4-18 電子書籍と雪道。
ちょこちょこと現代のものを持ち込んでいます。
もちろん、相手は選んでますが。
電子書籍を読むには何が一番適しているだろうか?
スマホか?タブレットか?ノートPCだろうか?デスクトップだろうか?
どれも一長一短だ。
小さければ場所も取らないし、どこでも読める。
だがそれは画面の小ささに直結してしまう。
流石にデスクトップは、他に作業をしないのであれば無駄と言っていい。電力消費も多いしデカくて邪魔だ。
だから、除外していいだろう。
次にノートPCも除外していいと思う。
画面の大きさを確保すれば読みやすくてきれいだ。
でも、デスクトップほどではないにしてもそれなりに電力確保は必要だろう。
その点で言えば、タブレットが一番適してると言える。
「ジョシュ君、これから見せることはみんなには内緒だよ?約束できるかい?」
一応口止めしておこう。
実は《投影》という呪文があって、空中に何かを映し出すのはおかしくないんだが、結構レベルの高い呪文なので流石に見たことがある人は少ない。
だから、モニターを他人に見せる時には注意した方がいい気がする。
「実は、漫画なんかはこんな風に見る手段があるんです。」
無料のお試しページで漫画を見せる。
「《投影》の呪文?でも、漫画持ってないと反映できないよね?」
ちょっと話を合わせてくれてるのかな?
日本語の会話をやめて、普段しゃべっている言葉に戻していた。
「そうですね。そこで、この道具を使えば漫画の情報をこれに詰め込めるんですよ。」
一応値段は見せずに写真だけを見せておく。
商売のタネだしね。
ただ、それがどんな道具なのか、実物がないのでちゃんと伝わってない様子だ。
「ええと、それを使えば本がなくても《投影》で見れるってこと?」
何とか理解しようとしてくれているみたいだけどちょっと違う。
「えぇっと、この板に漫画が映ります。」
レイナの眉が寄る。
説明するのがめちゃくちゃ面倒くさい。
「えぇっと、1枚目が映し出された後、板の上に指を置いて横にずらすと次のページが映ります。」
再度、漫画のページを移して、モニターの上に指を置いて、横にずらす動きをして、ページ変更させた。
本来は必要のない動作だけど、連動させて指を動かすことで移動したように見せてるだけなんだが。
「つまり現物の本はいらないってこと?」
まあ、話の要点はそこだ。
レイナは何とか理解してくれたみたいだ。
「もちろん、本の情報は別途お支払いいただきますが、分厚い本を持たなくてもいいですし、これで100冊近い本を管理できます。」
それがどんなことなのか、いまいち伝わってないみたいだけど、すごいことだとは思っている様子だ。
「ちなみに、その板ってどのくらいするの?」
値段が気になるということは、買う気になってくれたってことだな。
「これ自体は500ダールほどですね。本の方は若干お安くなるので、あとで見積もりを出しましょう。」
結構割増しで言ってるけど、手回し充電器もつけるからぼったくりじゃないよな。
「なんだ、たった500ダールか。どんなものか分からないけど、買う買う。」
金持ちのお嬢様は言うことが違う。金貨5枚は決して安くないぞ。
「ちなみに、割増で銀貨1枚追加していただければ、明日お届けできますが?」
普段は、割増がもったいないのでお急ぎ便は使ってこなかったが、タブレットだと明日午前中のお届けで500円で済む。
面倒くさいので倍の値段を吹っ掛けてみよう。
「本当?明日届くって言うなら払う払う。」
ちょろいな。
もっといろいろ売りつけたろうか。
一晩、ドレン村長のところに泊めてもらい、翌日届いたタブレットを早速届けた。
太陽電池も付属している手回し充電器も一緒に付けたので、太陽光に当てておけば勝手に充電してくれるわけだが、あいにく晴れの日が少ない。
手回しの充電の仕方も教えておく。
が、早速手回しに飽きたのか、レイナはジョシュに任せると宣言した。
やっぱり、ちょっと駄目な子なんじゃないかな。
タブレットの操作については、食いつきがよく、現物を見ればすぐに理解してくれた。
地頭が良いから、こっちが教えなくても自分から積極的に弄り回すタイプみたいで安心する。
ただ、問題はネット関連について根掘り葉掘り聞かれた。
サービスの付与をしてやればネットにつなげられるわけだけど、教えたら余計なことまで知られそうで怖い。
こっちの情報が日本に届くわけじゃないからいいけれど、俺がマージンを結構とってることが分かってしまうかもしれない。
知られたら、どんな反応されるか分からないからな。
お金は持ってるみたいだからそんなに大ごとにならない気もするが、現状では教えないことにした。
あるいは、魔術で何とかしてしまう可能性もあるよな。
その時は観念しよう。
もう少し話をしたい雰囲気を出されたが、あんまりカールを大家さんにまかせっきりも悪い。
今日中にカールを迎えに行って、次の予定を勧めないと。
忙しいということで、オタクなお嬢様に別れを告げたが、また来てねと懇願されてしまった。
その前に、教えた《水操作》の使い方で、体を洗ってほしい。
変わった使い方だねー、くらいで大して驚かれもしなかったけど、やり方は即座に覚えていたしやっぱり地頭はいいんだろうな。
純水にする方法も、汚れと真水に分離する方法も教えたそばから使いこなせていた。
それどころか、水を霧状にして部屋に充満させた後に凝縮することで汚れを集める芸当までこなしてしまった。
「これは、簡単に毒ガス撒けるかもね。」
とか何とか言ってたが、物騒なお嬢様だ。
まあ、母親が学術院の幹部なのだから、変なことをしだしたら止めてくれるだろう。
それに俺が考え出したことじゃないし。
何とか、雪で埋もれた街道を通ってモーダルに戻る。
この時期だと、街道はほぼ人がいない。
なので、街道を警備する人間も活動頻度が下がり、狼や魔物がうろちょろしだす。
それでも、別の場所に行き来をしなければならない事情もあるものだ。
そういうときのために犬ぞりが用いられる。
というか、犬というかなんというか。
雪狼という狼がそりをひいている。
基本的に気性が荒いらしく、子供のころから飼いならしておかないと人を襲うということで、あまり好まれていないけど、寒さに対する耐性が非常に高い。
というか、吹雪を吐き出す魔物だ。
いや、普通の動物と魔物の違いなんか知らないけれども、明らかに俺のいた世界にはいない動物だろう。
体格も普通の狼の倍くらいはある。
基本的には、暑さに弱いので春くらいには山の方へ連れて行って飼うのだそうだけど、夏にはそこでもばててしまって使い物にならない。
だから、冬の稼ぎ時にはやたらと走り回っている。
下手な犬より強いので、多少の魔物程度だったら倒してくれるという頼もしさがある。
とはいえ、本能なのか、飼い主以外の人物を見ると襲い掛かることがたまにあるらしい。
ただ、それが本当にたまになのかは疑問だ。
すれ違うたび、追い抜かれるたびに襲われる。
流石に噛みつかれる前に飼い主が止めてくれているが、結構危ない動物だ。
なのでモーダルにたどり着いたときは心底ほっとした。
まあ、工房とのやり取りをお願いしていたりもするので、あんまり雪狼を悪く言いたくはないが、本当気軽に飛びつくのはやめてほしい。
カールを迎えに行き、滞在費と一緒にアルノー村でもらったみやげのカブを渡し、家につけばすっかり夜だ。
移動だけで1日潰れるのは勘弁してほしい。
本当、冬の間の移動は大変だ。
やらないといけないこと、伝えないといけないこと、いろいろあっていくら時間があっても足らない。
とりあえず、今日は疲れた。
忙しいから寝る間が惜しいとか、そういうのは俺にはわからない。
寸暇を惜しんで眠りたい。
もうそんなときは、冷食しかないよな。
電子レンジはないけど、電子レンジの真似事はできる。
久しぶりに味噌だの醤油だのの話をされたので、ご飯が食べたい。
冷凍チャーハンを温め、ついでにシュウマイもつけた。
たまにはいいだろう。
あー、おいしい。
しかし、カールに好き嫌いが少なくて本当に助かった。
スプーンで器用にシュウマイをすくって食ってるが、味に文句はないようでおいしそうに食っている。
本当は、チャーハンは解凍じゃなくてフライパンで炒めればもっとうまいんだが、ちょっとべしょっとしててもおいしく食べてくれるみたいだ。
台所がないんだから、炒めてくれと言っても無理な相談だしな。
でも本当は、あんまりよろしくはない。
これを俺の能力なしで用意しようと思ったらどれだけの苦労がかかることか。
醤油や味噌を実家で作ってると言っていたが、やはり侯爵家くらいの力がないとそんな真似できないだろうな。
米とかどうしてるんだろう?
輸入してるんだろうか?さすがにこの気候で生育はしてないだろうし。
まだ、夏を経験したことはないけど、夏が暑ければあるいは生育可能なんだろうか?
考えてもしょうがないことを考えるのは悪い癖だなぁ。
本当疲れてるんだろう。
「カール、うまいか?」
なんか普段はしないんだが、カールの頭をなでてしまう。
「うん。」
嬉しそうにカールは頷く。
なんだかなぁ。罪滅ぼしだとか思ってるのかな。
カールに今更自由にならないかとか言うわけにもいかないし、他にカールが生き延びる道がなかったのも承知している。
けど、カールを奴隷にしたことが正しかったと胸を張って言えない。
せいぜい嫌な思いをさせないように頑張ろう。
後で刺されるのは勘弁してほしい。
くだらないことを考えるのは眠いからだ、寝よう。
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