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彼女はどこの令嬢だろうか。
私は一度見たことのある人の顔を忘れたりしない。
いくら夜会に参加することが少ないとはいえ、数多くの人と出会い、国中の貴族の半数以上は把握しているはずだ。
年頃の女となればなおさら。
自分から寄ってくるのだから。
しかし、彼女のことは今まで見たことがなかった。
作法は綺麗だったし、ドレスの作りを見たかぎり、ある程度伝統のある家の出身だと思われるが...。
病弱で今まで夜会へ出ていなかったというところだろうか。
いや、それにしてはあの明るい笑い方だ。
小さい頃から病弱なものなら、あんな屈託のない笑い方というのは考えづらいだろう。
屋敷へ向かう馬車の中ずっと考えていたが、答えは見つからない。
考えているだけでは仕方がないので、我が家の諜報部隊に調べさせた。
ちなみに諜報部隊というのは、庭師、御者、メイドのうち数人で構成される、普段は普通の業務を行いながら、必要ときに情報収集を担当する部隊のことだ。
我が家の使用人には、主に3種類ある。
1つは、代々我が家に仕えてくれている一族出身のもの。
2つ目は、自ら志願し試験に合格して迎え入れられたもの。
そして、元々スリをして生活をしていた 孤児たちだ。本来なら極刑になってもおかしくなかったが、生きるに困った幼い子供が行ったことだ。適切な教育を施し職を与えれば、立派な人間に更正することも可能だろう。
そうやって連れてきた子供たちのうち特に優秀なものは我が家、それ以外のものは信頼できる他家を紹介し働いてもらっている。
使用人たちの経歴は様々だが、完全な実力主義。
出身年齢問わず、実力で出世や給料が決まるシンプルかつわかりやすい仕組みだ。
不満が出やすいという欠点もあるが、それに関しては"動くカリスマ性"と呼ばれる父直伝の向き合い方を真似することで解決できた。
単純に言うと使用人が不満も言えなくなるくらい相手のいいところを見つけて褒めるというだけだが、これが存外難しい。
だが使用人にとってはこれがモチベーションになる。
相手はちゃんと見ていてくれているということがわかれば、これがまっとうな評価だとわかるから。
そんなことを繰り返していくうちに、我が家の使用人のスペックは異常の域にまで及んでいる。
当初は自衛ができるようにくらいのつもりで教えた武術が、いつの間にか本職の騎士に匹敵するレベルだ。
慌てた騎士達は訓練を増やし、結果両者とも世界トップの強さを誇っている。
そんなわけだから、彼女の情報はすぐ手に入った。




