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———……


「精霊獣ラムの契約者、エルの名の元に、汝の力を呼び醒ます」


青白い魔法陣がラムの足下に展開した。あたりの空気が冷え始め、氷の粒が舞い上がる。


解放(ベフライエン)!!」


その言葉を合図に、徐々に氷の獅子が姿を現した。


『アオォォォォォォン!』


ラムの雄叫びと同時に弾け飛んだ氷粒は、陽光を反射してダイヤモンドダストのように輝いた。


「まぁ、綺麗ね!こんな空間で貴方達と手合わせができるなんて、とっても嬉しいわ!」


ホアは未だ罪の意識の欠片も見えない微笑みを浮かべる。


「手合わせなどではありませんわよ。これからするのは正当な、殺し合いですわ」


そう零してエルは、唸るラムの背に乗った。



□ ■ □



セレネが中庭へと消えたあと部屋に残されたフェルドやルチアは、一層激しくなる影花との戦闘に苦しんでいた。



「這い回れ、アラクネ」


ルチアの指先から伸びる細糸が部屋中に生い茂った影花に絡まる。


「死ね」


冷たい声とルチアが腕を引いた瞬間、黒い蔦状の影花は細かく切り刻まれ、壁や扉に這っていたものはボタボタと床に落ちていった。


それを気持ち悪そうに避けながら、フェルドが部屋の唯一の出入口に銃口を向ける。両手に持った二丁のリボルバーの照準を定めると、指に力を込めその引き金を引いた。


ダンダンッ——


乾いた銃声がふたつほど鳴った。

フェルドが撃った弾丸は出入口を塞ぐ影花にめり込み蒼色の炎で焼き始める。だがすぐに苗床から伸びる別の茎に切り落とされ、再びそこに壁を作った。


「やっぱり。これじゃあ埒が明かないよ。そっちはどう?」


フェルドがため息混じりに振り返ると、部屋の中心にいたルチアは扉を見上げていた。


「同じだ。切っても切っても苗床から湧いてきやがる」


「だよねぇ、どうしたものかねぇ…」


いまいち集中力が足りない雰囲気のフェルドに、ルチアは眉間にしわを寄せた。


「おい。こんなことしなくても、アレを動けないようにしちまえば一気に解決じゃねぇのかよ」


そう言いルチアが指した指の先には、項垂れ黒い影をまとうかつての王があった。


「それは……そうなんだけど…」


言い淀むフェルドの視線の先で、ハンプティとダンプティが部屋の隅で震えている。


「……お前さ…」


「まあ!今のところコレは扉が開かれるのを阻止しているだけっぽいしさ。もう少し様子を……」


『ギュルルルルルルル』


フェルドの言葉を影花の鳴き声が遮る。


「!?」


見ると先程までは無かった鋭い針のような棘が、影花の茎の至る所に出現しはじめた。


「待って……まさか…」


棘をまとい蔦から茨へと変化していく影花に、フェルドが頬をひくつかせた時。


『ギュルルルルルルルッ!!』


影花はその無数の棘をフェルドとルチア目掛けて一斉に発射させた。


「っ!」


弾丸のように降り注ぐ影花の棘が、ふたりの足や腕をかすめていく。


フェルドは棘から逃げながらリボルバーに弾を装填し乱雑に撃ち続けた。撃った弾は空気に触れると一気に発火し、緑にも見える蒼い火の粉を撒き散らしながら弾道上の影花の棘を燃やしていった。だがそれでも影花の勢いも茨の数も減らすことはできず、敵は間をおかずに攻撃してくる。


「くそっ。どうすればいいんだこんなの!」


思わず吐き捨てるフェルドの後方では、飛んでくる棘をルチアの張り巡らせた糸が切り裂いていた。彼の足下にはきれいに真っ二つになった黒い棘がたくさん落ちては消えていった。


「チッ、めんどくせえ」


指先からさらに糸を出そうとルチアが動いた時。


「っ!」


糸と糸の間をくぐり抜けた棘の一つが、彼の腕に深く刺さった。


「ルチア!」

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