すき、きらい②
「……っ…!」
ラムが大口を開けたと思うと、先程とは比べ物にならないほどの冷気がその場を支配した。地に咲く小花や、生い茂る草木はラムが繰り出した咆哮によって厚い氷に隠された。
「……ぅ…」
ミスラは寒さで思わず自分を抱きしめた。
足に違和感を感じて下を見ると、靴が床に凍り付いてしまっている。
そこから徐々にミスラの体を凍てつく冷気が侵していった。骨まで凍るような感覚に、ミスラは床に膝をついた。
「…っ…さむい……」
絞り出した声は白い息とともに消えていく。
あまりの寒さで意識が飛びそうになるが、遠くでエルの声がして、はっと顔をあげた。
「だめ…ちゃんと…見てなくちゃ……!」
見上げた視線の先では、ラムの背からエルが跳ぼうと構えていた。
影花はホアごと分厚い氷に覆われていて、今は大きな氷像のようになっていた。
再びあの凍ったバケモノをその鞭で砕こうとするエルの考えは、ミスラにも理解ができた。それがきっと彼女たちの戦い方なのだ。何の力もない、戦うこともその術も知らない護られるだけの自分に、口出しするような権利も資格もないが、でも……どうしても、わからない。
「エルさん!何で……何でわたしの為にそんなに傷ついてまで戦うんですか!?あなたはわたしのことが嫌いなんでしょ?なのに……どうして……!」
もしも今の彼女の戦う意味が、セレネの意思と繋がるものだとしたら……。
「嫌です!わたしはエルさんが……好きになった人が目の前で血を流すなんてこと……もう嫌なんですっ!!ねぇっ、エルさん!!」
ミスラの叫びが聞こえていないのか、それとも聞こえていながら無視をしているのか。
エルは凍った影花を睨みながら空高く飛び上がった。
「エルさん!!」




