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オーロラ帝国(UNCIA):暴君の時代といたずらっ子たち

初めまして、ご覧いただきありがとうございます!

本格SF軍事小説『オーロラ帝国(UNCIA)』の執筆を開始いたしました。


実は私、ベトナム出身の若い作家で、日本の小説プラットフォームに挑戦してみたいという思いから、母国語で書いた原作を日本語に翻訳しながら公開しています。

日本での公開は始まったばかりですが、これから数日間はオープニングとして連 and 連続でエピソードをお届けする予定です!


【今後の更新スケジュール】

今後は「毎週月曜日・木曜日・日曜日」の週3回、日本時間の18:00頃に定期更新していきます。


不慣れな点や日本語の表現に至らない部分もあるかと思いますが、温かい目で読んでいただければ幸いです。

スケールアップしたSF戦場をお届けしますので、ぜひお楽しみください!

皆様からの温かい応援(ブックマーク登録や評価★★★★★)をよろしくお願いいたします!


第三章:死の亀裂を越えて――異銀河の歓迎宴

オーロラ帝国(UNCIA)の激動なる展開へようこそ。昨日までプール用浮き輪を抱えて温泉につかっていた最高指導者たちが、今日には銃を手に取り、一瞬にして別銀河の清掃へと赴く――!


外縁ドームの天空に口を開けた紫煙の空間亀裂を前に、皇帝ミナモト・ヒユキが不敵な笑みを浮かべたその瞬間、2026年の歴史を誇る帝国の偉大なる戦争機構は、新たなページをめくった。そう、多次元宇宙遠征編の開幕である。


第6惑星の中枢会議室――プラズマ光の残光と硝煙の匂いがいまだ漂うその空間で、空気は限界まで張り詰めていた。


最上の玉座にて、14歳の端正な少年の姿をした皇帝ミナモト・ヒユキが、物憂げに頬杖をついている。足元にはナノ構造体ロボットのゴールデン・レトリバー(彼のお気に入りのペット)が恭しく伏せ、時折、空間亀裂の超近接映像を映し出す巨大ホログラムモニターに向けて興味深そうに短く吠えていた。


玉座のすぐ傍らには、先鋒指揮官の大任を命じられた天才的な従甥、源(みなもとの) 伊幸(いゆき)が両手を組み、冷徹かつ極限の集中を宿した顔つきで佇んでいる。その周りには、副皇帝リン・クジョウ、グエン・ヴァン・ウイ大将、そして永遠の犬猿の仲であるキザキ・レンとキサラギ・ソラら最高幹部たちが、隙のない軍装を纏って結集していた。


「陛下」


グエン・ヴァン・ウイ大将が一歩前へ出ると、低く温かみのある声で厳かに告げた。


「オーロラ・ゼロ艦隊の量子エネルギーネットワーク、充填率100%を達成。各星座艦隊および主力空母も殿(しんがり)のロックを完了しました。しかし、科学院の解析によれば、異空間側の奇異点が異常振動を起こしております。向こう側の世界の放射線が、こちらの光学迷彩システムに微小な影響を与える可能性がございます」


ヒユキはそれを聞くと、傲然と手を振って鼻で笑った。


「影響だと? ウイ叔父さん、これまで我がオーロラ帝国の技術こそが他世界を歪めてきたのだ。向こうのボロ切れのような世界が、我らを惑わせることなどあるものか」


暴君たる皇帝はガバッと立ち上がると、大殿内に響き渡る断固たる声で命令を下した。


「全軍に命ず――躊躇うな! 空間跳躍ゲートを全開にせよ。イユキ率いる先鋒部隊オーロラ・ゼロ、直ちに亀裂へ突入せよ! 我が境界で戯れ言を弄する『異宇宙』なるものが、どれほど大きいものか検分してやろうではないか!」


「御意、陛下!」


源 伊幸は力強く応じ、その双眸に熾烈な闘志を宿らせた。


シュイン! シュイン! シュイン!


直後、数百万隻の戦艦から放たれた数十万本の量子光柱が一斉に明滅した。深紫色の空間ゲートが巨大な渦巻くトンネルへと拡張していく。オーロラ・ゼロの純白と漆黒の装甲を纏った戦艦群が、滑らかに連なり、深海へ潜る鮫のごとく暗黒の亀裂へと真っ直ぐに突き進んでいった。


空間亀裂を越える感覚とはいかなるものか? 凡人にとっては肉体の歪みであり、次元の狭間を通り抜ける過酷な眩暈であろう。しかし、重力波エンジンと量子結晶装甲を誇るオーロラ帝国の艦隊にとって、その転移は自宅の居間の扉をくぐるがごとき滑らかさであった。


一瞬にして、空間モニターの暗黒は、燃え盛る荒々しい赤橙色へと塗り替えられた。


「報告! 空間奇異点の突破に成功! 未知の銀河外縁座標へと進入しました!」


先鋒旗艦の通信士が力強く叫んだ。


源 伊幸は指揮台に立ち、強化光学ガラス越しに目の前に広がる光景を冷ややかに見据えた。 そこに広がっていたのは静寂な星々ではなく、星系規模で繰り広げられる凄惨な戦場であった。先日第6環状帯で交戦した、ゴシック様式の古臭く無骨な戦艦群(あの狂信的勢力)数百隻が、人類の22世紀相当の技術を持つ現地防衛艦隊に向けて狂ったように艦砲射撃を浴びせかけている。


近隣の惑星の空は黒煙と漂流する戦艦の残骸で赤く染まっていた。


「へぇ……。どうやら向こうの無礼な連中が、真っ赤な歓迎パーティーを開いてくれている最中のようだね」


イユキの隣に立つ12歳の補佐官が生唾を飲み込み、呟いた。


イユキは冷笑を浮かべると、コントロールパネルを軽く叩き、後方に控えるオーロラ・ゼロ全艦隊へと命じた。


「無神経な主催者どもに遠慮する必要はない。陛下の命は『壊滅の定義を叩き込んでやれ』だ」


少年は手を高く掲げ、勇猛に咆哮した。


「オーロラ・ゼロ艦隊、遮蔽装甲を全開! 遠距離量子砲、起動! 目の前で暴れ回るゴシック艦隊を……5分以内に一掃せよ!」


バンッ! バンッ! バンッ!


瞬時に、オーロラ・ゼロの純白の戦艦数千隻が一斉に装甲を展開した。数万のエネルギー砲身が眩く発光し、未知の宇宙空間を、美しくも残酷極まりない火力の舞台へと変貌させた。新たな銀河への、熾烈な第一撃が放たれたのである。


◆


オーロラ・ゼロの第一波の火力が狂信派の防衛線を薙ぎ払い、異銀河での華々しい幕開けを飾ったその時――皇帝ミナモト・ヒユキが鎮座する旗艦の最先端指揮所内部は、勝利の荘厳な雰囲気に包まれている……はずであった。


しかし、実際の内部はあまりにも間抜けな理由で「混沌の極み」と化していた。


数百名の高位士官や将軍たちが整然と3D空間マップを見つめるその中央で、突然、怒りに満ちた絶叫が空間を切り裂いた。


「ミナモト・ヒユキ! そこを動くな! 今日という日は容赦しないぞ! 僕の苗字を捨ててでも殴ってやる!」


会議室全体が凍りついた。士官たちはぎょっとして一斉に振り返る。


彼らの目に飛び込んできたのは、敵艦隊の爆発よりも衝撃的な光景だった。先鋒指揮官として遠征の重任を担ったはずの源 伊幸が、額に青筋を浮かべ、顔を真っ黒にして、白昼堂々と最高皇帝を追い回していたのだ。


そしてこの大惨事の原因は……ほかならず、三本足で必死に逃げ惑うナノ構造ロボット犬(サイバー・ウォーハウンド)であった。


ロボット犬の口には、イユキが最も愛用している限定版スニーカーがくわえられており、走りながら舌を出してすまし顔を決めている。


「おいおい! 大声を出すなよ甥っ子君! まるで親の仇にでも会ったような顔をして!」


14歳の少年の姿をしたヒユキは、指揮席の周囲を軽やかに逃げ回りながらヘラヘラとからかった。


「まだ笑っていられるんですか!?」


イユキは怒りのあまり胸を大きく上下させ、高官たちの前で叔父を指さして叫んだ。


「そのスニーカーは手作りの特注品なんです! 多次元遠征の出陣式だからこそ大事に履いてきたのに! あなたのあのトラブルメーカーの犬が、控室に入るなり僕のかかとを噛みちぎったんですよ! 見てください、ボロボロじゃないですか!」


「まあまあ、たかが靴一足くらいでそうカリカリするなよ」


ヒユキは肩をすくめ、平然と言い放った。


「我が愛犬が物を噛むのは自然の摂理というものだ。それに、お前の靴を噛んだということは、お前を愛している証拠であり、皇室の印を授けてくれたようなものじゃないか」


「どこが愛ですか! 革が引き裂かれて原型をとどめてないでしょうが!」


イユキは激怒し、今すぐこの“ポンコツ叔父貴”の首を絞めたい衝動に駆られた。


「温泉に連れて行かれ、泥に埋められ、会議で売られ、今度は愛犬まで僕の精神を痛めつけるんですか!? もう限界です! 新しい靴を弁償してくれないなら、僕は先鋒指揮官を辞任してストライキしますからね!」


全軍の高官たちの前で繰り広げられる、絶対君主への容赦ない「反逆」。大殿内は息を呑むような静寂に包まれた。 士官や補佐官たちは冷や汗を滝のように流し、(皇帝陛下の前でこんな口をきけるのは源 伊幸様だけだ……処刑されるのでは……)と青ざめた。


だが、皆の恐怖を余所に、ヒユキ皇帝は怒るどころかお腹を押さえて爆笑した。


彼は腕を組み、怒りに震える従甥の肩を叩いて言い放った。


「よしよし、機嫌を直せ愛しい甥っ子よ! 偉大なる宇宙帝国を背負う者が、破れた靴一足にこだわるなど器が知れるぞ! 向こうの銀河を攻略したら、多次元宇宙最大の専属靴工場を丸ごと一基賜ってやる。好きなデザインを3Dプリンターで何千足でも印刷して履き潰すがいい。これでどうだ?」


イユキは叔父を鋭く睨みつけ、足元に隠れていたロボット犬の口からボロボロの靴をひっつかむと、不満げに鼻を鳴らした。


「覚えておいてくださいよ! 前言撤回は許しませんからね!」


二人のおかしな口喧嘩が和解の笑みで終わるのを見て、周囲の士官たちは胸をなでおろした。


その時、中央のホログラムモニターが激しく明滅した。外縁の量子レーダーから緊急警報が響き渡る。


「報告! 空間亀裂の向こうから、さらに大規模な艦隊が接近中! 先ほどのボロ切れのような狂信派ではなく……この天体群全体を統制する、より高次元の文明主体です!」


それを聞くと、ヒユキの口元に冷酷な笑みが浮かんだ。戯れ言を捨て去ったその瞳に、本物の暴君たる鋭い殺気が宿る。


「ほう? また死に場所を求める愚か者があらわれたか。どうやら我々の休暇は少し早く終わりを告げたようだね」


ヒユキはイユキを振り返り、手を振った。


「どうだ甥っ子、泣き止んだか? 破れた靴を履き直せ。オーロラ・ゼロを率いて、この新しい地主に『誰がこの空間の真の主であるか』を教育してやるのだ!」


◆


オーロラ・ゼロ艦隊の前に広がる空間が新たな勢力の出現によって大きく揺れ動く中、帝国の先進偵察システムが動いた。


指揮艦からの統制命令に従い、最先端の量子迷彩技術を搭載したハイエンド無人偵察機群――「オーロラ・オブザーバー」および「オーロラ・スペクター・ドローン」の一団が、音もなく空間を切り裂いた。熱源も音も残さず、宇宙塵と光の奇異点をすり抜け、現れた謎の軍勢の中枢へと潜入していく。


旗艦のホログラムモニターに、偵察機が捉えた映像が鮮明に映し出された。 当初、将校たちはこの銀河を支配するまったく未知の文明かと考えていた。しかし、艦艇の建造物が拡大表示された瞬間、指揮室の空気は凍りついた。


高官からベテラン指揮官に至るまで、全員が目を丸くした。靴を取り戻したばかりの源 伊幸ですらも息を呑み、袖を力なく下ろした。


「待て……その角度を拡大しろ!」


イユキは眉をひそめ、モニターに歩み寄ると大声で命じた。


映像がズームされる。そこに映っていたのは最先端の超文明などではなく、錆びついた無骨なゴシック様式の巨艦群――無数の十字架と頭蓋骨の紋章が刻まれた、見覚えのある異端の造形であった。


間違いようもない! それは少し前、第6環状帯で粉砕し、製鉄所で鍋やフライパンに鋳直してやったはずの、あの狂信派の戦艦デザインそのものであった!


「な、なんだこれは!?」


補佐官の少年があんぐりと口を開けた。


「あり得ない! 第6環状帯の連中は我がオーロラ・ゼロによって全滅させられたはずだぞ!? なぜここにまだ存在している!?」


「まさか……ここは奴らの本星でも本拠地でもないというのか!?」


その通りであった。この艦隊の規模と散発的な配置を見るに、これは「穴あき帝国」の流亡した巡撃艦隊、あるいは外縁に潜伏していた残党に過ぎなかったのだ。奴らはこの狂信的な世界の核心戦力などではまったらなかったのである!


状況の意外性と重大性を察知した通信士たちは、即座に動いた。


「緊急警報! 全システム、直ちに目標を変更せよ!」


通信長が叫び、汗を流しながら量子キーボードを猛スピードで叩く。


「目標確定:『穴あき帝国』の残党勢力! これは本拠地掃討戦ではなく、大規模な残党狩り作戦である!」


通信士は即座に最優先の緊急信号を発信し、ミナモト・ヒユキ皇帝の玉座、国家警備隊、オーロラ・ゼロ特殊師団、そして周囲を固める6つの主力宇宙艦隊へと同時に通達した。


「最優先通達! オーロラ・ゼロ、国家警備隊、および6大主力艦隊へ告ぐ! 前方に現れた敵は未知の文明にあらず、第6環状帯にいたあの『穴あき』狂信派の残党である! 中央命令:全火力を起動、一頭たりとも逃がすな! ただちに全域の掃討を開始せよ!」


◆


残党掃討命令が駆け巡ると同時に、銀河外縁の空間が激しく震動した。 爆音はなく、ただ星系一つ分に匹敵する巨大な時空の裂け目が広がった。その深遠なる亀裂から、数万の星々の光を遮る圧倒的な天体が姿を現す。


――超巨大戦艦・移動型世界級宇宙ステーション『オーロラ・ジェネシス』!


中型惑星(地球と同等)に匹敵する直径12,742kmの完璧な球体。純白の量子装甲と赤道環状エネルギー帯を纏うその姿は、周囲の戦艦群を砂粒へと変える圧倒的な存在感を示していた。


そしてその背後から、黒と白の金属の海が躍り出た。 第10艦隊をはじめとする中・小型戦艦群(オーロラ・ストライクおよびインターセプター)が散開し、網状の火力陣形を構築する。さらに『オーロラ・ジェネシス』の右翼には、88隻の星座級航空母艦の一角がその雄姿を現していた。


『オーロラ・ジェネシス』の中枢指揮室は静寂に包まれていたが、そこには骨を刺すような冷酷な殺気が満ちていた。 靴の騒動を終えたミナモト・ヒユキ皇帝は、最高指揮台の上に仁王立ちし、軍服の裾をたなびかせている。小型化したロボット犬が足元で厳かに控え、その電子の瞳から赤い光を放って敵をロックオンしていた。


「前回のゴミクズどもは、まだ反省というものを知らんらしいな」


ヒユキは冷笑し、ホログラム上のゴシック艦隊を見下ろした。


「せっかく生き延びたというのに、おとなしく隠れていれば良いものを、わざわざ艦隊を率いて戯れ言を演じに来るとは。良い度胸だ」


源 伊幸が叔父の隣に立ち、量子メガネのフレームを整えながら誇り高く微笑んだ。


「陛下、私にオーロラ・ゼロと右翼の星座母艦を指揮させてください。10分以内にこの残党どもを掃討してみせます。今度こそ豚箱へ逃げ帰る隙すら与えません」


一方、レーダー上で『オーロラ・ジェネシス』の出現を感知した残党艦隊は、全システムが完全にフリーズしていた。 ゴシック艦艇内のセンサーが狂ったように明滅し、絶対的絶滅警報が鳴り響く。望遠鏡越しに地球サイズの純白の人工惑星と、無数の戦艦を目にした敵士官たちの顔から血の気が引いた。


「な、なんだあれは……!? 艦隊ではない……あれは『惑星』だ! 奴らは我々を押し潰すために、惑星ごと戦闘に乗り込んできたというのか!?」


交渉の余地はない。二度目の警告もない。 『オーロラ・ジェネシス』および星座母艦の表面から、数百万のハッチが一斉に開いた。数万のステルス戦闘機、爆撃機、そして指向性崩壊砲が照準を合わせる。


「――火蓋を切れ!」


ヒユキが冷徹に手を振り下ろした。


眩い光の海が爆発し、異銀河の外縁を完全なる量子火力の渦へと呑み込んでいった!


◆


『オーロラ・ジェネシス』の量子要塞砲が一斉射撃を開始すると、周囲の空間が歪んだ。人工惑星の環状帯に配置された巨大砲身が一斉に深青色の光を放つ。


「全域砲撃! 錆びついた装甲の一片たりとも残すな!」


源 伊幸が先頭の旗艦から力強く命じる。


ズドン! ズドン! ズドン!


エネルギー弾と超空間ミサイルの雨が宇宙の闇を切り裂く。濃密な火の網を織りなす。息をつく暇もなく、狂信派の無骨なゴシック艦隊は、指向性砲の直撃を受けて次々と装甲を穿たれていった。連鎖爆発が全域を鮮やかな橙色の炎の海へと変え、艦艇の残骸が虚無へと吹き飛ばされていく。


圧倒的な破壊の嵐をもって、オーロラ帝国は敵に「真の絶対的力」の定義を叩き込んだのである。


直後、通信士が皇帝へと報告を入れた。


「陛下! 外縁部に蜂の巣状の構造を持つ『ハイヴ・ワールド(巣窟惑星)』を確認! 我が新世代ドローン群の調査によれば、ここは敵の主要工業惑星の一つであり、名は『AVARAX(アヴァラックス)』。極めて人口密度の高い高密度拠点です!」


その報告を聞いたミナモト・ヒユキ皇帝は、直ちに『オーロラ・ジェネシス』内で最高幹部会議を招集した。


「これより、アヴァラックスの構造を解体し、その技術と資材を我が民の生活資材(鍋やフライパン)へと還元するための『オーロラ・ノヴァ作戦』を開始する」


皇帝はアヴァラックスの立体マップへ歩み寄り、冷徹に告げた。


「これより2年をかけ、この惑星を徹底的に『解剖』する」



『戦略的外科解剖』ドクトリン ―― アヴァラックス解体作戦(730日間)

「戦争とは混乱にあらず。制御された暴力をもって、相手に絶対的秩序を押し付ける芸術である」

前書:1%の体積を切り、残り99%を統制せよ

オーロラ帝国の天才指導層にとって、数十億の命がひしめくハイヴ・ワールド『アヴァラックス』は不落の要塞などではなく、教条と停滞に侵された巨大な生体組織に過ぎない。


攻撃案に無意味な激怒や無差別プラズマ照射は存在しない。用いられるのは、量子アルゴリズムによってミリ秒単位で計算された『立体脳神経外科手術ドクトリン』を伴う総力戦(Total Krieg)である。

第一段階:神経遮断と麻痺(第1〜3ヶ月)

深宇宙からの首切り攻撃(Decapitation Strike): 直径12,742kmの『オーロラ・ジェネシス』と88の星座艦隊が軌道上に展開すると同時に、全スペクトル量子パルスを発射。0.3秒以内にアヴァラックスの通信網および定位衛星を完全に撃滅。

完全なる盲目(Complete Sensor Blackout): 敵指導層のモニターは暗黒に包まれ、救援信号すら発せぬまま、完全なる孤立状態へと陥る。

高振幅運動エネルギー砲撃(Rods from God): 超高密度合金ロッドを軌道から投下。放射能を出さず、純粋な重力と運動エネルギーのみで地下の司令ブンカーをミリ単位で破壊。

第二段階:血管剥離と窒息(第4〜12ヶ月)

軌道封鎖ネットワーク: 88の星座艦隊が鉄壁の環状帯を形成。接近する全補給船を即座にチリへと変える。

窒息プロトコル: 酸素プラントおよびプラズマ反応炉をシステム的に遠隔制御・破壊。

内部からの社会崩壊: 酸素と食料の枯渇により、数十億の人口が暗闇の中で自滅・共食いを開始。帝国軍の手を汚すことなく、内部から崩壊していく。

第三段階:外科的侵入と掃討(第13〜20ヶ月)

量子ドリルと軌道降下: プラズマドリルが地殻を穿ち、各層の中枢へ直通する坑道を穿つ。

オーロラ・ゼロの降下: 生体特殊部隊オーロラ・ゼロが超音波速度で降下。彼らは細胞自己再生とナノ磁気吸収機構を備えており、胸を撃ち抜かれようと数分で再結合する。狂信的な抵抗をレーザーメスのように淡々と切り落としていく。

第四段階:新秩序の形成と戦略的撤退(第21〜24ヶ月)

完全監査と浄化: 4ヶ月をかけて軍事資料、コア技術、資源を余さず回収。

限界協定と最後通告: 2年間の期日が満了すると、艦隊は撤退。残されたのは、「境界線を越えれば次は2年の解剖ではなく完全消滅だ」という最後通告のみ。




◆


『オーロラ・ジェネシス』の指揮室から放たれた運動エネルギーロッドが地表を穿ち、アヴァラックスの防衛網は瓦解した。


「逢う者すべてを殺せ。一人たりとも生かして返すな」


ヒユキ皇帝の冷酷な決断が下される。


その時、第ゼロ部隊の第63大隊(わずか5名)が地下拠点を掃討中、18名の敵重装甲兵(スペースマリーン)と遭遇した。相手はチェーンソーとチェーンアックスを振りかざして襲いかかるが、オーロラ・ゼロの生体適合能力の前にその攻撃は虚しく砕け散る。


第63大隊の士官は、量子神経を「捕食・解析モード」へと切り替えた。 彼は敵の巨漢へ跳びかかると、ナノ磁気歯と素手で装甲を叩き割り、敵の肉体をその場で噛みちぎり、呑み込んでいった。


バリバリ! ガリガリ!


それは単なる残虐行為ではなく、現場で敵の遺伝子構造を直接解析するための冷徹な戦闘プロセスであった。数百年を生き抜き、同類を喰らって生き延びる術を知る敵兵たちすら、この「不可殺の野獣と超技術の融合」を前にして胃液を吐き戻し、精神を完全崩壊させた。


「参りました……助けてくれ……こんな化け物と戦えるか!」


命乞いの叫びが虚しく響き渡る。 63大隊の17歳の若き士官と15歳の兵士は、転がった敵幹部を見下ろしながら平然と会話を交わす。


「ねえ、あっちのデカい奴、僕が喰っていい?」


「いいよ、譲るよ。朝から動き回って腹が減ったからね」


その直後、増援の300名の敵兵と技術司祭(Tech-Priest)が駆けつけるが、オーロラ帝国のレールガン戦車の一撃で巨躯は粉砕され、続いて投入された80名の「オーロラ・ゼロの狼たち」によって完全に貪り尽くされた。


掃討が終わると、野生化モードが解除された17歳の士官は、あまりの肉の不味さにその場で吐き戻した。


「おえっ……! なんだよこの肉、固くて臭くて最悪だ……!」


周囲の80名の兵士たちも一斉に「不味い!」と嘔吐し始めるという、凄惨な戦場の中での奇妙なコメディが繰り広げられた。


◆


作戦の終盤、アヴァラックスのエネルギーコアへ到達したヒユキ皇帝とイユキ。 実は、兵士たちが戦闘中に肩を組んで歌を歌い出したり、過剰な野生化を起こしたりしたのは、ヒユキ皇帝が誤って「生体暴走ボタン」を押し、さらにシステム時計を2年後にズラしてしまったという、とんでもないポカが原因であった。


1,500名以上の兵士が嘔吐と混乱で転がっている惨状を前に、倫理委員会と軍事検察庁は静かに違反ノートへペンを走らせていた。


しかし、この作戦の真の目的は無差別殺戮ではない。 工場群から救出されたのは、大人ではなく、昼夜を問わず武器製造に従事させられていたガリガリに痩せこけた子供たちであった。 オーロラ帝国は彼らを解放し、保護し、帝国の正式な公民として迎え入れるためにこの「2年間の解剖」を行ったのだ。


◆


戦後、残された敵帝国との緊急交渉が持たれた。 ホログラム画面に現れたヒユキ皇帝は、14歳の可愛らしい顔立ちでありながら、凍りつくような声で言い放った。


「これはほんの準備運動に過ぎない。我がオーロラ帝国に再び手を出すならば、お前たちの本拠地まで乗り込み、すべてを喰らい尽くしてやる」


続いて副皇帝リン・クジョウが会議室へ足を踏み入れ、畏怖する敵使節団に向けて圧倒的な既成事実(fait accompli)を突きつけた。


「我がオーロラ帝国の損害は実質ゼロ。対して貴様らの戦力は完全に崩壊した。我々の行動は侵略にあらず、子供たちを解放するための『人道的な介入(Humanitarian Intervention)』である。10秒以内に降伏協定にサインするか、それとも全域消滅プロトコルを起動するか選ぶがいい」


さらに、ヒユキ皇帝は新兵器――**563mm『超巨大化ヤマト電磁砲』**のデータを提示した。 それは砲身内でマイクロブラックホールを保持し、光速で放たれた砲弾がハイパーノヴァ爆発を起こした後に時空ごと敵を呑み込むという、宇宙消滅級の絶対火力であった。


「我が帝国への裏切りは許さない。全88星座空母艦隊、563ミリ電磁砲、起動――この座標を多次元マップから消去せよ」


オーロラ帝国の艦隊が去った後、そこには物理法則すら歪んだ永遠の「時空の傷跡」だけが残された。 敵帝国の高官たちは、1,000年遅れた自らの科学力と、オーロラ帝国の圧倒的なAI・量子技術の差を思い知らされ、絶望の淵で震えることしかできなかったのである。


◆


数百光年の深宇宙を越え、オーロラ帝国の帝都へと帰還した救出された子供たちと人々。 彼らが窓の外に見えたものは、火星サイズの巨大戦艦が6つの環状帯で同時に建造されているという、神々の領域の工業力であった。


さらに第1環状帯――木星サイズの巨大惑星5基が、中央の軍事惑星を中心に完璧な軌道を描いて公転する壮大な光景。


「お……おお、神よ……」


「木星サイズの惑星を、手の中で遊ぶおもちゃのように配置している……。僕たちは、神々の王国に足を踏み入れたのだ……」


人々は涙を流し、恐怖と感動の中で膝をついた。 オーロラ帝国の保護下に入ったこと――それは単なる救済ではなく、多次元宇宙の頂点たる絶対的秩序の一員となるための、偉大なる進化の第一歩であったのだ。




END CHƯƠNG 3 ――そして未来、残される者たちの物語(第4章)へ続く。物理法則の全壊と、圧倒的な破壊の本質が明かされる……!


【著者より】


著者:Minamoto Hiyuki

アイデア補助・共同創作:Gemini

すべての読者の皆様に、心より感謝を申し上げます!


最後までお読みいただき、誠にありがとうございます!


もしこの話や作品の世界観を少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ページ下部の【ブックマークに追加】や【評価(★★★★★)】で応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!


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