89 花蓮とプール その3
「いやー、すごいね。 彼方くんもここまで泳げるなんて」
「一応、中学二年までは水泳教室で習ってたからな」
「そうなんだ。 どうりで……」
俺と花蓮は25メートルプールの半分を使って背泳ぎをしていた所だった。
花蓮もしっかり背泳ぎ出来ていたが、花蓮からしてみたらそれ以上に泳げることに感心していた。
まぁ、俺は中学二年までは水泳教室に通っていた事もあって、100メートルまでは泳げるようにはなっている。
とはいえ、アスリートではないので流石に200メートルとかは無理だけどね。
「それにしても結構泳いでる人が多いね」
「夏休みも終わりに差し掛かるからな。 みんなこの時期に泳ごうとしているんだろうな」
「そうだろうね。 密かにアレの不安はあるけどね」
「ああ、あの無差別ナンパ男か。 被害に遭った女性がいるのになかなか捕まらないという」
「そうそう。 だから今回の護衛さんの人数を多くしたんだよね。 一応、警備員もいるけど」
「だろうなぁ……。 あの夫婦護衛も目を光らせながら楽しんでるし」
そう、花蓮が気になっている例の無差別ナンパ男。
ここ最近の市民プールでおかしな男が紛れ込んでおり、目を付けた女性に声を掛けてナンパしてくるという。
女性が断っても話を聞かず、無理やりお茶しに行こうとするのだが、誰かが駆けつけて来たと知るやすぐに消えるようにいなくなるので、なかなか捕まらないらしい。
「さらにさっき聞いた話だけど、そのナンパ男、子持ちであろうが構わず目を付けた女性をナンパするみたい。 特に子持ちならば子供を放置させてね。 これも未遂なんだけど」
「うわぁ……」
改めて、聞けば聞くほどそいつの厄介さが理解できる。
幸い、俺達の近辺に複数の護衛さんがいるからいざという時は大丈夫だと思うが、駆けつけたと知るや消えるようにいなくなるので、そうならないようにここで食い止めておきたい。
その為の多数の護衛さんなんだしな。
「さて、私はトイレに行くよ」
「奇遇だな。 俺も丁度行こうとしていた」
「じゃあ、一緒に行こっか」
「ああ」
ナンパ男の事を考えながら暫く泳いでいると、花蓮がトイレに行きたくなってきたようだ。
丁度俺も催してきたので、トイレ前まで一緒に行く事に。
その時に花蓮は護衛さんに目配せして、怪しまれないようにトイレ前まで行くようにアイコンタクトをしておいたみたいだ。
多分、奴のねらい目がこの時だろうと見越してだろう。
失禁被害もあるって報告もあるらしいし……。
「ふぅ……」
トイレ前で花蓮と別れて男子トイレに入った俺は、用を足してスッキリさせた。
「さて、花蓮は終わったのだろうか?」
ゆっくり手を洗いながら花蓮の事を考えていた時だった。
「みぎゃあぁぁっ!?」
おかしな悲鳴が上がったようなので、すぐにトイレから出た。
「花蓮っ!」
「ああ、彼方くん。 私は大丈夫だよ。 予想通り私に目を付けてたみたいだしね」
「やっぱりか。 それであのチャラい男が?」
「うん。 護衛さんの一人のアイアンクローを受けている男だよ。 じゃあ、警察を呼んで」
「はい、お嬢様」
予想通りと言わんばかりに今アイアンクローを受けているチャラ男が今度は花蓮をナンパしようとしていたみたいだ。
だが、流石に相手が悪かったと言わざるおえないな。
あの脱獄女相手でも筋肉を見せつけながら潰すような人たちだから。
その様子を見る俺をよそに、花蓮は女性の護衛さんに警察を呼ぶように伝えた。
しばらくしてすぐに警察が来て、チャラ男が連れて行かれたようだ。
警察でも過去にチャラ男がトイレに行こうとした若い女性を無理やりナンパして失禁するまでしつこく言い寄っていた事もあったと把握していたみたいだ。
そういった過去のやらかしもあって、逮捕されたようだ。
「でも、まぁこれで安心かな? 私達はそろそろ終わる時間だけど」
「ああ、そうか。 時間が迫ってたんだな。 花蓮と楽しむときも時間がすぐに経過するな」
「うん。 私も同意するよ。 それだけ楽しかったんだし」
「来年も一緒に泳ごうか?」
「もちろん、この水着でね♪」
なんだかんだですぐに時間が経過し、俺達はそろそろ着替えて市民プールから出ないといけない時間帯になったようだ。
帰り際に花蓮とまた一緒に泳ごうと約束をし、護衛さんの車で家に送って貰った。
ともかく無事にプールデートが終わってよかったよかった……。
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