ss アリス side 02 ss
テスト期間中の謎のテンションで投稿
連投開始までもう少しあります!
具体的な日にちは決まってないのでブクマしてくれると嬉しいです!
「もーいーかーい」
「まーだだよー」
「もーいーかーい」
「もーいーよー」
アリスはタッタッと階段を降りる。大好きなお兄ちゃんと家で隠れんぼをしているのだ。
「ルイスおにぃちゃ〜ん、どこ〜?」
台所ではアリスのお母さんが晩ご飯の用意をしていた。
「ママ〜、おにぃちゃんしらない?」
「ふふっ、知らないわ」
「うぅ…どこだろう…」
アリスは屋敷を探しまわった。屋根裏の物置も、父が使っていた書斎も、気味の悪い地下室もくまなく探しまわった。だけど彼女の兄は見つからなかった。まるでもうそこにはアリスしかいないかのように、屋敷が静まり返った。
そして日も落ちアリスのお腹が空いた頃、玄関の扉がドカンと勢いよく開かれる。
「ここが噂の幽霊屋敷か」
「薄気味悪いけど今日はここに泊まるしかないな」
大きな荷物を背負った冒険者がズカズカとアリスの家に土足で入り込んでくる。アリスはそれを隠れて見ていた。彼らは危ないと彼女の子供の本能が告げていた。
「おかぁさん!おにぃちゃん!」
アリスは二人を探した。でも兄は疎か母親ですら見つけることはできなかった。ガツガツと遠慮のない足音が屋敷に響くのをアリスは一人聞いていた。
「おかぁさん!おにぃちゃん!おかぁさん!おにぃちゃん!おかぁさん!」
アリスは必死に探した。けど二人の姿は影法師に連れ去られたかのように忽然と消えていた。アリスが探しまわるにつれて、屋敷、ひいては辺りの空間全体がおぼろげにその存在を隠していく。もやもやとした世界にアリスは取り残されてしまったのだ。ただひとり。たったひとり。
∽∽∽ ∽∽∽ ∽∽∽
「おにぃちゃん…」
うなされているアリスの傍らでテディが心配そうに彼女を見つめていた。
3時間にも及んだ召喚術で疲れ果てたアリスは深い眠りに落ちていた。手伝ってくれたカンナも、召喚した男の子の服を取って来たかと思うと、すぐさま洞窟を出ていった。おそらく彼女も疲れが溜まっていたのだろう。召喚された当の本人は未だに目覚める気配はない。
テディはうなされるアリスを前に、その無機質なぬいぐるみの目で心配そうに見守ることしかできなかった。
「うぅん…」
アリスがようやく起きた。彼女の全身から大量の汗が溢れ出している。テディはそれを優しく拭き取るように彼女の顔に ぽんぽんと布の手を当てていた。
「ありがとね、テディ」
辛そうな顔で彼女が必死に作った笑みは、作り笑いと表現するにはあまりにも純粋な笑顔だった。
アリスは汗まみれの体と服を洗うために泉へと向かった。いつもなら乾いている服をテディに預けるのだが、今回は汗が酷かったから着たまま一緒に洗うことにした。
泉の中でアリスはさっき見た夢のことを考えていた。お母さんのこと、怖い男の人たちのこと、そして、自分がお兄ちゃんと呼んでいた人のことを。
「でも、アリスは ひとりっこ なのに…」
それでもアリスは夢の中で出てきた彼が完全な想像の産物だとは思えなかった。その顔を思い描く度に、あるはずのない彼との記憶が断片的に思い浮かぶ。考えても考えても、欠損した記憶の歯車は空回りを続けるだけだった。
泉の部屋にはアリスが見つけた小さな抜け道がある。アリスがしゃがんでやっと通れるほどの穴だ。そこを抜けた先には太陽の光がさんさんと降り注ぐ草原が洞窟の中にできていた。
その部屋の天井には大きな穴が開いていて、そこから差し込む微かな日光を頼りに植物たちは必死に根強くコロニーを形成していた。中央にそびえ立つ一本の大きな木を中心に、草や苔、色とりどりのキノコなどが共生している。
そこは自然が大好きなアリスのお気に入りの場所だった。
彼女は今、その中央の木に背を預けて濡れた服や体を自然乾燥させていた。居場所を転々とする木漏れ日が彼女に程よい温かさを届けている。
中央の木は登ればアリスでも簡単に森へと出られるほど大きかった。アリスがそうしなかったのは、単に洞窟がテディの好む環境であると同時に、カンナが毎日会いに来てくれるからだろう。森を冒険するよりも、洞窟でカンナと毎日お喋りする方が楽しく感じたのだ。
その空間はウサギなどの小動物のオアシスだった。餌も豊富にあり、近くに泉もある。その泉への道は狭いため、大型動物が攻めてきた時の避難ルートにもなった。そこは彼らにとってまさに申し分ない環境なのだ。今日も動物たちはその恵みを享受するために続々と彼らの秘密基地に集まってきた。
「もう!ひっぱっちゃダメ!」
そう楽しそうに言うアリスは色々な動物たちと戯れながら、濡れた体と服を乾かしていた。言う必要もないが、着たままだ。お高い一張羅を動物たちに噛まれながらも、アリスは服の汚れを気にする様子もなく、動物たちと綱引きを楽しんでいた。そして服も乾き、遊び疲れた彼女は、
「おともだちになれるかな」
と召喚した少年の事を考えながら柔らかな原っぱに寝転がりゆっくりと瞼を閉じるのだった。背中に着いた草を落とすためにテディが彼女の服を洗い直すのは…もう少し先のお話。
昼を少し過ぎたころだろうか。いつもこのぐらいの時間にご飯を持って来てくれるカンナを迎えに、アリスは洞窟の入り口へと向かった。そしてその道中、少年を召喚した部屋に差し掛かったアリスはその光景を見た、
「んん〜ん!んん〜ん!!」
「ケッ」
悶え苦しみながらバタバタと暴れる少年と、その頭を咥えているテディを。そして少年はそのまま息絶えたように バタッと動かなくなった。
「テディ!だめ〜〜〜!」
テディはアリスの声に反応して口を開いてくれたが、少年はテディの顔を見るや否や洞窟の入り口へと走り去っていった。
「まって、そっちは…」
彼女のボソッとした呟きが聞こえるはずもなく、数秒後には ゴチン!という痛そうな音が洞窟に響き渡った。
アリスはテディの後を追い洞窟の入り口まで歩いていった。そこには先ほどの少年が変な格好で立っていた。彼はぽかんとした表情で外を眺めている。
「わ、たしと、おともっ…」
彼女の小声が放心状態の彼に届くはずもなく、アリスはただ恥ずかしくて物陰に隠れてしまった。
代わってテディが動いた。アリスを無視するとはいい度胸じゃねぇか、と足で訴えているようだった。
少年の顔がゆっくりとこちらを向いた。アリスは彼のその驚きと羞恥に満ちた表情を見て、彼が怖い人ではないと確信した。彼は自分の味方なのだと彼女の子供の本能が告げていたのだ。
気付いた時にはもうアリスは物陰から一歩を踏み出していた。テディを持ち上げ、勇気をもらうように抱きしめながら言った。
「…お……おともだちに……なってくだふぁぃ!」
それは不器用な彼女の精一杯だった。こんな拙い言葉でも彼だけは優しく答えてくれると信じていた。信じていたのだが…
「………?」
流れたのは気まずい沈黙だった。その沈黙から逃げ出すようにアリスは走った。勝手に抱いた信用を裏切られた悲しさに、彼女はただ走った。走ることしかできない不器用な少女だった。
彼女は寝床で蹲っていた。
『いきなりはダメだったかなぁ?げんきがなかったのかなぁ?もっとにっこりしないと!』
アリスの脳内では大反省会が行われていた。対人経験が圧倒的に乏しい彼女は、単純に言葉が通じなかったなんて考えもしなかった。彼女にはまるで彼に拒絶されたかのように思えてしまったのだ。振り絞ったなけなしの勇気が霧散してしまった悲劇に堪えながらも会議の結論が下される。
「もういっかい!」
アリスは覚悟を決めた。諦めてはいけないと自分に言い聞かせた。そして洞窟の入り口、彼の元へと向かった。
しかし彼女がそこで見たものは死んだように眠る少年と勝ち誇ったような顔をしたテディの姿だった。褒めてもらえると思っていたテディはアリスの悲しそうな顔を見て、自分の行動を少し、ほんの少しだけ反省するのだった。
超どうでもいい日記
小説を書いてみて初めて気づきました。
プロの小説家の表現力マジパネェ!
書いてくうちに、「だった」とか「のだ」とかで終わる単調な文になっていく…
もっと本を読まねば!




