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4-19 マジックアイテムオークション。

マジックアイテムというのもいろいろあると思うわけですよ。

 倉庫へ行き、グラスコーにハンスたちのもとに行きたいと言ったら、あっさり了承された。

 そんなことより、SUVが気になってしょうがないらしい。

色々とオプションを追加してくれとか、注文されたので見積もりを出したがいろいろと考えてるみたいだな。

ワンボックスにするか、それともSUVにするか。

 もしくは、軽トラを2台買うかといろいろと悩んでいたが、SUVに決めたそうだ。

冬の時期の旅が危険だとかそういう心配はしないんだな。

 まあ、薄情なわけじゃないんだろう。

多分、俺なら何とかするくらいに思ってるのかもしれない。

「ところでグラスコーさん、オークション行きませんか?」

 これは、俺の能力である売買で行えるオークションの話じゃない。

現物のやり取りを伴うオークションだ。

 絵画や美術品、船舶なんかがオークションにかけられることもあるし、奴隷のオークションなんかもある。

 ただ、目的はそのどれでもない。

マジックアイテムのオークションだ。

 基本的には全部が合法だが実はマジックアイテムのオークションには度々お世話になっている。

というのも、マジックアイテムは熟練の鑑定士でも正体を見破るのが難しいからだ。

一応呪文で魔法の品なのかはわかるし、これは簡単だ。

 そこから系統、分野までは絞り込める。

 だけど、実際どういう効果があるかまでは分からない。

 なので、ラベルのないポーションなんかは捨て値で買えてしまう。

 と言っても入札開始金額は金貨1枚からなので、それより安くなることはほぼないけども。

 時々ダース単位で出てくることもあるけど、さすがにそれで金貨1枚はない。

 何の効果もないポーションなんかもあるので系統まで見えてないと手は出しづらい。

 もちろん、無属性だからと言って効果なしとも限らない。

その上、さらに使い方が飲まないとダメとか、塗らないとダメとかそういう制約がある場合もある。

なので、そこら辺の詳細な情報まで漏らすことなくわかる俺の鑑定があれば割とお得な値段で買えるというわけだ。

「お?冷やかしか?それとも誰かに頼まれてたか?」

 資金的に余裕がないと、とても手が出せない値段なので主にポーションを狙うか、もっと金を持ってる商人に鑑定人として呼ばれるか。

どちらかかでの参加ばかりだったので、グラスコーの冷やかしという表現も言うほど的外れじゃない。

鑑定師のお仕事としては使い方のレクチャーとか注意点なんかも含めてだけど、これが結構多めの鑑定料がもらえる。

元手がいらないので、いい商売だった。

 ただ、いつでもどこでも開いてるわけじゃない。

このモーダルでも冬の間、流通がほとんどストップしているこの時期にしか開かれない。

なので、俺にとってはつい最近に初体験したイベントなわけだけど、割と参加回数は多い。

何故この時期かと言えば、よそに持っていけないからとか借金で首が回らなくなったとか差し押さえ食らっただとか、理由はいろいろあるらしい。

 もちろん、当然ながら合法だ。非合法なものもあるらしいけど手を出す根性はない。

ギルドは関与してないが、市税として税金は取られる。

市の運営にもお金はかかるものだ。そこは、仕方ないよな。

「冷やかしじゃなくて、ちょっと魔剣が欲しくて。」

 もっとも今回は、そういう話じゃない。ベネットに言った伝手とはこのことだった。

「おいおい、女にプレゼントするには色気が無さ過ぎじゃないか?」

 いやらしい笑い方しやがる。

「プレゼントじゃないですよ。ちょっと武器が破損してしまったので、これを機に新調したいって依頼を受けましてね。」

 疑わしげに見てくるが、事実だし疑われることなんか何もないぞ。

「まあ、いいがな。前にも言ったが、ああいう女はあとで絶対後悔するぞ?」

 お前は、どういう経験をしたんだ。

 まあ、後悔するのは間違いないだろう。

経験がなくたって分かる。それでもだ……

 いや、そういう話じゃない。

「で、ついてきます?それとも俺だけでいいですか?」

 聞けば、行くに決まってんだろとの返答だった。

行けば間違いなく儲かるからな。


 マジックアイテムのオークションは、大抵豪華なお屋敷のエントランスを借りて行われる。

豪商だったり、お貴族様の邸宅だったり、最低でも市が所有する建物だったり。

 市が所有してるって言うと公民館みたいなものを思い浮かべるかもしれないが、そこはまだ封建制の香りが残る世界だ。

首相官邸とか、国会議事堂レベルの建物だったりする。

 当然警備も厳重だ。

暁の盾以外にも、他の傭兵団の人間も詰めてたりする。

規模的には暁の盾と同等程度の傭兵団は、青の旅団で団員は皆青いバンダナを利き腕に巻いているのが特徴だ。

 ちなみにその特徴を真似している人間がいたら必ず腕をぶった切れとか言ってる頭のおかしい連中でもある。

 まあ、そう豪語するだけで実際それをやってる場面には遭遇したことはないが、そういうはったりも商売の内だろう。

 他にも個人名に旅団やら騎兵隊とかが付いた傭兵団は星の数ほどあって全部覚えるのは不可能だ。

そういう名前も聞いた事のない連中でもお行儀よくボディチェックやら巡回やらをこなしているから、指示には大人しく従っておくに越したことはない。

 エントランスに入ると、出品物が展示品みたいに並べられている。

基本は、それらの前に置かれている箱に入札価格を書いた紙を入れて一番高い人間が購入権を与えられる。

 もし同額入札者が複数いる場合は、話し合いで決める。値段を吊り上げたくない場合はくじ引きだ。

お昼休憩をはさんで、午後には名前が呼ばれて商品と金を交換して終わり。

 もちろん、お金とは言ったが証書でも問題はない。

 とはいえ、この時はたいてい現金だ。なぜなら、入札最高額が1万ダールを超えるとオークションでおなじみの入札会が行われるからだ。

入札会が白熱することもあって、深夜まで続くこともある。

時には100万ダールを超える商品もあるんだが、どう考えてもあれは損だ。

 詳細な能力が分かっていれば、明らかに機能に見合っていない。

というか、そんなに高性能だったら誰かが自分で使うだろう。

 なので、大抵購入してがっかりするケースが多い。煽り上手というか、乗せられやすいというか。

オークションというものはそういうものだと言えばその通りだけど。

 ちなみに、午前中の入札は箱の中身は見分できる。

上は開かれてるので、今の入札状況は誰でも確認可能だ。

「めぼしいもんあったか?」

 一通り見て回り、値段をチェックしている。

こっそりパソコンで記録してはいるが、結構な出品数だ。

今度は、カメラで撮影しとくかな。

「大体このあたりのポーションはこの値段で入札しておくといいと思いますよ。」

 スクロールの類は、読む人間が読めば効果が分かりやすい。なので、割と効果相応の値段に落ち着いている。

 対して、やっぱりポーションはかなりお安い。

使ってみるまで効果が分からないから、忌避されやすいしな。

《致命傷治癒》のポーションも系統から治癒系のポーションだと分かるんだが、経口摂取しないと効果を発揮しない制約があるせいで《治癒》程度の値段でしか入札されてない。

なので、俺も入札しておいた。

あんまり高めに入札してるとばれるのでこっそりと若干高めで入札している。

昼休み前にもう一度チェックしてみて、グラスコーが入札してないようだったら最高値に入札し直そう。

 ちなみに、入札の為の紙は番号が赤く印字されて、下半分を千切る形になっている。

上と下にも小さく赤い番号が入っているので、その番号で入札会に行くか、購入手続きに進む形だ。

同時進行しそうなときには、係の人がやり取りをしてくれるから、買い逃しや入札会に入れないなんてことは無い。

 もちろん、この紙を入手するのはただじゃない。

10枚組で銀貨1枚だ。

取引しているものと比べれば全然良心的な手数料だとは思う。

 ただ複数回入札するとあっという間に紙を使いつくすので、注意は必要だ。

金貨1枚入札なんかの時は、他に高い入札があれば途中で自分の書いた紙を回収しておくって言うテクニックもある。

 せこいって言うな。

同じ金額で別の商品に入札すれば、くじ引きまで行ける可能性があるわけだから馬鹿にできない。

「ワンドはどうだ?」

 ワンドは割とねらい目に入る。

ポーションと同様に使ってみるまでどんな呪文が入ってるか分からない。

その上で、50回分が丸々残っていることは稀だ。

 一応、そのオーラの強さで残り回数を予測するのは可能だけど、具体的な数字は分からない。

ちなみに、輝きの強さで呪文のレベルが分かり、残り回数は色で判断するしかない。

回数が減れば徐々に暗色に変わっていくので、微妙な違いだ。

 10回と1回は、ほぼ黒で、見分けつけられる人はいるんだろうか?

そういう残りが少ないワンドは特にねらい目だ。

具体的に数字が把握できるのは強い。

「このワンドとこのワンドがおすすめです。呪文レベルが高めでちょっと高いですけどね。」

 モニターを手で隠しながら、出品番号をグラスコーに見せる。

一つは、《透明化》のワンド、もう一つが《蜘蛛の網》だ。

 両方とも50回分残っているワンドなら金貨450枚くらいは取られる代物だ。

それが、《透明化》が8回、《蜘蛛の網》が9回残っている。

両方とも警戒されて、ろくに入札されていない。金額も金貨1枚入札が大半で銀貨を1,2枚を入札してる紙がちょっとある程度だった。

「さて、どれを選んだものかなぁ。」

 グラスコーも狙いの商品に入札に向かっている。

 最近は俺がマークされているので厄介だから、ぎりぎりを狙うけど目星は付けておかないとまずい。

出品されている大剣は全部で5本。

うち2本は、単純に強化されている+2と+4の剣だ。

 +4はさすがに手が出ない。すでにベネットが提示した値段を超えてる。

+2は、儲けを考えてもまだ余裕はある。というか、まあ、儲けなくてもへましちゃいましたって言えばいいからそれでもいいんだが……

他3本が気になる。

 一本は+1ながら投擲の能力がある。

15mくらいまでぶん投げられて、手元に戻ってくるという面白い機能だ。

 まあ、これも値段相応だろう。

呪文での鑑定で能力を知る術はないにせよ、込められた力は相応に感じられるはずだからだ。

 もし、機能を知らずに買ったなら損をしたと思うかもしれないけど、値付けは間違ってはいない。

 もう一本が+2で反動の能力を持っている。

敵に攻撃を当てた際に衝撃が炸裂する。相手に剣撃に加えて衝撃で追い打ちが仕掛けられるけど、その衝撃の範囲に自分もぎりぎり引っかかる。

つまり諸刃の剣、衝撃バージョンという奴だ。

 しかもこれ、機能を使わないということができない。

強いのは間違いないけど、ベネットに持たせたいかと言われると……

無しだな。

 これも相応に力の強さが評価されてるので、入札はやや厳しい。

最後が+3のミスリル製だ。しかも、火炎の能力で炎を刀身にまとわせることができる。

但し、聖戦士しか持てない。

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