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鎖の世界 〜 SAD SIDE STORY 〜  作者: 小野咲 真軽
記憶をなくした異世界人の物語
3/17

    ss アリス side 001 ss

アリスの過去編です

後半に下ネタがでてきます

苦手な方はご注意ください

 アリスはとても人見知りな少女だ。

 幼い頃、彼女は家族と山奥でひっそりと暮らしていた。彼女は、たまに訪れる商人や母の友人を見るたびに、お兄ちゃんの後ろに隠れてしまうような、そんな恥ずかしがり屋さんだった。

 ただ、根暗かと言うと、そうではなく。むしろ、他の子供よりは好奇心旺盛で感受性豊かな少女だ。彼女は毎日のようにお兄ちゃんと森へ行き色々な動物たちと遊んでいた。

 しかし、残念なことに、彼女は人の友達には恵まれなかった。ただでさえ排他的な生活をしているのに、無口となれば、当然の結果なのかもしれない。


 それでも彼女は友達が欲しかった。

 親に欲しいものを聞かれる度に「お友達」と答えてしまう、ちょっと可哀想な子だった。少女の母は召喚術を彼女に教えてあげる事にした。動物に好まれる彼女の体質を活かして、遊び仲間を増やして欲しかったからだ。

 少女は術を日々練習し、才能に恵まれていたこともあり、たった数年で召喚術のいろはを習得してしまった。



「ねぇねぇ、これで私にも “お友達” 作れるかな?」


 彼女のいう “お友達” は “人間の友達” という意味だと知っていた母は、苦笑いを浮かべて優しく彼女を抱きしめることしかできなかった。成長しない我が娘と迫り来る別れの時に涙を浮かべながら。



 これは天才召喚士、神居(かむい) アリス、が “お友達” を作る、そんな彼女のSHORT STORYである



 ∽∽∽ ∽∽∽ ∽∽∽


 時は多少前後するが、これはアリスが家を出て、森で一人暮らしを初めてからのお話。


 ∽∽∽ ∽∽∽ ∽∽∽


 森の中をぬいぐるみを背負った幼女が歩いている。彼女はどこへ向かう訳でもなく、ただ毎日森の動物たちと遊んで暮らしていた。

 森はアリスを歓迎していた。彼女が腹をすかせれば、木の実を落とし。彼女が眠たくなれば、屋根のある場所へと誘導した。



 普通の森は人を嫌う、なぜなら彼らは森の資源を貪る害虫にすぎないからだ。だが、この山奥の森は違った。

 ここには昔、エルフの集落があった。エルフは森の恵みを享受し、代わりに森に魔力を与えた。魔力は森を育て、エルフが貰っていく僅かな資源など、容易く賄(まかな)えるほど大きくなった。こうやってエルフは森と共生しながら山奥でひっそりと暮らしていた。

 そして、周りの険しい森が、害虫から守るフィルターのように働き、この森には森にとって無害な生き物しか移り住んでこないようにできていた。

 こうした条件に恵まれたこの森の木々は、そこに住む動物と共存できるものが生き残る。そうしてその地帯は小動物たちの楽園へと化していった。もちろん全く敵が出ないというわけではないが、そうした比較的安全な地帯が広大な森のあちこちに存在していた。



 そんな難しいことは知らないアリスだったが、母から教えてもらったように、森に魔力を送っていた。


「 いつも、おいしいりんご、ありがとね!」


 爽やかな風が木々の隙間を縫ってアリスの体を優しく包み込んだ。赤い実を持った少女は今日も気ままに冒険をする。



 ある日アリスが森を散策していたら、一つの小屋を見つけた。雑木林の中にひっそりと建っている小屋は絵になるような光景に思えるが、ほとんど人工物がないこの森では、それは異様ものにしか見えなかった。


『だれか、いるかな?もしかしたら、ありすとともだちになってくれるかも!でも、こわいひとだったら、どうしよう…』


 そんなことを考えながら扉の前でうろうろしていると、彼女の背後から物音がした。彼女はとっさに隠れようとした、そして何も考えず開いていた扉のなかへ入り、中から鍵を閉めてしまった。


『どうしょう!どうしよう!たぶん、このおうちのひとだよね。ありす、かってにはいっちゃった…』


 アリスが思い悩みながら扉の前で蹲(うずくま)っていると、程なくして鍵を閉めたはずの扉が勢いよく開け放たれ…


 バチコーン!

 無慈悲な音が小屋の中に響いた。



「 うぅ、、、いたいょぉ、、」

「 だっ、大丈夫? 」


 開いた扉から現れたのは可憐な少女だった。

 整った顔立ちに穏やかな表情、流れるような金髪、官能的な体型。そして何よりも特徴的なのはそのほんのりと緑色を帯ながらも、澄み渡るようなその瞳だった。

 その翠緑玉(エメラルド)のような目は、見た目よりも幾重にか年老いて見えた。それもそのはず、彼女はその先の尖った耳からもわかる通り、エルフだったのだから。



「 わっ! タンコブができちゃってる! いま冷やすもの作るね」


 アリスの、幼女特有の保護欲を掻き立てる丸い顔に促されたのか、彼女はすでにオカンモードになっていた。彼女は布袋を持ってくると、魔法で氷を生み出した。



「 うわぁ〜!」


 氷魔法なんて見たこともないアリスは、その幻想的な光景に魅入っていた。


「ふふっ、綺麗でしょ。こう見えてね、私、昔はすごい魔法使いだったんだよ」


 彼女はそう言いながら作った氷を布袋にいれると、アリスの柔らかな栗色の髪の毛を持ち上げ、それをアリスのたんこぶに押し当てた。


「君、すごく可愛いね。どこから来たの?」

 言う人が違えば即捕まりそうなセリフである。


「……アッ...チ」


 もごもごと喋るアリスの言葉を彼女はちゃんと理解していた。


「あっちって、山奥の方じゃない!あなた、森に住んでたの?」


 こくり


「うわぁ、そうなんだ。全然気づかなかったなぁ…。ねぇ、君の名前は?」

「 アリス 」

「アリスちゃんかぁ〜、私はカンナ!よろしくね!」


 カンナはそう言うと何気なく手を伸ばして来た。

 無論、握手をするためである。

 だけど、アリスにとってそれはそれ以上の意味があった。


『あくしゅ!おともだち!!』


 幼い頃読んだ本の影響でアリスの中では握手は友達の証のようなものだったのだ。躊躇する理由もなくカンナの手を取ったアリスは、掌に伝わる暖かさに満足感を覚えると同時に…


 なにか、見られてはいけない大切なものを見られているような感覚がした。



「えっ…嘘…。君が…」


 カンナはその完璧な美貌が汚く見えてしまうほど驚いていた。ついさっきまで美しいほど透明な翠緑だった瞳が、ほんの僅かに濃く濁ったように見えた。

 そんなカンナの呟きが聞こえないほど、アリスは集中していた。彼女にとってこれは”お友達”を作る千載一遇のチャンスだ。森で反復練習していたセリフを使うときがきたのだ。


『はっきり、くっきり、えがおで!

 はっきり、くっきり、えがおで!

 はっきり、くっきり、えがお!!』


「お!…ぉっともだちに!なってくだふぁい!」


 はっきりでもくっきりでも、笑顔ですらなかったが、アリスは大声で叫んだ。考え事をしていたカンナも、びっくりして彼女を見つめる。


 それは人見知りのアリスが初めて踏み出した、大きな一歩だった。



 ∽∽∽ ∽∽∽ ∽∽∽



 そして彼女は今、クマのぬいぐるみと洞窟の中にいる。テディという名前を与えられたクマは、彼女が母親と一緒に最初に召喚に成功した召喚獣、兼友達だった。

 テディは気ままなぬいぐるみで、基本的には普通のぬいぐるみのように振舞うが、アリスが困っている時にはちゃんと助けてあげる優しいクマさんだった。精霊である彼は魔力がないと動けなかったのだが、この洞窟には魔力を貯める媒体の一つである水晶が多分にあったため、彼も洞窟内では自由に動くことができるのだ。


 アリスたちはカンナと出会ったあと、彼女に森が危険な状態であることを告げられ、安全な場所に避難させられていた。


 洞窟は思いの外深く、近くの滝から溢れた水が溜まっている場所があった。食べ物は毎日カンナが持ってきて、必要な日常品も支給してくれていた。そして、洞窟の出入り口には獣が入ってこないようにと、強い結界が張られている。


 アリスはその生活に満足していたのだ。それが「軟禁」と呼ばれていることだということを無垢なアリスは全く知らなかった。



「でね〜 テディ、ありすはがんばって “おともだち” になってっていったんだよ」

 アリスはテディの腕をぷらぷらさせながら言う


「でもね、ダメだった。けど、“おねぇちゃん” ならいいよって」


「ありす ひとりっこ(、、、、、)だったから、おねぇちゃんでもうれしいな!」

 テディは少しだけ訝しげな表情をした。


「それに、きょうはありすの “しょうかんじゅつ” をてつだってくれるの!」


 そう、今日アリスは念願の“お友達”を召喚しようとしていた。つまりは人間の召喚だ。本来、一定の知能を持った生物は双方の合意のもとでしか召喚は成立しないのだが、天才魔法使いと自負するカンナの助力によってそれを強引に行おうとしているのだ。アリスはもう一流の召喚士だが、今回の術は膨大な魔力を消費するため、魔力を他からもらう必要があった。洞窟の水晶内の魔力を使う方法もあったが、とある理由からそれは却下された。



「アリスちゃん、元気にしてた?」

 カンナが洞窟の中へと入ってきた。魔力タンクの登場である。


「カンナおねぇちゃん!」


 アリスはもうカンナに対してもごもごと喋ることはなくなっていた。もともと彼女は極度な人見知りなだけで対人恐怖症という訳ではない。心を許した相手とは何不自由なく会話できる子だった。


「う〜ん、アリスちゃんはいつ見ても可愛いね!ちゃんと体洗ってる?たまには流しあいっこでもしょっか!」

 相変わらず、即捕まりそうなセリフである。


「あさ あらったから だいじょうぶ!」

 カンナは一瞬寂しそうな顔をしたものの、すぐに話題を変えた


「それじゃあ、早速 “お友達” 召喚しちゃいましょうか!」

「おー!」


 二人と一匹は昨日のうちに書き終えていた魔法陣のところまで移動した。


「私がアリスちゃんに魔力を送るから十分溜まったら教えてね。」

「らじゃー!」


 アリスはどこで覚えたのか口を三角にして敬礼のポーズをとっていた。


 そして術は始まる。カンナの膨大な魔力をその魔法陣は遠慮なく無尽蔵に吸い続けていた。カンナほどではないがテディも魔力をアリスを介して魔方陣に送っていた。




「ねぇアリスちゃん、まだ〜?」

「まだー」


 召喚術は本来、長くても集団召喚で1時間、個人召喚なら長くても 30分のはずなのに、彼女たちの召喚はかれこれ3時間を超えている。

 そしてようやく魔法陣が発光し始めた。


「はぁ…はぁ…、さすがにお姉ちゃんも疲れちゃったよ」


 そう、本来の上限の6倍もの間 維持し続けたカンナの魔力と アリスの集中力は常軌を逸していた。ただ、アリスはそんな疲れなど物ともせず、青白く輝く魔法陣をまじまじと見つめていた。




「…ねぇ、あれナニ?」


 魔法陣の上に現れたのは昏睡している男の子だった。黒の短髪に比較的整った顔で、黄色人種特有の褐色の肌だ。いわゆる典型的な日本の男子高校生だ。彼女たちの召喚は成功したのだ。召喚されたのが人間だということは誰の目から見ても明らかだ。だからアリスの質問は それがなんの生き物かということではなく、もっと具体的な…


「いや〜〜!見ちゃダメよアリス!」


 衣服を共に召喚できなかったのか、そこにいたのは一糸まとわぬ男の子だった。そう、その男の子は服を着ていなかったのだ。つまり、アリスの指摘したあれとは、アレのことだった。


 その時、彼は動いた。アリスがピンチの時には必ず助けにくる彼、そうテディだ。彼はアリスがあんな汚らしいものを見ないようにと、大きく口を開け…




 カレのソレを口に含んだ。


「テディさん!ダメだから!それむしろダメだから!!」

「?」


 アリスが彼女の言った言葉を理解できるようになるのは、多分まだずっと先のことだろう。



 ーー これは健太が異世界で目覚める数時間前の出来事、彼の知らない サイドストーリー

超どうでもいい一言

登場人物を早く増やしたい!

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