物といわれていようと、広義でいえばゴブリンとて自分と同じ『生き物』には違いない。

 悪いと思ってしまったのは、まだ要の心に生き物を殺す罪悪感のようなものがある為だ。

 しかし要とて殺されるつもりは微塵も無いし、このままでは自分だけではなく後ろに居る四人が襲われるだろう。

 ゴブリンを殺す事に罪悪感を感じながらも、自身と後ろの四人を守るためには殺さなければならない。この世界で弱肉強食は当たり前の事だと思いながら、酷く独善的だとも思う。

 そんなことを考えていたら、その隙がいつか自分を殺すことになるだろうと要もわかっている。

 それでも思わずにはいられなかった。本当はもっとこの世界に慣れてから討伐依頼を受けるつもりだったのだ。しかし今そんなことを言っても仕様が無い。

 覚悟を決めて、右手でゆったりと持っていた大剣を握る手に力をこめた。

 自己欺瞞であっても、目の前に居る"敵"を――殺す(・・)

 そして――。


 前方のゴブリン達が飛んだ。

 いや、正確に言えば、要と近い場所に立っていた六体の上半身だけが一斉に飛んだのだ。

 他の者から見れば、一瞬で移動して大剣を横に構えているようにしか見えなかっただろう。

 ただ遠慮なく振り抜いただけの単純な一撃。

 しかし要の魔力をもってして強化された腕力から繰り出された斬撃は必殺の一撃だった。

 剣道の経験こそあるものの、大剣など扱った事の無い要には小手先の技術など無い。

 良いとこで、剣道の経験から長物を持ったときの体の重心や体運びが感覚としてわかっている程度だ。

 しかしそれは剣道であって剣術ではないし、大剣では尚更その感覚が役に立つかはわからない。

 だからこそ、そんなものが必要無いほどの力と勢いで、左に溜めた大剣を右に大きく横薙ぎに振り抜いたのだ。

 本来、このような大きな剣は刃こそついているものの『斬る』よりもその重量と振った勢いで対象を叩き『潰す』ような使い方をする。

日本刀のように斬ることに特化したわけではない真っ直ぐな大剣でまとめて斬り飛ばした要の斬撃速度と力は推して知るべし。


 前方に跳躍してゴブリン達の目の前で制止、腰に溜めて大剣を振る。

 文字に起こしてしまえばなんということのないように見えるが、それは紫電一閃の一撃だった。

 手に何か硬いものを切る生々しい感触を覚えるが、そんなことを気にしている場合ではない。

 振り抜いた右手のみで持つ大剣の柄に左手を沿え、そのまま左足を前に持っていくと今度は左におもいっきり振り抜いた。

 斬撃音は一つ。だが振りぬかれた先ではまたも六体のゴブリンが儚くも命を奪われた。

 若干の間をおいてゴブリン達は怒りの咆哮をあげた。

 敵は強いようだが所詮は一人。少ない知能でそこまでを理解すると、数を頼んで勢いに任せて走り出す。

 振りぬいたあと何故か直立して次の行動に移らない要に、ゴブリン達が怒りの咆哮と共に棍棒やひしゃげた剣を振り回しながら猛然と襲い掛かった。





 魔法陣で傷を癒していた彼らは、目の前の光景が信じられなかった。

 自分が見ているのは、夢ではないか。

 そんな思考がよぎるも、流れてくる風と血の匂いが現実だと教えてくれる。

 クラウディの大剣を持っていった青年は、その身の丈以上の大剣を片手でやすやすと振り回していた。

 戦いが始まり、遠巻きだからこそわかる戦況に自らの目を疑ってしまうのは、彼の移動速度、剣を振る速さが尋常ではないからだ。

 襲い来るゴブリンたちを迎撃するのではなく、上回る速さで飛び込んで一閃。風を切る音と砂埃を上げて、胸元から上下が泣き別れたゴブリンが倒れ、頭から半分に一刀両断され、巻き込まれて吹き飛ぶ。

 その光景は、さながら黒い竜巻が刃と意思を持って襲い掛かっているかのようだった。

 強い。いや、もはや強いなどというレベルではおさまらない、圧倒的なまでの力の差。金ランクの自分たちでさえ三人で戦線を維持するのがやっとの相手を、蹂躙するかのように次々と切り伏せていく。

 クラウディとて自身の強さには金ランクハンターであるという自負と誇りがあった。そこに驕りが無かったかと言われれば否定できないが、銀以上になれるのは確かな実力を持つ者だけだ。ギルドや国に名を覚えられ、他のハンター達から嫉妬と羨望の視線を受ける存在。それが銀を超えたものが持つ威風だった。

 それだけの実力を持つクラウディをして圧倒的と思わせるあの青年の強さには憧れを抱いた。それはもしかしたら畏怖の感情に近いかもしれない。

 その隣ではシャーネスが視線を前線に向けて何かを考えていた。




「こりゃキリないな!」


 攻撃を受けないようにランダムに走り回りながらも一向に数の減っているように見えないゴブリンを見てぼやく。

 明確な数は覚えていないが、百体以上は切り伏せただろう。先程から要に狙いを定めた魔術や弓矢が飛来するようになり、攻撃に専念できない状況に舌打ちをする。

 しかも味方を省みない絨毯攻撃も仕掛けてくるのでゴブリンの近くに居れば安全と言うことも無く、リスクを犯して集団に飛び込むことも出来ない。

そのまま味方の攻撃で自滅してくれないかなーなんて思っていたら森の奥から新たなゴブリンが出現する始末だ。

 弾幕シューティングをやっていたおかげか、落下地点を予測し回避するのはそこまで難しいことではなかった。

 安置あるかなーなんて回避行動をとりながら周囲を見渡すも、無差別な攻撃の前ではそんなものあるはずもない。


「仕方ないか。<フリーズアロー>」


 能力を確かめるとはいえ、数が数なので躊躇っている場合ではないと判断した要は魔術を使った。

 あえて魔術を使わずに剣だけで戦っていたのは身体能力を確かめることと、どんな魔術を使うべきか悩んだからだ。後ろに居る三人の視線もあり、ちょっと自重したところもある。

 しかしこうなれば遠慮した所で仕方ないので、色々な魔術の使い勝手を試してみることにする。

 とりあえず様子見のつもりで使った魔術。しかしそれは様子見などとは決して言えないような、ゴブリンたちからすれば死の顕現に他ならなかった。

 要の周囲に人の胴程の大きさもある鋭く尖った氷塊が出現する。十本の氷塊を生み出した要は、大挙するゴブリン達に向かって右手をかざした。

 シュッとやけにあっさりとした音を放ちながら飛んだ氷塊は、走り来るゴブリンを貫いて後続のゴブリン達も削り取っていく。

 頭を穿ち、足を地に縫いつけ、腹に大穴を空けられ、三十体以上を物言わぬ屍と化した。


「おぉ、結構使い勝手いいなこれ」


 生々しい血の臭いに表情を若干歪めながらも、予想以上の戦果に驚く。

 流石のゴブリン達もこれには躊躇する姿を見せた。たった一人のニンゲンに大勢の仲間が殺されたのだから、いくら知能の低いゴブリンとて本能的に数でどうにかなる相手ではないと感じたのだろう。

 黒衣を纏い巨大な剣を手に持ち悠然とたたずむ要の姿は、ゴブリン達に初めての感情を植え付ける。


 黒、暗、影、陰、夜、闇 ―――― 死。


 それは恐怖。

 人が夜の闇を恐れて光を生み出したように、ゴブリンにしても闇――つまり、黒に"嫌なもの"という感情を生み出させる。

 それは生きとし生ける物全てが決して抗うことのできない死の印象を強く抱かせた。

 ラースベストのような世界では、より近しい存在。奪う側から、奪われる側へ。目の前に立つニンゲンは、自分達から奪う存在であり、まさに死の具現だった。

 躊躇うゴブリンを見てこれならいけるかなと思った時、姿を現してから沈黙を守り続けていたゴブリンリーダーが咆哮をあげた。


グルアアアアアァァァ!!!


 躊躇いをみせていた周囲のゴブリン達が共鳴するかのように吼えると、森の奥から新たなゴブリンが出現した。


「追加オーダーかよ!?」


 まさかまだあれほどの伏兵がいるとは思わなかった要は驚愕の声をあげた。

 ミスリルクラウンの四人が倒した数も含めると、その総数は五百を優に超えているだろう。

 リーダーを抜いてもゴブリンだけでこれだけの数が伏せていたのだ。もしも要がこの場に居合わせなければ、間違いなく四人は命を落としていただろう。

 振り出しどころかむしろ増えている気がするゴブリン達を見て、げんなりとする。

 常人ならばここは絶望してしまいそうなところだと思うが、要の現状を考えればそんなことを思えというほうが難しいかもしれない。


「お前らはどこの手の形した魔物かと。しかし今のを見る限り、やっぱりこの連中を率いてるのはあいつなんだな……総数がわからない以上やっぱり頭を潰すしかないか」


 再びリーダーを取り巻く前に攻撃を仕掛けたほうがいいと判断し、大剣を右手に持ったまま数を大きく減らしたゴブリンの隙間を駆け抜け、一気に距離を詰めた。軽く跳躍して脂肪の詰まっていそうな腹に向かって再び斬撃を放つ。


「あだっ!」


 腹を切りつけた瞬間、硬いゴムを叩いたような衝撃を手首に感じた。

 必殺のはずの斬撃は、そのどう見てもやわらかそうな腹に弾かれたのだ。うっすらと跡は残っているようだが、傷らしい傷は見えない。

 その時、要は見た。リーダーの顔が醜悪に歪み、口角を上げて笑うのを。

 そして空中にいる要に向かって、その鈍重そうな見た目とは裏腹な凄まじい速度で巨木を振り下ろした。

 通常のゴブリンと違いかなりの知能を持つリーダーは、相手を焦らして必ず殺せると踏んだときに攻撃を仕掛けようとしたのだ。その思惑通り、振り下ろした先には驚きの表情を浮かべ自身を見る矮小な生き物(ニンゲン)の姿があった。

 このまま潰してやろうと振り下ろした巨木を地に叩きつけ、地を震わせる衝撃と土ぼこりと共にバキリと何かが折れる音が聞こえた。


「あぶねっ!」


 リーダーが声のした方向へ顔を向けると、今しがた潰したはずのニンゲンが十数メートル前方にいることに気付く。

 今の状況からどうやってあそこまで移動したのか、空中にいるところを狙ったのだから動きを取れるはずが無い。移動手段もそうだが、叩き潰したと思った本当に一瞬の間に、あいつはあんなにも遠くにいる、とリーダーが怪訝な表情を作る。


「ひぃ! 死ぬかと思ったっ!」


 後方に大きく滑る勢いを殺しながら思わず本音が漏れた。巨木が目の前に迫った瞬間、とっさに魔法を使用し、大きく後方に退避して危機を脱したのだった。

<弾丸(ブレット)>と名づけたそれは、対象を弾丸のように一定方向に高速で撃ち出す(・・・・)という荒業魔法だった。

 先ほどの<フリーズアロー>も、何体も貫くほどの貫通力を持っていたのは、実はこれで加速して射出していた。普通に射出すると<ファイヤーアロー>と同程度の速度しか出ず、突き刺さった時点で勢いをそがれてしまう。それならば単純な殺傷能力の高い炎の矢を使えばいいだけの話なので、魔術として存在はしているものの、利便性には欠けるという理由でめったに使われない魔術の一つだった。使われない理由の一つに、氷を生み出すというのが意外に高度な魔術にカテゴライズされているというのもある。

 <弾丸>は城で魔術を練習していた際に、物量で攻める<複数化(マルチプル)>に対して、単一の目標に対する威力を上げようと考えた魔法だ。そしてもうひとつの利点が、見た目には魔法を使ったと気づかれにくい点にある。

 咄嗟のことだったのだが、それを自分に使用して難を逃れたのだった。

 使ってみてわかったが、急激な加速に視覚と思考能力が許容範囲をはるかに超えていたようで、使ってから着地までが本当に一瞬だった。運よく地に足がついていなければそのまま地面を転がって大怪我をした可能性もある。

 この魔法は改良すれば結構使えるかもしれない、と頭の隅にメモ書きをする要だった。

 まさかこんなところで役に立つとは思わなかったが、まずはあの一瞬で使えた自分を褒めたいと思った。反射的にほぼ無意識で使ったのだが、人間必死になればなんとでもなると思った瞬間である。

 残念ながら衝撃で手から離れていた大剣は犠牲になってしまったが。


「いてて……くっそ、あいつわざと今まで何もしなかったな?」


 飛び退いた勢いを殺して片膝をついた姿勢でぼやく。

 ゴブリンを易々と斬り飛ばした攻撃も、ちょっと腹をへこませる程度にしかならないうえに武器は折れてしまった。

 弁償いくらになるだろうなんて余計な思考がまわるあたり意外と余裕があるのかもしれない。

 だが、ここにきて攻撃手段が減ったのは痛い。どれほどの強さなのかはわからないが、生半可な攻撃ではあの皮膚は貫けないだろう。

 魔法を使えばなんとかなりそうな気はするが、人目がある以上あまり目立つようなマネは避けたかった。


(しかしなんかあれだな、傍から見たらこれって『本当はSだけどめんどくさいからB』を地でいってるんだよなぁ……イタい! イタいぞ俺!)


 めんどうだから隠しているわけではないのだが、本来の力を使わずに戦っているのだから似たようなものだろう。

 そうこうしているうちに、新たに出現したゴブリン達は先ほど出来た隙間を埋めるようにリーダーを取り囲んでおり、一歩進んで二歩下がった状況にため息が出る。

 しかも見た目に反して動きは素早いのがわかり、下手に踏み込むことも出来ない。しばし思案し、それならばと片手を地につけて魔術を使う。


<アーススパイク>


 大地が振動し大きく揺れ動くと、地を引き裂くようにして錐状の岩がいくつも突き出し、死角からの攻撃に反応できずゴブリンたちが次々と串刺しになっていった。

 早くこれを使えばよかったんじゃないかと思うだろうが、ぶっちゃけ生々しく突き刺さっているゴブリンを見るのは精神衛生上あまりよろしくないと思ったので、できれば使いたくなかったというのが本音だったりする。

 リーダーを見ると、体を貫くには至らなかったようだが、足場を崩されて体勢を大きく傾けていた。

 要への注意が逸れたのを機に、高く跳躍して頭上からリーダーに向けて<フリーズアロー>を放つ。それらは<弾丸>によって目で追えない程の加速を得て、リーダーに向かって飛来する。

 だが要の行動に気づいたリーダーは巨木を振り上げて防御の姿勢をとった。九本が巨木に突き刺さり、一本が辛うじて肩に浅く突き刺さる。


「どんだけ頑丈な皮膚してんだよ」


 魔法と落下速度を合わせた加速ですら防ぐ程の頑丈さに愚痴が零れる。

 鋭いとはいえ所詮は氷だ。硬度なんてたかが知れていると思っていたので、ここまでは一応読み通り。それに魔力を飛ばした時、プレッシャーに動じなかったことで、おそらく魔術耐性は持っているだろうと踏んでいた。


「まぁ、とりあえず刺さったからいいか――解放(リリース)


 肩に刺さった氷塊から白い冷気が立ち込めたかと思うと、そこからリーダーの体に氷が広がっていく。数瞬の間に、苦悶の表情を浮かべたまま氷のオブジェと化したリーダーが鎮座することとなった。


 <複数化(マルチプル)>を創った際に、『魔術の中に別の魔術を仕込む』ことができると知った要は、後にあとからエルサリアにそんなこと考えた奴みたことない、と冷たく言い放たれたのを今でも鮮明に覚えている。

 無論、出来ると知っていたわけではなく、漫画などではよく扱われる方法だったので思いついただけに過ぎない。例えば、主人公たちが持つ能力に耐性がある、もしくは全く効かない敵なんていうのは、ある程度その手の漫画を読んだことのある人なら一度は目にしたことがあるだろう。

 少年誌的に言えば、強くなった主人公より更に強い敵が出てくるのはお馴染みの流れだし、主人公の能力に(アンチ)特化した敵なんていうのも目にする。

 その中で、比較的よく描かれている対抗方法のひとつに『元々使っていた技の強化』がある。方法は様々だが、技のバリエーションを増やしたり、技自体の強化などで、もう一つが持っている技の合成だ。

 今使ったのは<フリーズアロー>で空中に氷塊を作り出すという工程を一部改変し、予め決めた一言をトリガーとして発動。刺さっている対象を凍らせるという、ある意味見た目詐欺の魔法だった。

 それをフリーズアローに仕込み、刺さった先から解放して直接体内に叩き込んだのである。


「名付けて、えーと……<氷の棺(フリーズコフィン)>」


 しっかりと頭の中で漢字にルビを振りながら呟いた。

 イタいのは重々承知しているが、こういうのは雰囲気と気分が大事なのである。

 イメージが魔術に強く影響を与えるという世界だけあって、気持ちのあり方というのは魔術を扱う上で意外にも大きな要素の一つだった。

 それを意識したわけでもなく、いい年こいて未だに若干患っている要はネーミングセンスがどうみてもアレだった。そのおかげで結果的に強力な魔術が使えているのだからどうしようもない。

 動かなくなったリーダーをみて他のゴブリンたちは脱兎のごとく森の中へと走り去っていく。あとには巨大な氷塊と化したリーダーと、死屍累々と周囲に散らばるゴブリンたちの残骸だけが残った。


魔術はカタカナ表記、魔法は漢字にルビ表記にしていきます。

要痛いね!

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