2_3.
「オートゥイユ伯爵家、か...。彼女は善良伯の娘で間違いないな」
「はい。伯爵の一人娘で、現在17歳。昨年までは伯爵領で夫人と共に生活、今年に入ってから王都のタウンハウスにて伯爵と暮らしているようです。夜会への参加は、昨日が初めてだったと」
「婚約者は」
「おりません。恋人もいないようです。しかし、年頃の女性ですし侯爵家の次男や三男あたりを婿にして結婚するのも時間のうちかと」
「分かった。デンファ、また腕を上げたな?情報を手に入れるまでの速度が過去最高だぞ」
「お褒めに預かり光栄です。もし彼女を我が家に迎え入れることになった暁には、御者の役目は私にお任せくださいね」
「もちろんだ、頼んだぞ」
「かしこまりました」
そんな会話をしてからはや 3ヶ月。
彼女が参加しそうな夜会には出られるだけ出たが、彼女と会うことはできなかった。
彼女の交友関係について調べた結果、女性同士の茶会に参加するか仲の良い伯爵令嬢を屋敷に呼ぶか以外は人との交流もほとんどないようだ。
父は愛情深くおおらかな性格の伯爵だし、婚約者探しも本格的には行っていないのだろう。
これは良い知らせであり、悪い知らせでもある。
私はもう24。
のんびりしてはいられない。
親バカな伯爵に結婚を認めさせるのは難しい。
婿入りできないのなら、なおさら...。
幸い彼の親戚筋には優秀なものも多いから養子にして家を継がせることは簡単だが、伯爵が大切な娘を手放したりするだろうか。
それをさせるためには私が娘を任せるに値する男だと思わせる必要がある。
そんなこんなで訓練や内政などに力を注ぎ込んでいるうちに、彼女と出会ってから9ヶ月。
夜会 には相変わらず参加しているものの、彼女には会えない。
彼女が夜会に参加するかどうかなど、調べれば簡単にわかる。
でもそれをせず夜会へ行ってしまうのは、何かをしていないと彼女への思いがあふれておかしくなってしまいそうだからだ。
たった一度見かけたきり、話してすらいない人相手にこんな思いを抱いてしまうなんて、どうかしている。
そんなことは分かりきっている。
なのに、彼女への思いを止められない。
それからひと月。
そんな生活を続けていたせいだろうか、約20年ぶりに熱が出た。
驚いた使用人たちは珍しく大慌てで医者を呼んできたが、ただの疲労らしい。
まあ、あれだけ予定を詰めていたらそうなってもおかしくない。
あと数日で、彼女に出会って1年経つ。
今の私を見て、娘にふさわしくないとは伯爵は言えないだろう。
あとは本人の意思次第だ。
そう考えて、正式な婚約の申し込みの手紙を書いていた時だ。
伯爵家で水害が起きたとの情報が入った。
今更ですが、登場人物の名前は花が由来になっています。
家名は適当...w
花言葉をふまえてつけているので、ぜひぜひさがしてみてください!
(レナちゃんは、花の名前とは関係ないです。ラナちゃんと音を近くしたかったので)




