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「フェム、薬草採取行くぞ。」
「おお、サンディ、わかった。」
フェムを山裾の薬草が密集している場所に案内する。家から歩いて20分ほど、いったん一ノ門をくぐって、違う門から出て、しばらく野原を歩くと到着する。ギルドで可愛いお姉さんに教えてもらった場所だ。
薬草は前世のヨモギに似ている。雑草も密集しているので、必死で見分け、二人で傷がつかないように丁寧に採取していく。腰が痛くなるが、若さで乗り切る。
「なぁ、サンディ、なんで討伐はしないんだ?」
「フェムは討伐したいのか?」
「スライムや角うさぎ、草原狼1匹なら1人でもいける。討伐の方が金になるだろ。」
「うーん。わたしはポーションを作りたいって思っているんだ。だからまずは薬草採取かな。」
「おまえ、ポーション作れるのか?!」
「いや、まだ作れない。今、師匠に教えてもらっているところ。」
「いいな。ポーション作れたら、結構稼げるだろ。」
「フェムは、ポーション作りしたいのか?」
「いつか独り立ちするにしても、ポーションがあれば自分の怪我を治せるし、パーティにも誘われやすくなるって聞くしな。」
「フェムは独り立ちしたいんだ。」
「今まで育ててくれた、姉ちゃんを楽にさせてあげたいんだ。」
少し恥ずかしいことを言ってしまったという赤い顔で早口になっている。フェムもいい子だ。
「そうか。じゃ、一緒にポーション作りしよう。後、一緒に教会巡りもしよう。」
「ポーション作りを教えてもらえるのは有難い。でも、何故、教会巡りするんだ?」
「ああ、フェムは知らないのか。真摯に祈ると加護がつくことがあるんだ。加護がついたら生き延びる術が増えるだろう。」
「か、加護がつくのか!あれは、よっぽどのことがない限りつかないと聞いているぞ!加護なんて英雄か勇者ぐらいだろう。」
「いや、まだわかんないよ。でも、前に読んだ本に載っていたんだ。真摯に祈ったら加護をいただけたっていうお話が。だから試しているんだよ。」
「わかった。俺は、当分はサンディと同じことをする。おまえのやっていることは全部面白そうだ。父ちゃんと母ちゃんがどうしようもなく馬鹿で、働いてもぜんぜん楽にならない宿屋で毎日うんざりしていたけど、おまえの話を聞いていると、未来がぱーっと開けた気がする。俺はついて行くよ!」
凄い良い笑顔でフェムが断言すると、少しなんだか恥ずかしい。
「そ、そうか、フェムさえ良ければいいぞ。ポーション作り教えてもらいたいなら、薬草100本採取だけどな。頑張ろうな。」
「100本!ああ、それか、トマス様から小さめのマジックバッグ持っていきなさいと貸してもらったのか、これか・・・。」
最近わたしがインベントリに入れて復活させてマジックバッグは仕入れ先が修繕費込みで返して欲しい場合と、処分して良いということで預かってくるものがあって、処分してくれのマジックバックを仕事の効率化を考えて皆に持たせているのだ。さすがやり手の家令。
「おじいちゃんは、本当に凄いからな。わたしはおじいちゃんがいたお陰で生きてこれたんだ。」
「おまえも良かったな。」
「ああ。今、幸せだよ。」
「ああ、俺も。」
二人で笑いながら、薬草を摘んでいく。今日も師匠のところへ行こう。師匠はそれぞれ50本ずつ薬草を出したら弟子入りも認めてくれた。フェムは宿屋で働いていたせいもあって、乾燥の使い方が上手くて、師匠から褒められていた。く、悔しい。
「おまえも筋は悪くないからな。精進しろ。」
そう師匠は笑いながらわたしが試して乾燥が中途半端になった薬草を綺麗に乾燥させていく。乾燥の魔法。どこかで訓練しよう。ドライフルーツでも作ろうか。
「ほら、余計なこと考えない。次行くぞ。」
師匠に小突かれ、乾燥させた薬草を瓶に入れていく。こういう何気ない過程もポーション作りの過程だと思うとひたすらテンションがあがる。魔法は異世界あるあるで魔力を体中に巡らすところから夜練習しているけど、イメージは出来ているけど、実行がまだまだだ。
先は長い。でも到達地点が楽しみすぎる。
「師匠、また明日!」
「おう、まだまだだけど、頑張れ。」
フェムと一緒にポーション作りの復習を口にしながら家に帰ると、大きいお兄さんが2人、家の前に立っていた。何者?
「トゥヴォ兄ちゃん、トゥレー兄ちゃん!どうしてここに?!」
「おう、フェムか。工房に届いたメッセージ見て、兄ちゃんと気になって来てみた。」
「玄関でなんだから家に入ってもらったら?」
フェムが2人のお兄さんを家に案内する。大きくてぴかぴかの新築っぽい家に恐る恐るという感じで入っていく二人。フェムは自分の家に招待するみたいに何故か自慢げだ。
奥からエットたちも出てきた。そしてみんなで食堂へ行く。
エットが皆にお茶を出してくれる。茶葉は家令がどこからか買ってきてくれたいいものだ。エットがより美味しいお茶が入れられるととても喜んでいた。
全員揃ったところで、エットが経緯を説明する。
「「あの、馬鹿親!!」」
エットが脂ぎったぶよぶよの中年男の後妻に売られそうになった話を聞いた二人はめちゃくちゃ怒った。当然だろう。実の母親がほとんど子育てしなかったせいもあって、母親がわりの姉にみんな懐いている。その姉を借金の返済のために売ろうとしたなんて、許せるわけじゃない。
両親は子育てをすべて長女に投げて自分たちは宿屋経営だけをしていたが、それもいい加減だった。それで借金も増えたのだ。子どもが大きくなってきたのを見計らって、もう姉が子育てしなくてもよくなったタイミングで売り払い計画したのが余計怒りのポイントだ。本当親は選べない。
「宿屋の借金はどうなった?」
「サンディ様が全部返してくれたの。宿屋経営はあんまりボロすぎて営業停止命令が出ているの。」
「そうか、サンディ様、姉を助けてくれてありがとうございます。」
「こうして、弟や妹まで一緒に雇ってくださって、ありがとうございます。」
真摯に頭を下げる二人。この子たちもいい子だよねー。本当あんないい加減な親の子とは思えない。ん?二人は何か言いたげだ。
「あー。二人の部屋はこの家に作ったから、いつでも泊まりにきてくれてもいいよ。何ならうちで働いてくれてもいいよー。畑作りぜんぜん進んでいないし。」
そう、冗談交じりで言ってみると、
「「お願いします。ここで働かせて下さい。」」
二人とも頭を下げる。どうやら、両親が罪人になったことで、弟子入り先で居心地が非常に非常に悪いらしい。そもそも、こっちの二人も半ば親に売られるように弟子入りさせられただけで、好きな仕事ではなかったようだ。下働きだけで肝心の仕事もあまり教えてもらっていないこともあって、親の管理から外れた今、辞めようと決めたらしい。
二人の部屋を見せると、弟子入り先では3畳ぐらいの部屋に3人の弟子がごろ寝していたらしくて、10畳の広さに二人でベッドまであるなんてと喜んでいた。
「あ、トゥヴォはガタイがいいね。このベッド少し小さいかも、でも一人だけベッド代えるのもなんだよね。よし。二人とも大きなベッドにしよう。部屋の面積結構取るけど、睡眠は大事だよね。」
そう言って、使用人用のベッドではなく護衛者用の少し大き目のベッドに変更してみた。
それを見たフューラがいいなって言っていたけど、女子部屋全部このベッドの大きさにしたらソファーセット置けなくなるよと言うと諦めてくれた。それに護衛者用は大きいだけで可愛くもないね。
お兄さん方二人には、当分畑仕事してもらおうかなと思っている。異世界でスローライフ夢だったんだよねー。広い畑に野菜がいっぱい。みんなで収穫って夢がある。実際本当に実務ですれば大変なのはわかっているんだけど、あくまでも夢だ。できるなら味わってみたい。
長男トゥヴォはガタイが良くて少し寡黙で真面目で男前だ。鍛冶工房に弟子入りしていたので刃物の良し悪しはわかるようにはなっているかと、鍬やら鋤を追加で買いに行ってもらう。
次男トゥレーはシュッとした優し気な感じのイケメン。フューラがドレスを手に取っているのを羨ましく見ていて、もし良ければアクセサリーを作りたいという。木工工房に弟子入りしていたので、小さな細工物は得意だという。どことなくオトメン。
なんかエットの兄弟ってみな美男美女というのか顔が整っているんだよね。だから、売ってお金にしようなんて思う馬鹿親がいたんだろうけど。
基本この二人で畑を作ってもらう予定。最初はフェムとセクスにやってもらおうと思ったけど、フェムはわたしについてくるし、セクスは畑仕事をするには小さすぎた。上二人の兄の申し出は有難かった。トゥレーは小物も作りたいそうで、時間が空いたら作ってもいいよとは言っている。
弟や妹たちは、大きな兄ちゃんたちが引っ越してきてテンションが上がっている。とても嬉しそうだ。あんな馬鹿親の下でよくこんないい子たちが育ったね。エットの教育のお陰なんだろうか。兄ちゃん、兄ちゃんと二人の間をくるくる回る。シューは本当くるくる回るのが好きなんだな。三半規管の弱いわたしには、よくわからない。見ているだけで酔いそうだ。
そういえば、エットの仕事の一つの洗濯は、今はわたしが担当している。いや、もっと早く気づけば良かった。わたしのインベントリ。故障や欠けを直す。古びたぼろぼろの家も新築みたいになった。それでいけば、汚れた洗濯物も、そう、収納して出したら新品みたいになっている!洗濯いらずだった!!
そういうことで、洗濯時間が大幅に短縮された。籠に入れた洗濯物をインベントリに収納して、籠ごと出したら、毎回新品同様に復元される。後はエットたちがそれぞれの洗濯物をそれぞれに戻してくれることになった。有難い。
このせいで、エットたちが着ていた服も一気に新品同様になって、みんな喜んでいる。もっといい服買うか?って聞いたけど、古着じゃなくなったんだもの。これで十分と断られた。まぁいいか。わたしの服も相変わらず下町の男の子用だ。髪もまだの短いしね。これでちょうどいいね、みんなと釣り合っているかも。
朝食が終って、フェムと一緒に薬草採取に行く。今日は上位薬草を採取したいところ。
フェムと普通の薬草を100本採取して、余った時間を鑑定スキル使って上位薬草を探す。フェムにも手伝ってくれて何本か根っこから採取できた。これをトゥヴォとトゥレーに任せて畑に植えてもらおう。
自分が採取した薬草は全部インベントリにしまう。ギルドでフェムと一緒に薬草を納品してから、最後、師匠のところへ。
薬草については、ギルドを通さず師匠に渡してもいいんだけど、師匠からギルドの納品ポイントは貯めておいた方がいいこと。ギルドで時間停止のマジックバッグに入れてくれているので、品質はそう劣化しないことを聞いて今までどおり納品している。
「師匠、こんにちは!!」
「おお、また来たのか。」
「この間はフェムの乾燥の能力が上手くて、負けたけど、今日はわたしの勝ちだ!」
「何いっているんだ。今日も俺が勝つに決まっているだろ。」
「はいはい、まだまだ錬金術師のひよこもひよこの二人が何かな。どっちもお尻に殻がついたまま。まだおんなじぐらいだよ。さぁ。今日は蒸留水作ろうか。」
「「はい!師匠!!」」
二人で競って学ぶせいか、必死になって集中できているような気がする。蒸留水は何度か失敗したけれど、最後には二人とも作ることができた!水を浄化するのがちょっと難しかったけど、微生物すべて消えろと念じたら出来た!家に帰ったら家令に教えてあげよう。
ルンルン気分で家に帰る。途中エットたちにお土産のお菓子を買う。フェムはそこをじっと我慢している。早く借金を返したいから、ムダ金は使わないんだろう。大丈夫だよ。皆の分をちゃんと買ったから。家に帰ったらおやつ休憩しよう。
家に帰ったら、ちび二人が、畑で奇声を上げながら畑に水をあげている。何が楽しいんだろう。小さい子って、何がきっかけでテンションあがるのかわからない。ただ、ちびが手伝っているのを、上二人の兄が楽しそうに見ながら畑仕事している。良きかな。まだ小さな小さな畑だけど、そのうち広げていきたいところ。無理はしちゃダメだからね。
二人に、上級薬草と普通の薬草を渡して、この辺に薬草園を作りたいと頼む。
農業の仕事は全員素人だ。失敗してもいいよとは言っている。
トゥヴォが、隣の農家の家に、農業を教えてもらいに行ってもいいかと聞いてくる。
もちろん、いいよ!手土産に離れにあった石鹸をいくつか渡すから持っていってね。あと、エットとクッキーでも焼こうか。
公爵家の石鹸だから良い物だろう。クッキーも合わせれば手土産にはぴったり?かな。
隣の農家にはトゥレーもセクスも一緒に行くという。自発的に学びたいという気持ちはいいものである。今後お畑が楽しみだね。
家に戻って、エットの美味しいご飯を食べる。時々エットにハンバーグとかポテトサラ、フレンチトーストとか作って欲しいとお願いして、レシピを渡している。
エットも新しい料理を作るのは面白いらしくて、エットの工夫も追加されて新作料理として登場する。
美味しくてみんな喜んでいる。今日は煮込みハンバーグとポテサラだ。
パンは少し固いけど、エットが頑張って焼いている。なんでもできるんだな。煮込みハンバーグと一緒に食べると固いパンも美味しい。天然酵母のパンは作り方を知らない。家の外にりんごっぽい木の実があったけど、あれで作れるのか?エットにヒントだけ話しておこうかな。エットは研究好きだからいけるかもしれない。
「やっぱり姉ちゃんのご飯は美味しい!」
「うん、お姉ちゃんのご飯はお母さんよりも美味しい。このお肉の料理とっても美味しい。」
「おねえちゃん、また作ってね。」
「この料理はサンディ様に教えてもらったのよ。わたしも新しい料理は楽しいわ。」
「サンディ様は本当物知りだね。」
「たくさん、本を読んでいるからね。」
「本か、本はお高いから読んだことないんだ。」
ぼそぼそと少し恥ずかし気にフェムが言う。周りの子たちも同じ反応だ。
「そうか、文字は読める?」
「宿屋やっていたからな。読み書き計算は最低限わかる。」
「そうか、じゃ、わたしの部屋に本があるし、そうだな。みんなが集まる場所・・・。応接室を潰して小さな図書室にしようか。インベントリの中に入れたままで出していない本がまだあるからね。」
「え、いいのか?本、高いんだろう?」
「本は読んでなんぼだよ。持っているだけじゃ勿体ないよ。ご飯食べたら出しておくから、みんな読んで良いよ。あー。子ども用の本はないけど、魔物図鑑とか植物図鑑とかあったかな。昔のものだけど、溺愛系の騎士とお姫様の恋愛物語もあったよ。」
恋愛系があるときいて、エットとフューラとトゥレーがときめいている。まぁいいか。フェムが魔物図鑑読みたいと気合が入っているし、畑仕事に真摯に取り組んでいるトゥヴォは植物図鑑を見たいらしい。セクスとシューが読めるような子ども向けの本はおいおい作ってみようか。前世絵を描いたり物語を書いたりしたものだけど、イメージ図だけ書いてプロの絵かきさんでも探してみよう。これもまた家令相談案件だね。
食事の後に、応接室のソファーとローテーブルをインベントリに収納して、離れから持ち出した本棚を本入りで出す。3方の壁に置いてみた。部屋の真ん中にも小さめの本棚を背中合わせに置く。これぐらいか。まだまだ本は残っているが、ここの本を読み終わったら出しなおそう。いったんインベントリに収納した本は、以前はぼろぼろだったのに、今はすべて新品同様で手も汚れないだろう。エットたちがそわそわ近くに寄ってきたので、どれでも読んでいいよと声掛けしておいた。わっとみんなが本棚の本を探し出した。読書に意欲を持つのはいいねー。
小さな図書室を作った後に、家令から、ドレスについて話があった。本を見ていたフューラがドレスと聞いて一緒に聞きだした。トゥレーも聴き耳を立てているようだ。面白い。
「サンディ様、公爵家のドレスですが、大人用は少し流行もあり、人気のお店もあって新規で売るのは難しいので、子ども服ならどうかと思っております。といっても公爵家のお子様のドレスですので、少々お値段もお高い華美なものが多くございますので、ドレスに付いている飾りの宝石やレース、リボンを減らして、裕福な庶民か下級の貴族をターゲットにした上等な生地で品のある感じで如何でしょうか。」
「おじいちゃん、いいね。さすがおじいちゃん。子ども用のドレスも100着ぐらいあるし、外したレースや宝石も売れそうだしね。あ、小さな宝石でトゥレーがアクセサリー作りたいって言っていたね。わたしはそれでいいと思う。売るのはおじいちゃんの伝手かな?」
「ええ、最初は伝手で売ろうと思っております。」
「フューラはどう思う?」
ドレスの話に興味津々のフューラがわたしと家令の話に乗りたそうにしていたので声をかけてみたところ、
「ドレスのリフォーム、わたし出来ます。お裁縫は得意です。レースや宝石を外すぐらいなら大丈夫です。簡単なサイズ変更も出来ると思います。売り手が決まっているのであれば、実物をまず見ていただいて、どうリフォームするのか決めてもいいですし。どんなお客様が来られるかわからないより、最初は伝手だけでいいと思います。」
「そうだよね。お客様はいい人ばかりじゃなくて、変な言いがかり付けてこられる人も多いものね。」
前世でもあった。クレーマーのお客様。本人は悪いとぜんぜん思っていないところがしんどかった。
フューラのところも宿屋という客商売。いろいろ思うところもあるだろう。
「季節的に良さげなドレスをリフォームしてもらおうか。リフォームする場所いるかな。1階の広い倉庫、あそこ作業部屋にしようか。」
「自分の部屋でも広いから作業できそうだったのですが、専用の場所があるといいですねー。」
「サンディ様、僕もフューラの作業部屋でアクセサリー作っても良いですか?」
ああ、そうだよね。やっぱりトゥレーも話に参加しだした。ドレスっていう単語に引き寄せられたんだろう。トゥレーがアクセサリー作りたいって言っていたのを聞いていたっけ。わくわくとした期待した目で見てくる。
「そうだね。いいよ。トゥレーはドレスから外した宝石使っていいよ。あー。魔石。スライムの魔石綺麗なんだよね。青く透き通っていて、大きさも1センチぐらいの球体だし。あれもアクセサリーにならないかな?」
「宝石を使っていんですか!とても嬉しいです。木工工房では木の器しか作らせていただけなくて地味な仕事は嫌いではなかったけど、ずっと同じ器ばかりなので寂しい思いをしていました。木工細工の一部に宝石を使って作ってみたいです。スライムの魔石は初めて聞きました。わたしは討伐には出たことがなくて。お綺麗なんですか?」
フェムが討伐好きなんで、最近わたしも付き合って時々討伐に行くようになって、スライムの魔石の美しさに気づいた。でも、魔力もあまり入っていなくて屑魔石と言われてギルドでも買い取りは1ノンナにしかならない。でも、綺麗なんだよねー。わたしはお金と交換しないで実は集めている。それをトゥレーに見せてみる。
「ああ、確かに綺麗ですね。ほぼ球体だし、色も透明で青くてきらきらしていますね。でも、穴が開いていないので、アクセサリーにするには難しいのではないでしょうか。」
「大丈夫。一度何かできないかなって考えて試したことがあるんだけど、ほら。」
「ああ、ちゃんと穴が開いている!魔石は加工がしづらいと聞いていたのに。」
「どれ、トゥレー兄ちゃん見せて、ああ。このスライムの魔石?凄く綺麗!」
フューラからもお墨付きだ。綺麗でしょ。初めて見た時、アクアマリンに似ているなって思ったもの。これを捨てるのは勿体ない。
「ふふふ。スライムの魔石は他の魔物の魔石と違って少し柔らかいので、魔力を細く細くキリで穴を開けるようにえいっ!って通すと穴が開くのです!やってみたら出来ました!」
ちょっと自慢げになってしまったが、自分で試して出来た時結構嬉しかったんだよね。
「いいですね。これ。でも、どうして今までスライムの魔石でアクセサリー作って来なかったんでしょうね。」
「多分だけど、アクセサリーを欲しがる層と、討伐でスライムを倒して魔石を得る層が大きく違っていたからだと思う。淑女はスライムの魔石なんて見る機会がないと思う。そしてスライムを倒すような初心者冒険者は、1ノンナしかならないスライムの魔石は屑魔石で綺麗だとか思うこともない。価値のないものとして捨てているんだと思う。」
無価値のモノに価値を見出すのは、楽しい。ぜーたい楽しい。わくわくする。でも、センスのないわたしにはどうしようか少し思案していたのも確か。トゥレーが可愛く加工してくれるならそれに越したことは無い。穴をあけたスライムの魔石をトゥレーに渡す。追加ができたら、また渡すね。スライムの魔石はギルドで買ってもいいかな。これも家令に相談してみよう。
話し合いが終って、倉庫だった部屋をドレスのリフォーム部屋にすべく、大き目の作業台になるテーブルを置いて、いくつか椅子も置いていく。あとは部屋の壁にポールを取り付けることにした。
今日はポールを加工する時間がないので、明日以降になるけど、ポールに手持ちの子ども用のドレスを吊る予定。フューラが狂喜乱舞するのも明日以降。




