オーロラ帝国(UNCIA):暴君の時代といたずらっ子たち
初めまして、ご覧 いただきありがとうございま す! 本格SF軍事小説『オー ロラ帝国 (UNCIA)』の執筆 を開始いたしました。【更新 スケジュール】 毎週月曜日、 木曜日、日曜日に更新予定で す! 休止明けからは怒涛の展 開とスケールアップしたSF戦 場をお届けしますので、ぜひ お楽しみください!
帝国暦6月25日。その黎明は一般的な惑星の大地を照らすものではなく、中央政府直轄・最高正規戦力「第ゼロ部隊」に所属する一隻の巡洋艦――そのチタン複合装甲の表面を緩やかに撫でていった。
オーロラ帝国(UNCIA)の me 拠点である本星は、広大な虚空のただ中に荘厳なる姿を晒している。その周囲には四つの居住惑星が完璧な軌道軸を描いて規則正しく公転しており、何者をも寄せ付けぬ鉄壁の星系要塞を形成していた。第ゼロ部隊に配備された艦艇の内部には、局地的な前線の硝煙の匂いはない。代わりに漂うのは、鋼鉄の規律と中央からの絶対的な統制がもたらす、息を呑むほどの静寂であった。
特権階級にのみ許されたプライベートルームにて、皇帝の従甥であり、政府中枢の天才的頭脳と謳われる源 伊幸(みなもとの いゆき・14歳)は、短い微睡の中にいた。
ベッドの傍らに置かれた執務机。機械の設計図面や『十の誓約』を記した手帳の横では、サブモニターが淡い光を放っている。そこに表示されているのは、彼が持つ第ゼロ部隊艦艇での特殊権限――内政防衛を専任としながらも、暗闘とうごめく権力闘争の渦中に置かれた部隊の証であった。
時刻は午前6時ちょうど。無機質なアラーム音が高らかに室内に響き渡る。
伊幸は薄く目を開けた。その鋭い双眸は、点滅する監視モニターを真っ直ぐに見つめる。「倫理委員会」による定期査察の準備通知。彼はゆっくりと立ち上がり、拳を軽く握りしめた。
◇
権力の中心地に身を置き、内政を護るということ――それは決して安全を意味しない。むしろそこは、一歩足を踏み外せば命を落とす政治的罠が張り巡らされた、底なしの沼なのだ……。
その時、デスクのホログラムモニターが突如として眩い黄金色の光を放った。帝国最高指導者の執務室からのみ発信される、最高権限コードの通信である。
伊幸は第ゼロ部隊の軍服の襟元を素早く整えると、操作パネルに指を滑らせた。一瞬にして、立体映像が空間に結像する。
現れたのは、白髪の老王でも、威圧感を放つ筋肉質の暴君でもなかった。そこにいたのは、伊幸とさほど変わらない15歳前後の少年であった。洗練された帝国軍服に身を包んだその姿は美しく、端正で、どこか青々しさすら残している。しかし、見る者を圧倒するのはその「目」だった。波一つ立たない静寂な湖のように深く、人類が歩んできた数千年の浮沈を見通してきたかのような、途方もない達観が宿っていた。
――源 比雪。オーロラ帝国(UNCIA)最高執政権者にして、「不老」という名の呪い、あるいは祝福を背負う皇帝。数千年前、この帝国を建国したその日から、彼の時はいまも止まったままである。
「朝早くからモニターを点けているのだね、イユキ?」
比雪の声が響く。少年の澄んだ音色でありながら、どこか不気味なほどに落ち着いた、老成した響きを帯びていた。
「昨夜もまた、第ゼロ部隊の巡洋艦エンジンや機械設計図と睨めっこをして徹夜したのだろう?」
◇
伊幸は軍規通りに軽く頭を下げ、静かな声で応じた。
「陛下。私はただ、内政用巡洋艦の冷却システムを最適化していただけにございます。業務の進捗上、緩みを生じさせるわけにはまいりません」
比雪は小さく息を吐き、目頭を指で軽く押さえた。大人のようなその仕草が、少年の顔立ちで行われることにどこか超現実的な違和感を抱かせる。不老の皇帝は従甥を見つめ, その瞳に深い理解と真摯な慈愛を込めながら、畳みかけるように問いかけた。
「仕事は無限だが、人の身体は有限だよ。最近の健康状態はどうなのだ、イユキ? 食事はきちんと摂っているのかい? それとも電子部品に夢中になるあまり、入浴や休息のことすら綺麗さっぱり忘れてしまったのかね?」
「体調に問題はありません、叔父様……。ちょうど今から、倫理委員会の査察に参加するため外出の準備をしようとしていたところです」
伊幸は簡潔に答えた。どれほど同年代の少年の姿をしていようとも、数千年の歴史を生き抜いてきた王を前にすれば、伊幸の本能は絶対の敬意を払わずにはいられない。
『倫理委員会』という言葉を耳にした瞬間、若い皇帝の表情がわずかに陰った。比雪は胸の前で腕を組み、細く長い目をさらに細める。
「あの頭の硬い審判官どもか……。彼らには好きに仕事をさせておけばいい、なに、恐れる必要はないよ。ただ……このところ、全土を統一した後の国内情勢は、少々きな臭くなってきていてね、イユキ」
伊幸は目を細め、静かに耳を傾けた。長劫の時を重ねた雄大な帝国において、武力による統一が真の安寧をもたらしたことなど、ただの一度もないのだから――。「分かっています」
イユキはゆっくりと言葉を噛みしめるように分析した。
「第ゼロ部隊が本星の軍事拠点と四つの居住惑星を厳重に管理しているとはいえ、旧派閥による不満の種は水面下でくすぶり続けています。戦後の各地域間における格差が、見えない亀裂を生み出しているのです」
「その通りだ」
比雪は深く頷いた。かつて無数の帝国の崩壊を見届けてきた者の、底知れぬ達観がその瞳に宿る。
「数千年を生きる私だからこそ、誰よりもよく分かる。外敵との戦争など鎮めるのはたやすい。だが、統一後の人心の乱れこそが、国家を内側から蝕むガンなのだ。最高検察庁は生活支援を巡るデモへの対応に頭を悩ませ、前線の総司令官たちは日々、中央の権力を虎視眈々と窺っている」
若き皇帝は空間を軽く指先でなぞる。すると、ホログラム画面に精鋭士官100名のリストが浮かび上がった。
「だからこそ、私は君たち世代――この帝国の枢機を担う14歳から26歳までの天才たちに期待を寄せる。第ゼロ部隊に身を置くイユキ、一歩一歩を慎重に進むんだ。隙を見せてはならない。歴史が教えてくれたように、中央のわずかな亀裂が、一つの時代の崩壊を引き起こす引き金になるのだから」
「はっ、陛下。お言葉、肝に銘じます」
イユキは背筋を伸ばし、深く頭を下げた。
「よし、ちゃんと食事を摂り、身なりも整えておきなさい。倫理委員会の連中に細かな揚げ足を取られるなよ」
比雪はかすかに笑みを見せ、その外見通りの年相応のあどけなさを一瞬だけ取り戻すと、通信を切断した。
◇
画面が暗転する。イユキは身を翻してバスルームへと向かった。温かな湯水が肌を伝い、頭脳を冴え渡らせていく。オーロラ帝国の水面下で渦巻く暗闘は、まだ幕を開けたばかりだ。14歳にして皇族の血を引く彼は、権力、法律、 context そして絶対君主の不老という名の絶壁に架かる細い綱渡りを強いられているのだ。
シャワーから流れ落ちる温水が乱れた黒髪を濡らし、図面と格闘して迎えた長い夜の疲労を洗い流していく。しかし、源 伊幸の胸の内でうねる激しい潮流を拭い去ることはできなかった。
(前線の艦隊が第6宇宙港に寄港するたび、いつも同じことが起きる……。だが、その表向きの平和など、中央を丸呑みにしようと牙を研ぐ暗雲を覆う隠れ蓑に過ぎない)
イユキは目を閉じ、オーロラ帝国が世界を完全に掌握していながらも、一度たりとも止むことのない内紛の気配を肌で感じ取っていた。
バスルームから出た彼は、第ゼロ部隊の端正な軍服へと着替え直すと、素早く執務机へ歩み寄った。秘導入力端末に軽く触れ、本日のスケジュールを確認すべく専属補佐官へと直通回線を繋ぐ。
「もしもし。私の執務室に回線をつないでくれ」
落ち着き払っていながらも、高位士官特有の断固たる命令口調が響く。
ほんの数秒後、ホログラム画面に中央本部に待機する若き補佐官の顔が映し出された。
「お呼びでしょうか、イユキ様。今朝の査察に向けた資料は、すべて準備が整っておりますが?」
◇
「あぁ、済ませておいた」
イユキは冷徹に言い放つ。
「それから、午後のスケジュールを一部削ってくれ。直ちに中央執務室へ赴き、倫理委員会の査察結果報告書を提出する。ついでに……今朝、突如として解任された高位士官の処分案件についても、書類を最終化しておけ」
回線の向こうで、補佐官が息を呑んで動きを止めた。驚愕の色が声に混じる。
「突然の高位士官の解任ですか? 左腕の指揮官でありながら帝国の厳格な法度を破った、あの軍団長の件でございますか? 国家の軍事セクター全体が大騒ぎになっております。今、私たちがそこに首を突っ込んで、各派閥間の緊張をさらに煽ることになりはしませんか?」
イユキは薄笑いを浮かべ、ホログラムのレンズを冷ややかに見据えた。政治的圧力に断じて屈しない、鉄の意志をそこに体現しながら。
「緊張が高まれば高まるほど、我々は事の真相を明確にしなければならない。鉄の規律と検察庁の厳正さを融合させた帝国の法は、才覚を笠に着て権力を乱用する輩を一切許容しない。たとえその人間が100名の精鋭士官のひとりに数えられようとも、誓約を踏みにじったのであれば、倫理委員会も第ゼロ部隊も決して妥協はしない」
「はっ! 承知いたしました。直ちに書類をまとめ、中央執務室にてお待ちしております!」
補佐官は厳かに関係を締めた。
通信が切れる。イユキは軍帽を手に取り頭に被ると、寝室を後にして内政用宇宙艇のプラットフォームへと繋がる量子エレベーターへと歩みを進めた。暗闘の波紋が広がる中、源 伊幸の1日が本格的に始まろうとしていた。
第ゼロ部隊の専用宇宙艇が発進プラットフォームを滑らかに離れ、オーロラ首都の金属光沢に満ちた空を滑空していく。高級客室の内部では、ホログラム制御パネルの光が、イユキの冷徹で沈着な横顔を青白く照らし出していた。
宇宙艇が中央本部のメイン中継ターミナルへ到着しようとしたその時、自動扉が音もなく開いた。隣の区画から数名の士官たちが歩み出てくる。その先頭に立つ一人の人物が、イユキの目を引いた。
それは、まだ10歳前後にしか見えない幼い少年だった。本来であればまだ机で勉学に励んでいるか、初等実習を受けているはずの年齢である。しかし、その襟元にはイユキと対等の士官階級章が輝き、背後には中央政府直属ではなく、外縁部の鉱業軍管区のいずれかに属する武装兵士の一団を従えていた。
客室内の空気が一瞬にして凍りついたように静まり返る。10歳の少年は歩みを進めながら、その鋭い眼光をイユキへと向けた。だが、目の前の男の胸元に輝く第ゼロ部隊の階級章と徽章を認めた瞬間、少年の表情が微かに歪んだ。
十にして士官の座へと上り詰めた天賦の才を持ちながらも、オーロラ帝国の権力構造において、皇帝直属かつ中央を象徴する「第ゼロ部隊」の絶対的な権限と位階は、外縁軍管区のそれを遥かに凌駕しているのだ。
少年はわずかに足を止めると、軍規に則り、しかし悔しさを押し殺すように深々と敬礼した。
「――イユキ様、お見知りおきを」
◇
ngay lập tức, 全士官および兵士たちが一斉に頭を下げた。狭い艦内通路に、装甲が触れ合う規則的な金属音がカチャリと響き渡る。
イユキは両手を後ろで組み、傲然としながらも沈着な眼差しで、幼くして高い手腕を誇るその少年の意図を探るように見下ろした。すぐには返答をせず、相手の表情を静かに観察する。
「君は……」
イユキの落ち着いた声が、静寂を切り裂く。
「北方の鉱業軍管区から派遣された、第二部隊の部隊長だな? 本線から外れたこのような場所まで来るとなれば、あちらの戦線でよほどの変動があり、中央執務室まで軍を率いて赴かざるを得なかった……ということか?」
10歳の少年は顔を上げた。その瞳の奥には天才特有の不遜な光が揺らめいていたが、中央からの威圧感を前に、すぐさま警戒心で覆い隠された。少年は薄い笑みを浮かべ、応じた。
「――不躾ながら申し上げます、イユキ様。外縁環状帯から遥々ここまで乗り込んできたのは、当然ながら遊興のためではありません。我々の鉱業プラントおよび補給ステーションが少々厄介な事態に直面しておりましてね……それに今朝、軍事検察庁が下したあの軍団長への突然の降格処分が、我が方の防衛線を激しく揺るがしているようです」
それを聞いたイユキの口元に、冷ややかな笑みが刻まれた。案の定、今朝の高位士官の降格劇こそが、外縁軍閥と中央 government の間にくすぶる緊張に火をつけた導火線だったのだ。
「帝国の法に例外など存在しない。それが前線であろうと、内政の渦中であろうとな」
◇
イユキは短く切り返した。その声には、生殺与奪の権を握る者特有の絶対的な重みが宿っていた。
「もしあの男が『十の誓約』と帝国の法度を踏みにじったのであれば、降格処分の後に倫理委員会の審問にかけられるのは時間の問題だ。不服があるならば、不服申立書を携えて中央執務室の私の元へ来るといい」
言い捨てるやいなや、イユキは10歳の少年とその外縁部隊の脇をすり抜けて歩み去った。背後に遺された圧倒的な圧迫感に、後方の兵士たちは顔を上げることすらできなかった。
宇宙艇が正式にドッキングを完了する。ハッチが開き、中央執務室前広場の眩い光が差し込んできた。オーロラ帝国を揺るがす内部危機の渦中が、目と鼻の先に迫っていた。
◆
中央執務室の大会議場の防弾扉が滑らかに開いた瞬間、弦を限界まで張り詰めたかのような重苦しく殺伐とした空気の奔流が、源 伊幸の顔を直撃した。
強化ガラスのドーム天井に包まれた会議場――オーロラ帝国の最高峰の頭脳と権力の中枢が集うその場所は、今やまさに凄惨な戦場と化していた。かつての洗練された気品や紳士的な態度は影を潜め、高官や高位士官たちが総立ちとなって互いに指をさし合い、激しい罵声を浴びせ合っている。
防音壁を突き破らんばかりの怒号と机を叩く爆音が響き渡っていた。
「艦隊の定期交代を目前にして、左腕の指揮官たる軍団長を独断で降格させるなど、いかなる権限があってのことだ!? これは前線の防衛線を内部から破壊する暴挙だぞ!」
外縁軍管区を代表する士官が、顔を真っ赤に腫れ上がらせて咆哮した。
「『破壊』だと!? この規律も知らん無能どもが!」
中央軍事検察庁の官僚がすかさず机を叩き返し、刃のように鋭い眼光で睨みつけた。
「貴様らが庇おうとしている男が、高エネルギー兵器を闇市へ横流しした罪を犯したのだぞ! 『十の誓約』第6条に対する重大な違反だ! 階級を剥奪され、処刑場へ引きずり出されなかっただけでも恩の字だと思え! 腐敗という罪悪を覆い隠すために、前線という盾を盾に取るな!」
「腐敗の有無など未だ明白ではない! この局面に至って要となる指揮官を失脚させるなど、自ら首を絞めるに等しいわ! 空調の効いた部屋でぬくぬく過ごしてきたお前たち中央の人間には、現場の人間がどれほどの血を流してこの国を維持しているか分からんのだ!」
激化する論争は、明確に二つの陣営へと分裂していた。鉄の規律を断固として死守しようとする「中央派」(法、倫理委員会、第ゼロ部隊)、そして中央による抑圧で実戦戦力が削がれることに激怒する「外縁軍管区・左腕派」である。
衝突の熱量はあまりにも凄まじく、未だ一発の銃弾すら飛び交っていないにもかかわらず、その場に足を踏み入れた者ならば誰もが明瞭に「硝煙の匂い」を感じ取ることができた――羨望、利権の衝突、そして帝国内部から解体しかねない暗闘の匂いを。
入り口に佇むイユキは、その混沌とした情勢を冷徹に俯瞰していた。軍服の襟元を整え、鋭い双眸で怒りに打ち震える面々を一人ひとり見定める。彼の威容は瞬く間に場を支配し、あれほど激しかった罵声は徐々にしぼんでいき、互いを牽制し合う探り合いの視線へと取って代わられた。
「……随分とお暇なことで」
イユキの淡々としながらも氷のように冷たい声が響き、会議場の喧噪を完全に断ち切った。彼は静かに議長席へと歩みを進め、背後に息を呑むような沈黙を置き去りにした。
◇
源 伊幸の冷徹な一言が落ちた瞬間、会議場全体が息を呑むほどの静寂に包まれた。誰一人として大声を出す者はなく、すべての視線が議長席へ歩を進める14歳の少年に釘付けとなる。
バンッ!
イユキはすぐには腰を下ろさなかった。彼は分厚い機密書類の束を、強化ガラスのデスクへと無造作に叩きつけた。硬質で無機質な衝撃音が、静まり返った室内に重々しく響き渡る。間髪を入れず、傍らに控えていた補佐官が、高官や高位士官たちへ向けて資料の複製とデータ端末を迅速に配布していく。
「目を通せ」
イユキの声が響く。刃のように鋭く、一切の揺らぎもない。
「検察庁を罵倒し、降格された一人の罪人のために中央へ妥協を迫る前に……その資料を開き、己の愚かな目を見開いて現実を直視するがいい」
外縁派および左腕派の高官たちは言葉を詰まらせ、懐疑的な視線を書類へと注いだ。しかし、各々のホログラムモニターに暗号化されたログ、データソース、音声記録が映し出された瞬間、彼らの顔から怒色が急速に引き、青ざめた蒼白へと変わっていった。
「な……なんだ、これは……!?」
高位士官の一人が、言葉を詰まらせながら悲鳴に近い声を上げた。
イユキは軍服のポケットに両手を突っ込んだまま冷ややかに身体を乗り出し、机の上に両手を突いた。ナイフのように鋭い双眸で、愕然とする者たちを逃さず射抜く――。
◇
「貴様らは捏造しているか、あるいは根拠のない完全に歪曲された情報に踊らされているだけだ! 貴様らが必死にかばい立てしているあの軍団長も、その『高エネルギー兵器の闇市横流し』なる証拠も、その実態は精巧に仕組まれた一興の茶番劇に過ぎん!」
イユキは言葉を一度切ると、蔑みに満ちた冷笑を浮かべた。
「そして、この偽情報の発信元はどこだと思う? 他でもない、宇宙版『IS』と称される反乱勢力――我が帝国に血眼になって牙を剥く、テロリストであり反抗組織の仕業だ!」
会議場が一瞬にしてどよめきに包まれた。反乱勢力『IS』の名は、オーロラ帝国が鉄血と bạo lực(暴力)によって世界を大統一し、永久の平和を手に入れて以来、中央政府にとって常に目障りな刺であり続けている。
「奴らか……!」
内政官の一人が歯の根を噛み鳴らした。
「奴らはいつだって、手を変え品を変え中央の失墜を狙っている……!」
「その通りだ」
イユキはきっぱりと言い放ち、その双眸に絶対の確信を宿らせた。
「反乱勢力ISは帝国の高尚な意図を全く理解していないか、あるいはあえて無視しているのだ。彼らは我々が戦争と武力をもって世界を統一したことを残虐だと断じる。だが、奴らはこの厳然たる事実から目を背けている――もし、あの鉄血による大統一がなかったならば、人類は数十におよぶ局地戦の中で、とっくの昔に自滅していたはずだ!」
14歳の少年は、一字一字に重みを込めて断固として強調した。
「この大規模な統一があったからこそ、我々は全人類の資源、技術、そして叡智を結集させ、今日のような圧倒的なSF科学の発展環境を築き上げることができたのだ! それだというのに、ISという名の塵芥どもは、後方や前線における些細な不満を煽り立てて情報戦を仕掛け、我が国を内側から分断しようと画策している!」「――後方や前線における些細な不満を煽り立てて情報戦を仕掛け、我が国を内側から分断しようと画策しているのだ!」
イユキは一撃を見舞うように、激昂していた士官たちの顔を一人ひとり射殺すように見据えた。士官たちはその鋭い視線から逃れるように、次々と俯いていく。
「――あの大佐の降格処分は、中央による圧迫などではない。軍の陣営に食い込んだISのタコ足のような巣窟を根絶やしにするための、不可欠な浄化措置だ! 反動情報に踊らされた者をこれ以上この場で擁護しようという者がいるならば……その者はテロリストの同調者とみなす!」
硝煙の匂いは薄れるどころか、その場にいる全員の肩に重くのしかかる恐ろしい圧力へと変貌していた。もはや反論の声を上げる者など一人もいない。第ゼロ部隊が誇る若き天才の鉄の論理の前に、あらゆる詭弁は意味をなさなくなっていたのだから。
◇
バンッ!
イユキはすぐには腰を下ろさなかった。分厚い機密書類の束を、強化ガラスのデスクへと無造作に叩きつけた。硬質で無機質な衝撃音が、静まり返った室内に重々しく響き渡る。間髪を入れず、傍らに控えていた補佐官が、高官や高位士官たちへ向けて資料の複製とデータ端末を迅速に配布していく。
「読め」
イユキの声が響く。刃のように鋭く、一切の揺らぎもない。
「検察庁を罵倒し、降格された一人の罪人のために中央へ妥協を迫る前に……その資料を開き、己の愚かな目を見開いて現実を直視するがいい」
外縁派および左腕派の高官たちは言葉を詰まらせ、懐疑的な視線を書類へと注いだ。しかし、各々のホログラムモニターに暗号化されたログ、データソース、音声記録が映し出された瞬間、彼らの顔から怒色が急速に引き、青ざめた蒼白へと変わっていった。
「な……なんだ、これは……!?」
高位士官の一人が、言葉を詰まらせながら悲鳴に近い声を上げた。
イユキは軍服のポケットに両手を突っ込んだまま冷ややかに身体を乗り出し、机の上に両手を突いた。ナイフのように鋭い双眸で、愕然とする者たちを逃さず射抜く――。
◇
「貴様らは捏造しているか、あるいは根拠のない完全に歪曲された情報に踊らされているだけだ! 貴様らが必死にかばい立てしているあの軍団長も、その『高エネルギー兵器の闇市横流し』なる証拠も、その実態は精巧に仕組まれた一興の茶番劇に過ぎん!」
イユキは言葉を一度切ると、蔑みに満ちた冷笑を浮かべた。
「そして、この偽情報の発信元はどこだと思う? 他でもない、宇宙版『IS』と称される反乱勢力――我が帝国に血眼になって牙を剥く、テロリストであり反抗組織の仕業だ!」
会議場が一瞬にしてどよめきに包まれた。反乱勢力『IS』の名は、オーロラ帝国が鉄血と暴力によって世界を大統一し、永久の平和を手に入れて以来、中央政府にとって常に目障りな刺であり続けている。
「奴らか……!」
内政官の一人が歯の根を噛み鳴らした。
「奴らはいつだって、手を変え品を変え中央の失墜を狙っている……!」
「その通りだ」
イユキはきっぱりと言い放ち、その双眸に絶対の確信を宿らせた。
「反乱勢力ISは帝国の高尚な意図を全く理解していないか、あるいはあえて無視しているのだ。彼らは我々が戦争と武力をもって世界を統一したことを残虐だと断じる。だが、奴らはこの厳然たる事実から目を背けている――もし、あの鉄血による大統一がなかったならば、人類は数十におよぶ局地戦の中で、とっくの昔に自滅していたはずだ!」
14歳の少年は、一字一字に重みを込めて断固として強調した。
「この大規模な統一があったからこそ、我々は全人類の資源、技術、そして叡智を結集させ、今日のような圧倒的なSF科学の発展環境を築き上げることができたのだ! それだというのに、ISという名の塵芥どもは、後方や前線における些細な不満を煽り立てて情報戦を仕掛け、我が国を内側から分断しようと画策している!」
◇
中央会議場の防弾扉が滑らかに閉まり、内部の畏怖に満ちた視線と息の詰まる圧迫感が完全に遮断された。源 伊幸は踵を返し、強化ガラスの長い廊下を速足で歩み去った。
向かうは、自らの絶対保全執務室――倫理委員会の盗聴器も監視アルゴリズムも一切侵入できぬ聖域である。
量子暗号によって扉が厳重にロックされた瞬間、第ゼロ部隊の高位士官としての威厳と冷徹な面立ちは、イユキの全身から綺麗さっぱり消え去った。14歳の少年は深々とため息をつき、肩の力を抜くと、疲れ果てた様子で軍帽をソファへと放り投げた。
「はぁー……頭の硬い連中め。あいつらに説明するくらいなら、反物質エンジンの研究をしている方がよっぽどマシだ」
イユキは額を押さえながらぶつぶつと呟いた。
その時、デスクのホログラムモニターが自動で点灯し、皇帝・源 比雪の姿を映し出す。だがそこには、公の場で見せる絶対君主としての荘厳な面影はかけらもなかった。不老の皇帝は椅子にだらしなく深々と腰掛け、頬杖をつきながら、エネルギーキャンディを口にくわえて至極退屈そうな顔をしていた。
「ふぅ……。さっきの口喧嘩、見事だったぞイユキ。あやうくキャンディの種を喉に詰まらせるところだった」
比雪はクスクスと笑い、権力の鎧を完全に脱ぎ捨てて、年相応の少年のように軽やかで親しげな口調に戻っていた。 「上出来だぞ。特に、あの書類の束をデスクに叩きつけたところなんか、最高にクールだった!」
イユキはモニターをジロリと睨みつけると、口を尖らせて、 chú cháu 間で mị 遠慮のない不満をぶちまけた。
「いいかげんにしてください、大将。そこでニヤニヤ笑っていないでくださいよ。本来なら検察庁のトップやら前線の総司令官どもの仕事でしょう? なんで全部僕の頭の上に押しつけるんですか!」
比雪は肩をすくめ、ひらひらと手を振ってへらへらと笑った。
「おいおい、何を言っているんだ。お前は私の自慢の天才で、可愛い従甥だろう? お前に任せないで誰に任せるってんだ。それに……」
不老の皇帝は目を細め、悪戯っぽく笑った。
「……お前も分かっているだろうが、この中央の座ってやつは、いつだって針の筵の上なんだ。私自身が直接しゃしゃり出てあんな日常の酒の肴みたいな案件を処理してみろ、外縁の軍閥どもが『皇権の専制だ』ってまたギャーギャー騒ぎ立てる口実を与えることになるんだからな」
イユキは胸の前で腕を組み、画面越しに自分の“不老の叔父”を思い切り睨みつけた。一切の畏敬の念を捨て、タメ口で噛みつく。
「あのさぁ、言わせてもらうけど、僕はもうクタクタなんだよ! あなたが好きで招いたISの反乱分子と官僚どものゴミ処理なら、自分でやってくれよ! 僕はまだ14歳だぞ!? 今頃は家でメカの設計図でもいじっていたいのに、なんであなたの作った数千年の歴史がある帝国の政治危機を、汗だくになって拭って回らなきゃいけないんだよ!」
それを聞いた比雪は大声で爆笑した。皇帝の名を戴く少年は、目の前の従甥の前では威厳など微塵も見せず、むしろ面白がってからかいを重ねる。
「おいおい、若き友人よ、落ち着きたまえ! そんなにカリカリしてどうする? ピラミッドの頂点に座るってことはだな、竜巻の直撃を受ける覚悟を持つってことなんだよ――」
◇
「――それにさ、お前も分かっているだろう? お前の冷徹な頭脳というタガが外れてみろ。ほんの一週間もすれば、外縁の軍閥と検察庁の連中が互いに噛み合い、この軍事拠点の惑星ごと叩き潰して終いさ」
イユキは重々しいため息をつき、身を投げ出すように柔らかいソファへ深く腰掛けた。ドーム型の天井に映し出される天体図を見上げる。
「分かってはいますけど……それにしても、心底疲れましたよ」
イユキの声が小さく沈む。幼くして国家の重責を背負わされた少年特有の、隠しきれない無力感が滲んでいた。
「この世界の平和なんて、所詮は張りぼてだ。100名の精鋭士官システムを見ても、あちこちの法体系を継ぎ接ぎした無数の規則や、あの冷酷な倫理委員会を見ても……僕にはどうしても、僕たちが噴火口の上に砂の城を築いているようにしか思えないんです」
回線の向こうで、比雪のふざけた笑みが消えた。不老の皇帝の澄んだ瞳に、途方にもなく深い思索の光が宿る――数千年にわたり、歴史の巡りを幾度となく見届けてきた者だけが持つ眼差しだ。
「……そりゃあ、噴火口の上そのものだからな、お前」
比雪は少しだけ表情を崩さず、低く温かみのある声で言った。
「だがな、そこが噴火口だからこそ、お前のように冷えた頭脳を持つ人間が爆発を防ぎ止める必要があるんだよ。頼んだぞ、従弟殿。この大混乱を収拾できたら、一週間の休暇をやろう。機械の工房に籠もろうが、どこへ行こうがお前の好きにしていい。それでどうだ?」
イユキは画面を小憎々しげに睨みつけたが、口元は思わず微かに綻んでいた。
「覚えておいてくださいよ。絶対に約束は守ってくださいね、ケチな皇帝閣下」
「あぁ、あぁ。私がいつ約束を破ったことがあったかい?」
比雪は大声で笑い、手を振って通信を切断した。
◇
部屋に再び静寂が戻る。イユキはソファに背を預けたまま、強化ガラスの窓の向こうに広がる星空を見つめた。
一日の始まりを告げる政治的暗闘は、この密室の扉の向こうでひとまず幕を閉じた。しかし、これがオーロラ帝国という残酷で広大な大海原に立つ、最初の波紋に過ぎないことを、彼は誰よりも理解していた……。
官僚どもとの不毛な口喧嘩を終え、疲れから漸く眠気が襲ってきた。イユキは目を閉じ、保全執務室の束の間の静寂を噛みしめていた。
だが、人生というものは天才に対して5分以上の安らぎすら与えてはくれないらしい。
ピピッ! ピピッ!
デスクの上に置かれた個人通信機が、不躾で甲高いアラーム音を響かせた。イユキは微かに眉をひそめた。倫理委員会からの至急文書でも届いたのだろうか。貴重な睡眠を邪魔した無礼者を一喝してやろうと、彼は手を伸ばして通信ボタンを押した。
ホログラム画面に、再び皇帝・源 比雪の姿が浮かび上がる。しかし、先ほどの真面目な顔やドヤ顔とは打って変わり、不老の皇帝はへらへらとへりくだった笑みを浮かべ、憎々しいほど無邪気にパチパチと目を瞬かせていた。
「あー……イユキ? まだ寝てないよな?」
比雪の声が甘ったるく響く。殴りつけたくなるほど調子のいい、あからさまなねだり口調だった。
イユキは顔を真っ暗にし、ガバッと起き上がると画面に向かって怒声を浴びせた。
「切ってから三十秒も経ってないぞ、このイカれ皇帝! 今度は何の真似だ!? この中央ステーションごと軌道上に放り投げられたいのか!?」
比雪は怯む様子もなく、むしろクスクスと笑いながら頭をかき、まるで落ちているゴミでも拾うかのような軽いトーンで言葉を吐き捨てた。 「――落ち着け、落ち着けって相棒……! たしか……さっき思い出したんだが、やっぱりお前に一週間の休暇をやれなくなっちまったんだよ、ボクちゃん」
部屋の空気が一瞬にして凍りついた。イユキの双眸が細められ、室内に尋常ならざる殺気が立ち込める。
「……今、なんて言った? もう一度言ってみろ」
イユキの声は氷のように凍てついていた。
比雪は肩をすくめ、悪びれもせずに新しい暗号化書類をホログラムのレンズの前に突き出した。
「いやさ……さっきお茶を飲もうとしたら、宇宙情報部からピカピカ光る急報が届いてね。第7エリアの惑星5561で、民間人による超大規模な暴動が発生したらしい。現地の警察機構じゃすでに手に負えなくなっていて、どうやら連中はエネルギー施設を片端から破壊しているみたいなんだよ」
若き皇帝はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、からかうような低音で囁いた。
「――というわけでだ……急を要する事態だし、面倒だが我が自慢の優秀な甥っ子君に現地へお尻をまくって飛んでもらい、一発華々しく処理してきてもらえないか? 親愛なる相棒さんよ!」
その瞬間、イユキのこめかみに青筋がミミズのように浮かび上がった。彼は拳を固く握りしめ、歯ぎしりが聞こえるほどの音を立てて激怒した。
「源 比雪ッ! 僕を盛大にハメたな――ッ!」
イユキは統帥権の規律も忘れ、吠えた猛った。
「惑星5561なんてここから三つも星系が離れているんだぞ! 現地の暴動ごとき、地元の警察や外縁軍管区の連中にでも鎮圧させろよ! なんでよりによってこの僕をそのドブさらいに引きずり出すんだよッ!」
画面の向こうで、比雪はハハハと大笑いし、従甥のキレっぷりを心の底から面白がっていた。
◇
「――いやあ、だってお前の能力を一番信用しているからさ! しかも、あそこには反物質エネルギーのコアが絡んでいるから、他の奴に任せるのはどうも安心できなくてね。じゃあな、楽しいお出かけに……っと間違えた、楽しいご公務の旅を祈ってるよ、ボクちゃん!」
ピッ。
通信は冷酷なまでに一方的に切断された。ホログラムモニターが消え去り、そこには極限のストレスに打ち震えるイユキだけが取り残されていた。
14歳の少年は天井を仰いで盛大に息を吐き出し、皇帝の宮殿の制御システムを今すぐハックして全機能を吹き飛ばしてやろうという衝動を必死に抑え込んだ。だが、夢にまで見た休暇が完全に消え去ったこと、そして新たな面倒事の渦中へ放り出されたことは厳然たる事実だった。
「最悪の叔父」との通信を切ってからわずか数秒後、源 伊幸は怒りを胃の底に叩き込むと、光速のワーキングモードへと切り替えた。
彼は最高機密の通信端末を掴み取り、首都の司令中枢へと直通回線を叩きつける。
「私は源 伊幸だ! 中央政府の全機関へ発令する――!」
イユキの声は冷徹で鋭く、先ほどの苛立ちが嘘のように消え去り、最高指揮官としての圧倒的な威厳に満ちていた。
「ただちに中央治安警察の精鋭小隊、および中央直属の対暴動機動軍団を総動員せよ! 第1発進プラットフォームに機動戦艦の戦闘隊形を即時スタンバイさせろ! ――我々は、今から15分以内に惑星5561へ向け出撃する!」
「はっ、お任せを! 直ちに航路設定とエネルギーの集約を行います!」
回線の向こうから力強い返答が響いた。
◇
指示を飛ばし終えると、イユキは休む間もなく身を翻し、執務室内の専用更衣室へと早足で歩み寄った。外交用の堅苦しい軍服を脱ぎ捨て、惑星降下作戦専用の戦闘装甲へと換装するためだ。
彼は手早く士官用のオーバーコートを脱ぎ、引き締まった逆三角形の背中と過去の戦いで刻まれた微かな傷跡を露わにしながら、最新型の反物質駆動バトルスーツへと手を伸ばした。
まさにその時、頭から防護服を脱ぎ抜けようとした瞬間――
カチャッ!
厳重に量子暗号化されていた更衣室の自動扉が、突如として解除音を響かせてスライドした。外部の光が室内に鋭く差し込む。
イユキははっと振り返り、無作法にもノックなしで飛び込んできた不届き者を怒鳴りつけようと口を開きかけた。だが、そこに立っていた人物を確認するやいなや、言葉は喉元まで出かかったまま完全に凍りついた。
出入り口に立っていたのは、イユキの専属補佐官――まだ12歳というあどけない少年の姿をした、くりくくりとした大きな瞳と整った顔立ちの部下であった。整った軍服を纏っていなければ、誰もが美少女の男装だと勘違いするような容姿の持ち主である。
補佐官の少年は急ぎの機密書類を手に、状況を報告しようと足を踏み入れた。しかし、彼の視線の先に飛び込んできたのは、上半身裸で彫刻のように引き締まった肉体を晒したまま立ち尽くす上官の姿であった。
補佐官の動きがピタリと石のように硬直し、白磁のような頬から耳の付け根までが、一瞬にして真っ赤に染め上がった。驚愕の色が浮かんだが、日頃の生意気で勝ち気な性格がすぐに顔を出す。少年はパチパチとまばたきを繰り返すと、真っ赤な顔のまま、煽るような口調でふっと呟いた。
「おっ……。司令官のそのお姿……なかなかイケてるじゃないですか」
更衣室の空気が気まずい静寂に包まれた。
イユキのこめかみがピクピクと痙攣する。この極限の緊迫感とドタバタの最中に、よりによってこの12歳の生意気な部下にこんな姿を見られるとは。
イユキの顔は一時険しく歪んだが、怒りを爆発させる間もなく、結局は深いため息をついて力が抜けていくのを感じた。彼はバトルスーツのアーマーを椅子に投げ捨てる流儀で放り出すと、呆れたような、しかしどこか甘えたような幼馴染に向ける親しい口調で言い放った。
「この悪ガキめ……人の部屋に入るときはノックぐらいしろよ。ぶっ飛ばすぞ?」
二人はただの上官と部下という関係だけでなく、士官学校時代から同じ机を並べてきた幼馴染の腐れ縁であった。そのため、この叱責には高位士官としての威圧感など微塵もなく、どこか温かみと甘やかしを含んだ響きがあった。
補佐官の少年はくすくすと楽しげに笑い、叱られても微塵も怯む様子を見せない。少年は軽やかに歩みを進めると、急ぎの重要書類をデスクの上にポンと置いた。
「まあまあ、そう怒らないでくださいよ。それに、僕がこうして踏み込んできたのにはちゃんとした理由があるんですから。ほら、中央からの緊急特報が届きましたよ」
イユキは慌てて制服の上着を引っ張り出し、きちんとした身なりに整えながら、赤く点滅するコンソールのデータを冷ややかに一瞥した。 「――さっき、叔父上から連絡があったんだ」
イユキは歯ぎしりをしながら、腹立たしげに吐き捨てた。
「あのクソッタレな不老の叔父貴め、僕を第7エリアの惑星5561へ左遷しやがったんだ!」
それを聞いた補佐官の少年は動きをピタリと止め、頬をヒクヒクと三度痙攣させた。言葉を失い冷や汗を流しながら、年下の若き上官をじっと見つめ、思わず地元の裏通りのようなフランクな口調で突っ込む。
「はぁ……? またあの皇帝陛下の仕業ですか? まったく、今すぐにでも宮殿に殴り込んで、権限を濫用しまくるあの野郎の首を刎ねてやりたいぐらいですよ!」
イユキはその言葉を聞いてふっと吹き出し、先ほどまでの激しい怒りが半分ほどに和らぐのを感じた。彼は補佐官の肩をバシッと力強く叩くと、そのまま扉へと歩き出す。
「ナイスな意見だな。惑星5561の暴動を片付けたら、お前と一緒にあいつのところへ“ご機嫌伺い”に行こうぜ。さてと……さっさと荷物をまとめろ! 出撃プラットフォームで対暴動警察の小隊が待機しているんだ、出発するぞ!」
二人は発進ベイへと続く長い廊下を歩きながらも、相変わらず皇帝の悪口をワイワイとこぼし合っていた。
「それにしても、世の中のすべての皇帝が、暇つぶしに甥っ子をいじめるのが趣味だなんてどうかしてますよ」
補佐官はホログラム書類を両手で抱えながら、不満そうに唇を尖らせる。
「こっちは連日の激務で目の下にクマを作って死にそうになってるってのに、あいつはモニター越しにニヤニヤ笑いやがって。このまじゃ国民の不満が爆発する前に、僕が過労でクーデターを起こしてあいつの椅子を奪い取ってやりたくなりますよ」
イユキはふっと笑い、どこか投げやりな調子で返す。
「小声で言えよ、まあ大体その通りだけどな。今度戻ってきたら、精神的慰謝料として特級エネルギーミルクをあいつの全財産からご馳走させてやるから安心しろ。このままじゃ本当に老け込んでしまうぞ!」
◇
二人が帝国の最高指導者の“陰口”で盛り上がっていたその時、厳正に整列して乗船準備を進めていた中央直属の対暴動機動部隊の横を通りかかった。
その隊列の最後尾には、他の隊員たちよりも一回り小柄な兵士の姿があった――どう見ても年齢は7歳前後にしか見えない、あどけない少年の兵士が、視線を床に落として顔を隠すように立っている。
イユキと補佐官がすれ違いざまに通り過ぎようとした瞬間、その7歳の少年兵はふっと小さく咳払いをした。そして顔を上げると、先ほどホログラムモニター越しに聞いたばかりの、あのふざけた悪びれない口調で声をかけてきたのだ。
「――おやまぁ……我が自慢の優秀な甥っ子君は、親友の相棒くんと一緒に、いつの間にボクの玉座をひっくり返すクーデターの計画なんて立てていたんだい? しかも特級エネルギーミルクをご馳走させただなんて贅沢な要求だなあ?」
耳慣れたそのふざけた声を聞いた瞬間、イユキと補佐官は雷に打たれたようにピタリと立ち止まった。二人は同時に振り返り、そして文字通り目を点にして硬直した。
戦闘用の鉄帽の下から覗いていた非道な小柄な顔立ちは紛れもなく――オーロラ帝国の不老の絶対君主、皇帝・源 比雪その人であった!
なんと、安全な宮殿の玉座で悠々とふんそる代わりに、この暇を持て余した「最凶の叔父」は身分を完全に偽り、最下級の下士官の戦闘装甲に身を包んで対暴動突撃部隊へこっそり潜り込んでいたのだ。目的は他でもない――自分の目で現場のドタバタ劇を高見の見物し、惑星5561の平定ツアーを間近で面白半分に楽しむためであった!
◇
補佐官の少女はあまりの衝撃に両手を大きく開き、持っていた重要書類の束をすべて床に落としてしまった。声にならない悲鳴が漏れる。
「はっ……!? はっ!? こう……皇帝陛下……!? なぜ、ご本人がここに……!?」
一方のイユキは、顔面を真っ黒に染め上げ、こめかみの青筋が激しく痙攣した。彼は肺の空気をすべて吐き出して怒りを飲み込むと、歯ぎしりをしながら絶叫した。
「源 比雪ッ……!! 暇を持て余したからって、下級兵士に変装して勝手に僕の遠征部隊に潜り込んだのかよッ!!」
比雪はへらへらと嫌味な笑みを浮かべ、軍隊式とは思えないほどいい加減な敬礼を返す。
「上官殿に報告! 兵士・源比雪、暴動鎮圧部隊への志願入隊をここに果たす! いやぁ、宮殿にいても退屈すぎて死にそうだったからさ、君たちの惑星5561ツアーにこっそり混ぜてもらったんだよ。まさか追い返したりしないよな? 怒ったら二人まとめてクビにしちゃうぞ~?」
比雪が平然と戦闘用の鉄帽を脱ぎ捨て、オーロラ帝国の最高権力者であることを示すその顔を晒した瞬間、発進プラットフォーム全体の空気は一瞬にして凍りついた。
前方で全体の点検を行っていた小隊長の老練な大佐が、異変に気づいて振り返った。その歴戦の視線が、ふざけた笑みを浮かべる「7歳の二等兵」の顔をとらえた瞬間、大佐の顔面は血の気を失い、心臓が止まったかのように目を見開いて硬直した。
「はっ……!? 殿……殿下――ッ!?」
大佐は裏返った絶叫を上げ、副官が慌てて支えなければその場で昏倒しかねないほどのパニックに陥った。
そのドミノ式のエラーパニックは瞬く間に小隊全体へと波及していき、その場に集まっていた数百名の機動警察官や高官たちは、皇帝のまさかの「変装潜入」という前代未聞の暴挙を目の当たりにして、次々と頭を抱えて崩れ落ちるのだった――。周囲の士官や高官たちは顔面を蒼白にし、ある者は膝を震わせて深々と頭を下げるがまま、ある者は頭を抱えてパニックに陥っていた。オーロラ帝国の数千年の歴史において、現役の最高権力者にして不老の皇帝自らが、下士官の身分に身をやつしてまでこっそり強襲艦に潜り込み、前線の暴動鎮圧ツアーに紛れ込むなど前代未聞の狂気であった。
しかし、当事者である比雪は周囲の阿鼻叫喚などどこ吹く風とばかりに、まったく気にする様子すらなかった。彼は平然と下士官の装甲服の埃を払い、純白の歯を見せてニヤリと不敵に笑うと、恐怖に震える全小隊に向けて朗らかに号令を下した。
「おいおい、何をそんなに青い顔をしているんだい? 惑星5561で暴徒に苦しむ民間人たちを応援するために、こうして自ら前線に赴いてやったというのに! 宫殿のモニターの前で退屈しきっているより、よっぽど有意義な娯楽じゃないか」
その呑気すぎる言葉を聞いた高官たちは、真剣に血を吐きそうな思いだった。
(どの口が娯楽だと言うんだ……! よりにもよって最前線の内乱のど真ん中に、皇帝自ら突っ込んでいくバカがどこにいる!)
傍らに立つ源 伊幸は、深い絶望感に打ちひがたれたように盛大にため息をつき、自らの額に手を当てて天を仰いだ。彼は隣で同じように開いた口が塞がらない専属補佐官を一瞥し、虫の息のような絶望的なトーンで呟いた。
「……見たか? 私が言った通りだっただろ。この叔父貴は頭のネジが完全に吹っ飛んでいるんだ。惑星5561への遠征なんて生易しいものじゃない……今やこの作戦は、我が国の最高指導者を護衛しながら死地に赴く、完璧な“死体の山観光ツアー”に格下げされてしまったぞ」
補佐官は冷や汗を拭いながら、目の前で悪びれもせず笑う皇帝と、絶望に沈む上官を交互に見つめ、ひきつった笑みを浮かべた。
「と……とりあえず、私たちは今日から、世界一過激な保育園の保父さんを兼任しなきゃいけないってことですね、司令官……」
比雪はあごをしゃくり、震え上がる小隊長たちへ向けて大声でハッパをかけた。
「いつまで突っ立っているんだ! さっさと全員船に乗り込め! 惑星5561で待っている数千人の難民たちが、我々の『愛の救済』を待ちわびているぞ! 出発進行だ!」
◇
悪びれる様子もなく最高潮にハイテンションな皇帝は、周囲の悲鳴を背に受けながら、一番乗りのドヤ顔で第一号艇のタラップを軽やかに駆け上がっていった。その後ろには、絶望の表情を浮かべた中央軍の精鋭たちが重い足取りで続いている。
部下たちの殺気立った視線と、どうしようもない無力感を浴びながら、源 伊幸はため息と共に不老の皇帝の背中を見据えた。
そして、その場で突如として不敵な呟きを漏らすと、不老の特権を持つ者の隠された能力を自ら発動させた。
――ほんの数秒の出来事だった。
比雪の周りに淡い量子エネルギーの粒子がまとわりつくと、その小柄で幼い7歳の少年の肉体が、まるでホログラムの映像のように凄まじい勢いで変形・再構築されていったのだ。細胞が自律的に再調整され、身長がみるみるうちに伸びていく。あどけない幼さの残る顔立ちは瞬く間に整えられ、数秒前までの幼児の姿は跡形もなく消え去った。
そこに立っていたのは、源 伊幸とまったく見紛うことのない、14歳前後の洗練された気品と圧倒的な美貌を誇る完璧な少年の姿であった。
比雪は新たに手に入れた長身の体を軽く動かして衣服のバランスを整えると、何食わぬ顔で伊幸の隣へと歩み寄り、その肩に親しげに肘を乗せた。彼は悪戯っぽいウィンクを送りながら、伊幸の肋骨をひじで軽く突いて甘ったるくささやいた。
「なぁ、相棒……。どうだい? この新しい外見なら、君と並んで歩いても年の差カップルみたいに見えなくてお似合いだろ?」
比雪はさらに、子犬のように無邪気でわざとらしい無実の表情を作り上げてパチパチとまばたきをした。
「そうだ……! さっき言っていた特級エネルギーミルクのことだけどさ、あとで宇宙港のショップで一緒に買ってくれないか? 遠路はるばる君の鎮圧を手伝いに来てやった、最高のお兄ちゃんに対するご褒美ってことでさ、奢ってくれるよな?」
その悪びれない言葉は、怒りに燃える発進プラットフォームの空間を一瞬にして真空状態にするほどの破壊力を持っていた。周囲に控える数百名の兵士、対暴動警察、そして高官や高位士官たちは、その光景を目の当たりにして完全に息を呑み――全員がその場で文字通り「死んだように硬直」していた。
文字どおり、息も絶え絶えに沈黙し、石像と化していたのである。
彼らは、オーロラ帝国の最高権力者にして、天上の星々の生死をその掌で握る絶対君主を――あろうことか自分の甥っ子の隣にベタベタと張りつき、面の皮を厚くして「タダのタピオカミルクティーをねだる」というシュールすぎる光景を見せつけられていたのだ。誰も声を発することができず、小隊全体が恐怖に似た気まずい三点リーダー(……)の沈黙に包まれた。帝国の鉄の規律と秩序が、今や崩壊寸前の危機に瀕していると感じざるを得なかった。
叔父が放ったそのあまりにふざけたセリフを聞き、源 伊幸は思わず両手で顔を覆い、最後のエレガンスをかなぐり捨てるように深々と溜息をついた。彼は奥歯を噛み締め、比雪を殺意に満ちた目でひと睨みしてから、どうしようもない絶望感と共に吐き捨てる。
「あんたの図々しさは、いよいよ宇宙の果てを突破したな、源 比雪……! ミルクティー? 冗談だろ! 惑星5561でいま民衆が暴動を起こして街を破壊しまくっているっていうのに、観光気分でタピオカをすするバカがどこにいるんだよ!」
傍らに立つ補佐官もすでに言葉を失い、頭を抱えて苦笑いを浮かべるしかなかった。権威とコントが同居するこのいかれた国家の未来を、心底から哀れむばかりであった。
しかし比雪は不満そうに肩をすくめ、ふてぶてしく唇を尖らせて反論する。
「なんだよ、人間だって戦に出て国民を救うためには心身の栄養補給が必要だろう? まあいい、長話をしている暇はない。さっさと船に乗り込むぞ、第7プラントの連中にこれ以上暴れられたら面倒だからな!」
そう言い残すと、“厚顔無恥”な不老の皇帝は飄々と身を翻し、真っ直ぐに宇宙船へと乗り込んでいった。その背後では、冷や汗まみれの軍事小隊が、嵐のような任務が何事もなく終わることを祈る人形のように立ち尽くしていたのだった。
◇
若き司令官の下令を受け、精鋭警察、偵察部隊、そして対暴動機動旅団を乗せた全小隊は速やかに艦内へと移動した。無数の反物質戦艦や宇宙艇が、軍事中枢惑星の空を引き裂くような重低音を響かせながら反物質駆動エンジンを唸らせ、第7軍管区に属する惑星5561へ向けて漆黒の深宇宙へと飛び立っていく。
旗艦の司令戦略室――そこには、部隊を率いる高官たちや大佐、12歳の補佐官、そして源 伊幸が集結していた。本来であれば、暴動鎮圧の作戦計画を巡る張り詰めた緊張感と厳粛な空気が漂うはずの場所である。3Dホログラムマップには、管区第7のエネルギー施設が激しく炎上し、行政ビルの周囲を数千人のデモ隊が取り囲む惨状が生々しく映し出されていた。
高官たちはホログラムの周囲を取り囲み、顔を曇らせながら険しい表情で議論を交わしている。
「イユキ様、最新の諜報によれば、今回の惑星5561の暴動は単なる住民の生活不満によるものではありません。背後で反乱組織『IS』が糸を引いているフシがあります。彼らがテロリストを通じて高エネルギー兵器を密かに提供し、市民を煽って重要施設を攻撃させているのです……」
「その通りだ。第7プラントへ降下する際は、対暴動部隊に直ちに亀甲型の防御陣形を展開させ、直接衝突による無用な流血を避けつつ慎重に偵察を……」
一同がピリピリとした緊張感のなかで次の一手を分析し、議論に没頭していた、その時――
スッ…… スッ…… スッ……!
静まり返った戦略室の真ん中に、非常に場違いで、きわめて無作法な音が響き渡った。
議論に熱中していた高官たちは一瞬動きを止め、キョトンと首をかしげて音の発生源へと視線を向けた。イユキはゆっくりと目を細め、そのこめかみの青筋がミミズのようにピクピクと痙攣し始める。
議長席のすぐ隣に陣取っていたのは――帝国最高指導者、源 比雪(14歳の少年の姿)であった。
彼は周囲の緊迫した空気や、世界を揺るがす数千億の命運がかかった戦略マップなどどこ吹く風とばかりに、平然と空間量子カップ麺のフタをペリペリと剥がしていた。そして、箸で麺を豪快にすくい上げ、ズズズッ、ズズズッと音を立てながらスープごと貪るように啜り込んでいる。その口の端にはスープが飛び散り、頬をふくらませて夢中で咀嚼していた。
居合わせた老練な大佐の一人は、あまりのショックに腰を抜かしそうになりながら、震える指で皇帝を指さして吃音した。
「はっ……陛下……! な、なぜ、あなたがカップ麺を……!?」
比雪は平然と麺を喉に流し込むと、箸の先でホログラムの戦術マップを指し示し、ケラケラと笑いながら言い放った。
「いやぁ、みなさんそんなに固い顔をして作戦報告しなくてもいいじゃないですか。私をそんな熱烈な視線で見つめないでくれよ! いつも通りに仕事を進めてくれて構わないからさ、計算とか戦術の立案とかは君たちに任せるよ。私はただここで、みんなの素晴らしい『お遊戯会』を生暖かい目で見物しながら小腹を満たしているだけだからさ。ねぇ、大佐もひと口どうだい?」
そう言いながら、比雪は開けたカップ麺の容器をそばにいた老練な大佐へ差し出した。
大佐は顔面を冷や汗でびっしょりに濡らし、ひきつった笑みを浮かべながら両手をブンブンと激しく振って拒絶した。周囲の士官たちも一様に手元の書類へと視線を落とし、あまりの「無神経さとシュールさ」に笑いをこらえて肩を激しく震わせる者や、あまりのショックに気絶しかける者で溢れかえっていた。
源 伊幸は長く深い深呼吸を一つし、椅子に全身を預けて両手で自分の額をガツンと打ち付けた。
――自分はなぜ、この救いようのない「トラブルメーカーの叔父」と同じ血筋に生まれてしまったのか。伊幸は心の底から深い後悔に襲われていた。 「……よし分かった」
イユキは深々と息を吸い込み、あきらめたように戦略マップへと視線を戻した。麺をすする叔父など視界から完全に締め出す。
「無駄な前置きは省く。惑星5561への降下プランを続行する。今回は……あの叔父貴がカップ麺の箱を食い尽くし、この星系ごと潰してしまう前に、迅速かつスマートに暴動を鎮圧するぞ!」
――コトン。
カップ麺の容器がデスクの上に置かれる、乾いた無機質な音が響いた。
直前まで能天気な笑みを浮かべ、無邪気な少年 destroyer のように麺を啜っていた源 比雪――その瞳の光が、次の瞬間には180度塗り替えられていた。ふざけた不敵な笑みは跡形もなく消え去り、そこにあったのは凍てつくような冷酷さと、見る者を戦慄させる鋭利な眼光であった。
全身から解き放たれた圧倒的な殺気が室内の空気分子を押し潰し、過密な重圧となって会議場を満たしていく。つい先ほどまで無垢に見えた14歳の姿は消え失せ、数千年の時を血と殺戮で生き抜き、無数の勢力を踏みにじってきた絶対君主の威容がそこに君臨していた。
「――お遊びは、ここまでだ」
比雪の低い声が響く。氷のように冷たく、絶対の威厳を帯びた音色だった。
高官たちは息を呑み、室内は一瞬にして絶対零度の静寂へと落ちた。誰一人として微動だにできず、呼吸すらも殺してその場に平伏する。
比雪は立ち上がり、惑星5561の3Dホログラムマップの前へと歩みを進めた。しなやかで長い指先が特定の座標を一直線に指し示す。最冷の声音が空間を切り裂いた。
「表面上の民間人による小規模な暴動など、回り道をして一つ discrete に潰す必要はない。我々は奴らの巣窟へと直接叩き込む。全戦力を集中させ、補給補助エリアおよび奴らの地下潜伏基地を正面から粉砕せよ」
◇
若き皇帝は目を細め、その双眸に苛烈な光を宿らせる。
「私が掴んでいる裏の諜報によれば、惑星5561の主要都市の背後には地下抵抗組織――民間人の皮を被ったテロ組織『IS』の拠点が潜んでいる。奴らのネットワークにおいては末端に過ぎんが、今回の暴動を煽り立てた足がかりであることに変わりはない」
それを聞いた大佐が、逡巡しながら前に歩み出て、吃音交じりに尋ねた。
「へ……陛下。しかし、もしその区画に奴らに脅迫・利用されている一般市民が混ざっていた場合は……いかがいたしましょう? 我々は……」
比雪は振り返りもしなかった。大佐の言葉を遮ったその一言は、我が道を阻む者すべてに対する冷酷極まる死刑判決であった。
「遭遇した者は全員殺せ。一人たりとも残すな」
会議場に激震が走った。高官たちは目を見開き、皇帝の極限にまで研ぎ澄まされた残虐性と決断力に戦慄した。
比雪は身を翻し、身震いする士官たちを冷徹な眼差しで見下ろす。
「奴らを生き残らせるな。テロリスト『IS』に内通し、匿い、あるいは容認した民間人も同罪だ。帝国の敵の側に立つことを選んだ害虫に、生存の価値など存在しない。根絶やしにせよ。一匹たりとも逃すな」
それは相談ではなく、最高至上命令であった。数千年の興亡を悟りきった王からの、最も残酷で容赦のない告告。オーロラ帝国の平和は鉄と血によって築かれたものであり、それに挑む者に待つのは完全なる滅びのみなのだ。
◇
議長席に座る源 伊幸は、無言で叔父の姿を見つめていた。不老の肉体と「お調子者」の仮面の下に隠された、国家が危機に瀕した際に現れる本物の覇王の姿を、彼は誰よりもよく理解していた。
イユキは立ち上がると、軍隊式の見事な敬礼を捧げ、鋭く言い放った。
「御意、陛下。第ゼロ部隊および即応機動大隊、出撃準備完了。惑星5561……直ちに徹底清掃を開始いたします」
ドドドドド……ッ!
第ゼロ部隊が誇る無数の反物質戦艦および高速突撃艇が、煙霧に包まれた惑星5561(第7軍管区)の大気圏を突き破った。首都上空は巨大な艦影によって覆い尽くされ、各家々の屋根に目に見えぬ重圧となってのしかかる。
ハッチが一斉に開放されるやいなや, 降下部隊が雪崩のように飛び出し、戦略指示通りに完全に独立した二つの進撃ラインへと分かれた。
【第一進撃ライン:一般市民の鎮圧(警察機構&対暴動部隊)】
中央広場および主要 mainstream 道路では、パニックに陥った数千の市民が energy station を破壊し、反逆のシュプレヒコールを上げていた。そこへ警察部隊と対暴動機動旅団が迅速に堅固な防衛線を構築する。
厳命された軍規に従い、一般市民に対して重火器や実弾の使用は一切許可されていない。
「全員傾注! 盾による防御陣形を維持せよ! 絶対に実弾を撃つな!」
警察指揮官の怒号が拡声器越しに響き渡る。
催涙ガスが幾重にも掃射され、装甲車から噴射される高圧放水が過激化した群衆に容赦なく叩きつけられる。通り一帯は白い煙霧に覆い尽くされた。煽動された市民たちが激しく暴徒化しているものの、鉄の盾の壁と特殊警棒による厳格な制圧の前に、警察部隊は徐々に群衆を押し戻し、安全区画へと隔離していく。彼らは皇帝からの次なる勅命を待っていた。
【第二進撃ライン:テロ組織の殲滅(正規軍精鋭部隊)】
民間人エリアの非致死性制圧とは対照的に、主要都市の背後――テロ組織『IS』の地下潜伏基地が隠されたエリアは、死気と硝煙の猛火に包まれていた。
源 伊幸は自ら第ゼロ部隊および精鋭大隊の hạm 頭に立ち、外縁区画へと侵攻する。そこには催涙ガスも放水もない。代わりにあるのは、重対物質エネルギー砲、最新鋭の戦闘装甲、そして下されたばかりの冷酷無比な殲滅命令であった。
「――目標確認。全軍突撃、奴らの基地を跡形もなく粉砕せよ!」
イユキの冷徹な号令が響く。バイザー越しに見つめるその双眸は、ナイフのように鋭く光っていた。
ドドドッ! ズドンッ! パシュッ!
幾重もの高エネルギー弾丸が地表を抉り、地下基地の堅固な防衛ゲートを吹き飛ばしていく。潜伏していたISのテロリストたちは体制を整える間もなく、中央正規軍の圧倒的な火力によって蹂躙されていった。交渉の余地も、捕虜の概念すら存在しない。皇帝・源 比雪が下した「根絶やしにせよ」との勅命に従い、姿を現したテロリストは瞬く間に蒸発せしめられた。
◇
近くに聳え立つ高層ビルのバルコニーから、14歳の姿をした源 比雪は胸の前で腕を組み、戦場全体の推移を冷ややかに見下ろしていた。
一方は過ちを侵した愚民に対する鉄の規律と統制、もう一方は玉座に挑む者に対する絶対的な残虐。今夜、惑星5561が支払う血の代償こそが、帝国の永久なる安寧を維持するための不可欠な対価なのだ。
【第二進撃ライン:アジトの粉砕と重要目標の拘束】
激戦が始まってわずか一時間足らずで、惑星5561の裏手に構築されていたテロ組織ISの堅固な地下要塞は、第ゼロ部隊の圧迫的な火力の前に完全崩壊した。破砕されたバンカーから暗煙が立ち上る中、精鋭兵士たちが雪崩れ込み、残党を炙り出していく。ほどなくして、突入部隊はテロ組織の幹部層を一網打尽にし、地上へと引きずり出してきた。
武装解除された捕虜の群れの中に、一人の少年の姿があった。イユキと同年代と思われる、どこか文弱な面 ghost を残したその少年は、反乱勢力の仕立ての良い衣服を纏いながらも、身柄を拘束された者特有の動揺を一切見せず、不気味なほど落ち着き払っていた。
中央の照合アルゴリズムへデータが送信された瞬間、解析結果を目にした士官たちは息を呑んだ。この少年こそ、テロ組織ISの最高首領の独り子であり、組織の極秘資金ネットワークと全暗号化データを一手に握る核心人物だったのだ。
幼気な少年の皮を被りながらも、その佇まいと眼光は――
◇
――その奥底に深遠で狡猾な暗雲を宿しており、まるで捕縛されたこと自体が彼の計算通りであるかのような不気味さを漂わせていた。
バルコニーから双眼鏡越しに戦場を俯瞰していた源 比雪(14歳の姿)は、引きずられていく幹部の息子の姿をハッキリと視界に捉えた。不老の皇帝は目を細め、その口元に親しみやすくも意味深な笑みを浮かべる。彼は一人ごちた。
「……ふむ。同年代でありながら、同じ渦の中に足を踏み入れているというわけか。まさか……我が家の甥っ子とあやつの間に、これほど興味深い因果が巡ろうとはね」
まさにその時、源 伊幸が比雪の隣へと歩み寄ってきた。その冷たい視線は眼下の幼い捕虜へ注がれ、拘束されたばかりの敵から放たれる奇妙な異彩を敏鋭に感じ取っていた。
【第一進撃ライン:民政の沈静化と復興】
その頃、惑星5561の主要都市および中央広場周辺の情勢は、すでに完璧な統制下に置かれていた。
朝廷の鉄の規律と厳格な軍規のおかげで、警察および対暴動部隊は市民に無用な流血を強いことなく、過激化した群衆の鎮圧を完璧に遂行したのである。
催涙ガスと高圧放水によって群衆が散開するやいなや、移動医療ユニットが即座に展開された。軍医や救護隊員たちが迅速に救護所を立ち上げ、煽動されて暴徒化した者や混乱に巻き込まれた無辜の住民たちの手当を進めていく。
並行して、工兵隊と大型重機ユニットが壊滅した瓦礫の撤去を開始し、損壊した住宅やエネルギー primary station の修復作業へと着手した。
工兵隊と重機ユニットが瓦礫を片付け、破壊された住宅やエネルギー primary station の修復を推し進めていく。一歩一歩、惑星5561にオーロラ帝国の本来の平穏と秩序が取り戻されていった。
一方、第ゼロ部隊の厳重な護送の下、テロ組織ISの首領の息子たる若き少年は、旗艦内に設けられた専用取調室へと連行されていた。
防弾強化ガラスとエネルギーフィールドで遮断された堅固な取り調べスペース。源 伊幸は室内へ足を踏み入れると、腕を組んで捉えられた少年の正面に立った。その刃のような冷たい視線が相手の奥底を射抜く。傍らでは、14歳の姿をした皇帝・源 比雪が壁に背を預け、興味津々の笑みを浮かべて観戦していた。
定常的な取調手順を経て、やがてシステムが少年の真の身元を識別・確定した。
「――記録を照合……。本名は『フォン(Phong)』」
補佐官の士官がホログラム画面のデータを読み上げる。
「ベトナム系(Viet)の血を引く純血種。外縁エリアにおけるテロ組織ISの資金ネットワークおよび戦略統制を直接手中に収めていた核心人物です」
『フォン』という名と『ベトナム系』というルーツが告げられた瞬間、取調室内の空気がふっと沈み込んだ。
端末の操作パネルをいじっていた源 比雪の手がピタリと止まる。不老の皇帝は顔を上げ、正面に座る少年フォンをじっと見つめると、ゆっくりと隣に立つ従甥のイユキへと視線を向けた。
◇
数千年の人類史を見届けてきた皇帝の瞳が細められ、その口元に含みのある意味深な笑みが浮かぶ。不老の王は低く思案するような声を漏らした――まるで遥かなる歴史の記憶の片隅を懐かしむかのように。
「――『ベトナム』か……。ふむ、なんとも懐かしい響きではないか」
比雪はクスリと笑うと、イユキの肩をひじで軽く突いた。
「見たまえイユキ、このルーツを持つ名……我が帝国とは前世からの浅からぬ因縁があるように思えんかね? ふむ、案外君と意気投合するかもしれんぞ?」
イユキは“トラブルメーカー”の叔父を冷ややかに一瞥すると、視線をフォンへと戻した。手枷を嵌められた少年は、死刑判決を目前にした囚人とは思えぬ不気味な笑みを浮かべたまま、微塵の恐れも見せていない。
不穏でありながら胸を躍らせるような予感が室内に満ちていく。第ゼロ部隊の天才と、反乱勢力の若き継承者――二人の運命的な遭遇が、ここに幕を開けたのだ。
張り詰めた空気の中、捉えられたベトナム系の少年フォンは慌てる様子もなくゆっくりと頭を上げた。頑丈な室内を見回した後、壁に寄りかかる源 比雪へ視線を止める。フォンの口元に挑発的で歪んだ笑みが浮かんだ。
「――へえ……まさかオーロラ帝国の偉大なる皇帝陛下自らが、こんな小さなテロリストの巣窟までお出ましになって、高見の見物を決め込んでおられるとはね?」
◇
フォンの不遜な言葉が響いた瞬間、周囲の警護士官たちの顔色が変わり、一斉に weaponry を構え直した。源 伊幸の瞳にも鋭い殺気の光が宿る。
だが、不老の皇帝の反応は全員の予想を遥かに裏切るものだった。
比雪は怒るどころか一瞬のまばたきすら見せず、敵の不躾な態度をあしらうように大きなくしゃみを一つすると、ぽんぽんと自分の腹を叩いて白昼堂々と吐き捨てた。
「あー、無駄話はここまでにしておこうか! バイバイ諸君、私はちょっとお手洗いに行って用を足してくるよ。スッキリしたら、また君と天下の奇談の続きでもしようじゃないか!」
そう言い残すと、取調室の最先端スマートマジックミラーが明滅する厳粛な雰囲気もどこへやら、比雪はまるで公園を散歩するかのような軽やかさで背を向け、そのまま部屋を出ていってしまった。
取り残された取調室内は、静まり返った絶句に包まれる。
高官も、中央官僚も, 警護隊も、あいた口が塞がらない様子で最高執政者の我が道を行く振る舞いを消化できずにいた。
その隣で、すべての後始末を背負わされる直系にして天才の源 伊幸は、両手で顔を覆って絶望的なため息をついた。彼はその場にいる全員に聞こえるような大声で呟くのだった。
「恥ずかしすぎる……。叔父上、頼むから玉座の威厳ってものを少しは残しておいてくれ……!」
反逆の持論を展開し、かっこよく相手の意表を突こうとしていたテロ組織の息子・フォンは、この瞬間完全に言葉を失っていた。彼はあんぐりと口を開け、用を足すために足早に部屋を去っていく皇帝の背中をただ呆然と見送るほかなく、これ以上の一言も発することができなかった。最高潮に達していた尋問のテンションは、一気に底なし沼へと急降下していったのだ。
しかし、皇帝が「トイレに行く」と言い放ったその言葉の余韻に誰もが浸る間もなく、源 比雪はピタリと足を止めて振り返った。その顔には、敵に対する容赦なさと残虐極まりない「戦術的思惑」が張り付いていた。
彼はテロリストの少年フォンをまっすぐに指差し、会議室全体に響き渡る声で堂々と宣言した。
「――そうだ、忘れていた! この生意気で気取り屋なボウズ、少々お洒落気取りですました顔をしているな? ならこうしよう……こいつの服を一枚残らずすべて剥ぎ取り、丸裸にしてやれ! 身に纏う布切れなど一片たりとも残すな! その後、そいつを冷気の隔離独房にぶち込んで、しばらく冷風に晒してじっくり反省させるとしようじゃないか? 異存はないね、諸君?」
あまりに青天の霹靂とも言える冷酷非道かつシュールな命令を下すと、比雪は周囲の返答やリアクションなど一切待つこともなかった。彼は何食わぬ顔で手をヒラヒラと振り、生理現象を解決するためそのまま真っ直ぐに部屋を立ち去っていき、室内には凍りつくような不気味な静寂だけが取り残された。
先ほどまでの傲慢で不敵な笑みを貼り付けていたフォンは、完全にフリーズしていた。彼は目の前から去っていく皇帝の背中をぽかんと見つめ、ゆっくりと振り返ると、周囲を取り囲む軍人たち――屈強な巨体の兵士たち、そして帝国の直系皇孫である源 伊幸の姿を、言いようのない複雑怪奇な眼差しで見つめ返すのであった。
◇
フォンの口元には、もはや怒りというよりは、物理法則や政治的常識を完全に無視した理不尽すぎる命令に対する圧倒的な無力感から、引きつった変態的な笑みが浮かんでいた。
命乞いや弁解の言葉を発する暇すらなかった。皇帝の命令は絶対なのだ。
ドンッ! バキッ!
間髪を入れず、壁際に控えていた頑強な体躯を持つ二人の高位士官が、まるで巨像のように踏み出してきた。彼らは一切の躊躇なくフォンを取り押さえると、その高級な反乱軍の制服を乱暴に引き裂き、わずかな下着の布切れすら残すことなく一瞬で丸裸にしてしまった。
先ほどまでインテリ風の不敵なテロリストの息子として気取っていたフォンは、今や冷え切った取調室の中で無力な幼虫のように丸くなり、数十人の兵士たちの冷ややかな視線に晒されながら震えることしかできなかった。
絶叫を上げる間もなく、二人の屈強な士官が丸裸の少年をひょいと持ち上げ、床を引きずるようにして部屋の外へと連れ出す。そして隣室にある極寒の隔離独房へ放り込むと、ガチャンと重苦しい音を立てて頑丈な扉を閉め、厳重にロックをかけた。
独房の外では、源 伊幸が両手で額を押さえ、皇帝のふざけた蛮行に対して盛大に深いため息をついていた。周囲の軍官たちは互いに顔を見合わせて冷や汗を拭い、「誰の怒りを買おうとも、この“人格分裂”を起こした皇帝陛下にだけは絶対に目をつけられてはならない」と心の中で固く誓い合っていた。
ドンドン! ガンッ! ドシャッ!
隔離独房の重厚な扉が閉じられた直後、その中から狂ったような激しい叩音と、フォンの悲痛な絶叫が響き渡ってきた。先ほどまでの不敵な余裕は完全に砕け散っていた。
「お前ら全員どうかしてるぞ…! 変態どもめ! 早くここから出せ! 僕はまだ一度も威厳のあるセリフを言い終えてないんだぞ! このクソッタレどもが、ドアを叩いたって開くわけないだろうが…!」
独房の金属壁を打ち叩く音とともに、フォンの絶望的な怒号が外へと漏れ伝わってくる。
◇
その頃、廊下の向こう側からは、「生理現象」をスッキリと解決して晴れやかな顔をした源 比雪が機嫌よく歩いて戻ってきた。独房から響く甲高い絶叫耳にした皇帝は、微かに眉をひそめ、面倒くさそうに首を傾げると、突如として周囲の常識を遥かに超越した「超・大胆不敵なアイデア」を思いついた。
比雪はくるりと源 伊幸や取り巻きの士官たちの方を向き、ケラケラと悪びれもなく笑いながら、信じがたい提案を投げかけた。
「ねぇ……いっそのこと、あいつを私の個室のルームメイトにして一緒に寝泊まりさせてやったらどうだい? 私の部屋でたっぷり『可愛がり』ながら、その生意気な精神を徹底的に調教してやれば、もう二度と不遜な態度をとらなくなるだろうさ」
比雪は文字通り「真の暴君」特有の狂気じみた大笑いを浮かべる。
その発言を聞いた瞬間、周囲に控えていた士官、衛兵、そして補佐官の少年は一様に生唾を飲み込み、全身の鳥肌が逆立つほどの恐怖を覚えた。
一方の源 伊幸は目を剥き出し、叔父があまりにスケールの大きすぎる悪ふざけとして「丸裸の男性テロリストを自分の個室に『お持ち帰り』して同居させる」と言い出したその狂気に対して、後ろ向きにひっくり返りそうになるほど絶句した。
外でそんな「とんでもない大陰謀」が企てられているとは露知らず、暗く冷え切った隔離独房の中で、フォンは衣服を剥ぎ取られた寒さに震えながら丸くなっていた。
彼は激しい扉叩きをやめ、全身をブルブルと震わせながら透明な強化ガラスの壁に顔を押し付け、外の様子を窺う。その視線の先で捉えたのは、外に立つ皇帝の悪魔的な不敵な笑みと、冷酷で人道的な配慮など微塵も持ち合わせていない帝国の絶対的な冷徹さであった。
背中に走る電気のような衝撃に、フォンはハッと正気に返った。
先ほどまでの傲慢で不敵な気取りは綺麗さっぱり吹き飛んでいる。少年の脳裏に刻み込まれたのは、ただ一つの生存本能たる真理であった――「誰を敵に回そうと、この“精神分裂”を起こした皇帝の叔父だけは絶対に怒らせてはならない。そして、この狂気じみた朝廷には二度と関わってはならない!」
フォンは生唾を飲み込むと、丸裸の身体を腕で抱えながら独房の隅へと這い下がり、この「皇帝の部屋での同居」という最悪の怪異から逃れられるよう、心の中で必死に祈りを捧げた。
さらなる地獄の妄想が頭を駆け巡る間もなく、極寒の隔離独房の扉が突如として開いた。
二人の大柄な士官が足早に入ってくると、問答無用でごく普通の服――肌を覆うための下着と簡単な衣類を床へと投げつけた。
「着ろ! 陛下がお前の私的茶室への謁見を特別に許してくださった。ぐずぐずするな!」
士官の怒号が響く。
フォンは寒さに身を震わせながらも、命拾いした喜びで衣服を掴み取り、一瞬で身に纏った。命を繋ぎ止めたと思ったのも束の間、身なりを整え終えた途端、彼は連行されて旗艦内に鎮座する源 比雪の豪華な私的茶室へと引きずり込まれてしまった。
絢爛豪華な茶室内では、比雪が湯気を立てるエネルギータオルを手に、優雅に茶を嗜んでいた。蒼白な顔で引きずり込まれてきたフォンを目にすると, 不老の皇帝は親しげな笑みを浮かべ、衛兵たちへ下がるよう手を振った。
◇
「掛けたまえ、そんなに突っ立っていないで。温かいお茶でも飲んで体を温めるといい」
比雪はまるで貴賓を迎えるかのように、穏やかな声で勧めた。
フォンは生唾を飲み込み、警戒しながら対面の席へと腰を下ろした。この狂気の皇帝が次にどんな心理的拷問を仕掛けてくるのかと腹を探る。
しかし、フォンがお茶を一口啜り、不敵な態度を取り戻そうと口を開かけかけた、まさにその時――
ドスッ!
源 比雪は瞬き一つの間に突如として跳ね起きると、茶卓を飛び越えて直線的に飛びかかり、フォンを床へと押し倒した!
マジックミラー越しに見守っていた外の警護士官たちは一斉に目を見開き、口をぐうぐうと開けて絶句した。ちょうど茶室の前に到着した源 伊幸もその場で立ち尽くし、自分の叔父が今度は一体どんな変態的奇行を企んでいるのかと、顔を真っ赤にしてフリーズした。
床に組み伏せられたフォンはパニックに陥って暴れ回り、血の気が引いた顔で叫んだ。
「えっ、おい!? 貴様、何をするんだ!? 僕はテロ組織の首領の息子であって、貴様のおもちゃじゃないぞ! 離せッ!」
比雪は相手の抵抗など意にも介さなかった。片手でフォンの両手首をがっちりと固めると、不敵な笑みを浮かべながら顔を極限まで近づけ……なんと、容赦なくフォンの脇腹をくすぐり始めたのだ!
「ははは! テロリストの息子ともあろう者が、案外打たれ弱いじゃないか! その不遜な態度を叩き直してやる! 取調室で私を生意気な目で見つめた罪を思い知れ! 精神を徹底的に『可愛がって』やる言っただろうが!」
◇
比雪は歓声を上げながら、容赦なくくすぐりを叩き込んでいく。
旗艦の最高級茶室は、一瞬にして転がり回る狂気の爆笑戦場へと変貌を遂げた。恐ろしいテロリストであったはずのフォンは、今や涙目になりながら笑い転げ、必死に抵抗しながら途切れ途切れに命乞いをするしかなかった。
「ははは……ッ! や、やめてくれ! 僕が悪かった! ははは……ッ! くすぐるな、息が止まる……ッ!」
外で見守る源 伊幸は額を押さえ、尋問よりも悪ふざけを優先する“精神分裂”の皇帝に対して、完璧な絶望のため息をついた。この帝国では、もはや起こりえないことなど存在しないのだ。
だが、くすぐり地獄によって悶絶死しそうになっていたその時――身をよじって逃れようとしたフォンの身体が、勢い余って180度激しく回転した。
ドシンッ!
追い詰められた者の突如たる底力と偶然の反動により、フォンは力任せに体勢を入れ替え、逆に源 比雪を床へと押し倒す格好となった!
事態は光速で展開した。予期せぬ「逆転」に、比雪すら身をかわす暇がなかった。
皮肉にも、あまりの勢いと至近距離での転倒により――二人が床へと倒れ込んだ瞬間、不老の千歳皇帝の唇と、テロリストの少年の唇が、真っ直ぐに正面から衝突してしまったのだ!
チュッ。
静まり返った茶室に、小さな接触音が虚しく響き渡った。
時間が完全に停止した。茶室全体が、死のような静寂へと沈み込んでいくのだった。
あまりにも突如として重なった二人の唇。
わずか一瞬の接触に過ぎなかったが、それはオーロラ帝国の秩序そのものを壊滅させかねないほど致死的な破壊力を秘めていた。フォンは目を見開き、自分の真下に位置する数ミリの距離にある皇帝の顔を呆然と見つめ返していた。一方の比雪もパチパチとまばたきを繰り返し、この運命的な衝撃に対してわずかにポカンとしていた。
茶室の強化ガラスの外では、源 伊幸を筆頭に観戦していた高位士官たちが……文字通り全員石化していた。
補佐官の少年はあんぐりと口を開けて顎を落としかけ、イユキに至っては「今すぐ対物質砲でこの空間ごと吹き飛ばし、自分の醜悪な記憶を永遠に消し去るべきか」と真剣に葛藤していた。
わずか二秒後、比雪は素早く正気を取り戻した。
慌てる様子も怒る素振りもなく、それどころか身を少し引きながらペロリと唇を舐めると、ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべて挑発的に囁いた。
「――ふむ。悪くないじゃないか、ボウズ。君の唇は案外甘いな。なるほど、そうやって私の気を引こうとしていたのかい?」
それを聞いたフォンは顔を耳の付け根まで真っ赤に染め上げ、慌てふためいて皇帝の体の上から這い上がると、しどろもどろになりながら叫んだ。
「――っ、ち……違う! 狙ったわけじゃない! 誤解するな、この狂人めッ!」
比雪は悠々と起き上がり、服の裾の埃をはらいながら、恥ずかしさのあまり地中に潜りたがっている敵の少年を見て楽しそうに大笑いした。どうやら今回の惑星5561の平定ツアーは、テロ組織の鎮圧だけに留まらず、オーロラ帝国の歴史上最も混沌として収拾のつかない「情感の発展」をもたらしたようであった!
◇
真っ赤な顔をしたフォンは、一刻も早くこの不気味な茶室から脱出しようと、半泣きで必死に扉へ向かって這い下りていった。
しかし、手膝をついて恥ずかしそうに這い出ようとする少年の姿を目にしながら、源 比雪は悠然と座り直し、その視線を……フォンの下半身へと向けた。不老の皇帝は目を細め、ある「笑えるような、笑えないような」詳細に気づいたのである――どうやら先ほどのアクシデントとハプニングの連続により、フォンの“愚息”は生理的な反応を正直に示してしまっているようだった。
それを見た比雪は笑いを噛み殺すどころか口元を手で覆い、最高にキュートでありながら、どこまでも腹の立つ「煽り顔」を浮かべた。彼は頬杖をつき、楽しげにからかった。
「――おやぁ……? 今夜は君に服を何枚か貸してあげて、その『自己主張』を少し隠してあげた方がいいかな? ちょっと目立ちすぎているみたいだけど?」
フォンは完熟したトマトのように顔を真っ赤にし、羞恥と怒りで爆発寸前となりながら、必死に体を手で覆って扉の隙間へと逃げ込もうとした。
だが、比雪のイタズラ心はまだ収まらなかった。不老の王はゆっくりと顔を上げると、外で凍りついていた源 伊幸と警護士官たちへ向かって朗らかな声を張り上げた。
「――おい、外にいる愛しい甥っ子のイユキ! いっそのこと今夜は、君がフォン君の部屋に泊まって二人で仲良くおしゃべりでもしたらどうだい? 同年代の子供同士、話が弾むんじゃないかな!?」
◇
その言葉が響き渡った瞬間、外の廊下全体が絶対零度の静寂に包まれた。
壁に寄りかかっていた源 伊幸は動きを止め、全身に鳥肌が立った。額の血管が青く浮き出てヒクヒクと引きつり、顔色は蒼白から漆黒へと変色していく。この“トラブルメーカー”の叔父のふざけた暴走を野放しにしていれば、自分が発狂してしまうのは時間の問題だった。
一方、床にいたフォンも完全にフリーズし、その場で気絶してしまいたいほどの絶望に打ちひしがれていた。テロリストとしての彼の人生において、これほど理不尽で屈辱的な境遇に追い込まれたことなど一度たりともなかった。
茶室内を混沌に陥れた戯れを繰り広げた後、源 比雪は突如として口元の笑みを収めた。彼は静かにエネルギー茶のカップを持ち上げ、一口嗜むと、その瞳の光を不気味なほど冷ややかに研ぎ澄ませた。起き上がろうとする少年フォンを真っ直ぐに見つめる。
空間の空気流が一瞬にして逆転した。不老の皇帝はぽつりと呟いた。その声には、深い思索の響きが宿っていた。
「――ふむ……よく考えてみれば、今の君の表情と眼光……どこかで見覚えがあるな。まるで……遥か昔、どこかで君によく似た誰かと出会ったことがあるような……」
その言葉が落ちた瞬間、茶室の内部も外の廊下も、等しく息を呑んだ。
外に立つ源 伊幸も、室内にいるフォンも、空気が異質に変容したことを敏鋭に感じ取ったのだ。源 比雪の瞳からは、先ほどまでのふざけた冗談や嘲笑が完全に消え去り、冷徹で深遠な真理だけが残されていた。 それまでの戯れはどこへやら、不老の皇帝の双眸が突如として怪しい光を放ち始めた。その瞳に宿るのは、時の塵に埋もれた新たなる玩具か、あるいは新たな真理を発見した捕食者のごとき鋭く乱雑な輝きである。
フォンは生唾を飲み込み、背筋に冷や汗を走らせた。彼は一歩後ずさりしながら、この“精神分裂”の皇帝が、数千年の歴史を詰めたその頭脳で一体何を妄想しているのかと身震いした。
悠久の思索に沈むこと数秒、源 比雪は突然パチパチとまばたきをすると、先ほどまでの怪しい光を収めて高らかに爆笑した。彼は自らの太ももをパチンと叩き、歴史への懐古を脇へと追いやる。
「――まあいい、くだらん思案はここまでだ! いずれにせよ、今日のボウズとの戯れはなかなか楽しかったぞ?」
比雪は首を傾げると、茶室の出入り口――先ほどから固まったまま立っている源 伊幸を指差し、平然と比較してみせた。
「我が家の甥っ子を見てごらんなさい。いつだって生真面目で、味も素っ気もなくて退屈そのものだろう? まったく情緒も活気もありやしない、あんな生き方をしていたら若くして老け込んでしまうぞ!」
廊下に立つ源 伊幸はそれを聞き、思わず吐血しそうになった。額の血管が激しく引きつり、今すぐこの“不孝な叔父”の首を絞めてやりたい衝動に駆られる。自分はこの巨大な帝国を背負い、戦場の収拾に奔走しているというのに、よりによって「退屈」呼ばわりされるとは!
フォンが命拾いをしたと胸を撫でおろす間もなく、比雪は突如として振り返り、不敵で親しげな――しかし極限に「変態的」な笑みを浮かべ、容赦ない一言を叩きつけた。
◇
「――だがまあ、今日の演劇に楽しく付き合ってくれた意気に免じて、今回ばかりは命だけは助けてやるとしよう! だが覚えておけ……次に私の前で不遜な態度をとってみろ、その時は私の個室へ引きずり込み、服を脱がせて丸裸で立たせた挙句、カメラでバシャバシャ写真を撮って晒しあげてやるからな! 分かったか!?」
その毛骨が eerie となるような威嚇を聞き、フォンは目を見開いて魂が抜け落ちるほどの恐怖に陥った。彼は狂ったように頷くと、二度と振り返ることもなく脱兎のごとく茶室から逃げ出した。心の中で、今後この狂気じみた皇帝の姿を見かけたら、十万八千里先まで逃げ延びようと強く誓いながら。
外で待つイユキは盛大いため息をつき、哀れなテロリストの運命と、この宇宙の平和のために天を仰いで祈りを捧げた。
フォンがパニック状態で走り去った後、茶室の空気は静寂を取り戻した。源 比雪は茶カップをテーブルへ置くと、先ほどまでの道化の表情を収め、滅多に見せない深遠な雰囲気を纏わせた。
彼は椅子に深く背を預けて静かに息を吐くと、傍らに立つ甥の源 伊幸へ向けて言葉を紡いだ。
「――まあ、奴の命を助けたのは妥当な判断だ。実のところ……考え直してみれば、今回の惑星5561の暴動には、私自身にも大きな責任があるのだからな」
イユキは驚いて眉をひそめた。あの叔父が自らの責任を認めるなど、滅多にないことだったからだ。比雪は舌を打ち、言葉を続けた。
「我が帝国は広大すぎ、統治すべき星々も、軍管区も多すぎる。私は千年の時を生きてきたが故に時として無頓着になり、システムが自動で回るのに任せて、辺境の民の生活や苦悩を直接把握することを怠っていたのだ。
◇
過重な重税や官僚の怠慢により、辺境の民衆が追い詰められて反乱を起こすに至った……詰まるところ、私の治世の目が届いていなかった証左だ」
不老の王がみせた意外な深慮と思慮深さに、周囲の士官たちも驚きを隠せず、新たな敬意の眼差しを向けた。どれほど道化を演じようとも、やはり比雪は乱世を統べる絶対なる君主であったのだ。
しかしその直後、中央政府執務室から緊急報告がホログラムコンソールへと飛び込み、事態の局面を180度覆した。
補佐官の少年がファイルを展開し、顔面を蒼白にしながら報告する。
「へ……陛下! イユキ様! 中央アーカイブから暗号解除された最高機密情報が届きました! 先ほど我々が鎮圧・殲滅した勢力ですが……最初の一次諜報で提示された『テロ組織IS』などでは一切ありませんでした!」
源 伊幸に激震が走る。
「ISではないだと!? ならば奴らは何者だ!?」
「はっ……最新の資料によれば、彼らは重税と官僚機構の不全に憤慨し、自発的に armed 蜂起した惑星5561の『 civilian 自警団』に過ぎません!」
補佐官は息を飲み、報告を続ける。
「彼らは世論の注目を集めるためにテロ組織の名を騙っていただけで、外部の反乱勢力との関わりは皆無です! さらに……先ほど拘束した少年『フォン』の身元情報にも極めて重大な問題が発覚しました。4から5年前の極秘アーカイブと照合したところ、彼のプロフィールには不可解な改ざんの跡がみられ――」 「4、5年前のデータベースに登録されている当時の記録と照らし合わせると、今回のファイルは原本と完全に食い違っています!」
比雪は目を細め、即座にホログラムのコンソールテーブルへと歩み寄った。
「どう食い違っている? 詳しく言え」
「はっ……4、5年前の古いデータストレージには、確かに『フォン』という同名の個人データが存在しており、元の身元や出自の大部分が九割一致しています。しかし……今回の件で捕らえられたテロリストのフォンとは、容姿、アイデンティティ、そして生体指標のデータが全くの別人と化していたのです!」
茶室の空気が一瞬にして氷点下へと冷え込んだ。
ベトナム系でありながら完全に一致する名前を持ち、数年の間に容姿だけが変貌し、民衆の暴動の渦中へと紛れ込んでいた少年――果してフォンの本当の身分は何なのか? そして、彼を長年にわたり偽りの身分で覆い隠し、裏で操っていた黒幕は一体誰なのか?
機密ストレージからの全ての報告を聞き終えた後、茶室内は針の落ちる音すら聞こえないほどの深い静寂に包まれた。
源 伊幸は息を呑みながらホログラムデータを見つめ、高官たちは冷や汗を拭いながら、脳内に殺到する膨大な情報の処理に追われていた。
つまり――さっきまで皇帝が文字通り「取っ組み合い、全裸にし、独房に閉じ込め、お茶を飲ませ、くすぐりの刑に処した」あの少年フォンは、ISの首領の息子などではなかったのだ!
彼は単なる無実の一般民衆の少年か、あるいは4、5年前の偽装ファイルに偶然巻き込まれてしまっただけの、全く関係のない別人に過ぎなかったのだ。
源 比雪はパチパチとまばたきを繰り返した。数千年の歴史を生き抜き、無数の過酷な戦場と宇宙の最も恐ろしい陰謀を潜り抜けてきた不老の皇帝が、この瞬間だけは完全に思考を停止させて固まっていた。
◇
さっきまでの「道化や茶目っ気」の仮面が跡形もなく消え失せ、その顔には形容しがたい絶望の表情が張り付いていた。
比雪はフォンが逃げ去った虚空の空間をぽかんと見つめ、吃音しながら叫んだ。
「――待て…! ということは……さっきの私は、何の罪もないただの一般市民の少年を相手に、ふざけて服を剥ぎ取り、くすぐりの刑に処していたというのか!?」
皇帝は頭を抱えた。数千年の間君臨してきた玉座の威厳が、たった一つの致命的な勘違いによって盛大に崩れ去った瞬間だった。
「天地神明に誓って……とんでもない大失敗をしてしまったぞ!」
比雪は絶望に満ちた声を上げ、信じられないものを見る目で甥の源 伊幸を振り返った。その瞳には極限の動揺が宿っている。
「なあ従弟殿……今のこの状況、私は今すぐあいつを追いかけて土下座して謝罪するべきか? それとも、何事もなかったかのように振る舞い、証人の口を永遠に塞いで闇に葬るべきか!?」
源 伊幸はその場で文字通り気絶しかけた。彼は額に手を当てて深く長い溜息をつき、どうしようもない無力感に満ちた声で吐き捨てる。
「叔父上……あなたは人目を憚らず服を剥ぎ取り、精神を甚振っておきながら、今さら謝るべきかなどとよく聞けたものですね……! もしこのニュースが外に漏れようものなら、我がオーロラ帝国は恥ずかしさのあまり宇宙の笑いものになって崩壊するでしょうよ!」
周囲の高官たちも黙って首を垂れ、冷や汗を流しながら、惑星5561の皮肉な運命に心の中で黙祷を捧げるしかかなかった。鎮圧作戦は、いつの間にかどうあがいても収集のつかない極上のコメディ劇へと変貌を遂げていたのだった!
◇
無実の一般市民の少年に対して戯れ半分で服を剥ぎ取り、あわや変態的な憂き目に遭わせかけてしまったと悟った源 比雪は、どうしてもこのまま見過ごすことができなかった。
「いや、やはりダメだ! どんな理由であれ、私は一国の皇帝なのだから、無実の人間を丸裸にして追い払ったからには、ちゃんと探して盛大に謝罪しなければならない!」
比雪は力強く太ももを叩くと、堂々と宣言した。
源 伊幸はその言葉を聞いて血を吐く思いだった。
(その謝罪こそが一番の災難を招きそうだ……!)
甥の無言の制止を完全に無視し、比雪は不敵な笑みを浮かべながら、大勢の精鋭士官たちを引き連れて旗艦内におけるフォンの「追跡行」を開始した。
大して時間をかけず、捜索チームはフォンを発見した。
今のフォンは、恐怖のあまり大きな軍服をぶかぶかに纏い、貨物区画の隅っこで体を丸めて震えていた。顔面は血の気が引いて真っ白になり、先ほどの全裸レイプ未遂のトラウマから、両手で自分の頭を抱え込んで激しいフラッシュバックに苦しんでいる。
不老の皇帝が「 bão chúa(Bạo chúa)」の足取りで近づいてくるのを目撃した瞬間、フォンは気絶寸前の恐怖に駆られ、壁に背中をぴったりと貼り付けて震え上がった。
「きっ……来るな! 変態め! 僕はただの貧しい民兵だぞ、もう二度と服を剥ぎ取るな!」
比雪はにじり寄ると、恐怖に震えるフォンの肩に親しげに腕を回し――(ただしその眼光の奥には底知れない黒い闇を宿しながら)、優しく頭を撫でつけて甘ったるい声音でなだめ始めた。
「おいおい、そんなに怯えるなよ少年! さっきの『いざこざ』について、心からお詫びを言いに来たんだ。ほら、いい子だ、怖がらなくてもいい……」
比雪はさらに身をかがめ、少年の上から下へと品定めするようにジロジロと見つめると、悪びれもしない様子で周囲の者が絶句するようなトーンで言い放った。
「それにしても……君のその体つき、ちょうど第二次性徴の時期にあたるんじゃないのか? いろいろとデリケートで気まずい年頃だろ、あるいは……」
皇帝の口元に、言いようのない危険な笑みが浮かぶ。
「いっそ今夜、私の部屋に連れ帰って一緒に寝泊まりしないか? 私がその嵐のような思春期の悩みを徹底的に『コンサルティング』してケアしてあげようじゃないか。どうだ?」
その台詞が飛び出した瞬間、背後に控えていた士官たちはひっくり返りそうになり、源 伊幸に至っては両手で顔を覆い、成長期をとっくの昔に通り越したはずの「トラブルメーカーの叔父」の終わりのない悪ふざけに対して、完全に無力感に打ちひがたれていた。
一方のフォンはといえば――バայスタットの皇帝から「同じ部屋で寝よう」、「思春期のケアをしてやる」などという悪夢のような提案をまともに聞かされてしまい、あまりの衝撃に白目を剥き、その場で文字通り絶望のあまり気絶してしまった。
テロリストの息子(だったはずの少年)が恐怖のあまりその場で失神したのを目撃しても、源 比雪は反省するどころか、むしろ面白がって興奮を隠し切れなかった。
不老の皇帝は軽く口笛を吹き、倒れたフォンの頬をポンポンと軽く叩いて意識を取り戻させると、さらに平然とした顔でトドメの一撃を浴びせかけた。
「おや、一言言われただけで気絶しちゃったのかい? なんとも軟弱だな! だからこそ、友達を作って同じ部屋で寝泊まりした方がいいって言ってあげたのに……」
比雪はすっくと立ち上がり、腰に両手を当てると、真面目に整列している護衛の兵士たちの方へ向き直り、最高潮にふざけ腐った笑みを浮かべて命令を下した。
◇
「よしっ! 同じ部屋で寝たいというなら、その意志を叶えてやろうじゃないか! お前たち、早くここへ来て……こいつの服を――いや、少し脱がせて涼しくしてやれ! 今夜は我ら兄弟が、身も心も裸になって一つのベッドで寝食を共にし、軍民の絆を深めるとしよう!」
その言葉が終わった瞬間、広大な貨物区画は奇妙な静寂に包まれた。
周囲に控える歴戦の傭兵や高官たちは、軍人としての厳格な威厳を保とうと必死に息を殺していたが、「服を脱がせて裸で一緒に寝る」という皇帝のぶっ飛んだ命令を聞いた瞬間、ついに我慢の限界を迎えて爆笑の渦へと突入した。笑いをこらえきれずに唾を飲み込んでむせる者や、腹を抱えて床を転げ回る者まで現れる有様だった。
この前代未聞の茶番劇を目の当たりにした兵士たちは、「数々の死線を越えてきたが、これほど下品で、変態的で、宇宙規模のコメディアン気質な皇帝など見たことがない」と心底から感服していた。
少し離れた場所からその光景を眺めていた源 伊幸は、無力感に首を大きく反らし、長いため息を吐き出す。惑星5561の平定作戦はもはや軍事作戦の枠組みを完全に脱ぎ捨て、終わりのないドタバタコメディ映画へと変貌を遂げていた。
皇帝の命令が下された直後、近くにいた高官たちは苦笑いを噛み殺しながらフォンのそばへと歩み寄り、「陛下」の意向を渋々実行に移そうとした。
その頃、気絶からようやく意識を取り戻したフォンは、青ざめた顔で源 比雪を見上げ、言葉にならないほどの悔恨と不条理、そして完全に諦めきった絶望の眼差しを向けていた。もはや反論する気力すら残されていなかった。
◇
あまりにも哀れで、引きつりながらもどこか不満を訴えるようなフォンの表情を目にしても、比雪の心は痛むどころか、むしろさらに大胆で過激なアイデアを閃かせていた。
不老の皇帝は突然クルリと振り返ると、少し離れた場所で頭を抱えて立っている甥の源 伊幸を鋭く、しかし狡猾な笑みを浮かべながら見据え、全員の肝を冷やすような恐ろしい提案を口にした。
「――そうだ……いっそのこと、この可愛い私の甥っ子も一緒にベッドへ引きずり込んで、三人で川の字になって寝たらどうだい? 一つのベッドで、国家の重大事から……思春期の悩みまで、心ゆくまで語り合おうじゃないか、な?」
それを聞いた瞬間、壁に寄りかかっていた源 伊幸は心臓が跳ね上がるほどの衝撃を受け、全身の毛穴から冷や汗が噴き出した。叔父の次なる「無差別テロ的ないたずら」の犠牲者になる前に、一刻も早くこの場から逃げ出したい衝動に駆られる。
不老の皇帝が「三人で川の字になって寝る」という狂気の共同生活を本気でノリノリで進めようとしているのを見て、周囲の高官や士官たちもついに我慢の限界を迎えた。彼らは身分の差を恐れつつも一歩前へ踏み出し、冷や汗を拭いながら必死に諫言した。
「か、陛下! どうか思い直してくださいませ! あなた様は一国を統べる最高にして至尊の君主であらせられます。もしこのような悪ふざけが外に漏れようものなら、陛下のご威光とイメージが深刻に失墜してしまいます!」
同時並行で、源 伊幸も必死に相槌を打ち、崩壊寸前のオーロラ帝国と一族の誇りを守るために声を張り上げた。
「その通りですよ、叔父上! 臣下たちの前くらいは君主としての威厳をちゃんと保ってくださいよ。いくら何でも、無実の民兵を捕まえて甥っ子と一緒に寝かせようなんていつの時代の悪趣味ですか!」
官僚たちや甥から次々と“教育的指導”を受け、源 比雪は不満そうに頬を膨らませ、腕を組むと、何食わぬ顔で開き直ったようなセリフを投げ捨てた。
「ふん、何をそんなに大げさにする必要があるんだ? 普通のことに決まっているだろう、極めて日常的なことさ!」
皇帝は頭を下げて気まずそうにしている高官たちを一瞥すると、平然と次のような“変態的・自分勝手な詭弁”を並べ立てた。
「第一……君たちは私がいつも楽しくしているのが気に入らないのか? それとも、私がいついかなる時も険しい顔で、冷酷無比で、退屈で不機嫌な“お堅い君主”でいる姿を毎日見せつけられる方がいいとでもいうのか?」
比雪は胸を張ってふんと鼻を鳴らす。
「いいかい? たまにはこうやって変化をつけて日常を彩り、私のこの可愛い愛らしい声を聞かせてやった方が、君たちの退屈しきった顔を見るよりよっぽど有意義で楽しいじゃないか!」
それを聞いた官僚たちはただ頭を抱え、誰一人として反論の言葉を見出せず、この不老の暴君が繰り出す唯一無二の「宇宙論理」の前に完全に沈黙するしかかなかった。一方の源 伊幸は、このプロの“お笑い系皇帝”の相棒をさせられている自分の過酷な運命に対して、もうこれ以上一秒たりとも耐えられないと心の中で宇宙の滅亡を祈るばかりであった。
臣下たちの混乱と深い溜息に包まれる中、源 比雪は突如としてふざけた態度や道化の笑みを綺麗さっぱり引っ込めた。先ほどまでの細められた茶化すような瞳は、一瞬にして凍てつくような氷の輝きを帯び、刃のように鋭い殺気を放ち始める。不老の皇帝はゆっくりと官僚たちの前へと歩み寄り、その周囲の空気が誰の目にもわかるほど重く、息の詰まるようなプレッシャーへと変貌した。
◇
「――もう、そこまでだ」
比雪の声が響いた。そこには先ほどの遊び心は微塵もなく、宇宙の頂点に立つ者に許された圧倒的な威厳と恐怖が宿っていた。
「私が暇つぶしをしているとでも思ったか? 無実の民兵と戯れ、服を剥ぎ取り、川の字で寝るなどという茶番劇に付き合わせたのは……ただ退屈しのぎや変態的な理由からだとでも本気で考えていたのか?」
すべての高官や高位士官たちの顔色が一変し、慌てて床へと片膝をつき、恐怖のあまり顔を上げることすらできなくなった。源 伊幸もまたハッと息を呑み、叔父のこれまでの“ふざけた一連の行動”の裏に、何か尋常ならざる意図が隠されていることに気づき始めた。
比雪は身を翻し、宙に浮かぶ偽造されたプロフィールのホログラムデータに向き直ると、冷徹な声音で告げた。
「――まさに、この『書類の不手際による誤認』と、惑星5561で巻き起こった『自称・テロ組織による茶番劇』が起きたからこそ、私は我が国の内部に巣食う『最も腐り切った真実』を暴き出すことができたのだ」
不老の皇帝は、恐怖で震え上がる官僚たちを見据え、冷酷に弾劾の声を飛ばした。
「君たちは自分自身の足元をよく見るがいい! 一方では政府機関が正式な法令を出しながら、もう一方では軍事機関や情報部が勝手に情報を歪め、都合の悪い履歴を4、5年もの間誰にも知られずに隠蔽し続けていた! これほど巨大で強力なオーロラ帝国でありながら、その内部がこれほどまでに派閥争いに明け暮れ、皇族の目を欺いて闇を隠し通しているとはどういうことだ!?」
茶室内は死の静寂に沈んだ。数千年の時を生き抜いた皇帝の圧倒的な気圧の前に、誰もが息を潜める。
◇
官僚たちは冷汗を滝のように流し、恐怖のあまり小刻みに震え、一言も発することができなかった。
比雪は冷ややかに鼻を鳴らし、危険な笑みを浮かべながら彼らの傍らをすれ違い、残酷な宣告を下す。
「――よく考えてみれば……この機会に、君たち全員をまとめて『綺麗に大掃除』してしまった方がいいのではないか? 恩給をネコババし、職務怠慢に浸り、私の目の届かないところで好き勝手に私腹を肥やしていた寄生虫どもをね、ん?」
その容赦ない宣告が下された瞬間、室内に控えていた高官や士官たちは血の気を完全に失い、その場で文字通り凍りついた。
そこにいた者たちのほとんど――貧しい民衆の進撃の芽を密かに踏みにじり、反乱勢力と裏で通じて私腹を肥やしていた者たちは、恐怖のあまり意識を失いかけていた。これが単なる脅しではないことを、彼らは誰よりも痛感していた。この勅命が正式に下されれば、すべての委員会や中央評議会の組織は根絶やしにされ、一匹残らず排除されることになる。
数年間にわたる怠慢と内部の腐敗は、実は皇帝が“大きな魚を釣り上げるため”にあえて泳がせておいた巧妙な罠に過ぎなかったのであり、そして今や、その巨大な網がしっかりと巻き上げられたのだ。
源 比雪は背後を振り返ると、一切の感情を排した冷徹な声音で、徹底的な組織改造の勅令を下した。
「――宣言する! この惑星における行政機構は一度完全に解体し、ゼロから再構築する。最高幹部の人事もすべて刷新する。今後、朝廷の内部において少しでも不審な点や不正の汚点が発見された者あらば、例外なく解任され、容赦なく別の者へとすげ替えてやる!」
官僚たちが己に下された死刑宣告にまだ正気を取り戻せずにいる中、比雪は軽く手を挙げ、帝国において最も恐れられる「最強にして最凶の処刑機関」の名を告げた。
「――オーロラ・ゼロ! お前たち、まだ待っているつもりか?」
その号令が響いた瞬間、茶室の機密ハッチが音もなく滑らかに開き、冷徹な死の気配と圧倒的なプレッシャーが空間全体を呑み込んだ。皇室直属の最高監査・特務執行機関にして、軍部の最も鋭利な刃――特殊部隊『オーロラ・ゼロ』が、光を反射しない漆黒のステルス戦闘装甲に身を包んで現れたのだ。
彼らは皇帝の聖旨に背く者、反逆を企てる者、あるいは職務に背く者を誰一人逃さず即座に処刑するために存在する、不死の戦闘マシンであった。
重々しい足音が床の金属パネルを打ち鳴らし、震え上がって泡を吹きかけている官僚たちを完全に包囲していく。オーロラ帝国内の汚職と腐敗を一掃する歴史的規模の血の粛清が、今ここに幕を開けた。
全面的な粛清の勅命が下されるやいなや、冷酷無比かつ皇室へ絶対の忠誠を誓うオーロラ・ゼロの司令官が前へと歩み出た。
彼は震え上がり顔を上げることもできない高官たちの只中に仁王立ちし、暗い空間で怪しく光る紅色の電子ファイルデータを掲げ、容赦のない声音で次々と名前を読み上げていく。
「――第7軍管区司令官――防衛予算をネコババして基地建設費をピンハネし、外部勢力と癒着した罪。その場で処刑する!」
「惑星5561行政評議会議員――貧困層救済の基金を横領し、5年間にわたり安全保障上の偽装工作を行った罪。即刻処刑する!」
「軍務参謀長――国家の機密情報を売り渡した大いなる反逆の罪。抹殺せよ!」
次々と読み上げられる逃れようのない罪状の前に、該当した官僚たちは悲鳴を上げ、命乞いをしながら許しを乞うた。しかし、そんな哀願に意味など微塵もなかった。
遺言を残す暇すら与えず、オーロラ・ゼロの戦闘マシンたちは高エネルギー銃を無感情に構えた。
パンッ! パンッ! パンッ!
狭い密室に、乾いた冷徹な銃声が連続して響き渡る。汚職にまみれ、貧しい民衆から搾取し、朝廷に仇なした悪徳官僚たちはその場で次々と血飛沫を上げて床へ崩れ落ち、一縷の慈悲もなく処断されていった。鮮血が金属の壁に飛び散り、高圧エネルギーと火薬の焦げ付く臭いが室内に充満する。
あまりにも残虐でありながら微塵の迷いもない一連の処刑劇は、生き残った者たちの理性を完全に破壊し、彼らは恐怖のあまり失禁しながら床にひれ伏して額を打ち付けるしかなくなった。オーロラ・ゼロが持つ絶対的な皇権と武力の威光は、この瞬間にあらゆる反乱の芽を根元から完全に叩き潰したのである。
旗艦の密室に漂う血と硝煙の匂いの中、無惨に転がる汚職軍人たちの亡骸を見下ろしながら、源 比雪はわずかに眉をひそめ、不快そうに手を振って冷ややかに命じた。
「――こんな汚らしい死体がいつまでも私の宇宙船の床に転がっているのは目の毒だな。さっさと片付けたまえ。全員宇宙空間の真空へ放り出し、宇宙怪獣の餌にするか、どこかへ永遠に漂流させて二度と目に触れないようにしろ!」
特務部隊は即座に命令を実行し、引きずり出された無残な死体たちは次々と貨物庫の外へと放り出されていった。
室内を覆う空気が重く澱む中、源 伊幸が一歩踏み出し言葉を発しようとしたが、比雪はそれを遮るように振り返った。その瞳には、先ほどよりもさらに冷徹な殺意の光が宿っていた。不老の皇帝の意志は、まだこの小さな惑星の粛清程度では到底収まっていなかったのだ。
「――まだ、この星区だけの話ではない……」
比雪は低く呟き、その唇に冷酷な笑みを浮かべた。
「よく考えれば、雑草というものは根から引き抜かねば意味がない。ならば……我が帝国の基幹をなす他の五つの重要星系においても、同様にすべての『徹底的な大掃除』を行うべきではないか?」
皇帝は拳を固く握りしめ、巨大な展望窓から広大な銀河の星々を見据えながら、圧倒的な覇気をもって宣言した。
「国家に巣食うすべての膿と、根深く蔓延る派閥の巣窟を浄化するためには、私は決して妥協しない! 偉大なオーロラ帝国に微塵の緩みも許されてはならないのだ。天下泰平を望むならば、その威厳は鉄と血によって築かれねばならず、軍事力は絶対的な一点へと完全に帰結し、絶対の忠誠を誓わねばならん!」
その宣言はまるで天雷のごとく轟き渡り、宇宙規模にわたる戦慄の大粛清が今まさに幕を開けようとしていることを告げていた――!
「次の章ではさらなる大爆発をお届けするぞ!」
――皆様、拙作をお読みいただき誠にありがとうございました。
著者: 源 比雪(Minamoto Hiyuki)
アイデア協力: GEMINI
皆様の読書が楽しいものとなりますように。
【第一章・完】
皆さん、ありがとうございます。これはベトナム語の原作から日本語に翻訳された漫画なので、その点はご了承ください!
第1話をお読みいただき、ありがとうございました!
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