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00話 吾輩の前世は猫である。
吾輩は猫である。名はある。
トラ。なんとありきたり名前なのだろう。しかし私は気に入っている。何故なら大好きなご主人がつけてくれた名前だからである。理由などそれで十分。
猫として生き、猫として死ぬ。
大好きなチュールを一日三食貰い、ひたすらニャンニャン言いながらご主人の元に駆けつけてはゴロゴロと鳴らした喉を撫でてもらう。
こんな日々が永遠に続けばいい。そう思っている。
ご主人の名前は新井ミカ。二十三歳OL。趣味は私。好きなものは私。嫌いなものは犬。私のためだけに生活をしている。きっとそうだろう。
今日も縁側に腰掛けたご主人の横で、夏の日差しを一身に受け草花の香りを楽しみながら優雅に眠っている。
「トラー。今日もいい天気だね。」
「ンニャー。」
「あらぁ!トラちゃんは可愛いでちゅね!」
一生続くそう思っていた。
あの日までは。
一年後ご主人は死んだ。
流行り病を患ったご主人は回復することなく亡くなったのだ。
自宅で最期を送りたいと願うご主人の気持ちを尊重した医師は、最期の時を大好きだった私と共に過ごさせたのだ。
「…ごめんね。トラ…。ご主人失格だよね。」
丸い眼から大粒の涙を流しながら私に語りかけた。
私は願った。
死なないで。
私はご主人を失った悲しみに耐えきれず後を追うよう死んだ。




