2₋16.
2週間ほど前、諸事情でお休みさせていただいたときの埋め合わせとして、また、区切りが悪いので、今回はだいたい2話分の文量です。
翌日。
今日は最初から、転移ができ魔法がある程度使えるものだけを選んで連れてきた。
手がかりが一つもなかった今までは、移動時間の短縮よりも人海戦術での捜索行ったほうが効率が良いと感じていた。
そもそも転移魔法は一度行ったこと後ある場所にしか行けないからだ。
転移陣を使えば行ったことのない場所にも行けるが、その場所に転移陣が設置されていれる場合に限る。
しかし昨日転移陣を見つけたことで、転移魔法による移動が可能になった。
魔法陣の解析にはある程度の知識が必要、その上とても複雑な模様ともなれば知識がない人がいても声や足音に引き寄せられた魔物が寄ってくるだけだ。
昨日のように騎士たちに守りを任せ、転移陣と向き合う。
今日は設置された時間を調べる魔道具や魔力を記憶する魔道具も持ってきた。
時間に関しては秒単位で正確な値を導き出せるし、さすがに人名まではわからないものの魔力の性質を記録し、照らし合わせることで設置した人物を特定できる。
これらの道具は王に頼んで送ってもらった。
転移陣を使ってのやり取りだから誰にも邪魔されない。
討伐は俺たちだけで行ったのだ。
ちょっとくらいこき使ってもバチは当たらないだろう。
主の討伐達成とほぼ同時に侯爵領で魔物が消滅したのだから関わりがあると証明されたようなものだが、これだけでは侯爵家に責任を問うには少し弱い。
設置した人物と侯爵との関係を明らかにせねば。
自分よりも格が低いとはいえ名門のある侯爵家を潰すのは並大抵のことでは出来ない。
それだけでなく水害のことも調査しなければ。
やることが多すぎておかしくなりそうだ。
今は取り敢えずそれらのことから目を背けて転移陣を見る。
魔道具は作動させているから半刻ほどで結果は出るだろう。
俺は魔道具にはできない作業をしていく。
魔法陣とは一つ一つの模様に意味があり、それらの組み合わせ次第で効果の種類や強さが変わっていく。
作った人のくせによっても少しずつ模様は変わるから、今の技術では、解析用の魔道具はとても信憑性の低いものしか作れないのだ。
2刻ほど経った頃、結果がわかった。
やはりこの転移陣とつながっている転移陣は侯爵領にある。
ずいぶんと外れの森に設置されているようだが、魔物の移動に使ったのなら不自然ではない。
実際魔物はその森で現れたそうだし、そこまでの計画なら一般人の力では不可能だろう。
侯爵の関与はもう確実と言って間違いないだろう。
魔道具の結果も見たが、設置された時期は水害の数日前のようだ。
水害と魔物襲撃…。
これら2つの出来事の関わりは…。
そう考えていたときだ。
「公爵様!ここから50m程先の地点の植物がまるで食い荒らされたような不自然な状態になっています!」
その声を聞いて駆け寄った先、そこだけ植物がなく、かろうじて残っているものも根が腐れたり葉が一枚も残っていなかったりと散々な状況だった。
しかも他にも同じような状況になった場所が点在している。
転移陣が設置されている地点よりも奥は見ていなかったため今まで気づかなかったが、すべての場所を合わせればかなりの広さになりそうだ。
これも魔物と関係があるのだろうか?
「公爵様、食い荒らされている植物は全て同じ種類のようです。ここの根の模様、一部の植物でしか見られない珍しいものですが、残った根の多くに同じような模様があります!」
植物に詳しいものがいて助かった。
俺は植物についての知識はほぼほぼ皆無だ。
しかしさすがの彼にもなぜこんな状態になっているのかはわからないようだから、取り敢えず伯爵家の屋敷に戻ることにする。
普通、貴族の屋敷には大量の蔵書がある。
植物図鑑くらいならあるだろう。
屋敷に戻り、伯爵に図鑑を持ってきてもらう。
しばらくして、想像していたよりもずいぶんと多くの図鑑が運ばれてきた。
伯爵が言うには、かつての当主に大の植物好きがいたらしい。
食糧を手に入れるため、売ってしまおうかと迷っていたようだが、俺が援助を申し出たことでかろうじて売られずに済んだようだ。
今日の調査に参加していなかった騎士たちを呼び、手当たり次第に該当しそうなページを探してもらう。
調査に参加していた騎士たちには休憩を与えたが、植物に詳しい騎士にだけは残ってもらった。
申し訳ないと思うが、こればっかりは仕方ない。
少しだけ採取してきた木の根と見比べながら俺自身もページをめくっていたときだ。
「これだっ!」
一人の騎士が声を上げた。
彼が示したページを覗き込むと、確かにそっくりな模様が書き込まれている。
それだけじゃない、一部の魔物にとってこの植物は好物であり、食い尽くされてしまうことがあると書かれている。
一緒に載っていた魔物の絵は、ここ最近で嫌になるほど見たものにそっくりだった。




