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1-19 うわ、蛮族だわ。

 どう見ても犯罪集団です。ありがとうございました。



 いや、マジ勘弁してくれ。

何でみんな武装してんだよ。

こっちは丸腰の人間の方が多いんだぞ?

 しかも……

 槍の先にある丸いものって……

 それって……

 人間の首ですよね?

見かけない顔の俺にはみんなびしばし視線飛ばしてくるしさ。

なんか、ヤンキーに絡まれた時みたいで、生きてる心地がしない。

いや、どう見てもヤンキーの方がマシだな。

殴られるかもしれないけど、殺されたりしないだろうし……

 あーでも、油断すると殺されるかもしれないから同等?

 いやいや、どうなんですかね?

 ちょっと混乱してる。

「ちょっとー!あんましヒロシを見ないでよね?ヘタレだからびびっちゃうじゃん!!」

 それに対して、何でミリーは偉そうなんだろうか?

雰囲気的には、しょうがねえなぁくらいの対応だけど、一歩間違えばとんでもないことになりそうな絵面だ。

どうやら中央で、ハンスと二人のおっさんが車座に座ってる。

おそらく、あれがローフォンとアジームって奴なんだろう。

二人とも人間だが、人の2,3人は軽く殺してそうな顔してる。

ハンスと同じで見た目が怖いだけであって欲しいなぁ……

「お?こいつが新入りか……」

「どう見ても物の役に立ちそうもねえな………」

 かなりドスのきいた声でびびる。

「ひ、ヒロシです。どうぞよろしくお願いします。」

 何とか頭を下げて挨拶だけはしてみた。

「よろしくなヒロシ。俺がローフォンだ。んで、こっちがアジーム。」

 値踏みをするような視線でローフォンは俺を見ている。

それに俺は、愛想笑いしかできない。

「ハンス、こいつはお荷物か?」

 明らかにローフォンは俺を馬鹿にしてるみたいだ。

「いや、案外暗殺向きかもしれん。ぼーっとした(ツラ)して、近づいたらぶすっとかな。」

 アジームは俺に何か秘密があるだろうと言った様子で観察している。

「い、いや、僕はそんなことできません。」

 消え入りそうな声で俺はふるえて、首を横に振る。

「僕って、子供じゃあるまいし………

 何人殺ったことがあるんだ?」

 殺したこと前提かよ!!

 しかし、僕って言うのは、確かに子供っぽいかも……

ちょっと考えておこう。

「ヒロシは来訪者でな。ずっと平和な土地で暮らしてる。」

 ハンスが、割り込むようにアジームに応えてくれた。

「だから、俺は血なまぐさいことに巻き込むつもりはない。」

 きっぱりと言ったハンスに気圧されたのか、二人のリーダーは仕方ないといった様子で、身を引いてくれた。

「まあ、来訪者なら戦闘以外で役に立つって事だな。」

 ローフォンからは、殺気だった雰囲気も、馬鹿にした雰囲気も消えたけど、興味もなくなったみたいだ。

「まあ、ハンスが世話をするって言うなら、手出しはしねえよ。アジームもそれでいいな?」

 どうやら二人の間には、それなりに絆みたいなものがあるみたいだ。

「まあ、喧嘩は売りたくない。詮索はしないでやるよ。」

 アジームの方は、まだ興味を失ってないみたいだけど、二人に敵対してまで俺に価値はないと思ったらしい。

俺たちのキャラバンの様子を探って入るみたいだけど、襲うような素振りではない。

これで、敵対してないって言うんだから驚きだ。

 あ、いや、別に敵対してないとは言われてないか……

勝手な思いこみだし。

「とりあえずよ、ハンス。少人数で旅するのも疲れるだろ?よければ全員面倒見てやるぞ?そこの小僧を含めてな。」

 うわ、小僧扱いかよ。

ローフォンの年齢はどう見たって30くらいだろ?

 いや、まあ今は年下に見えるのか。

身長的な差で、元の見た目でも坊主呼ばわりされそうだけど……

それともじじい呼ばわりかな?

「ヨハンナも死んで俺も死んだら、世話になるさ。それまでは、俺の責任の範囲だ。」

 ハンスの言葉にローフォンは渋い顔をしている。

多分、ハンスの戦闘力が欲しいんだろうな。

ミリーが自慢してたし。

「まあ、そういうことなら任せろ。面倒見てやる。」

 案外あっさり引き下がるんだな。

「ちょっと待て。ロイドにしろミリーとテリーだって、役に立つ。お前だけが持ってくのは、ずるいだろう。」

 もう、完全に物扱いだな、このおっさん。

いや、アジームの方も40くらいだからおっさん呼ばわりは失礼か。

 しかし、対照的な顔立ちだ。

アジームの顔がアジア顔なら、ローフォンはヨーロッパ顔だ。

同じ地域に住む人種には思えないくらいの差がある

 まあ、どっちも凶悪そうなのは変わらないけど。

 しかし、奴隷かなんかみたいに扱われるのは心外だなぁ……

「おめえは、ちょっと言い方に気をつけろよ。奴隷じゃねえんだぞ?」

 ローフォンが忌々しげに、アジームを睨んでる。

意外だな。

そういう気遣いできるんだ。

「取り繕ってどうする。奴隷じゃないが、どっちにしろ仕事はしてもらわにゃならん。

 だったら能力で人を見るのがそんなにおかしいか?」

 まあ、、アジームの言い分ももっともだな。

物扱いは嫌だっていったって、どうしたって何ができるかで欲しい欲しくないって思うのは、集団を率いる人間なら当たり前。

むしろ、そういう見極めをせずに集団に引き込むのは、他のメンバーに対しての責任を放棄している。

そういう意味では、ハンスの行動は無鉄砲だよな。

なんだか申し訳なく思ってしまう。

「そもそもハンスみたいに英雄のような真似が、俺にできると思ってるのか?ローフォン。」

 なんか、にやりと笑って杯を傾けた。

「そんなもん期待するかよ。お前は山羊の数しか数えられないことは、俺がよく知ってる。」

 それに応えてローフォンの方も酒を飲み出した。

 なんだ、これ?

 えっと、つまりあれか……

二人にとっては、ハンスは英雄みたいなもんなのか?

オークなのに英雄とか、反則だろ。

「買いかぶりすぎだ。俺は馬鹿だからな。単に計算ができないだけだ……」

 なんか、恥ずかしそうにハンスも杯を傾けてる。

「お前らがくると、いつも俺を英雄だなんだとはやし立てるが、頼むからやめてくれ。こっ恥ずかしくてしょうがない。」

 いや、ハンス、二人は本気みたいだよ?

「いや、お前は計算できない馬鹿じゃない。計算した上で、その計算をかなぐり捨ててる。」

 アジームがしみじみと語り出した。

「そうだぜ。じゃなかったら俺はとっくにあの世だ。」

 ローフォンもそれに同意するように頷いてる。

なんか、こう、あこがれの対象を見るような視線だな。

何があったか知らんけど、むしろ心酔されてませんかね、ハンスさん。

うわ、すっごい渋い顔してるな。

こりゃ、なんか後悔とか抱えてる顔だ。

最近、ハンスの豚顔も見慣れたのか表情が読めるようになったけど、こんな苦しそうなハンス見たこと無いな。

こうなってくると英雄視されて羨ましいとか、俺もその立場になりたいだとか簡単に言えない。

その立場になるのも、本意じゃなかったんだろうな。

なんか凄い場違いなところに来てる感じがする。

顔見せだけなら、こっそり抜け出しても良いかなぁ……

「おっさん同士の昔話なら、そろそろヒロシは良いでしょ?」

 ナイスタイミングだ、ミリー!!

「あぁ、まあ、ハンスに拾われてよかったな小僧。」

 ローフォンは、完全に興味がないので、手を振っている。

「何かあったら俺の所に来い。もちろんただで助けたりはせんがな………」

 アジームは人の悪そうな顔して笑ってる。

 怖いわー………

「お邪魔してすいませんでした。失礼します……」

 俺は、何度もぺこぺこして酒盛りの場から逃げ出した。

「助かったよミリー…生きた心地がしなかった……」

 俺はヨハンナのところで流した涙とは違う意味の涙が溢れそうだった。

 超怖えー!!

生きた心地がしなかった。

「情けないなぁ……まあ、あの二人じゃしょうがないかぁ……」

 同情したようにミリーは俺の肩を叩く。

「あの二人、掠奪、強奪、だまし討ち、何でもござレの極悪人だし。

 それでも、ハンスのことは一目置いてるみたいだから、安心して良いと思うけどね。」

もうそれは、山賊というべきなんじゃないかなぁ……

「それでも水場では襲ってこないし、攻撃しかける前に交渉もするみたいだから完全にならず者ってわけでもないんだよ?」

 それでならず者にならないのか……

 凄い世界だなぁ……

 しかし、集まっている、あの二人のキャラバンを見ると、ちゃんと家畜は飼ってるみたいだし女性や子供もいる。

掠奪一辺倒の明日をも知れぬ集団ってわけではないのは確かだろう。

「まあ、中堅クラスだとどうしても養う人数の方が多くなっちゃうからしょうがないよね。」

 これで中堅かよ。

「大規模なキャラバンだともっと凄いのか?」

 俺は、地を埋め尽くすならず者集団を思い描いて震え上がる。

「いや、凄くはないかな……中堅以上になると土地を持ってないけどお金持ちみたいな感じになるから……」

 なるほど、この殺伐とした雰囲気は中堅だからか……

「まあ、中堅から富を巻き上げて、言うこと聞かないキャラバンは殲滅するって感じだから悪辣さは上かもしれないけどね。」

 あ、悪辣なのね。

「表向きはお上品だけどね。

 王国におもねって領地を貰おうと必死だし、あくまでも治安維持をお題目にしてるから動きは鈍いんだけど。

 基本的に中身は似たり寄ったりだよ。」

 まあ、そうじゃなきゃ荒野をさまよったりはしないか……

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