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疑問

エルの話を聞いて、心の中に小さな覚悟を決め始めたミスラ。

そこにホアが戻ってくる

覚悟は、もう決まった。



———……

しばらくして、ホアが焼き上げたクッキーを運んできた。


「お待たせいたしました。あら?ミスラさん、どうかしましたか?」


ぐす、と鼻をすするミスラを、ホアが気遣う。


「あ…いやあのこれは…」

「なんでもありませんわ」

「そうなの?でも泣いてるように見えるわ」

「ほ、ほんとになんでもないんですっ。ちょっと目に大きめのゴミが入っちゃって」

「……そう?何かあったら言ってくださいね」


ホアはそう言ってティーポットのなかの茶葉を新しいものに取り替えた。

何かあったら……。


「………」


では、気になっていたことを、聞いても良いということだろうか。


「……あの、じゃあひとつだけ、聞いてもいいですか?」


不躾なことだとは承知の上だ。

だが、ミスラには酷く気がかりなことがあった。


「ホアさ…女王様のパートナー、ルシアーゼの王様は、どこにいるんですか?」



ミスラの言葉は、穏やかになり始めた場の空気を一瞬にして凍りつかせた。


「……え?」


聞き返したホアの柔らかい笑顔も、今はぎこちなく見えた。エルはミスラの隣で大きな瞳をさらに見開いた。


「すみません。すっごく失礼なことを言っているのはわかっているんですけど、どうしても気になって」

「ちょ、ちょっと!貴女何を考えているんですの!?」


エルは小声でミスラを責めた。


「ハンプティくんたちを見ていてふと思ったんです。彼らは片時も離れずに居るのに、ホアさんの隣には誰もいないって」

「ねぇ!」

「エルさんもほんとは気付いているんですよね」

「は……何を……」

「エルさんはわたしと話をするために、わたしの護衛を引き受けたと言いましたけど、本当の目的は別にあるんじゃないんですか?」

「は、はぁ!?そんなこと……」

「なら、お姉ちゃんがわたしの正体について話す覚悟を決めたことを、エルさんは知っていながらわたしに太陽の力があることをお姉ちゃんよりも前に話したのはどうしてですか?負担を減らすため?おかしいです。なによりもお姉ちゃんを想っているあなたが、どうしてお姉ちゃんの覚悟を一部でも無視するようなことをするんですか?」

「っ!それは……」


その先をエルは答えられずに口を閉ざした。

「それは、お姉ちゃんが気づけなかったからですよね。ホアさんの中に潜む暗く深い影に」

「!!……どう、して…」


どうしてそんなことまでがわかりますの!?


エルは目の前の少女が紡ぐその言葉ひとつひとつに驚愕せざるを得なかった。

影花という存在に出会ってからまだ数日しか経っていないのにどうしてそこまで、と。


まるで全てを見通しているような、知っているような口振り。少し前までは目の前の状況について行くのが精一杯で何も知らないはずの彼女が今は目の前で、絡まった真実の糸を着実に解いていくこの現状が、全く理解できない。


中庭に顔を出した太陽がジリジリと3人の肌を焼いていく。

ミスラの瞳は、その光をもってより一層強い輝きを放って見えた。


「そしてわたしに太陽の力があることを、お姉ちゃんよりも先に言ったのは、わたしにわたし自身の力を自覚させる必要があったから」

「…………」

「わたしが影花に狙われていることをその理由からわたし自身に理解させる必要があった。何故なら………」

「…っ、何故なら、これからの戦闘の足でまといになるから、ですわ」


エルは額に汗をかき、手には拳を握ってやっとそう声を出した。


「貴女が、訳も分からないまま身の程も弁えず影花に飛び込んでいったら、私の能力では庇いきれる保証がありませんの。でも、だからと言って、貴女を一人にしておくにはこの城は、いいえ。この国自体が危険すぎますわ。だって……」


エルはホアと視線を合わせた。


「だってもう、あなたは救えないところまで影花を育ててしまったんですもの……!!」



こんばんは、蒼依です。


エルが、感じ取ったミスラの違和感は何なのかは次話以降に!


では、今回もお読みいただきありがとうございます!次話もよろしくおねがいします!

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